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いい加減にしろ  作者: 和子・F・和夫


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第一話『もうええわ』

 ここ、『聖テンプレニカ王国』の人口の八割は日本人の転生者で構成されている。


 その王国の外れ。はじまりの村にある丘に、光のベールが包まれ、どこからともなく人が現れる。今月でもう72人目だ。はじまりの村にいる村人たちはもう飽き飽きした表情で、


『また転生してきた。また日本人。また死因がトラックとの衝突事故』


『そんでまた、女神にチート能力与えられて、村の娘がパーティに連れ去られるな。もう需要と供給のバランス崩れて、村の水不足よりも、村の娘不足の方が深刻だよ』


『おい──オッサン』


 すると村人たちの背後へ、丘からトボトボと歩いてきた69人目の転生者がいう。


『今は西暦何年で、ここはどこかを教えろ。今ここは令和8年の8月15日の日本だよな?』


『はい。賭けはオレの勝ち!』


 すると、村人Aと村人Bは、転生者を無視して、銀貨と銅貨をトレードしていた。


『次に来るのは、礼儀知らずのガキ!!』


『あ、お前、それ──卑怯だぞ。だいたい礼儀知らずのガキだろうが。チンチロで言うと、ヒフミぐらい良く出るやつなw』


『おい──オッサン』


 69人目の転生者は、村人Aの胸ぐらを掴み、激昂する。少年は立て続けにさっきと同じ質問をした。


『ここは西暦何年で、何時何分地球が何回回った時だつってんだろうが──ッ!!!』


 すると、村人Aも、村人Bも、それはもうマリアナ海溝並みの深いため息を吐き、転生者69人目を、哀れみの目で蔑んだ。村人Aが掴まれたままの胸ぐらを解くこともせず、口を開く。


(あん)ちゃん。君面白くないねー。掴みとして最悪。もっと面白いこと言ってみろよ。転生者なんてこの村では珍しくないんだ。ここは別名『転生者の村』って呼ばれてんだぜ』


『はあ? 掴み? 何言ってんだ。オレは日本から来た。右も左も分かんねえ……。別にお前らを面白がらせるためにここに来たわけじゃねぇ……生きていくためにはこの世界のことを知らないといけない』


 それを隣で聞いていた村人Bがすかさず口を挟む。


『令和ね、令和。はいはい。日本から来たんだろ? もうおじさんたちめちゃくちゃ詳しいよ。日本。耳が腐るほど聞かされたよ。今となっては村のことよりも、日本の方が詳しいくれえだ』


『だったら、オレを元の世界に戻しやがれ!!』


 村人AもBも再び大きくため息をつき、Bは

『それはできない約束なんだよね。特に交通事故系は、もう死んだという事実そのものを変えてしまうからタイムパラドクス? ってやつが起きちゃうんだよ』



 と言い、Aは


『世界線。分かる? 君はもう死んでここに来たという世界線で確定しちゃったの。日本人なら分かるよね? あの某人気アニメ、ゲーム作品が作り出した著作権フリーのワード。世界線! だからこの世界で生きていくことだけを考えた方がいいよ。あと、面白がらせるためにここに来たわけじゃない……ねぇ……。そのセリフがもう面白くないんだよ。おじさんたちもう5億回ぐらいこのぐたりやってるから、たまには突拍子のない発言するやつが現れて欲しいなっていう。まあ、こっちの都合』


 と言った。


『そうそう。別にお笑い芸人みたいに笑いを取れって言ってるんじゃなくてね。テンプレをやめろっていうか……』


 そう。この村の、この国の人々はもう転生者という移民に飽き飽きしている。


 飽きた──。


 そんな乾いた声がこの村を、この街を、この国を支配していた。


『なんで交通事故ってわかんだよ』


『顔に書いてあるんだよ』


『そうそう。如何にもトラックに轢かれましたって顔してやがる』


『この村のジンクスでは、トラックに轢かれる奴はだいたい礼儀知らずってのがあんだ』


『てめえら──ふざけんな。ぶん殴るぞ──ッ』


 69人目がその拳を大きく振りかぶったその時だった──。


『あの……後ろつかえてるんで……早くしてもらっていいですか?』


 すると70人目の転生者が小さな震える声で、69人目に話しかけた。よく見なくても分かる。女の子だった。そして70人目の後ろには転生者たちの長蛇の列が、丘まで、万里の長城のように連なっている。


『あー、悪役令嬢もので、めっちゃいびられるパターンだ。悪役令嬢そのものに転生するんじゃない。ちょっと昔のオーソドックスなやつ。前世で乙女ゲーばっかやってる女の子だ。顔に書いてある』


『だな。賭けなくても分かる。最近は賭けにならないから面白くない──』


 71人目のチャラ男の転生者は、70人目の乙女ゲー主人公に話しかける。


『君カワウィーネー。うぇい?』


『前途多難だな』


『ああ。前途多難だ。71人目は真っ先に死ぬタイプと見た』


 だが、まあ──と村人Aは言う。


『この転生者の村で、伝説になった男。あいつは面白かったよなあ』


『ああ。なんせ、剣も、魔法も、盾も、おまけにスキルも、主人公補正も、ハーレムすら築かず──』


『ただハリセン持って、スライムに、いい加減にしろと、もうええわで戦う──』


『そんでよぉ。スライムにいじめられて、殺されてよぉ』


『またあの丘の上に、転生してくるんだ』


 するとさっきまでの光とは違う、強烈な稲光がゴォォォオンという鐘のような音を立てて丘の上を直撃する。ジュゥゥウウウウウという煙を立てて、その黒煙が晴れた時に、そいつは現れた。


 ハリセンを持った男。その男は、丘の上から見える王宮に向かって、吠える。


『もうええわッッッ!!!!!』


 そのハリセンを持つ男の隣には、初めてその男がここに転生してきた時に建てられた銅像があった。彼と瓜二つの、彼に似せて作られたハリセンを持つ銅像。


『おい70人目と、その後ろに控える転生者たち』


 その言葉を聞いて。69人目は不服そうに眉をひそめる。


 村人Aがここにいる全員へ注意を惹きつけたあと──いや、69人目だけを無視して注意を惹きつけたあと、Bがそれを補足するように言い放った。


『パーティー組んでダンジョンに向かう前に、あの銅像に向かって拝むと全員生きて帰れるっていうジンクスがあんだ。ただの言い伝えじゃねえ……』


『あの銅像を建てて、勇者様たちに拝ませてから死者が一人も出てねぇんだ』


 ハリセンを持った男を見てさらに村人Aは言う。


『他の転生者とは面構えが違う……もう始まりの丘に転生するの一万二千回超えたぞ……』


『ガッツがあるな。だから、勇者様たちがあの銅像に向かって拝むと勇ましくなって士気が上がるのかもしれん』


 Bのその言葉にたいし、Aは尊敬と、呆れと、哀れみが同時に混ざったような顔で言う。


『まあ、当のアイツは何度もスライムに殺されてあの始まりの丘に死に戻るんだがな』


 丘の上にいるハリセン男は、王宮を真っ直ぐと射抜く弓のような笑みを浮かべ堂々と佇んでいた。


初めまして。こんばんは。こんにちは。おはようございます。和子F和夫です。


この作品は『アトランティスに転生したら現代よりも奴隷社会だった件(アト転)』を読んでもらうために、短編連載で客寄せパンダとして書きました(正直)


この『いい加減にしろ』はテンプレを意識して書いたらこうなったという、手のつけようのないほど、ふざけた作品です。ふざけた作品でも最後までお付き合いいただけるとありがたいです。


これは書き溜めたものではなく、突発的に書いて、突発的に投稿しております。


一応脳内にプロットはあるんですが、矛盾やツッコミどころがあればご指摘いただけると幸いです


ブックマーク、いいね、感想、レビューくださると励みになります。


それでは『いい加減にしろ』を最後までよろしくお願いします。


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