ヴィットーリオ・ファミリー 3
けたたましい足音と共に、王都の警邏隊(警察)が数十人の武装した隊員を引き連れて病院に乗り込んできたのだ。先頭を歩くのは、敵対組織から莫大な賄賂を受け取っている悪徳警邏隊長だった。
「お前ら、ここで何をしている! 病院の平穏を乱す気か、さっさと解散しろ!」
隊長が凄み、強引に病室へ押し入ろうとする。このまま警邏隊に引き渡せば、ドンは移送中に確実にとどめを刺される。
「ここは面会謝絶です。お引き取りを」
アレンは一歩前に出て、警邏隊長の前に静かに立ちはだかった。
「どけ、薄汚いマフィアのガキが! 公務執行妨害でしょっぴくぞ!」
警邏隊長が振り上げた鉄の警棒が、アレンの額を容赦なく打ち据えた。
鈍い音が響き、視界が弾ける。アレンは一切の抵抗をせず、血を流してその場に崩れ落ちた。ボディガードたちが殺気を放って武器に手をかけようとするのを、アレンは血塗れの顔で手を挙げて制止した。
「……そこまでにしておきなさい、隊長」
アレンの背後から、ファミリーの顧問弁護士が、冷ややかな声で前に出た。
「今、あなたが抵抗しない未成年の市民に対して行った不当な暴力は、私と、ここにいる全員が証人となりました。これ以上強権を発動するなら、明日の朝一番で王都裁判所に告発状を提出しますが……少し、面倒なことになりますよ?」
弁護士の言葉に、警邏隊長の顔色が変わった。
アレンは、わざと無抵抗で殴られることで、警邏隊長に『法的な過失』を作らせ、弁護士がつけ込む隙を生み出したのだ。
「……チッ、引き上げるぞ!」
歯噛みしながら、隊長は部下を引き連れて逃げるように撤退していった。
翌朝。
アンソニーの迅速な手配により、ドン・ヴィットーリオは無事に、要塞のように堅牢な本部の屋敷へと移送された。
「お前がいなければ、親父は確実に殺されていた。お前の血で、ファミリーは救われたんだ」
額に包帯を巻いたアレンの肩を、アンソニーは力強く抱き寄せた。その目には、ただの弟分に対するものではない、組織の命運を託す男への『称賛』と絶対的な信頼が宿っていた。
拾われた名もなき少年は、この夜を境に、ヴィットーリオ・ファミリーにおいてアンソニーに次ぐ絶大な発言力を持つ、真の中核へと成り上がったのである。
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