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生きる、何が、あっても  作者: 虹の箸
第1章 始まりの3人

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ヴィットーリオ・ファミリー 2

しかし、ファミリーの急激な拡大は、他の巨大組織との決定的な軋轢を生んだ。

 抗争が激化する中、最悪の事態が起こる。王都の大通りで、次男カルロの護衛を掻き潜り、ドン・ヴィットーリオが凶弾に倒れたのだ。

「すまない、兄貴……! 俺がついていながら……っ!」

 病院の待合室。血まみれの服を着た次男カルロは、頭を抱えて泣き崩れていた。

「泣く暇があったら、マットレスの準備でもしておけ!」マットレスの準備とは抗争の準備を意味する。

 激怒したアンソニーが壁を殴りつける。幸いにも急所は外れており、ドンは一命を取り留めたものの、意識不明の重体として厳重な個室に入院することとなった。

しかし、ドンがこのような事になっことはファミリーの格と影響力を下げる事に他ならない。

ファミリーは傘にかかって攻撃される危険な状態に陥ったといえよう。ドンがまだ生きていると言うことだけがまだ救いだった。


 長兄アンソニーは気が短く短慮な男ではあったが、戦争、戦闘においては非常に優れた作戦指揮官であることから『代理ドン』としてファミリーの全権を握ることになった。彼は報復の指揮を執るため、本部の屋敷から一歩も動けなくなる。

 その夜。本部で書類を整理していたアレンは、ふと背筋に冷たいものが走るのを感じた。


(……おかしい。敵が親父さんの首を諦めるはずがない。次男の護衛部隊だけで、本当に病院を守り切れるのか?)

 スラムで培ったカンが、危険を告げていた。

 アレンは単身、夜の王都を抜け、ドンが入院している病院へと急行した。

 病院に到着したアレンは、息を呑んだ。

 厳戒態勢を敷いているはずの正面玄関にも、廊下にも、カルロの部下であるボディガードの姿が一人もいないのだ。不気味なほどの静寂が、病院全体を包み込んでいる。

(警察か……! 敵が警邏隊を買収して、護衛を不当拘束して排除したんだ)

 本能的に危機を察知したアレンは、ドンの病室へ駆け込み、意識のない彼をストレッチャーに乗せると、素早く別の空き病室へと移動させた。

 時をおかずして、コツ、コツと、重い足音が廊下に響いた。

 手にした短銃を抜き放ち、元の病室へと静かに踏み込んでいく二人の暗殺者。彼らがもぬけの殻のベッドを見て舌打ちをした瞬間――

 背後の闇から、致死量の毒を塗ったアレンの短剣が、二人の首筋を音もなく切り裂いた。

 深く息を吸い込み、床に崩れ落ちる暗殺者を見下ろしながら、アレンはすぐに本部のアンソニーへと緊急連絡を入れた。


 数十分後。次男カルロが率いるボディガードたちと、ファミリーの顧問弁護士が病院に到着し、ドンの病室周辺は再び分厚い人間の壁で覆われた。

 しかし、危機は終わっていなかったのだ。

 

お読みいただきありがとうございました。

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