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魔法使いとは何なのですか。
観念してそう聞いた小雀に、蒼はただ単純に「“力”を使える奴の事だよ」と答えた。
どういうものなのかともう少し慎重に尋ねると、蒼は悩んだ末に席を立った。つられて腰を上げた小雀と共に、店の扉の方へと向かう。
蒼が無造作にドアノブに手をかけるのを見て、小雀は咄嗟にノブを捻ろうとした手を掴んだ。
「ちょ!? 危なくないですか!?」
「大丈夫だよ、いきなり目の前になんて事でもねー限りは」
「アナタのその根拠の無さが激しく不安です」
「安心しろよ、これでも[幻灯区]通いは長いって」
実際にどれほどなのかを尋ねるより早く、蒼は小雀の手を追い払って店の扉を開けた。
いきなり目の前が真っ黒に染まる、などという事は無く、動植物のいない冷たい気配が店内に入り込んでくる。店の前の路地は狭く、元々人通りもないのだろうが、見えなくとも小雀には理解できた。
音が無さ過ぎるこの世界は、[幻灯区]の方だ。
「で、次な」
小雀が状況を把握するのを待って、蒼は一度扉を閉めた。
次に一度ノックをして、また無造作にドアノブを捻る。
薄っすらと開いた扉の向こうから、突然、車のクラクション音が飛び込んできた。
「え」
耳障りな作り物の音に続いて、たくさんの人の話し声が混ざり合った雑音、風や鳥の声、携帯電話の着信音、次々に色んな音が流れ込んでくる。
「……あ、え? あれ?」
どれほど話し込んでいたのだろう。
スクランブル交差点にある巨大スクリーンに流れているニュースが昼を告げる音が、微かに聞こえてくる。
先ほどまでは確かに何もいなかった。
ふと窓の外を見ると、遠い電線の上にスズメらしき鳥が留まっているのが見える。
笑いを堪えるような顔で、蒼がまた扉を閉めた。
「これが、この[扉]の“力”だ。向こうとこっちを繋げる[扉]」
今度はノック無しで扉を開く。
十数秒のうちに目まぐるしく入れ替わった扉の向こう、静寂に満たされた[幻灯区]は、先ほど以上に静かに見えた。




