☆これまでの登場人物
書いてる途中に忘れないための設定資料なので、読み飛ばして大丈夫な情報群。これを読まなくても本編は問題はなく進む。
ル・ガウーワ/菜花火花
前世では日本人女性・菜花火花。現在は額に縞のない、きょうだいよりわずかに小柄な氷嶺白虎の幼獣。白い長毛に黒縞、丸い身体と短い脚を持ち、白虎側からは雄雌どちらの印も揃わない珍しい子と認識されている。虎語を理解できない代わりに観察と推測で家族についていく、好奇心と適応力の塊。ただし頭が回るぶん「ノミが火を吐くかも」式に想像まで暴走しやすい。家族の役に立ちたい気持ちから、害虫だけを凍らせる独自の魔法を生み出した。本人は深刻な境遇をほぼ知らず、「ニートラ」として毎日を満喫中。綺麗な石を拾って寝床へ集めた翌朝、全部きょうだいに玩具として散らかされても悲しんだ三分後には自分も参加した。人間だった頃よりも深く物事を考えられなくなっているし、認識の仕方も虎に寄っている自覚もあるが、まあ別にいっかな! 虎だし! とあっけらかんとしている。擬人化はしない。もし万が一するとしたら、人間のパーツ認識が怪しくなっているので、脱毛症の奇形猿みたいな状態になって「人間ってこんな感じだよね」と言い出すので怪奇現象扱いになる。動き方も二足歩行忘れてるから完全にクリーチャー。
ル・ガヴァウ/虎の旦那
ル・ガウーワたちの父。肩高約二メートル、体長約四.七メートル。白毛の額で黒縞が二股に分かれ、右目の上には毛の薄い古傷、眼は淡い青。毎日のように巨大な獲物を運ぶ実力者でありながら、家庭では子供に股の下をくぐられ、尻尾へ噛みつかれてもされるがままの穏やかな父親。最大の長所である包容力は、そのまま子供への甘さと過剰な心配性につながる。そして毛繕いだけは壊滅的に下手。愛情を込めて舐めるほど相手の毛並みが崩壊する。家族が好きそうだと思って必要以上に大きな獲物を仕留めて帰り、入口で妻に「どこへ置くつもりだ」と無言で見られて耳を伏せていた。子供たちは大喜びしたが、全ては食べきれず、捨てる前に義理の甥が来ておもてなし用に出来たので助かった。
ル・ナワー/雪の奥方
四匹の母であり、セデ村で「雪の奥方」と呼ばれる巨大な雌。肩高二.三~二.四メートル、体長五メートル超。胸と腹の毛が厚く、授乳期らしい丸みと貫禄を備え、ラ・パウーからも非常に強く偉い雌として認識されている。愛情深いが、安全に関して妥協しない一家の危機管理責任者。「危険が起きてから守る」のではなく「危険そのものへ近づけない」のが彼女の子育てであり、責任感の強さがそのまま厳しさと過保護になる。夫への毛繕いは非常に上手く、夫の下手な毛繕いは自分が被害者なら黙って受け入れる。幼獣の歩幅に合わせた散歩を装いながら、最後尾の子を突然追い立てて逃げ方を練習させ、全員が成功すると何事もなかった顔で毛繕いを始めそう。ツンデレ年上女房。
ル・ガブ
四きょうだいで最も大きな雄。突然現れたラ・パウーを前に、きょうだいを守ろうとして真っ先に前へ出るものの、急ぎすぎて自分の前足を踏み鼻から転倒するという、勇気と幼さが同居した長兄格。遊びでは何にでも真っ先に飛びかかるタイプで、思考より身体が先に動く。長所は勇敢さと行動力、短所もまったく同じで、考える前に突撃してしまうところ。ただし失敗してもめげる様子がないため、成長すれば一家で最も前衛的な性格になりそう。初めて見る氷穴を誰より先に覗き込み、滑って頭から入ったあと、助けられた五分後には「今度は足から」と再挑戦して母に回収されていた。
ル・ヴァウ
左前脚の黒縞が途中で切れている雄の幼獣。叔父が突然現れた時には逃げようとして妹へ衝突する一方、慣れてしまえば「何にでも噛みつく」と評されるほど積極的に遊ぶ。未知のものへの初動は慎重なのに、安全だと判断すると距離感が一気にゼロになるタイプらしい。慎重さと警戒心が長所だが、一度安心すると好奇心の歯止めが外れるのが短所。身体を使って確かめるため、彼にとって「これは何だろう」はだいたい「とりあえず噛んでみよう」と同義なのかもしれない。初めて見た長い氷柱を何度も齧り、冷たさに顔をしかめながら翌日も同じ氷柱を確認しに行った。
ル・ナーヤ
額の黒縞が丸く曲がった雌の幼獣。ル・ガウーワの毛繕いが特に好きで、途中でやめられると振り返って催促するほどの甘え上手。遊びでは兄たちが先に試し、失敗するところを見届けてから同じことをするという、幼いながら妙に要領のいい慎重派である。長所は観察力と慎重さ、短所はその慎重さが「他人を実験台にしてから動く」方向へ自然に転ぶところ。怖いものへ無理に先頭で突っ込まず、それでも面白そうなら結局参加する。兄二匹が薄氷を踏み抜くのを安全な岸から見届け、割れなかった場所だけ正確に選んで渡り、「私は最初から知っていました」という顔をしている。
ラ・パウー
ル・ナワーの甥にあたる若い雄。父母ほど完成した巨体ではないが体長四メートル近く、成長期らしい細長い脚と若い筋肉を持つ。母方に似た目元や鼻筋、耳から頬へ流れる縞を持ち、尻尾の最後の縞だけが幅広く黒い。強く、速く、狩りも上手く、幼獣へ柔らかい肉を譲る優しい青年──そして、その長所全部が無鉄砲さへ直結している。「何か起きても自分が守れる」ため、そもそも危険へ近づかない発想が弱い。自尊心も高く、従弟妹から尊敬されることが大好き。子守り用に「安全で楽しい遊び場」を自信満々で選び、帰宅後ル・ナワーから安全基準を十五項目ほど指摘されて後半から雪へ顎をつけて半分眠りながら聞いていた。たぶんきっと一生自尊心もりもりの無敵で強気な勇敢なる雄虎で生きる。これが天敵のいない土地に生きる最強捕食種。尤もバッドイベントが起こりそうな二本足への警戒心も叔母に教わったので、上手いことイベント回避して賢く立ち回ることができるようになるだろう。
ブラムウェル・パンクハースト
王立博物院第三魔獣研究室の研究者。博物院勤続十年のフィールドワーカーで、漁村の船元の家に生まれた現実主義者。普段は学会や貴族社会で身につけた丁寧な言葉を使うが、命を軽く扱う相手には幼少期仕込みの荒い言葉が即座に復活する。冷静で観察力が高く、自分自身も事故なら見捨てろと言えるほど安全原則には公平。その責任感が他人への苛烈さにもつながる。背中いっぱいに大胆な女神像の刺青があり、その下には肩から背中、脇腹へ走る複数の古傷。刺青は海難時の身元確認のための家の文化に由来し、女神柄も信仰心より「比較的怖がられにくい」という実用品としての選択である。研究仲間へ真顔で「死体の一部だけ残った時にも便利です」と刺青を勧め、全員に断られていた。フィールドワークの際の現地人や自分が認めた相手には人当たりが良い対応が取れるが、気分が乗らなかったり、『こいつ話しても無駄だな』と認識すると、自分が思っているよりもわかりやすく嫌な顔をするので、他部署の者は担当者がブラムウェルだと緊張する。本人には他人にプレッシャーをかけている自覚は無い。根は普通に善良なので、指摘されたらショックを受けて傷つく男でもある。怒鳴らないし殴らないから自分は紳士的な男だと思っていた(故郷基準の紳士)。
アリア
大神殿・神獣典礼室の若い神官。十代後半、長い淡褐色の髪を後ろで束ね、銀の聖印と真新しい白い外套を身につける。旧名アリア・アルヴェーン。古い公爵家の三番目の子として育ち、十一歳で一族を失った後、姓と再興の権利を自ら手放して神官となった。神学と古代文字を愛し、人を助けることへためらいがない一方、自身の異常に強い治癒能力によって「怪我をしたら治せばいい」という感覚が身体へ染みついている。そのため優しさ・勇気・好奇心が、そのまま無謀さになる。白虎の幼獣を前に知識より「かわいい」が勝った人物。尚、彼女が神獣現地調査に選ばれたのは持ち前の治癒能力での生存率を期待された事が三割、確実に発生するであろうブラムウェルからのプレッシャーをものともしないメンタルの強さが七割。現在自由に動ける神獣典礼室の神官内で、ある程度人当たりが良く、メンタルが強く、やる気に満ち溢れているの三点をおさえているのがアリアだけだった(神獣典礼室は教会内役職で閑職である)。
バルト
セデ村の猟師。三十代半ばの大柄な男で、弓と短槍を携える山の現場担当。氷嶺白虎を長年「危険だから排除するもの」ではなく、「距離を守れば共存できる隣人」として知っている。白虎へ槍を向けるくらいなら自分の腿を刺して動けなくなった方がいい、と真顔で語るほど経験則を重視する。言葉は短く、危険を察知すれば武器を置き、相手へ敵意がないことを即座に示す。慎重さと判断力が最大の長所だが、本人にとって常識になりすぎた山の知識を長々説明しないのが弱点でもある。ブラムウェルが十分かけて説明する注意事項を「走るな、近づくな、勝手に動くな」の三言で済ませ、その方が村人にはよく伝わっている。今年の春にふたつ年下の女性と結婚予定。村に糧をもたらし家庭を持ち今後子供が増えるであろう、村の宝。何があっても死なせてはいけない男。
エダン
セデ村の村長。都会の人間が神獣と呼んで畏れる氷嶺白虎を、長年同じ山で暮らしてきた「近所の巨大な隣人」として捉える村側の代表的人物。宿屋がない理由を説明する際、村へ来るのは税の取立人、迷子、そして「何かに取り憑かれた学者」くらいだとブラムウェル本人を前に付け足すなど、乾いた土地柄そのままのユーモアを持つ。研究者の繁殖推定を聞いても大仰に驚かず、「奥方も腹が減るな」で受け止める現実派でもある。王都から届いた長大な「神獣対応規定」を最後まで読んだあと、村人へ「今まで通り近づくな、でいい」と一行に要約して壁へ貼った。




