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勇者召喚に巻き込まれた俺は第二の人生と思って楽しむ事にする  作者: 望


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2/10

異世界に召喚されてしまったが・・・

 

 長年勤めた会社を辞め田舎で畑をやろうと退職金で畑付きの元農家さんの家を購入した俺は、住んでいた家を引き払い身の回りの細々とした物を積んだマイカーで、お世話になった人に最後の挨拶をした後これから自分の自宅となる田舎へと向かおうとしていた車内で信号待ちしていたはずが、気付くと車を運転していた姿勢のままよく分からない変な魔法陣の様な物が書かれた地面の上に座っており、周りを見回すと自分の他に10数人の人がおり、それぞれ皆なんだここ?みたいな顔で周囲を見回しているようで、その中の魔法陣の中心の方にいる今時珍しい艶やかな長い黒髪をポニーテールにした美人が、俺の運転していた姿勢で地面に座っている姿に怪訝な顔をしているのを見てとりあえず俺は立とうと思い立ち上がると、立ち上がったタイミングで発光する魔法陣の明るさのせいで気付かなかったが、魔法陣の外側を囲うようにそれなりの人数がいたようで、その中の西洋のお姫様みたいな恰好をした女性?女の子が前に出ると何やら喋り出したので話を聞いていると、どうやらここは異世界の勇者とやらを召喚する為の部屋の様で、その勇者と言うのはどうやら魔法陣の中心に立っていた高身長金髪イケメンの男の子っぽく、イケメン君の左右に先程俺のことを怪訝な顔で見ていたポニーテールの美人娘と美人と言うよりは可愛いと言われているだろう茶色のショートヘアーの低めの身長の割にグラビアでも出来そうなスタイルの娘がおり、その娘が不安そうにイケメン君に寄り添っているのを見て流石勇者となるとリア充だねと思うのだった。


 俺は40近く生きているが独身な事もあり未だにアニメや漫画、小説やゲーム等を嗜んでいる俗に言うこどおじみたいな人間だったのでなんとなく冷静に現状を理解すると、どうやらイケメン君以外の人はオマケだったようだが召喚された人間はこの世界の人よりもステータスと呼ばれるゲームの様なパラメーターが高い人間が多いようなのと、特殊能力と呼ばれるその人が持つ個性の様な物にレアな物を持っている事が多く使い道があるからかとりあえず全員調査する為に豪奢な部屋に閉じ込められ、ステータスや特殊能力を調べる為の魔法の様な物が使える水晶玉の魔道具で調べられると、どうやら俺はステータスはこの世界の人と大差が無いようで戦闘力に期待は出来ず、持っていた特殊スキルもマイホームと言う神官が言うには家を所有しないと意味がないし、何処でも家に入れた所で緊急避難用として使うぐらいしか利用価値が無いと判断され、他には鑑定しか無かったので戦闘力が高かったりレアな有用スキルを持っている奴とは違い個室では無く、城で働いている人用の部屋に見える6人分のベッドのみ置かれた部屋に案内されたのであった。


 勇者くんと同じ制服を着ているステータスは現地民より少し高かったのだが、戦闘向きでは無い特殊能力持ちの小太りの男子高校生とヒョロガリのメガネ男子高校生は俺と同じ部屋に案内されており、見た目の通りどうやら2人共オタクの様で現状を話合っているのを聞いていると、

 小太り「異世界召喚された時はと思ったけど・・・、やっぱり勇者は光君だったな・・・」

 ヒョロガリ「ですな・・・、僕達はやっぱりオマケですな・・・」

 小太り「そっちは透視だっけ?」

 ヒョロガリ「ええ・・・透視と気配遮断(小)です、そちらは?」

 小太り「透明化と衝撃吸収(弱)、それと丈夫な胃」

それを聞いていた俺はついポツリと、

 俺「覗き用か?」

そんな言葉を漏らすと2人はハッとした表情で立ち上がり、

 小太り「やる事を思い出したっ!」

 ヒョロガリ「私もですっ!」

そう言って凄い勢いで部屋を出ていくのを見送り、

 俺「若いね〜」

俺はそんな事を呟きながら一応全員連れて行かれ謁見させられた時に見た、国王や王妃の肥えた体に趣味の悪そうな過度に身に付けた宝飾、王の傍に控える宰相っぽい奴なんかもでっぷりしており、召喚された勇者くんの傍に立つこの国のお姫様よりも全然美人でスタイルの良いポニテさんと可愛いグラビアアイドルちゃんを下卑た笑みで見ており、その他偉そうな役人もおんなじ様な感じからこの国は駄目系な話の国っぽいと思っている俺は、期待されているわけでもないしマイホームと言う名のスキルの内容にもしかしてと思っていることが有り、早めにトンズラした方が良さそうかな?と考え明日以降の事を考えるのであった。


 召喚されてから数日経ち、戦闘力が低く有用度の低い俺は特に制限する事無く歩き回る許可が降りた為、囲い込まれ戦闘訓練を受けている戦闘力高めの高校生を横目に城下町へと情報収集に繰り出す事でこの国を調べる事が出来ており、初日に部屋を飛び出した後に頬に引っぱたかれた跡を付けて帰ってきたヒョロガリこと細井君と、目の周りに殴られたのか青痣を作って帰ってきた小太りこと太田君、この二人も訓練が無かったため城下町に繰り出しており、そこで得た情報により同じ結論を出しているのか早々に冒険者になると言って先程数日一緒に過ごした俺に挨拶をすると出て行っており、俺も早い所出ていったほうがいいなと考えた所で、

 葵「すいません」

ドアのない部屋の入口から綺麗な女の子の声が聞こえそちらを見ると、

 葵「すいません、入ってもいいですか?」

部屋の入り口に勇者くんの傍に立っていた高校生とは思えないスタイルの良い黒髪ロングポニテの美人さんがおり、入室の許可を聞いてきたので、

 俺「どうぞ?」

なんでこんなとこに来たのかと思いながら許可を出すのであった。


 ロングポニテさんは同室のオタク君達に用があったのかと一瞬思ったのだが、いないのは丸見えだし違うよなと思っていた通りでどうやら俺に用があるようで、こちらを目指して近寄ってきたので一応ベッドから立ち上がり応対しようと立ち上がると、目の前に来ると170ちょっとの俺よりも以外に背が低いようで少し見下ろす形になりながら、間近で見る絵に描いたような美人さんという事と、ふた周り近く歳の離れた若い子と話なんか出来るのか?とちょっと緊張していると、

 葵「水宮 葵です、えっと・・・」

目の前に来た水宮さんは礼儀正しく挨拶をするとなんて呼ぶかで迷っているので、

 俺「土間 士門です」

俺も名乗ると、

 葵「土間さんの能力に付いてお伺いしたいんですがよろしいですか?」  

そういえば俺の後ろに並んでたのはこの子だったから鑑定の結果が聞こえてたのかと思いながら、

 俺「能力と言うとマイホームの事かな?」

 葵「そうです、私漫画やラノベ、ゲームが好きでして、神官さんが初めて見るスキルって言っていたのが聞こえたので気になってまして・・・」

見た目に寄らず意外とオタク趣味を持っているようで、俺と同じく知識がある為かレアスキルと言われたマイホームに隠された物があると予想して来たようだが、俺はこの俺達を召喚した国が数日の情報収集により相当終わってる国だと既に気付いており、ここで俺のスキルが実は有用でしたと思われて逃げ出せなくなるリスクを考え、この城のどこに聞き耳があるかもわからない場所で迂闊な事は言えないと、

 俺「神官さんの話通り家を所有するとそこに繋がる扉を召喚?して、何処にいてもそこに帰れるようになるみたいだね、今は家を持っていないから使えないみたいだしそれ以外の事は分かってないよ」

 葵「成程・・・、そうですよね・・・、こんな所で、ましてよく知らない私には言えないですよね・・・」

実際まだマイホームと言う名のスキルを使っていないので予想している事が発動するのか不明な事もあるし神官に言われた事だけ伝えると、水宮という娘は何か自分の中で確信しているのか一人で納得し頷くと、

 葵「そういえば同室の太田君と細井君もこんな時間なのにまだ戻って無い?」

 俺「ああ・・・、同室だった二人ならさっき冒険者として生きていくって出て行ったよ、私は彼等みたいに着ていた制服を売って装備を手に入れる資金を稼ぐ事は出来ないから、何かお金を稼ぐ手段を見つけて早めにここを出て生きていく予定だね、私はステータスも高くは無いし年齢が年齢だから彼等みたいに冒険者になるのは難しそうな気がするし」

ここを出ると言ってもお金が無いから宿にも泊まれないだろうし、本格的な冒険者には成れないだろうがとりあえず冒険者登録をして最低ランクの依頼を受けお金を稼ぐしか無いかと考えていると、

 葵「そういう事でしたら明日私と一緒に行動しませんか?ちょうど明日から私も実地訓練として冒険者登録をして魔物討伐をする事になっているんですよ、まだ聞きたいこともありますしどうですか?」

 俺「君はあの勇者くんとパーティーを組んでるんじゃないのか?」

 葵「光は桜って言うヒーラーの私の友達と鋼君ってタンク職の前衛に真理って言う魔法使い職の子達でパーティーを組んでます、私は光と同じパーティーにいても役目が被ってしまうのでパーティーは組んでいませんよ、他の同級生もそれぞれ仲の良いグループでパーティーを組んでるので私はソロの予定だったんです」

そういう事らしいので俺は二周り近く歳の離れた美人女子高校生としばらく行動を共にする事にするのだった。


 俺「すまないね水宮さん、装備のお金を出してもらった上に冒険者登録費用まで出してもらって」

 葵「気にしないでください、お金は国が準備資金としてくれた物ですから、本来なら土間さん達にも配られていないとおかしい物ですからね」

俺と水宮さんの二人は次の日城下町へと降りると、俺の案内によりまずは目立つ制服から着替える為に服屋へと赴き、ここで前日出て行った太田と細井は服を売ったのか店主に水宮さんの服を売ってくれないか頼まれる出来事を挟みながら服を着替え、水宮さんは元の世界の物を残したい為売らない事を選び、次は俺の為に駆け出し冒険者用の防具と護身用の小剣を買ってもらい、冒険者ギルドと呼ばれる冒険者が依頼の受注や依頼物の納品、狩ってきた魔物の解体等を頼む、この世界の一部を除き全ての国の街にある中立組織に行き登録を済ませ、ギルドの最低のFランククエストであるスライムの捕獲クエストを受け、水宮さんはEランクのラッシュボアの討伐クエストを受け、俺の受けたクエストのスライムは何処にでもいる魔物の為、水宮さんの受けたラッシュボアの討伐の為ラッシュボアの生息している森へと向かっている道中で、

 俺「それにしても本当によかったのか?」

 葵「よかったとは?」

俺は冒険者ギルドでバッタリ出くわしたと言うよりはこの娘を待っていたと思われる勇者くんがこの娘をパーティーに誘ってきたのを断った事を言うと、

 葵「ああ・・・いいんですよ、昨日も言った通り私があのパーティーに入る意味は余り無いですし、それに私が光の傍にいると桜が嫉妬して大変なので・・・、私は光とは幼馴染ってだけで何とも思っていないんですけどねぇ・・・」

この娘はどうやら勇者くんに気が無いようだがギルドを出ていく俺の事を見ていた勇者くんの眼からは嫉妬を感じた事から、多分勇者くんはこの娘の事が好きなんじゃないかと思うのだがあんなイケメンでも恋愛は上手くいかないものなのかと思いながら、さすがに40間近のおっさんに嫉妬する事は無いだろうが変に勇者くんに恨まれないように早めにこの娘の世話になるのは辞めた方がよさそうだと思っていると、

 葵「土間さんっ、またいましたよスライム」

 俺「おっ、それじゃ捕まえます」

水宮さんが指差した方向を見ると半透明のゼリー状生物が草の上におり、俺はそれに近付いて行くと特に警戒する事も無くギルドで貸し出されたスライム捕獲用の特殊なグローブを嵌めた両手で掴み、潰さないように注意しながら持ち上げると捕まえる前に降ろした捕獲したスライムを収納する専用のギルドから貸し出された背嚢に入れるのであった。


 道中見つけたスライムを背嚢に入れながら森に到着し、レベルは俺より低いが既にステータスは俺の3倍はある水宮さんの後ろに付いていきながら歩いていると、

 葵「生きたまま捕まえたスライムってやっぱりトイレ用なんですかね?」

 俺「多分そうなんじゃないかな?」

水宮さんに聞かれた通りこの世界のトイレは水洗や汲み取り式では無く、何でも食べて分解してくれるスライムをトイレの中に入れる事で処理をしてくれるシステムになっており、スライムは体の内部に分解する物が入っている限りは動く事は無い上に攻撃性も無いのだが、時折脱走するスライムがいる事もあるらしいのでそう言う時の為にギルドでスライムを確保しているのかな?と考えていると、

 葵「止まって下さい・・・、気配探知に何か掛かりました・・・、こっちです」

俺は何度目かの水宮さんの制止で歩みを止めると、彼女の持つ能力の周囲の気配を探知する気配探知に俺達以外の動物以外の魔物と思われる気配が見つかり、その魔物と思われる物へと水宮さんが歩き出した後をなるべく音を立てないように付いて行くと、

 葵「あれは確か・・・、キノコの魔物のエノキノコだったと思います・・・、あれは土門さんでも倒せると思いますけどどうします?」

 俺「そうだね・・・、やってみるよ」

 葵「エノキノコの攻撃は体当たりだけのはずです、急所は体の中央下部辺りに確か核があるはずで核を一突きにして倒すと買取代が高くなるはずです、倒すだけなら体を真っ二つにするだけで大丈夫です」

 俺「了解」

俺は背嚢を静かに下ろすと小剣を鞘から抜き、フラフラと歩くエノキノコの背後から忍び寄っていき、名前の通りえのきの臭いがしてくるぐらいの一足飛びで跳びかかれる距離まで近付くと、小剣を両手で構え核のある場所と思われる場所へと跳びかかり、えのきを裂く様な感覚と共に小剣がエノキノコの内部へと入っていき、根元まで刺さる前に一瞬何か抵抗を感じたが、そのまま小剣を押し込むと何かを貫く感覚と共にエノキノコの体に小剣を根元まで突き刺し、エノキノコが一瞬震えた感覚を小剣から感じるとエノキノコの体から力が抜けたのだった。


 俺「悪いね持ってもらって」

 葵「気にしないで下さい、元の世界だったらこんなに持てなかったでしょうけどこの世界じゃ土門さんより私の方が力持ちですし全然余裕ですからね」

仕留めたエノキノコを背負った水宮さんは、実際重さを感じていないのか重さを感じない足取りで歩いており、俺は水宮さんの探知に引っ掛かった魔物でスライムであれば捕まえては背嚢に放り込み進み、エノキノコであれば狩らせて貰っていると、

 葵「止まって下さいっ、近付いて来る反応が有ります・・・、ラッシュボアはエノキノコが好物って話ですからもしかすると・・・」

水宮さんは背負っていたエノキノコを下ろすと近付いて来る反応の方向を警戒し、しばらくすると茂みを掻き分け地球の猪に似ているがそれよりも明らかに狂暴な見た目の長い牙を持つラッシュボアが現れ、匂いを嗅ぎながら現れたラッシュボアは目の前に立つこちらに気が付くと、フシュッフシュッと鼻息を荒げ今にも名前の通り突進をしようとした所で、

 葵「ウェポンクリエイトッ!」

ラッシュボアの突進よりも速く水宮さんが無手のままラッシュボアへと突進し、突進している途中で技名の様な物を唱えると無手だった手に薙刀の様な物が現れ、少し遅れて突進し始めたラッシュボアの突進をぶつかる直前にヒラリと回避し、すれ違いざまにラッシュボアの首へと薙刀を振り下ろすとラッシュボアは勢いのまま少し走った後に頭が落ち始め、頭が落ちると体は横倒れになるのだった。


 横倒れになったラッシュボアを空間収納と呼ばれるスキルで収納した水宮さんは、ラッシュボア寄せに背負っていたエノキノコも収納すると、

 葵「これで私の依頼は完了ですから、後は土間さんのスライムを探しながら街へと戻りましょうか」

 俺「空間収納は便利だね」

 葵「召喚された人は皆持っていたんですけど・・・、何で土間さんだけ無いんですかね?」

 俺「えっ?私以外全員持っているのか?」

 葵「太田君と細井君には聞けてないので分からないですけど、その他の同級生は全員持ってましたよ?」

もしかしてマイホームが空間に干渉する能力だから俺には無いのでは?と考えていると、

 葵「私達は何故か皆持ってますけどこの世界の人達だと空間収納は結構レア能力みたいですからね、土間さんはもしかするとマイホームが空間収納の上位能力な気がするので無いのかもしれませんね?」

考えていた事と同じ事を言われ、

 俺「そうだとすると家を買うまで私は便利なスキルは使えないのか・・・」

俺は一人になったタイミングでマイホームを使ってみないといけないなと思いながら冒険者ギルドへの報告の為に街へと帰るのだった。


 受付嬢「ミズミヤ様のラッシュボアの討伐及び納品完了により金貨2枚の報酬となります、状態が良かったのでこちらは追加の銀貨2枚です」

数日調べたこの国の平均的な宿屋での宿泊料金が1泊5銀貨位だったので約4泊分になる報酬を水宮さんは受け取り、

 受付嬢「ドマ様のスライムの捕獲22体分の報酬です、スライム1体に付き銅貨2枚なので銀貨4枚と銅貨4枚です、それとエノキノコ3体買取代金ですが、エノキノコ1体につき銅貨5枚なので銀貨1枚と銅貨5枚になります」

俺はギルドの受付嬢から今回の報酬を受け取ると、

 俺「このスライム捕獲って何時も出ている依頼みたいですけどそんなにトイレ用のスライムって必要なんですか?」

水宮さんの受けたラッシュボアの依頼と違いスライムの捕獲依頼は常に貼りっぱなしの依頼の為そんなに数が必要なのかと思い聞いてみると、

 受付嬢「スライムはトイレや下水処理以外に食料としても利用しているんですよ、生きている状態の時にそのままじゃ食べれた物じゃないコニャク芋を粉末にした物をある程度体に混ぜると核を潰しても液体にならずに体が残るんですよ、これを切ったりちぎったりした物を茹でたり炒めて食べるんです、向かいの食堂で食べれますよ?」

独身生活の長さから料理が趣味の一つである俺はスライムを食べると聞き興味が湧いていると、

 葵「お昼も食べていないし食べに行ってみる?」

 俺「そうですね、行ってみましょう」

水宮さんも気になったのか食べに行ってみるかと聞かれたので答えてギルドを出て、冒険者ギルドの向かいに建つ宿も経営していると思われる食堂へと入店すると、

 おばちゃん「いらっしゃいっ、宿泊かい?」

 俺「いや、食事をしたいんだが」

 おばちゃん「それなら空いている席に座りなっ」

宿の女将さんでもあるんであろうおばちゃんに言われ空いている席に座ると、

 おばちゃん「注文は?」

オーダー伝票を持って来たおばちゃんに聞かれ、元の世界じゃメニュー表があったけどこっちの世界じゃそんな物無いかと思いながら、

 俺「スライムを使った料理が食べたいんですけど・・・」

 おばちゃん「それならスライムスープでいいかい?スライム麺をスープに入れたもんだけど」

 俺「はい、それでお願いします」

 おばちゃん「あんたは?」

 葵「私も同じ物を」

 おばちゃん「あいよっ、スライムスープ二つねっ、他には何かいるかい?」

水宮さんは城に戻ればちゃんとした物が食べれるし、俺も最低限の食事は食べる事が出来るので、

 俺「大丈夫です」

 おばちゃん「あいよっ、ちょっと待っててくんなっ」

オーダー伝票に注文を書き込むとおばちゃんは厨房の入り口と思われる場所に入って行き、

 葵「あのスライムが麺になるって事は心太みたいな感じですかね?」

 俺「粉で粘度を高くしているみたいだから普通にうどんみたいな麺かもしれないよ?」

水宮さんとどんな麺か予想して話をしていると、

 おばちゃん「あいよっ、スライムスープお待たせっ」

ラーメン丼の様な器に溶けかけた野菜と半透明なスライム麺の入ったスープが俺と水宮さんの前に置かれ、

 おばちゃん「追加で何か必要だったら呼んでおくれ」

おばちゃんはそう言うと席から離れてちらほらと来出したお客さんの対応に行ったので、

 俺「それじゃスライム麺頂かせて貰おうか」

 葵「そうですね、頂きましょう」

俺達は目の前に出されたスライムスープへと手を伸ばすのであった。


 西洋的な街並みの見た目通り食事はフォーク、ナイフ、スプーンでするこの世界の標準通りあるのはこの三つなので、その中のフォークを二人共手に取るとスープの中に入れ麺を持ち上げようとするが、普段フォークで麺を持ち上げる事をしない俺達は苦戦しながらツルツルと滑るスライム麺を持ち上げ食べると、コニャク芋と言う芋はどうやらコンニャク芋のようで、コンニャク麺を塩味の野菜スープで食べるスライムスープの味に不味くは無いけど元の世界の濃い味を知ってしまっている俺達は、

 葵「コンニャク麺ですね・・・」

 俺「コンニャク麺だね」

 葵「薄味ですね・・・」

 俺「城の従業員食堂もこんな感じの味付けだったよ?」

 葵「そうだったんですか?私達に出されてる食事はちゃんと味付けしてあったので、この世界のご飯には不安は無かったんですけど・・・」

日本人としての癖で麺をずるずると啜りながら食べていると、そういえば麺を啜って食べるのってマナー的に良くないんだっけと思い周りを見回すが、特に私達を気にする他のお客さんは居らず、どちらかというと対面に座るこの国で見かけたことの無い黒髪の異国と思われる美人を窺う男共の視線があるだけで、啜る食べ方については特に何とも思ってなさそうだと思いながら元の世界よりも大分薄味のスライムスープを完食し、

 葵「ふぅ・・・ごちそうさまでした、ラーメン丼サイズにコンニャク麺が結構入ってるのでお腹には溜まりますね・・・」

 俺「そうだね・・・、今日はもうこれだけでいいかな・・・」

テーブルに置かれた伝票を取ろうとした所で、

 葵「私が払いますよ」

サッと水宮さんが伝票を拾い上げ、

 俺「いや・・・、年下に奢って貰うのは・・・」

 葵「私の方が報酬が高かったですし土間さんは少しでもお金は節約した方がいいのでは?土間さんも近いうちにお城を出て行かれるんですよね?その時の為にお金は貯めておいた方がいいんじゃないですか?」

確かにその通りなので甘える事にし、

 俺「すまないね・・・ありがとう」

水宮さんが伝票を手に持ち宿の受付と思われる場所に立つおばちゃんの元へ向かう後を付いて行くと、

 おばちゃん「スライムスープおいしかったかい?」

その質問に何とも言えない顔をする俺達に、

 おばちゃん「昔は塩も潤沢に使えたし胡椒も使えたんだけどね、今は胡椒なんかはお城に回っちまうから高くて手が出せなくてねぇ、どうしてもあんな味の無いスープになっちまうんだよ、小麦粉も中々手に入らなっちまってパンも高いからねその代わりがスライムさ、スライムスープ一つ銅貨5枚だから二つで銀貨1枚だよ」

水宮さんが空間収納から銀貨1枚を取り出し渡すと、

 おばちゃん「あんた便利な能力持っているじゃないか・・・、今後は人前で使う時は気を付けなさいよ?あんたみたいな美人で便利な能力なんか持ってると碌でも無い男共が寄って来るからね、お供ならあんたも気にしないと駄目だよ」

おばちゃんに言われ客席で飲んでいる冒険者と思われる人や商人ぽい人がこちらを窺っているのに気付いた俺達は、面倒事になる前に退散した方が良さそうだと支払いを済ませた俺達は足早に食堂を出て城へと向かうのだった。


 城へと帰る道中、

 葵「もしかして予想していたよりもこの国の状況って良くないんですか?」

 俺「どういう予想をしていたか分からないけど、まぁ典型的な良くない方の召喚先って感じだよ」

 葵「やっぱりそうですか・・・王様や王妃様の感じからそうじゃないかと思ってましたけど・・・、それにしてももしかして土間さんも結構オタク寄りの人ですか?」

 俺「若い時はそれなりだったけど最近は流行りの物は一通り見たり読んだりする程度だからオタクって言えるほどじゃないよ、働いていると全部を楽しむ時間が足りなくて買うだけ買って積んだままも多かったけど異世界召喚物を読んどいて良かったよ」

 葵「土間さんはお金が貯まり次第出ていくんですよね?」

 俺「そうだね、君達みたいに戦闘能力が高いわけじゃないから、国王の話が本当だとして魔王軍との戦いなんて勿論役に立てないし、水宮さんが今日倒したラッシュボア位でも私は苦戦しそうだしね、生きていくためにもお金を稼ぐ方法を何か見つけないと出ていくどころじゃないけどね」

 葵「大体こういう時は元の世界の物でお金を稼いだりするんですけど・・・、持っているものなんてこっちじゃ何の役にも立たないスマホ位ですもんね」

必要最低限触るだけにしていたスマホのバッテリー残量がもうすぐ無くなることを確認した水宮さんは画面を消すと、 

 葵「こんなの売っても大した金額にはならないでしょうし」

そんな事を話していると城に到着し門衛に城の中に入れてもらうと、

 葵「明日もギルドで依頼受けますよね?」

 俺「そのつもりだよ」

 葵「じゃぁ明日も一緒に行動しませんか?」

 俺「こちらは助かるけどいいのかい?」

 葵「まだ聞けてないことが有りますから、それじゃまた明日の朝」

城内に入った俺達はそれぞれの部屋へと帰るために俺はそのまま1階の部屋へ、水宮さんは3階にある個室へと帰っていくのだった。


 

 





 

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