358話 魔を祓うは召喚されし勇者たち4
「くはは!貴様らは強いみたいだな!であれば、こちらも本気を出さないのは無作法というものか! 」
「むっ、何かするつもりですね!」
「ん、やらせない!」
そうして四方八方から飛んでくる攻撃を捌いていたテンラさんでしたが、テンラさんはそう口にするや否や手に持っていた大剣を両手で構え始めます。
間違いなく、次の一撃で私たちの攻撃に対応するという魂胆なんでしょうけど……傷がつくのも躊躇わずに構えているため、妨害は難しそうですね?
だとすると、ここは何が起きてもいいように警戒しておくのが良さそうです。ラーニョさんも止めようとしていた動きを止めて散発的に攻撃を加えるのに止めているため、同じ思考に至ったのでしょうね。
「我が炎よ、激れ!〈ヴォルケーノ・ブレイカー〉!」
「むっ、範囲が…!?」
「なら…!」
テンラさんへと警戒を強めていた私たちは、テンラさんの身体に激しい炎が纏わりついたと思った次の瞬間に放たれた巨大な炎の斬撃を見て、即座に対応するために動きます。
「…助かった。ありがとう、レア」
「いえ、このくらいは大丈夫ですよ。それで、テンラさんの方は…」
…何故私たちが傷を負っていないのかというと、それは私のおかげと言えるはずです。
私は炎の斬撃がこちらへと放たれる前に触れた空気で膜を作ることで熱を防ぎ、その後方に土で壁を作ることで衝撃を防ぎました。
そしてさらに後方には具現化能力で生み出した鋼鉄の大盾を構えることで、先程の攻撃のほとんどを防ぎ切ったわけでもあるのです。
…しかし、今は一撃はかなり危なかったですね…?なるほど、炎剣という二つ名に違わないということですか。
加えて、咄嗟に手袋の能力を最大限活かして防がなければ今頃は丸焦げになっていたに違いありません。とはいえ、周りにいた幻影たちはその全てが焼き払われていますがね。
「今の何、レア!?」
「激しい炎の焼け跡、といったところか」
「うわ、酷い有様…!」
「むっ、新たな敵か?」
「あ、ルミナリア!それに皆さんも!」
私は盾に使ったものを全て消し去ってからテンラさんへとラーニョさんと共に視線を向けたのですが、そのタイミングで突如ルミナリアたちの声が聞こえてきました。
しかも私たちが戦っていた戦場を見てそう言葉を漏らしていますし、まあ普通に考えて驚きはしますよね。だって、今まさに私たちの周囲は全て焼き払われて煤けているうえ、辺りには炎の痕跡があるのですよ?
なので、それを見ればそうもなるというものです。…ですが、今ルミナリアたちがきてくれたのは好都合ですね!私たちの活躍によってテンラさんのHP馬すでに三割を削ることが出来てはいますが、倒すまでには行けてませんからね。
「三人とも、力を貸してください!この人は四天王の一人みたいなのです!」
「四天王!オッケー、私たちに任せて!」
「なら、私とルミナリアで前衛をしないとね!」
「では、私は後方からの支援に回るとしよう」
私のお願いを聞いたルミナリアとマキさん、ルーンさんはそれぞれが自分の戦い方で力を貸してくれるみたいなので、ここからは三人の力も貸してもらいますよ…!目指すは、この鬼人らしき男性の討伐、です!
「くくくっ、ここからは五人相手か。血が沸るぞ!」
「その余裕そうな表情、今すぐに変えさせてあげる!」
「敵なんだし、ここで倒させてもらうよ!」
そう声を漏らしているテンラさんに向けて駆け出していくルミナリアとマキさんですが、その二人の今の戦闘スタイルは近接タイプなんですし、ここはタンクとしては任せても良いかもしれませんね。
であれば、私は変わらずにラーニョさんと共に遊撃として動き、サポート兼攻撃といきましょう!それに、今の私なら空気などを介してユニークスキルの武技も楽に与えられるため、これを使わない手はありませんよね!
「ひとまずは、これですね!〈第二の時〉!」
「ちっ、これは貴様の仕業か。厄介だな!」
「おっと、よそ見は厳禁だよ!」
「隙だらけだね!〈ブレイク・スマッシュ〉!」
私は空気を介して動きを鈍らせる効果をテンラさんに与えた後、続けて攻撃も開始します。与えられる遅延効果の効果時間は十秒なので、これは基本的に維持しつつ戦闘をしていきますよ…!
「まずは、関節です!ふっ!」
「ん、私も!〈切り断つ糸〉!」
「私も攻めるよ!はぁ!」
「ふん、数が相手だろうと負けはせぬ!はあ!」
…私たちにも意識が向いていますが、近距離から攻撃をしているルミナリアとマキさんを捨て置くことも出来ないらしく、テンラさんの意識がそちらに向いているのが私にもわかります。
なので、私とラーニョさん、ルーンさんの三人は早速とばかりに関節を狙って攻撃を繰り出します。が、それに対してテンラさんはルミナリアたちの相手をしながらこちらにも警戒しているらしく、飛んでくる空気の刃や糸、カードによる攻撃を難なく避け、そのまま空いている左手から火の玉を連続した私たちへと飛ばしてきました。
「…ちっ、攻撃が返ってきましたか…!」
「ん、回避!」
「おっと、危ないね?」
なのですぐさま火の玉の軌道から逸れて避けた私たちでしたが……やはりそう簡単には倒せないとは思ってはいましたが、まさか反撃までする余裕があるとは…!ルミナリアたちの相手をしていてもこちらに警戒をしているとは、やはり四天王の一人、ということですね…!
けど、それによってルミナリアたちの方の意識は多少なりとも薄れているのか、近接スタイルの二人からの攻撃は当てれているため、悪い状態ではないのかもしれません。とは言っても、こちらが有利な場面ではないので警戒は怠りませんがね!
「全く、手強いったらありゃしないね!」
「ほんとだよ!やっぱり四天王なだけはあるんだね!」
「ふん、それが俺の役目なのでな!このまま始末させてもらうぞ!」
そんな攻撃を尻目に攻撃をしていてルミナリアとマキさんでしたが、それに対してテンラさんは手に持つ真っ赤な大剣を連続して振るうことで二人に向けて攻撃を繰り返しています。
が、ルミナリアとマキさんの二人はまさに息ぴったりな様子で、コロコロと立ち位置を入れ替わりつつそれらに対応しているため、多少の傷を負いはすれど以外にもタンクの役割は出来ているのがわかります。
〈第二の時〉の効果があるのだとしても、二人はよくタンクの真似事を出来ますね?まあ私にも出来るのですし、不思議ではありませんか。
…なんにせよ、攻撃をするならそれの隙を見て攻撃に移るのがよいですね。とはいえ、普通に攻撃するだけではさっきと同じになるので、ここはリキャストタイムの開けている武技で生み出した幻影に紛れて攻撃といきますよ…!
「ラーニョさん、ルーンさん、いきますよ!〈第零・第七の時〉!」
「ん、任せて!」
「私も力を貸すよ!」
そうして私は無数の幻影を生み出す武技を使用し、そのままラーニョさんとルーンの二人と共に幻影に紛れつつ、遊撃の役割として攻撃を開始します。
「ちっ、鬱陶しいぞ!焼き尽くしてくれる!」
「いいえ、させません!〈第十六の時〉!」
私は再び炎を飛ばされる前にとある武技を発動させます。すると次の瞬間、テンラさんが構えてきた左手に集まっていた魔力が一瞬にして霧散することで、一時的に魔法の使用が出来なくなったのを私はこの目で確認します。
今まさに私が使用した武技は"武技を当てた対象の魔法を十五秒間封じる"という効果であるため、それのせいで魔法の使用が出来なくなったのだとは容易に想像がつくことです。
これで、一時的とはいえ魔法による反撃を封じることが出来たので、今が攻め時です!いくら貴方が強力だとしとも、私たちの方が数で優っているのでこのまま決めさせてもらいます!
「なっ、魔法が使えない、だと…!?」
「隙だらけだよ!〈ライトニング・スラッシュ〉!」
そしてそれによって魔法が使えなくなったことにほんの一瞬ではありますが、テンラさんの動きが止まります。
もちろん、それを見逃すルミナリアではなく、雷光の如く踏み込むことでテンラさんの懐に潜り込み、そこから銃剣の能力を発動させつつ首狙いの一閃を繰り出します。
「ちっ!だが、それで止まる俺では…!」
「ふふん、これで終わりではないですよ!〈第十一の時〉!からの、土と風よ!」
「私もいく!〈縛りつける粘糸〉!」
そんなルミナリアの攻撃を咄嗟に首を逸らしすことで躱したテンラさんは、そのまま手に持つ大剣を即座に構えてからルミナリアへと振り下そうとします。
なので、私は即座に"足を五秒間縫い止める"効果の武技を発動させ、続けて手を触れることで武器に変えた空気と大地による攻撃と拘束を繰り出します。
空気による刃はルミナリアへの攻撃を逸らし、大地による波は拘束、といった具合です。それに、それと同時に使った〈第十一の時〉による効果もしっかりと発揮しているのもわかるため、数秒といえどテンラさんの動きは止まります。
加えて、そこにラーニョさんによる糸の拘束も混じったため、テンラさんの足はこれで完全に止まったと見て良いでしょう。
…だから、今が決めにかかる最大のチャンスです!効果が発揮するのはほんの数秒なので、この間に決めてしまいますよ!
「ここで決めるよ!〈拡大化〉!」
「くくっ、真っ向から来るか!いいぜ、相手をしてやるよ!〈バーン・スマッシュ〉!」
そうして最大のチャンスと見て、マキさんが自身の武器である大斧の能力を発動させ、それによって巨大化した斧がそのままテンラさんへと振り下ろされます。
それを見たテンラさんは今のままでは回避するのは困不可能だと判断したらしく、その言葉通り真っ正面からその攻撃に対して自身の全力をぶつけます。
…けど、私たちはそれを見ているだけではいませんよ!この戦闘ではパーティを組んでいるのですし、見ているだけで手を出さないわけがありません!
「…申し訳ないですが、ここで倒させてもらいますよ!はっ!」
「ん、ここで決める!〈切り断つ糸〉!」
「…確かに、ちょっとだけ罪悪感はあるけど、今が攻め時、だね!〈トリック・バースト〉!」
「なっ、それは卑怯だろ!?」
そしてそのような場面を見て私たちは少しだけ申し訳なりつつも、マキさんの攻撃に抗っているテンラさんを倒すためにと各々が自身に出来る攻撃を放ちます。
…それに思わずといった様子で言葉を返してきたテンラさんでしたが、それでも私たちの動きは止まることなく降り注ぎ、最終的にマキさんとの攻防で力負けしたのか一気に巨大化した斧が迫り、その身体へと直撃します。
…流石に、これは申し訳なく感じてしまいますね?いくら敵だとしても、力と力のぶつかり合いといった具合で攻防をしていたのを邪魔をしたようなものなので、少しだけ心苦しく思ってしまいます…!




