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幼馴染を守りたくてダークプリーストを選んだのに、彼女はもう寝取られていた  作者: 工程能力1.33


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第16話 写本と著作権

 フェルンハイムの北側に広がる森で、遥、真央、千尋の三人は、いつも通りの採取作業に精を出していた。


「松本さん、新しいスキル取ったんだよね」


 薬草を摘みながら、真央がぽつりと切り出した。


「戦士のスキル、後付けで取ったって話よね。聞いたわ。訓練していたらいつの間にか取れていたって」

「私たちも、のんびりしてられないわね」


 遥が、手を止めずに応じた。まだ、誰の力もこの世界の基準では駆け出しの域を出ない、初期値のレベルのままだった。それでも、初心者じゃないだけ恵まれている。ゼロからスキルを身に着けるとなると、日本でもかなりの時間を要することであり、それはここでも一緒。だが、着実に力をつけている優花たちの話を聞くたびに、焦りにも似た感情が湧いてくる。


「広く浅く、色々取っておくのが、今のところの方針よね」


 千尋が、周囲を警戒しながら言った。戦士でも魔法でも、どんな場面にもある程度対応できるように――それが、三人で決めた当面の目標だった。

 回復役は全員が目標。今は遥だけしか回復魔法を使えないが、もし、遥が気絶するような場面があったら、誰も回復させることが出来なくなってしまう。それを防ぐためにも、全員がプリーストのスキルを持とう。罠の発見や、敵の感知も同様だ。一人しか出来ないというのはリスクが高い。


「――そういえば」


 遥がふと思いついたように口を開いた。


「私、ヴォルケイン様の加護で完全記憶が使えるでしょう。あれを使えば、写本の仕事もできるんじゃないかしら」

「写本?」

「この世界、本って印刷技術がないから、恐ろしく高いのよ。手で書き写す写本の仕事、結構な稼ぎになるらしいわ」


 千尋が興味深そうに目を輝かせた。


「じゃあ、本屋で立ち読みして、内容を記憶して、それを写本すればいいってこと?」

「――それ、著作権的にどうなの?」


 真央が、思わず眉をひそめた。


「――著作権?」


 千尋が首を傾げる。


「この世界に、そんな概念、ありそうにないけどね」


 地球上でも著作権という概念が生まれたのは、印刷技術が出現したことと、一般大衆の識字率が上昇したのに伴ってである。本を手書きで作っている社会では、本を複製するコストが高額すぎて、制限をかけるほどのものでもないので、著作権で知的財産を守るという必要が薄いのだ。

 フェルンハイムがまさしくそれである。なので、著作権という概念は無かった。


「まあ、それもそうか……」


 真央も納得半分、釈然としない様子で頷いた。

 三人がそんな話をしていた、その時だった。


「――あ」


 千尋が、茂みの奥に何かを見つけて足を止めた。

 するすると這い出てきたのは、細長い蛇だった。灰褐色の体に、黒い縞模様が走っている。


「蛇……」


 陽菜たちのように毒々しい魔物とは違う、どこか見覚えのある姿だった。


「グラススネークね。毒はないはずよ。一匹だけなら、今の私たちでも問題なく倒せるわ」


 遥が鑑定を使いながら告げた。

 彼女の使った鑑定は、馨が持っているスキルではなく、ヴォルケイン信者固有の魔法である。なので、取得にキャラクターポイントを使ってはいない。そして、看破のように対象の強さを見ることも出来る。


「アオダイショウみたいな見た目ね」


 千尋が少しほっとしたように言った。


「それと、肉が美味しいらしいわよ」


 遥が鑑定結果を読み上げながら付け加える。


「売る?」

「――ううん、自分たちで食べましょう」


 真央が、あっさりと答えた。


「私も、賛成」


 千尋も頷く。異論を挟む者は、誰もいなかった。


「――ちょっと前の日本じゃ、蛇を食べるなんて、考えられなかったわよね」


 遥が、くすりと笑いながら言った。


「本当にね。でも、こっちに来てから、食への抵抗感、大分薄れた気がするわ」


 真央も、苦笑しながら同意した。


「エルフって肉を食べるイメージがないんだけど」


 千尋がちらりと真央を見た。


「この世界に元からいるエルフは知らないけど、私は肉も食べたくなるわよ。前世が関係しているのかしらね」

「――さ、逃げられる前に」

「そうね。無駄話をしている場合じゃなかった」


 遥が素早く得物を構えた。


 三人は顔を見合わせると、今晩のごちそうを求めて、蛇へと向かっていった。


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