359話 魔を祓うは召喚されし勇者たち5
「…これ、倒せたのでしょうか?」
「うーん、ポリゴンにはなっていないけど…」
そうしてマキさんの手によって振り下ろされた大斧による攻撃で叩き潰されたテンラさんなのですが、土煙が収まる頃に見えていた様子を見ると、どうしてもそういった感想が湧いてきます。
何故なら、ついさっき大斧で潰されていたはずなのですが、テンラさんは未だにポリゴンとならずに地面へと叩きつけられた姿勢で固まっているのです。
…一応HP的にはゼロになっているのですけど、まさかこれでも倒せていない、とか…?
うーん、ルミナリアの言う通り、ポリゴンになっていないのでここはトドメを刺すしかない、ということですかね?
それとも、油断して近づいたところをグサリ、と言うこともありそうに見えます。…なら、ここは離れた位置から完全に倒すために私が攻撃をしましょうか…?
「…あ、ポリゴンとなっていきましたね」
「ふむ、心配しなくてもよかったのかもしれないね?」
「ん、単に消えるのが遅かった?」
「それかもしれないねー?なんにせよ、倒せたみたいだし、これで一安心だよ!」
そう考えて攻撃をしてみようとした私でしたが、そのタイミングで私たちの視線の先にあるテンラさんの身体がポリゴンとなっていき、そのまま消えて……いくかと思ったら、何故か私の方へとポリゴンと化したテンラさんの身体が引き寄せられてきました。
『プレイヤー名レアが吸収した生命を確認しました。スキル【死者の呼び声】が強化され、新たな僕を獲得しました』
しかも、それと同時にシステムアナウンスまで流れたため、私は思わず驚いてしまいます。
…いや、新たな僕ってなんですか…!?何やら私が生命とやらを吸収したことによってそれが増えたみたいですけど、この状況からして先程倒してポリゴンが私の方に吸い寄せられたことで獲得した……のかもしれませんね…?
…ということは、私の使える【死者の呼び声】でさっきのテンラさんを味方として呼べる可能性がありそうです…!なら、ちょうど戦闘も終わってゆっくりと出来るタイミングですし、早速試してみるとしますか!
「レア、なんだか楽しそうだけど……何かあったの?」
「えっと、実はさっきの人を私の僕として呼べるようになったみたいなのですよ。だから、ちょっと試してもいいですか?」
「そうなんだ!なら、見せて見せて!」
「ん、私も気になる」
「私も同じだ。どんな感じなんだろうね?」
私の言葉を聞いた皆さんは口々にそう言ってワクワクした様子なので、私はそれに答えるかのように頷いた後、早速【死者の呼び声】のスキルを発動させます。
そして私によってスキルが発動すると、それによってスキルの発動と共にすぐさま私の正面に見えている地面の一部が黒く染まったと思ったら、そこから先程も私たちが戦った倒したはずの鬼人の男性……テンラさんが姿を現しました。
「…ん?俺は、確か死んだはずだが…?」
そんな私の目の前に現れたテンラさんは目を開いたかと思うと、すぐに周りを見渡してそのようち口にしています。
…ふむ、この様子からして単なる木偶の坊ではなくキチンと自意識があるみたいですね?
私が先程も使っていたように、スキルによって生み出して操っていたアンデッドたちは今のテンラさんのように思考する頭などはなかったため、これは意外でした。
まあテンラさんは四天王の一人らしく、相応に強いのでそういった自意識があるのかもしれませんが……ま、システムアナウンスの通り特殊なモンスターだから、という可能性もなくはなさそうです。現にスキルが強化されたとも書いてありましたしね。
「ぬっ?お前らは…!」
「あ、気づいたね」
「まあ、目の前にいるしねぇ」
「ん、けど、敵意は感じない?」
「テイムモンスターみたいな扱いなのかな?」
そうして辺りを見回していたテンラさんは、そこからすぐに目の前にいる私たちに気づいたらしく、その顔に驚愕をあらわにしながら視線を向けてきます。
けど、ラーニョさんの言う通り敵意や殺意などは特に感じないので、ルーンさんの言う通り【死者の呼び声】によるテイムと似たものの可能性はありそうです。
…しかし、この後はどうすれば良い感じでしょうか?単に確認をしたかったからテンラさんを呼んだのですから、確認を済ませた今はすでに要件もないのですよね。
「…なるほど、今の俺の主人はあんたになった感じか」
「あれ、わかるのですか?」
「ああ、今まさに頭へそのことを焼き付けられたんでな。だが、そうか。俺の主人が魔王様からこんな小娘に、ねぇ」
…まじまじとこちらを見てそう述べてくるテンラさんでしたが、私はそれに苦笑を漏らします。
何故なら、魔王がどういった人かは知らないですが、それでも私と比べればそうもなるでしょうしね。しかも、私のスキルによって仕える対象も変わってしまったと言えるので、そうなるのも仕方ないとは言えるはずです。
それでも、少しだけ物申したいところではありますが!私だって好きでこんな姿をしているわけではないので、小さいからといって下には見て欲しくありません!
…まあこちらを舐め腐っているわけではないので、そこまで気にしなくても良さそうではありますが。テンラさんもさっきの戦闘を経験して、私の実力はわかっているのだとも容易に想像がつくので。
「なんにせよ、今の主人はお前なんだ。これからは、力を貸してやらんこともないぞ?」
「…魔王と戦うことになっても、ですか?」
「…そう言われると、手厳しいな。が、力を貸すのに異論はないぜ?」
そう言って自身の考えを伝えてくるテンラさんでしたが……やはり魔王との直接的な戦いには忌避感があるみたいです。
まあ元々その魔王がテンラさんの主人だったのですから、そうなるのもおかしくはないと思います。なので、魔王との対決の時にはテンラさんの力を借りることは難しいでしょうね。
けど、それ以外では力を貸してくれるのに異論はないみたいらしいので、そこだけはまだ救いだったと言えますね。
「んで、俺は何をすればいいんだ?魔王様についてでも話せばいいいのか?」
「そうですね。単に確認のために呼んだのですけど、いい頃合いなのでその魔王について教えてもらってもいいですか?」
「ああ、構わんぞ。んじゃ、まずは魔王様についてだが…」
私の言葉を聞いたテンラさんは、一度頷いてくれた後に自身の知っている魔王についての情報を話し出します。
「魔王様は、昔にとある神からの神託が授けられ、それのせいで今のように大陸を統べるために活動しているんだ。だから、俺たちのような魔物たちを率いてこの大陸への進行を繰り広げているわけでもあるな」
ふむ、とある神様からの神託を受け、このように魔物を連れて大陸を、私たちが召喚された国を襲おうとしていたのですね?
その神とやらが何者かはわかりませんが、おそらくは碌でもない神なのには違いないでしょう。私の知っている神様たちは、その誰もがこの世界の、ひいては人類のために動いたいたので、それを邪魔するかのような神様がいい人物なはずがありません!
…しかし、魔王の背後には神様の影があったのですか。ということは、この世界に来てすぐに発生したユニーククエストは単に魔王を倒せばいい、といったことでもないのですかね?
なんとなく敵なはずの魔王にも考えがあるように思えるので、これはこの先の攻略でも記憶に留めておいた方が良さそうです…!
「んで、そんな魔王様なんだが……魔王様は俺たちのような虐げられていた魔物たちを受け入れてくれた、まさに恩人ってわけでもあるのさ」
「へー、魔王も単なる悪ではないのかな?」
「当然だ!魔王様は慈悲深い方なんだ!俺たちみたいなのにも、優しくしてくれる方なのさ!」
…やはりそれを聞く限り、魔王が悪役とは到底思えませんね?クエストでは魔王を倒すのが目的のように感じましたが、これは魔王と対面した時にはしっかりと話し合いをするのも悪くはなさそう……ですかね?
「とまあ、俺が知っているのはこのくらいだな。なんせ、俺は戦闘にしか携わっていなかったからな!」
「…なるほど、ひとまずは情報ありがとうございます」
「とりあえず、情報には感謝、といったところかな?」
「ん、先に知ることが出来てよかった」
テンラさんの締め括った言葉を聞いて私とルーンさん、ラーニョさんはそう口にして情報提供に感謝をします。
テンラさんは戦闘要員だったからか詳しくは知らなかったみたいですが、それでも十分すぎる情報は教えてくれたので、私たち的にはとても助かりました…!
もしもそれを知らずに魔王を倒すために動いていたとすると、結構危ういかもしれなかったため、先に知れたのは本当に好都合だったことでしょう!
「んじゃ、俺への要件はこれで終わりか?」
「あ、そうですね、情報ありがとうございました!」
「おうよ!なら、また出番があればを呼んでくれ。協力くらいならしてやらんこともないからな?」
「はい、その時はまた!」
その言葉を合図として、テンラさんは全身がポリゴンとなって私の身体に吸い寄せられているので、テンラさんのような自意識のある僕だと自分の意思で戻ることが出来るようです。
…なんにせよ、これにて確認すべきことも終わり、戦闘も無事に済ませられたのです。なら、このタイミングで一度休憩としますか。時刻もすでに四時を過ぎているため、休憩にはちょうどいいと言えるはずです…!
「皆さん、時間もいい具合ですし、一度ここで休憩としませんか?」
「あ、賛成!お腹も空いちゃったしね!」
「私も賛成!激しい戦闘も無事に終わったんだから、ちょうどいいよね!」
「なら、私も異論はないよ。タイミングもベストだろう」
「ん、同じく。私もお腹ぺこぺこ」
「よし、決まりですね!」
私の提案に皆も賛成を返してくれましたし、この辺りで休憩と洒落込みましょう!幸いなことに、この木製の要塞のおかげで敵の心配もないですし、これならゆっくり出来ると確信が持てますからね!




