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幼馴染を守りたくてダークプリーストを選んだのに、彼女はもう寝取られていた  作者: 工程能力1.33


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第13話 積み重ね

 数日が過ぎた頃、陽菜が自らのステータスを確認すると、大きな変化が現れた。


「――あっ」


 陽菜が驚いて大きな声を上げる。


「戦士、レベル1になってる……!」

「本当?」


 馨が看破を使って陽菜を確認すると、確かにそこには「戦士Lv1」の文字があった。


「未経験から初心者のにあがったっていうことね」


 優花が納得したように頷く。


「そういえば、最近、みぞおちに一撃入っても、一発で沈まなくなってたわね」

「言われてみれば……」


 陽菜自身、思い当たる節があった。最初の頃は、優花の蹴り一発で完全に悶絶していたのに、この数日は、多少なりとも踏ん張れるようになっていた。

 さらに、攻撃を完全に避けることは出来ないが、目で追える程度にはなっていた。


「おめでとう」


 馨が褒めると、陽菜の顔が赤くなった。


「あ、ありがとう……」


 まだぎこちないながらも、馨と陽菜は会話が出来るようになっていた。

 これに関しては、馨に非があるのだが、陽菜も優花もそこは優しく見守っていた。

 幼馴染が他の誰かを好きになったからといって、会話も出来ないほどにショックを受けるのは、実に身勝手であるのだが、二人の女性はそんな馨を優しく受け止めたのである。


「私も涙を呑んで、陽菜を攻撃した甲斐があったわ」

「涙を流していたのは私の方だけどね……」

「訓練だもの、甘い顔は出来ないわ」

「そ、そうよね」


 陽菜はそう返すも、どうも優花が私情なしに訓練していたとは思えなかった。

 だが、そんなことを口にすれば、どうなるかわかったものではないので、疑問を呑み込む。


 そして、陽菜が新たに戦士のスキルを得たとの報告を、三人はギルドで顔を合わせた遥たちにも伝えた。


「戦士レベル1、本当に出たの……」


 真央が、驚きを隠せない様子で呟く。


「どんな訓練をしたの?」


 千尋が興味深そうに尋ねると、優花はあっけらかんと答えた。


「結構な勢いで、ボコってただけよ」


 その一言に、少し離れた場所にいた小林大輝たちの顔が、一斉に引きつった。


「な、殴って……?」


 大輝が、ドン引きした様子で呟く。


「いや、女子の殴る力だから」


 と、山田優希が言ってみるも、佐々木和也がすぐさま否定した。


「いや、キャラクターポイントを使って得た能力に、男も女もないだろ」


 その意見は誰も覆せず、恐る恐る陽菜と優花を見ていた。

 だが、遥はそんな男たちと逆に、納得したように頷いていた。


「――それくらいのことをしないと、駄目なのね」


 その声には、感心とも呆れともつかない響きがあった。


「甘い考えは、捨てた方がいいわ」


 遥は周囲のクラスメイトたちを見渡すように言った。


「このままずっと、薬草採取だけで食いつなぐつもり? それじゃ、いつまで経っても先はないわよ」

「先って……」

「老後の生活。それとも、この世界に年金でもあると思ってるの?」


 誰も、答えられなかった。


「私たちには、家族もいない。誰かが老後の面倒を見てくれるわけでもない。若いうちに、少しでも力と金を蓄えておかないと――待ってるのは、みじめな死よ」


 その言葉は、静かだったが、重く場に沈んだ。


        *


 その後も、馨も暇を見つけては優花に稽古をつけてもらっていた。だが、陽菜のように目に見える形で、レベルが上がる気配はなかった。


(当然、か)


 馨は内心で、その理由を理解していた。陽菜の戦士レベルが1になったのは、いわば「ゼロから1」の話だ。だが、馨は既に戦士レベル3を持っている。そこからレベル4へ上げるための壁は、まったく別次元の高さのはずだった。

 その事情を、遥たちに話すことはできなかった。もし話せば、既に持っているレベルの高さから、キャラクターポイントの計算が合わないことに、勘の良い誰かが気づいてしまうかもしれない。

 結局、誰にも明かせないまま、馨たちは採取に出ない日は訓練に充てる、という日課を積み重ねていった。


        *


 一方、大翔たちの日雇い組は、こうした訓練の存在すら知らなかった。仕事のない日は、ただ宿でだらだらと時間を潰すだけだった。

 大翔のパーティーに参加していた女子たちは、もう冒険にはこりごりだと、誰一人として森へ向かおうとはしなかった。


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