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幼馴染を守りたくてダークプリーストを選んだのに、彼女はもう寝取られていた  作者: 工程能力1.33


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第31話 堕落

 佐藤大翔という男は、転移してからというもの、転移前の輝かしい人生は見る影も無くなっていた。

 スライム討伐でケチがついたのが始まり。日雇いの仕事を続けることも出来ず、賭場に出入りするようになった。そして、賭場での大負けから、大翔の転落は坂道を転げ落ちるように加速していった。

 返せない借金。取り立てにやってきたのは、以前よりもさらに柄の悪い男たちだった。


「――話は聞いてるぜ、坊主」


 路地裏に連れ込まれ、殴られ、蹴られた。

 戦士レベル2に加え、身体強化のスキルを使えば、多少なりとも抵抗は出来ただろう。しかし、盗賊ギルドという組織をちらつかせられては、抵抗するのは命にかかわると理解できた。

 だから、抵抗しようという気など、とっくの昔にどぶに捨てた。


「金がねえなら、体で払ってもらうか」


 男たちは、下卑た笑いを浮かべながら、そう告げた。


「日雇いでもさせるのか?」


 地面を這いつくばりながらそう言うと、男たちはげひゃひゃと笑った。


「そんな上等な仕事、てめえにはまわさねえよ」

「何だと?じゃあ……」

「ついて来ればわかるぜ」


 男の一人が、大翔の髪の毛を雑につかむと、上に引っ張って立ち上がらせた。

 これからどうなるかわからない恐怖が沸き起こるが、抵抗すれば痛い目にあうだけ。だから、黙ってついていくことにした。


        *


 それから、大翔の日々は一変した。

 夜な夜な、着飾らされ、望まぬ客の相手をさせられる。屈辱に歯を食いしばりながらも、大翔はその状況に、少しずつ慣れていくしかなかった。

 やがて、一人の常連客がついた。恰幅の良い、裕福な商家の婦人だった。前世はガマガエルかというような外見。どう見ても体重は大翔よりもある。だが、金払いは良く、大翔にとっては、数少ない"稼げる"相手だった。


(――ちょろい)


 内心では、そんな軽蔑を隠しきれなかった。金のためとはいえ、心の底からその関係を楽しんでいるわけではなかった。借金さえ返しきれば、二度と相手などするものかと、内心で吐き捨てる。

 だが、そんな気持ちとは裏腹に、相手を楽しませるため、精一杯の接客をした。

 そして、ついには彼女の信頼を得る。


「お店の外でも会えないかしら」


 そう誘われた。

 だが、店には厳格な決まりがあった。店外でのデートは、固く禁じられている。それでも、婦人にせがまれるまま、大翔は禁を破ってしまった。

 全ては金のため。少しでも早く、借金を返済したい一心で、夫人のちらつかせた特別なお小遣い欲しさに、店外デートを請けてしまったのである。

 運の悪いことに、その現場を、婦人の夫に見られてしまったのだ。


「――貴様! 妻に何をしている!」


 激昂した夫の怒声。大翔は、着の身着のまま逃げ出すしかなかった。

 夫は盗賊ギルドとの付き合いもあり、その伝手で店に苦情が入る。夫人はしばらく謹慎となり、大翔は暇になった。

 太客を失い、店の規則を破った罰として、ペナルティが課される。こうして大翔の借金は、さらに膨れ上がった。


        *


「お前には、別の仕事をしてもらう」


 盗賊ギルドの下働きの男が、そう告げた。


「体を売るより、こっちの方が向いてるだろ」


 渡されたのは、粗末なナイフだった。


「強盗、だ」


 大翔は、抵抗しようとした。だが、既に逃げ場はどこにもなかった。莫大な借金と、盗賊ギルドという組織の重圧。もはや、選択肢など残されていなかった。


「――手始めは、これだ」


 示された住所は、あの、かつての太客の屋敷だった。


(――あのばばあの家か)


 大翔の胸に、じわりと歪んだ感情が湧き上がった。金のためとはいえ、屈辱に耐えて相手をしてやったのに、結局、あの女のせいで全てが台無しになった。そんな逆恨みじみた怒りが、腹の底で燻っていた。


        *


 夜更け、屋敷に忍び込んだ大翔は、寝室で眠る婦人の姿を見つけた。

 手にしたナイフが、月明かりに鈍く光る。


(――金さえ、奪えば)


 そう自分に言い聞かせながらも、大翔の中で、押し込めていた憎悪が、堰を切ったように溢れ出した。

 目を覚まし、悲鳴を上げようとした婦人に、大翔は無我夢中でナイフを振り下ろした。一度、二度、三度

――理性は、とうに置き去りにされていた。


 気づけば、婦人はもう、声を上げることすらなかった。

 主人や住み込みの使用人の方は、別の男が処理をしていた。

 荒い息を吐きながら、大翔は屋敷中を漁り、金目のものをかき集めた。手には、返り血が、まだ生々しく残っていた。


 窓から外に出た大翔は、月に照らされた自分の手を、しばらく無言で見つめていた。

 もう、そこに、かつての爽やかなサッカー部主将の面影は、欠片も残っていなかった。


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