355話 魔を祓うは召喚されし勇者たち1
「…っと、皆さんは……まだのようですね」
あれからはお城の中にある訓練場を貸してもらって皆で思う存分戦い方の確認をした後、時間も良かったのでそのままログアウトをして現実世界でのやることを全て済ませてきました。
そして時刻もすでに十二時になっており、今は皆で揃って魔王討伐のための攻略を目指すといったところですが……私が口にしたように、まだ皆さんはログインをしてきていないみたいです。
まあ私が早かったのもあるので、それについては別にいいですね。…なら、待っているこの時間は改めてこの武器の確認をするとしますか。
私がお城の中にある宝物庫からいただいた装備とは、今まさに付けている手袋型の装備です。
【鑑定】スキルがないので詳しくは分かりませんが、この装備はロランさんの説明と確認した限りだと、どうやら魔力を具現化する効果を持ち、尚且つ触れた物全てを武器にも出来るという装備みたいなのですよ!
「…ふむ、午前中にも見ましたが、相変わらずすごいですよねぇ…」
私はあてがわれている部屋の椅子に座りながら、手袋の能力を発動させて魔力を武器の形へと変化させます。今回変化させたのは、これから魔王討伐までで愛用することになるだろうとわかる短剣の形です。
私の持つスキルは暗殺者系のもののため、間違いなくこれが主力の武器なるのは間違いありません。
加えて、魔力を具現化する力だけではなく触れた物全てを武器にも変えられるとのことだったので、こちらは周りにある全てが私の武器になるということでもあるのですよね。
午前中に使った時は周りに何もなかったのでそこまで試すことが出来ませんでしたが、これから目指す魔王討伐の合間で使う機会はあります……よね?まあこの能力的に地面や空気に触れるだけでもそれらが武器となる可能性もあるため、午後から攻略に向かう時はそれを試してみますか。
「…おっ?もう来てたんだね、レア!」
「あ、ルミナリア!」
そこからも椅子に座りながら手袋の能力の確認をしていると、そのタイミングでそんな声と共にルミナリアがログインをしてきました。
ルミナリアも私と同じように早めにゲーム世界へと帰ってきたみたいですし、やはりこの世界の攻略を楽しみにしたいたのかもしれません。わたしも少しだけワクワクしてしまっていますからね!
魔王討伐を目指すのがこの世界での目的みたいであり、その登場人物の代わりが私たちなのです。だから、私たちが体験するこの物語について楽しみに感じるのも仕方ありません!
普通なら過去の記憶を経験することも出来ないのですから、本当に私のユニークスキルである記憶を読み取る効果の〈第四の時〉は便利ですね…!
「おや、もう来てたんだね?待たせたかな?」
「ん、お待たせ」
「あ、もうみんな揃っている!お待たせしてごめんね!」
そんなことを考えつつもルミナリアと共に軽くおしゃべりをしていると、そこでルーンさんとラーニョさん、マキさんの三人がほとんど同じタイミングでログインをしてきました。
その三人はそれぞれが待たせてしまったことを申し訳なく感じているようですが、そこまで待ってないので大丈夫ですよ!それに集合時間も決めなかったので、このくらいなら別に待ったとは言いません!
「それじゃ、早速攻略を目指して行くとしよっか!」
「はい!では、出発ですね!」
「よーし、頑張るぞー!」
「実戦はまだだから、少しだけ緊張するね」
「ん、頑張る」
私たちはルミナリアの言葉にそれぞれがそう返した後、そのまま部屋から出た後にお城の外を目指して歩き始めます。
さて、この特殊な世界はどういったエリアになっているのでしょうか?私たちが見たのはまだお城の中なので、外のエリアについては未だに知らないのですよね。
なので、一体どんな景色が広がっているのか……私、すごくワクワクしちゃいます!
「…元の世界とあまり変わらない、のですかね?」
「かもねー、やっぱり街が近いからかな?」
そうしてお城の外に出てからそのまま街中を通って街の外までやってきた私たちは、その先に広がっていた光景を見て思わずそう呟きます。
何故なら、私が口にしたように、この世界の街の外は初期の街などと似たように草原が広がっていたからです。ルミナリアも言ってますが、やはり街の近くは基本的にそういったエリアになっているのかもしれませんね?
まあ普通に考えて、街のすぐ外に森や山といった住みにくい地形があるわけがないですね。なので、このようなエリアになっているのにも納得です。
「とりあえず、このまま進むことにしないかい?」
「ん、奥には森がかすかに見えてるし、そこを目指す?」
「そうだね、それが一番かな?」
ルーンさんとラーニョさん、マキさんの三人はその景色を見てそのように言葉を発したので、私とルミナリアもそれに賛同を返してからそのまま草原の先に見えている森を目指して歩き出します。
「…それにしても、魔王討伐は私たちだけで出来るのでしょうか?」
草原を通って森を目指して歩いている最中に、私は誰にともなくそう呟き、この世界における私たちの役割について不安を漏らします。
この世界に来た直後にユニーククエストの【魔を祓うは召喚されし勇者たち】が発生し、尚且つ王様からも倒すことを直接頼まれたため、魔王を倒しに動くのに不満はありません。
しかし、その魔王はどう考えても強敵なのは目にみえているため、私たちだけで相手を出来るのか不安に思ってしまうのも仕方ないと言えるでしょう。
加えてこれは本来の歴史ではないので、どうしても勝てるかどうかを悩んでしまうのも当然のことです。私たちは一応勇者として呼ばれたことにはなってますが、それでも大丈夫なのかはわかりませんからね。
「さあ、どうだろー?でも、魔王を討伐しないといけないことに変わりはないし、頑張るしかないんじゃない?」
「そうそう、悩んでも動かないことには変わらないし、進むしかないよ」
「ん、倒すために頑張るだけ」
「私も同じ意見かな?きっと、なんとかなるよ!」
私の発した不安を聞いて皆がそう口々に答えてくれますが、確かに倒せるように頑張るしかありませんか。
それに、ルミナリアも言った通り魔王を討伐しないことにはこの世界のクエストもクリアしないので、悩んでいないで歩くしかありませんね。魔王の居場所もすでに把握しているのですし、進むしかないのもあるので!
なんにせよ、私が不安を抱いていては皆の集中力を削いでしまうとわかりますし、気合いも十分なのがわかるのでここは私も同じように気合を入れて頑張らなくては…!
「…よし、とうちゃーく!」
「いやぁ、結構な距離がありましたねぇ…?」
そうした会話をしたところからも森を目指して歩き続けること一時間。ようやく森の入り口付近まで私たちはやってきました。
…しかし、ここまで来るだけでこんなに時間がかかるとは思いませんでした…!移動だけで一時間近くも使ったので、すでに今の時刻は一時と二十分近くとなっています。
とはいえ、今はまだお昼近くなので時間には余裕がありますし、このくらいならまだ問題はありませんね…!それよりも、今は気にしておかなくてはいけないことが一つだけあります。それは…
「…確か、この森の奥に魔王の配下が拠点を作っているんでしたっけ?」
午前中のうちに王様とロランさんの二人から聞いていた魔王の軍勢の在り方について、です。
魔王の本拠地である城はこの森を越えてさらに向こうへと行ったところに存在しますが、この森の奥には私たちが召喚された国を襲うための魔王の配下が拠点を作っているとも聞いていたのですよ。
なので、魔王の本拠地を攻めるついでにここを潰すのが優先事項であります。どうせこの森を抜けなくては魔王の元までは行けないため、結局はその拠点を消す必要があるので。
「うん、確かそのはずだよ。だから、まずはこの森を進んでそれを見つけるのが先、かな?」
「だとすると、敵には見つからないように動いた方がよいかもね」
「ん、それには同意。敵は多いと思う」
「確かに、わざわざ敵に見つかって戦闘をするのも、人数の差もあるし分が悪いよね!」
「では、決まりですね。ひとまずは隠れつつ敵の拠点を見つける、ということで!」
そうして森の入り口にてこの後の動きを決めた私たちは、そこから森の中へと足を踏み入れて敵の拠点を探すために進んでいきます。
とりあえずの目的はこれで決まりなので、ここからは森の中にもいるであろうモンスターには気をつけて進まないとですね…!スキルや武器がいつものとは違うとはいっても、すでに確認を済ませて闘い方も把握しています。
そのため、普通のモンスターくらいなら苦戦もせずに進める……はずです!それに、私たちはパーティも組んでいるのですし、ここで苦戦していては魔王の討伐なんて夢のまた夢ですよ!
「はぁ!」
「グギャ!?」
私は手袋をつけた右手を正面を払うようにして徐に振るうと、それによって触れた空気が刃の如く一気に放たれ、目の前にいたゴブリンの身体へと命中してその身体を一刀両断します。
「ギャギャッ!」
「ギギャアッ!」
「甘いです!ふっ!」
そして私の手によって切り裂かれてポリゴンとなっていく仲間を見て、怒ったように声をあげながらその仲間らしき二体のゴブリンは私に向けて飛びかかってきました。
が、もちろんそんなぬるい攻撃が私に当てられるはずもなく、私は後方に下がりながらその攻撃を避けた後にすぐさま両手を地面へとつけます。
すると、それによって地面から土の槍が一気に飛び出し、空中にいた二体のゴブリンの胸元を見事に貫くことで最初に一匹と同じようにポリゴンへと変えることに成功します。
「よし、倒せましたね!後は……っと、もうあちらも終わるところですね」
私はポリゴンとなって消えていくゴブリンを尻目にルミナリアたちの方へと視線を向けますが、そちらも私と同様に戦闘が無事に終わるところでした。




