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西東京は鷹代市にある燕城学園は、市内でも随一の巨大さを誇るエスカレーター式の学校となっている。中等部から大学部までが揃い、鷹代市の象徴ともいえる鷹代駅からバスで一本。専用の燕城学園前というバス停を使えば殆ど空の下を歩く事無く学園まで辿り着ける。
通学時間帯には特に本数を増やされているバスから、今日も多くの生徒や教師が吐き出されるように降りてきた。
「おはようございまーす」
「はよー!」
「おはよ、ねー課題どこまで進んだ?」
「一限の教授、今日は来てるんだろうなあ。全然進んでないんだけど」
制服を着た中等部、高等部に混じって、ちらほらと私服の大学部の生徒も見られる。教師と間違われて挨拶された彼らの戸惑う顔も、夏を前にするとそろそろ少なくなってくる。
子供と大人の入り混じる集団の中を、桃山小雀も彼らと同じように自分の教室を目指して歩く。中等部の頃から、起きる時間も、乗るバスの時間も、校舎への道のりも殆ど変わらない。人に揉まれた所為で乱れた長い髪を、高い位置で二つに結わき直しながら進むのにももう慣れた。
混雑したバスの顔ぶれも大抵同じで、それも変わらない毎日を象徴しているかのようだった。だからその中に知っていても見慣れない顔があると、嫌でも目についてしまう。
「おはようございます、鷹代蒼! 今日はちょっと遅いようでございますが、どうかされましたか」
それがクラスメイトの一人だったりすると、それなりに社交的なキャラで通している小雀としては無視するわけにもいかない。
自分としては教室で振舞っているように話しかけたつもりだったが、鷹代蒼は欠伸を噛み殺しながら肩を竦めた。肩にかけた鞄の位置を直しながら、眠そうな顔を向けもせずに喋る。
「朝飯ゆっくり食べ過ぎたんだ。別に見逃したって事でも良かったんじゃねーの」
当たり前の声をして普通に受け答えた後、余計な一言を足すから、小雀は蒼が苦手だった。
「何のことだかさっぱりなわけでございますけれども」
作ったような口調も、作り続ければそれが普通だ。
そのはずだったが、蒼はいつでもバッサリと小声で切り捨てる。
「台詞がなげーんだよ、わざとらしい」
「だまれ」
小雀も小声で悪態をつき返してしまい、結局朝からお互いに目も合わせずに言い合う羽目になった。




