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黄龍の診療所 ― 世界を診る気導士、龍界で開業中  作者: 転々丸
四神とナギ

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第20話 東の巫女カグヤと、凍りついた「祈りの風」

挿絵(By みてみん)


午後の診療が終わり、中庭には煎じ薬の香りが漂っていた。

だが、その平穏は突如として「静寂」に食い破られる。


薬草の葉が不自然に静止し、

香炉の煙がまるで凍りついたようにその場に留まった。


「……パケットロス(気の欠落)? 風が、流れていない」

ルカが呟いた瞬間、空気が物理的に裂けた。


中庭の上空、青い鱗が空を埋め尽くす。

東を司る青龍。

その背に優雅に腰掛け、カグヤは風と共に舞い降りた。


「……カグヤ様……!」

柱の陰に逃げ込んだイグナスを、カグヤは涼やかな瞳で射抜く。


「逃げても無駄よ、イグナス。

あなたの乱れたセンサーも、後で私が整えてあげるわ」


「カグヤ様……それだけは……(物理的な意味で怖い!)」


挿絵(By みてみん)


カグヤは地上に降り立つと、研修中のツクヨミと

見学に来ていた隼人に近づいた。


「ツクヨミちゃん、西の神殿にあなたがいないのは

システムの欠損のように寂しいわ。

……でも、今日ここに来たのは、そのことではないの」


カグヤの表情から温度が消える。

「“祈りの風”が、デッドロック(停滞)を起こしているのよ」


「祈りの風?」 隼人が眉をひそめる。


「地脈を伝う祈りのデータは、風を媒体にして天へ昇る。

それが今、風の杜では――送信不能タイムアウトに陥っているの。

祈る心を受け取る『風』というトランスポート層が

完全に停止しかけている」


ナギは目を細めた。

「……気が詰まっているどころか、

循環そのものが凍結フリーズしかけているのね」


「そう。そして、その『風の回路』を再起動できるエンジニアは、

龍界に一人しかいない」


カグヤは棚の上に置かれた「月イチ依頼」の封書を指差した。


「龍王の書状は、意図的に淡々と書かれていたわ。

あなたが日常を優先することを見越して。

……けれど、風は嘘をつかないわよ、ナギ。

このままでは、龍界中の願いが地底に沈み、腐敗し始めるわ」


中庭を通り抜ける風。

それは吹いているようでいて、どこか「実体」がなかった。


「……なるほど。単なる掃除じゃなくて、

システムの再起動リブートが必要ってわけね」


ツクヨミが同行を申し出るが、カグヤは優しく首を振った。


「いいえ。あなたはここで学び続けなさい。

これは、東と西の政治的な連携ではなく、

もっと『現場的』な修復作業よ。

……ナギ、私が行くわ。私の翼(アクセス権)を、あなたに貸すわ」


ナギはすぐには答えなかった。


指先で風の粒子を弾き、その「重さ」を確認する。


「……考えておくわ。でも、出発する前に――」


ナギはカグヤを診療台へ促した。


「あなたの肩甲骨、風を切る振動で

金属疲労(気の摩耗)が起きてる。

まずはそこをメンテナンスしてからよ」


カグヤが微笑み、青龍が低く鳴いた。

その音は、迫りくる嵐を告げる警笛のように響いた。


挿絵(By みてみん)


ご覧いただきありがとうございますm(_ _)m

毎週火曜日と金曜日20時に更新してします☆

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