第三話
どれくらいたっただろうか。
「あっ、ごめん。ごめんね。」
涙を流していたことすら早苗は気付かなかったみたいだ。目をこすりながら必死に冷静さを取り戻す。
「まさかそんなこと言ってくれるとは思わなかったからさ・・・」
そう言って片足をぶらぶらさせる。黒のトレンチコートの先からヒールを履いた足が見え隠れする。
「淳がそんな風に私を思ってくれてたなんてさ・・・」
早苗が空を見上げた。下を見たらこぼれてしまう涙を必死にこらえているようだ。
「早苗さ・・・」
「ありがとう!」
淳が口を開こうとした言葉を遮るように早苗が言った。目は・・・淳をしっかりと見つめている。早苗に一つの決意が出来たかのように・・・。
「私も淳・・・好きだよ。」
にっこりと早苗が微笑む。いつもの笑顔に戻ったようだ。
「最初会った時は『何だ〜この変なヤツは〜』って思ったけどね(笑)」
そう言って手でおどけて見せた。もう目には涙が見えなかった。
「でもね・・・、一緒にバイトするうちに、あぁ、なんてこの子は一生懸命なんだろうって思ったんだ。私たち大学生って遊ぶお金欲しさにバイトやる人多いじゃない?だからほとんどみんなが遊び気分でやるから、仕事に手を抜いたり、勝手に休んだり、サボったり・・・。でもね・・・君は違った。弁当の名前覚えるために必死になったり、お得意さんの顔や好きな弁当をメモして覚えたり、何より・・・『ありがとうございます』っていう笑顔がすんごい素敵に変わってっいったんだよ。君は気付いているのかな?」
ふいに自分のことを褒められ淳は少し照れて、頭をかいた。
(それもこれも早苗さんのためなんですよ!!)
そう言いたかったが、口には出さなかった。
「だからね、私も思ったんだ。こんなに一生懸命な人って応援したくなるな〜側にいてあげたいな〜って」
「じゃあ・・・!!」
淳が早苗の目を見た時、早苗は少し微笑んだようだった。そしてその口からは聞きたくない言葉が聞こえた。




