東京探訪_上野編3
じっくりと美術品を見て昼食も忘れてすっかり夕方になってしまった。
あの後有料の特設展示と別館の世界中の美術品もしっかり見てだいぶ楽しんでしまった。
こうなると他の美術館も気になるところだがそれはまた別の機会にしよう。
にしてもだいぶ博識になった気がする。
今なら立派な教養人と言ってもいいのではないだろうか?
そういえば初めて知ったのだけど、美術館には美術関係の本の販売やワークショップなどもやっていたりするんだな。
どうも展示されている美術品を模したしおりなどを作ることができるらしい。
こういうのも少し気になる。
どうも子供向けでもうすでに私は参加することはできないのだが、学芸員さんに教えてもらう機会というものはそうそうないと思う。
どこかに大人でも参加できるものはないかあとで調べてみよう。
今日はひとまず、だいぶ幸福になれたので宿に向かうことにしようかな。
あぁ、そうだった荷物をロッカーに預けているんだ。
そういえばロッカーの鍵をさっきから持っていないな。
財布の中には?ないなぁ。
いやぁ鍵なしで預けられるなんてすごいな、ってそんなわけあるか!いつからだ!?
考えろ、いつから鍵を持っていない。
結構最初の方から持っていなかった気がする。
となれば掛軸のあたりか、来た道を戻っていこう。
どこかに落としているかもしれない。
何かおかしいと思っていた、あまりにも身軽すぎるなと思ってたんだ。
ああいうロッカー鍵ってのは大抵大きな番号札がついているかリストバンドがついてるものだけどなんかそれをはじめから持ってなかった気がする。
掛軸のところまできたがやはりどこにもない。
展示会場ってすごいんだな、通路真ん中に置いてあるワゴン形式の展示品の下に隙間がないんだ。
落とし物を探すのに便利!以前ゲーセンの筐体の下にイヤホン落として店員さんと探したけど結局見当たらなかったことがあったからすごい安心して探していられる。
結局ロッカー前まで来てしまったがどこにも落ちていなかった。
もしかすると鍵が窓口まで届けられているかもしれない。
番号を控えていないからどの番号に入れたか荷物の場所を特定しておかないとな。
、、、ない、荷物がない!!鍵の次は荷物か!?確かに入れたはずだ?
まさか鍵を拾った悪質な人間が荷物を持って行った?
まずい、あの中には財布とスマホ以外の全てが入っている。無くしたとなれば最悪旅行中止もあり得る。
とりあえず窓口に行くか、何て説明すればいいのだろうか、鍵を落として荷物持っていかれました何て警察沙汰になってだいぶ迷惑をかけてしまうぞ。
「あのぉ〜すみません」
「はいなんですか?」
窓口にいたのは穏やかなお姉さんだった。
こういうところで働いていたら誰でもこうなるのだろうか、優しさの塊のような印象を感じる。
非常に心苦しい、今から警察沙汰になるのではないかと思うとどのように詫びを入れればいいのか分からない。
「あそこのロッカーの真ん中あたりにリュックサックを入れていたのですが、なくなってしまていてですね、、、鍵も手元になくてどこかに落としてしまっていたみたいなんです。」
「あぁ、少々お待ちいただいてもいいですか?」
あまりにもあわてていて非常に伝わりにくい内容になってしまった。
お姉さんの顔が若干険しくなった。
面倒ごとだということに気づいたようだ。
おそらく今から書類か何かを書くのだろうなと思っていたら、奥から喫茶店のマスターでもやっていそうな中年男性の警備員さんが出てきた。手元には何か重そうなものを持っているがここからは何かはわからない。
「あのロッカーの一番下の段に置いていたんですよね?」
「はい、そうです」
「黒いリュックですか?」
「えぇ、そうです」
お姉さんから色々質問されていて、なんだ何かがおかしい、なぜ黒いリュックだとわかるのだろう?
自分はリュックサックとしか言ってないはずなのだが、まさか。
「もしかしてこれですか?」
そう言ってカウンターから降りてきた警備員さんが持ってきたものはまさしく私のリュックサックだった。
「そうですそれです。一応中身を確認してもいいですか?」
「いいですよ」
もしかすると外側が同じなだけで中身が違うこともあるからな、教養のある私はそんな可能性も見逃さない。
チャックを開けて一番初めに入っていたのはトイレで脱いだジップロックに入ったあの汗まみれの上着だった。
すぐさま締めて私のものだったことを伝える。
「私のでした。ありがとうございました。」
「よかったです」
「ちなみにどう言った状況で回収されてたんですか?」
確実に見られていたが、お姉さんは穏やかに何もなかったかのように接してくれる。やはりここで働いていれば寛容な心が手に入るのだろうか?
「鍵がかかっていなかったんです。」
「、、、え?鍵の落とし物が来たとかではなく?」
「はい、鍵がロッカーに刺さっているのに100円が入り口のところに入ってたので警備員が確認したところ荷物が入っていたので、勝手ながら私どもで回収させていただきました。」
「あ、こちら入っていた100円です。」
その後、その100円を受け取り徹底的な感謝と謝罪をお姉さんと警備員さんに伝えて足早に美術館を出る。
日は傾き始め辺りが橙色に染まり始めているのに未だ気温は高く蒸し暑い。
そうか、鍵、かけてなかったんだな。
先ほどまで教養人を気取っていたが一瞬で現実に戻された。
私は、愚か者だ。
、、、お腹が減ったな、今から秋葉原に戻るからおすすめされたハンバーガーでも食べに行こう。
歩きは、、、ちょっときついな、電車で行こう。
駅まで看板が立ってるから迷子になることはなさそう、、、ん?
看板を見て凍りつく、駅とは別の矢印に書かれた「東京国立”博物館”」の文字、矢印の向きは先ほどまでいた建物の方角を指していた。
私は、、、、、、、愚か者だ。
上野編はここで終わりです。
久留島のこの旅行記は基本私赤とんぼが経験したことをもとに9.9割の脚色を加えてお話にしていますが、この上野編2、3はほぼ実話となっています。
皆さんはロッカーに荷物を入れたことに満足せずしっかりと鍵をかけてくださいね。
ではみなさまアキバ編4でお会いしましょう。




