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東京探訪_上野編2

 さて、このままでは私はこの人類の叡智と共に博物館管理のミイラになってしまう。

 せめて涼しいところにあるベンチが欲しい。

 ほしいんだけど、なんで世界館側にしかないんですか?

 しかも日本館に比べて人口密度もすごいし、ベンチは全部埋まってるし、みんな考えることが一緒なんだね!

 あ、ちびっ子が走り回ってる、怪我が心配だなぁ、転ぶなよ〜ってあっ他のちびっこにぶつかって派手に転んでしまった。

 親も大変だな。


 、、、。

 、、、。

 、、、何かおかしいと思ったけどあれか、場違いなんだな。

 私という存在がここにいることが。

 確かに説明書きが少し低いところにあったり、体験型のモニュメントが多いなとは思っていた。

 本来子供向けなんだここ、、、なんだか急に恥ずかしくなってきたな。

 結構楽しんでしまったぞ、世界館のこの階だけで30分は拘束された。

 早急にここを移動したい。

 確か近くに美術館があったはず。

 元々行く予定はなかったけど、少しでも大人な自分を取り戻すためだ。

 何より今すぐここを離れたい。

 ここから歩いて数分か、ギリってところか。

 外は灼熱の暑さだどうなるか分からない。

 ここ博物館に入るまで大丈夫だった理由がわからないほど外は暑く太陽光は皮膚を焼き尽くす。

 きっと熱中症だったんだ、自販機の水を飲んだ瞬間に空調の効いた室内で汗が急速に出始めたからね。

 よく生きてここまでこれたよ、褒めてくれ私を!

 そして今から私はここを出て新たなる世界に飛び込む!行くぞ!

 

「あっっっっっづい!」


 案の定外は上からの太陽光に加えタイルに蓄えられた熱が熱容量を超え熱波を発している。

 まるでオーブンの中にいるかのように幻覚するほどで、あまりの暑さに足裏から熱を感じ靴が溶けたのではないかと心配になりつつ、止まったらそれどころじゃないと足早に美術館に向かう。

 警備員さんを横目に大きな西洋建築へ歩みを進め、途中行列ができているのを見てまさかと青ざめたが特設展示の行列というのを確認して安堵しそのまま建物へ入っていく。

 美術館に入っていの一番に確認したのが靴裏


「うん溶けていない」


 証拠写真も撮って、座れそうなところを探す。

 コインロッカーが無料と書いている。

 親切すぎないか?入場料無料で冷房完備、適度に休むことができるし荷物も無料で預けることができる。

 素晴らしいではないか!!

 他の美術館ではおそらくこうはならないだろう。

 これが国立の強みなのだろうな。

 ひとまず宿泊道具が一式入ってギチギチに張り詰めて重たいリュックをロッカーに入れてしまおう。

 地味にこのリュックの重みが継続ダメージを与える呪いの装備のようになっていたからな。


 空いているロッカーを見つけてリュックを背中から下ろすと羽を授かったかのように体が軽くなり背中から風が吹き抜ける感覚がダイレクトに伝わり、そこでようやく気づいたことがあった。


 外の灼熱のような暑さの中リュックを背負う猛者は避けて通れないものだ。

 人間の体表面には汗が出る汗腺が至る所にあり、リュックサックというものは実に18%もの体表面を覆う。

 今まではリュックが熱を保持し湯たんぽみたいになっていたため常に背中に暑さを感じていたために感覚が麻痺していたために気づかなかった。

 首周りと背中がものすごく汗でぐっしょりしていた。

 普段はあまり気にしないのだが、今は旅行中。

 いつもより若干のオシャレをしているためにこの汗は許容を超えてしまっている。

 しかもここは美術館、芸術的センスを持ち観る目をもった人間が集まる場所でこのような美的センスに欠ける汗染みを見せつけることは人としてのセンスや羞恥心、協調性の欠如を疑われてしまう。

 この間わずか0.5秒、すぐさまリュックを背負い直しロッカーを後にしてトイレに駆け込む。

 重いリュックを背負っていたのはまさしくこのためなのかと思うほど九死に一生を得た。

 汗でびしょびしょの上着を脱ぎ一応持っていたタオルで体を拭く。

 この量は汗拭きシートでなんとかなるようなものではなかったため仕上げにシートを使って拭いたのち、本来明日着る予定だった上着をリュックから取り出して着る。

 乾いた服とはこんなにも気心地がいいのか、素晴らしい、まさかデバフ要素がこんなところにもあったとは。

 着替えが終わったためトイレから出る。

 リュックサックは背中部分はタオルで拭いても湿ったままなので背負うことなく100円を用意してロッカーに入れた。


 リュックと濡れた服というコンビはかなりのデバフということを改めて認識した。

 非常に体が軽い、先ほどまであった休憩したい欲はすでになく、エネルギーが体全体に行き渡っている。

 ひとまず美術品を片っ端から観よう。

 私にも教養というものが必要だ。

 今の私であれば全てを吸収し尽くす自信がある。


 無理だった。

 なぜ科学博物館の展示量を見た後に美術品を全て見ることができるなど出来もしないことをしようとしたのかがわからない。

 ここは美術館だ、科学博物館よりも展示量が多いことは考えなくてもわかるだろうに暑さで頭がおかしかったんだろう。

 ただ、唯一科学博物館と違うところは、必ず展示品の近くに椅子があることだ。

 これのおかげで私は今荘厳な掛軸に囲まれて休息を取ることができている。

 しかし美術館というものは私の想像を遥かに超えてきた。

 入る前は、よくわからない絵とかをそれっぽく展示しているだけで動きがなく庶民の私などは理解できない縁遠いものと思っていたが、作品一つ一つに説明書きがあってわかりやすいし何か分からなくても目の前にあることで少し興味が出る。

 元々刀剣類や昔の人が使ってきた道具などには興味があったが、説明書きを見て初めて知ることがたくさんあるし、興味のなかった絵や私を現在進行形が囲んでいる掛軸の大群についても見るべきポイントや何がすごいのかをさらっとわかりやすく説明してくれて、今まで興味がなかったのは知らなかったからなんだなという知見を得ることができた。

 なんだかここにいるだけで教養人になったかのような気がする。

 想像よりもずっと楽しい。

 館内マップを見ると私が見たものはまだ三分の一にも満たないらしい。

 今日はもうここでいいかな。

 他にもパンダを見たりアメ横にも行ってみたかったがここの展示品を見ないで出ると後悔するような気がする。

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