↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/14

006

 店の中は普通の喫茶店のように見えた。人が一人も見当たらないという事を除けば。[幻灯区]はどこもそんな状態だったが、蒼いわく、「ここはいつでも無人だよ」とのことだった。

 それでどうして経営が成り立っているのかと呆れた小雀に、蒼は曖昧に笑う。

「聞かれたくありませんか」

「そこを率直に聞いてくるかお前……」

「いえ、つい」

 つい突っかかってしまっただけだ。

 促されて、小雀はカウンター席の一つに腰掛けた。蒼は一度、扉が確りと閉まっている事を確認してから、椅子を一つ挟んで隣に腰を落ち着ける。

「翠もいねーのか……まあいいけど。そうだ、お前、今日は学校どうする」

「……今更それでございますか」

「よく考えたら真面目だもんな、お前。戻る方が優先かと思って」

「いえ、いいです」

 気分じゃない、と言うとサボりのようだが、そして実際サボっていることになるのだろうが、このまま授業を受けても上の空になるだけだろう。

 学校に戻っても、またこの[幻灯区]に来てしまうだけではないかという心配もある。

 小雀の回答に納得したのか、それとも満足したのか、頷いた蒼は椅子を回転させて小雀に身体ごと向き直り、本格的に話す姿勢に入った。

 自然と小雀も蒼の方を向き、居住まいを正す。

「ここは、東京の裏側だ、ってのは話したよな」

「[幻灯区]でしたっけ?」

「そう。実際の東京……まあ本来は実際もクソも無いんだが、とにかく“あっち”の写しみたいな場所って考えてくれればいい。鷹代市だけじゃなく、23区の方とか、他の県にも移動はできたけど、そっから“あっち”へ戻る事は不可能だった」

「東京都内なら、戻れるという事でございますか」

「方法さえ知っていれば」

「その方法というのは?」

「まず一つ目」

 蒼は人差し指を立てて、その指先をそのまま足元へ向けた。

「此処だ」

「……この店?」

「そ。此処なら戻れる。あの扉を潜ればいい」

 指先が、今度は先ほど入ってきた店の入り口へと向く。今はきちんと閉められている扉は、どれだけ見つめても、何の変哲も無い木造の扉でしかなかった。

 どういう事かと無言で更に説明を求めた小雀に、蒼は大真面目な顔で、投げやりな声を出す。

「この店は、[魔法使い]なんだ」

 頭がおかしくなったのかと思った。

「頭でも打ったんですか?」

「そうだったら良かったんだけどな」

 残念な事に蒼は正気のようだったし、小雀自身、おかしな現実を見てしまっている。

 何を聞いても耳が拒絶しないだけの覚悟を決めてから、小雀は先を促した。

「続きをどうぞ」

「見て分かったと思うけど、この[幻灯区]には人間も動物も、植物もいない。[幻灯区]に出入りできるのは俺達が[適性者]と呼んでる、何かしらの条件を踏んでる存在だけだ。ここで動けるのも[適性者]だけ。そして[適性者]の中でも余計な力を持ってる奴を、俺達は[魔法使い]と呼ぶことにした」

「はあ……」

「反応薄いな」

「何て言って良いか分からないのでございますよ」

 何の遊びか分からなさ過ぎて。

「つまり、ワタシもアナタもその[適性者]なんですね?」

「いや」

「いや?」

「俺もお前も[魔法使い]の方だ」

「……えー」

 益々表情に困った小雀は、真面目なままの蒼の顔を見つめて次の言葉を待った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。