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追放された無能修復師、実は世界そのものを直せるチートでした  作者: 山奥たける


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第11話 止まった水の正体

 水面から現れた“それ”は、ゆっくりとこちらを見ていた。


 濁っていない目。

 焦点も合っている。


 今までの“壊れかけ”とは、明らかに違う。


「……お前か」


 そいつが言った。


 声は静かだが、はっきりしている。


「流れを戻したのは」


「そうだ」


 短く答える。


 無駄なやり取りをする気はない。


「……余計なことを」


「よく言われる」


 軽く返す。


 だが、体は少しだけ構えている。


 こいつは違う。

 さっきまでの管理者とも違う。


 “中枢”に近い。


「ここは“止まることで成立している場所”だ」


「さっきも聞いた」


「理解していないな」


「理解する必要もない」


 そいつの眉が、わずかに動いた。


 初めて、反応らしい反応。


「……お前は、“流れ”を戻しているつもりだろう」


「そうだな」


「だが、それは“外”の理屈だ」


「ここは違うと?」


「ここは、“止まることで均衡を保つ層”だ」


 少しだけ、言葉が具体的になった。


 いい。


 情報が出てきた。


「均衡が崩れれば?」


「崩壊する」


 即答だった。


 迷いがない。


 それが逆に、気になる。


「何が」


「上も、下も」


 短い。


 だが、意味は重い。


「……なるほど」


 少しだけ納得する。


 つまり、ここは“蓋”だ。


 何かを抑えている。


「で、それを止めてるのがお前か」


「そうだ」


「一人で?」


「違う」


 やはりか。


「複数いる」


「それも知ってる」


 そいつは、ほんの少しだけ目を細めた。


「……なら、なぜやめない」


「簡単だ」


 一歩前に出る。


「壊れてるからだ」


「……」


「均衡とか、維持とか、どうでもいい」


「……愚かだな」


「そうか?」


 軽く笑う。


「壊れてるものを放置するほうが、よっぽど雑だと思うが」


 沈黙。


 そいつは、しばらく何も言わなかった。


 だが――


「……やはり危険だ」


 その一言で、空気が変わる。


 重さが増す。


 水面が、わずかに揺れる。


「ここで止める」


「やってみろ」


 即答する。


 次の瞬間。


 水が、動いた。


 ただの波じゃない。


 “意志を持って”流れる。


「――っ」


 水が形を変える。


 人の形。

 だが、腕が長い。


 足が歪んでいる。


 それが、こちらに向かってくる。


「……雑だな」


 思わず呟く。


 構造が歪んでいる。


 だから速いが、無駄が多い。


 横にずれる。


 腕をかわす。


 そのまま、触れる。


 ズレを探す。


「……ここだ」


 一点。


 ほんの小さな歪み。


 そこを――


 押す。


 カチ。


 水の形が崩れる。


「――っ!?」


 そいつが初めて声を荒げた。


 水が、ただの水に戻る。


「……やっぱりな」


 立ち上がる。


「構造で動かしてるだけだろ」


「……」


「なら、そこを直せば終わりだ」


 そいつの目が、はっきりと揺れた。


 初めてだ。


 明確な動揺。


「……お前」


「何だ」


「本当に理解していないのか」


「してるつもりだが」


「違う」


 低い声。


「お前は、“止めているもの”を知らない」


「知る必要があるか?」


「ある」


 即答だった。


「知らなければ――」


 一歩踏み出す。


「壊しすぎる」


 その言葉は、少しだけ重かった。


 だが。


「……いいな」


 思わず笑う。


「そのほうが分かりやすい」


「何が」


「壊していい場所と、駄目な場所の区別がつく」


「……」


「で、ここはどっちだ」


 そいつは、答えなかった。


 だが、その沈黙で十分だ。


「……壊していい側だな」


 結論が出る。


「やめろ」


「無理だな」


 一歩前に出る。


 水面に手を伸ばす。


「ここが“止める層”なら」


 水に触れる。


 冷たい。


 だが、その奥に――


 流れがある。


「流れは、ある」


「触るな!」


 そいつが叫ぶ。


 だが、遅い。


 指先で、ズレを捉える。


 深い。


 だが、確実にある。


「……ここか」


 押す。


 ほんの少し。


 だが、確実に。


 カチ。


 音がした。


 次の瞬間。


 水面が、大きく揺れた。


「――!」


 空気が変わる。


 流れが、動く。


 止まっていたものが、わずかに――


 “進む”。


「……何をした」


 そいつの声が、低くなる。


「直しただけだ」


「……それが」


 水面の奥で、何かが動く。


 さっきとは違う。


 もっと深い。


 もっと大きい。


「……起きるぞ」


 そいつが、呟く。


 初めての、不安。


「何が」


「“下”だ」


 その言葉と同時に。


 水面の奥が、歪んだ。


 そして。


 何かが、こちらを見た。


 今までとは違う。


 完全に、別格。


「……いいな」


 思わず笑う。


 面倒が増える。


 だが――


 そのほうが、面白い。


 ここは。


 まだ、入口にすぎない。

ここから一気に“地下の本質”に入っていきます。


少しでも続きが気になると思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。


次話、本格的に動きます。

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