第三章 第17話 「混じるもの」
伏見。
流れは、さらに速くなっていた。
人。
荷。
金。
すべてが、集まる。
「止めるな!」
「次、通せ!」
声が飛ぶ。
だが――その中に、わずかな“違和感”が混じっていた。
甚八が立ち止まる。
「……おかしい。」
弥七が振り向く。
「またか。」
甚八は短く言う。
「重い。」
「何が。」
「中身や。」
源蔵が樽を叩く。
コン。
鈍い音。
「……違うな。」
伊平じいさんも眉をひそめる。
「水が死んどる。」
一拍。
「混ぜとる。」
空気が変わる。
弥七が低く言う。
「やられたな。」
お葉がすぐに動く。
「止めて!」
流れが一瞬、揺らぐ。
だが完全には止めない。
清継が言う。
「全部止めるな。」
幸が即座に理解する。
「流れを残す……」
清継は頷く。
「せや。」
「止めたら、相手の思う壺や。」
その頃――
別の場所。倉の奥。
一人の男が、静かに動く。
荷を入れ替える。ほんの少しだけ。
誰にも気づかれない量。
だが――
甚八が立っていた。
「そこや。」
男が凍る。
逃げようとする。
だが――影が動く。
弥七。
そして――屋根の上。
気配。
鞍馬衆。
逃げ場は、ない。
男が歯を食いしばる。
「……遅かったな。」
甚八が言う。
「まだ浅い。」
一歩、近づく。
「誰や。」
男は笑う。
「もう遅い。」
一拍。
「全部、混じっとる。」
沈黙。その言葉が、場に落ちる。
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その一方、政所。
宗歓が報告を聞く。
「入れました。」
静かな声。
「どの程度だ。」
「全体の一割未満。」
宗歓は頷く。
「十分だ。」
一拍。
「信用は、量では崩れぬ。」
その目が冷たく光る。
「一度でいい。」
「疑わせれば。」
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伏見。
空気が重い。
お葉が言う。
「どうするん。」
清継は即答する。
「見せる。」
弥七が眉をひそめる。
「何をや。」
清継は言う。
「本物や。」
一拍。
「全部や。」
幸が息を呑む。
「全部……?」
清継は頷く。
「隠さん。」
「逃げん。」
「正面から、見せる。」
伊平じいさんが笑う。
「よう言うた。」
源蔵も頷く。
「選ばせる、やな。」
お葉が言う。
「怖いで、それ。」
清継は静かに答える。
「せやな。」
一拍。
「せやけど――」
「それしかない。」
沈黙。
弥七が肩を回す。
「ほな、全部開けるか。」
甚八が短く言う。
「見張る。」
お葉が言う。
「人、集める。」
幸が言う。
「記録、出します。」
清継が最後に言う。
「全部、晒す。」
風が吹く。流れは止まらない。
だが――
その中に混じった“毒”が、今、表に出ようとしていた。
伏見の勝ちは、ここで試される。
流れを信じるか。
疑うか。
その答えが、すぐに出る。




