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追放された無能修復師、実は世界そのものを直せるチートでした  作者: 山奥たける


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第10話 地下への入口

 地面の割れ目から、冷たい空気が吹き上がっていた。


 さっきまでの乾いた風とは違う。

 湿っていて、重い。


「……ここ、寒い」


 ミアが腕を抱く。


「地面の下だからな」


 覗き込む。


 暗い。底は見えない。

 だが、確実に“空間”がある。


「……穴、じゃないな」


「え?」


「通路だ」


 自然にできたものじゃない。


 形が整っている。

 人が通る前提の幅だ。


「……誰かが作ったってこと?」


 ミアの声に、不安が混じる。


「そうだろうな」


 問題は――誰が、何のために。


「……行くの?」


「行く」


 即答する。


「え、ちょっと待って!」


 ミアが慌てて止めに入る。


「まだ準備とか、何も……!」


「準備ならしてる」


「どこが!?」


「頭の中で」


「それ一番信用できないやつ!」


 少しだけ笑う。


 いい反応だ。


「怖いなら残ってろ」


「……」


 ミアが言葉に詰まる。


 しばらく迷って、それから――


「……行く」


 小さく言った。


「どうせ、ここにいても落ち着かないし」


「そうか」


 それでいい。


 リオナを見る。


「お前は」


「行くに決まってるでしょ」


 即答だった。


 迷いがない。


「……借りは返す」


「そうか」


 後ろの男も、無言で頷いた。


 全員、来るらしい。


「……じゃあ、行くか」


 穴の縁に手をかける。


 足場は悪いが、降りられないほどじゃない。


 先に降りる。


 土の壁に手をかけながら、ゆっくりと下へ。


 数メートル。


 やがて、足が地面に着く。


「……来い」


 上に声をかける。


 順番に降りてくる。


 ミアは少し時間がかかったが、落ちずに降りてきた。


「……暗い」


 当然だ。


 光がない。


 だが――


「……完全な闇じゃないな」


 目が慣れてくる。


 わずかに、光がある。


 壁の奥。

 どこかから漏れている。


「……あっちか」


 指をさす。


 細い通路が続いている。


「……やだな、これ」


 ミアが小さく言う。


「戻るか?」


「……戻らない」


 少しだけ強い声。


 いい。


 その調子だ。


 歩き出す。


 足音が響く。


 静かすぎる。


 音が反響する。


「……変な感じ」


「普通じゃないな」


 壁に触れる。


 冷たい。


 だが、ただの土じゃない。


「……これ」


 リオナが壁を見ている。


「削ってる?」


「そうだな」


 人工だ。


 しかも、かなり丁寧に作られている。


「……村の下に、こんなのが?」


「あったんだろうな」


 知られていないだけで。


 しばらく進む。


 道はまっすぐだ。


 だが、少しずつ変化している。


 空気が重くなる。


 音が減る。


「……止まってるな」


「またそれ?」


「またそれだ」


 ミアが少しだけ笑う。


 緊張が、ほんの少し抜けた。


 そのとき。


 足元が、わずかに沈んだ。


「――止まれ」


 即座に言う。


 全員が止まる。


「……何」


「踏むな」


 足元を見る。


 地面が、ほんの少しだけズレている。


 さっきの地上とは違う。


 これは――


「……罠か」


「え?」


「動くと、崩れる」


「ちょ、ちょっと!」


 ミアが一歩下がりかける。


「動くな」


 短く言う。


 ピタリと止まる。


 いい。


 冷静だ。


「……どうするの」


「直す」


 しゃがみ込む。


 地面に手を当てる。


 ズレの中心。


 仕組みは単純だ。


 荷重で崩れる構造。


 だが――


「……雑だな」


 また同じ感想が出る。


 管理者側の作りは、基本的に雑だ。


 押し込んでいるだけ。


「……ここか」


 軽く押す。


 ほんの少し。


 位置を戻す。


 カチ。


 音がした。


「……もういい」


「え?」


「進める」


 ミアが恐る恐る足を動かす。


 何も起きない。


「……ほんとに?」


「見れば分かる」


「……すごい」


 小さく呟く。


 その声が、少しだけ明るい。


 いい変化だ。


 さらに進む。


 やがて。


 通路が、開けた。


「……広い」


 ミアが息を呑む。


 空間だ。


 地下とは思えないほど広い。


 そして。


 中央に、何かがある。


「……あれ」


 リオナが指差す。


 近づく。


 それは――


 水だった。


 だが、井戸とは違う。


 大きな、溜まり。


 そして。


 完全に、止まっている。


「……流れてない」


「そうだな」


 水なのに、動いていない。


 波もない。


 音もない。


「……気持ち悪い」


 ミアが小さく言う。


「止まってるからな」


 近づく。


 水面を覗く。


 そこに――


 映っていた。


 俺たちじゃない。


「……誰だ」


 思わず呟く。


 水面に映るのは、別の人間。


 知らない顔。


 だが――


 こちらを見ている。


「……カイ」


 ミアの声が震える。


「これ……」


「見えてるな」


 水面の“それ”が、ゆっくりと動く。


 口が開く。


 だが、音はない。


 そして。


 同時に。


 水面が、揺れた。


「――下がれ」


 反射的に言う。


 全員が下がる。


 次の瞬間。


 水が、盛り上がった。


 そこから。


 “それ”が、出てくる。


「……またか」


 思わず笑う。


 だが。


 今までと違う。


 形が、はっきりしている。


 そして――


 目が、濁っていない。


「……お前か」


 そいつが言った。


 はっきりと。


 意志を持って。


「流れを戻したのは」


「そうだ」


「……余計なことを」


 また同じ言葉。


 だが、重さが違う。


 こいつは――


 さっきまでの連中とは別格だ。


「……増えるな」


 思わず呟く。


 だが、嫌じゃない。


 むしろ。


「ちょうどいい」


 一歩前に出る。


「直しがいがある」


 そいつの目が、わずかに細くなる。


「……愚かだ」


「よく言われる」


 軽く返す。


 空気が張り詰める。


 ここは――


 “地下の本体”だ。


 そして。


 ここから先は。


 今までより、少しだけ深い。

地下、入りました。


ここからは“村の核心”に触れていきます。


もし少しでも続きが気になると思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。


次話、地下の本番です。

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