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353話 記憶の世界

「レアー!やっと追いついたよ…!」

「レアちゃん、速いよー!」

「やっぱりスピードタイプなんだね、レアさんは」

「ん、追いつくのに時間がかかった」

「あ、皆さん!来たのですね!」


 あの後は視界に映ったあるもの(・・・・)を調べるためにこの空間内を散策していたのですが、そのタイミングでルミナリアたちもマップを見て私の元までやってきたのか、そう声をかけながら遺跡内に入ってきました。


 皆さんがここまで来るのは遅かったですが、私が鼠を追いかけてかなりの距離を走ってきたのでそれは仕方ありませんね。むしろ、その距離を追いかけて私の元までやってきたのは速い方だとは思います。


 おそらく数キロはあったでしょうし、皆さんの速度もそれなり、ということですね。まあその間にある程度の調査は終わらせることが出来たので、ちょうど良いとは思えます。


「それで、レアはここで何をしてたの?」

「…多分、これを見ればわかると思いますが、これの調査をしていたのですよ」


 私はルミナリアから問われた質問に対して指を指してある方角を示しながら、そう答えます。


 …私がこの遺跡の中で何をしていたのかというと、この遺跡内に描かれている一つの壁画を見て、それの調査をしていたというわけなのです。


 その壁画とは、数名の人類と思われし人たちと一人の禍々しい人物との戦闘風景らしきものが描かれており、まさに勇者対魔王、といった想像がつきました。おそらくは、この遺跡にある点からしても過去にあった何らかの出来事、というものだと私は睨んでいるのですよね。


 そしてこの遺跡を調べた感じからすると、その壁画は遥か昔に行われていたとされる"勇者召喚"というもので呼ばれた勇者と魔王との戦いとはすでに把握することも出来ています。が、知ることが出来たのはそのくらいであり、具体的な内容については調べられていないのが現状でもありますね。


「これは……戦闘風景、かな?」

「何となく勇者対魔王にも見えるね?」

「ん、まさにファンタジー?」

「ルーンさん、ラーニョさん、それ正解です。これは過去にあった勇者召喚の出来事らしいのですよ。まあ、それ以外はわかってはいませんが」


 ルーンさんとラーニョさんの言葉にそう返した私なのですが、本当にこの壁画はそれにしか見えませんよね。私が伝える前から皆さんも何となくそうだと想像が出来ていたようですし、この壁画はわかりやすい過去といっても差し支えありません。


 私が調べた範囲でもそれが正解だとはわかっているため、これは間違いなく過去にあった出来事で違いはないはずです。…それにしても、この世界の過去にはそういった勇者召喚が行われていたのですね。


 ゲーム世界だからこそ、そういったものには少しだけ驚いてしまいます。普通のゲームであれば特に気にすることでもないのかもしれませんが、このゲームは世界も私たちと同じように生きているといってよいのです。


 なので、勇者召喚という体で人が呼ばれているというのにはちょっとだけ驚きを隠せないのも当然です。この世界は本当にゲームなのか疑問に思ってしまうほど作り込まれており、本当にワクワクしますよね!


 とはいえ、私が把握出来たのもそのくらいであり、他の情報を手に入れることは出来ていませんが。あ、それなら私の持つ〈第四の時(フィーア)〉で壁画を撃ってこの記憶を読み取るのがよいですかね?


 この武技は"武技を当てた対象に込められた過去の記憶や体験を知る"というものなので、このタイミングで使うのがベストなはずです…!


「うーん、見ただけじゃなんとも言えないねぇ」

「だね。他にも描かれているのならよかったんだけど…」

「それなら、私のユニークスキルの出番です!」


 私は悩ましげに声を出しているルミナリアとマキさんにそう言葉をかけ、私の持つスキルについて伝えます。


 これを使えば、間違いなくこの壁画についての情報を記憶世界にて読み取ることは出来るはずなので、見ただけではわからない今の状況にはピッタリでしょう!


 そのため、それを使わないかとスキルについて教えて相談をしましたが……皆さんはどうですかね?これを使っても特に困ることや不都合はないはずなので、これを使うのはベストだとは思いますけど…


「へー、レアのユニークスキルにはそんなものがあったんだ!いいよ、私は賛成ー!」

「私も賛成!レアちゃんのスキルを頼りにさせてもらうのがいいよね!」

「同じく賛成だ。聞く限りは私たちが不利になることもないのだろう?それなら、否定する理由もないしね」

「ん、私も同意見」

「よし、決まりですね!」


 私の提案した案に皆さんも賛成を返してくれましたし、早速それを使って皆で記憶を読み取るとしますか!


「ではいきますよ、皆さん!〈第零(ヌル)第二の時(ツヴァイ)〉、〈第四の時(フィーア)〉!」


 そうして皆に一声かけてから私はユニークスキルの効果を範囲化した後、そのまま記憶を読み取ることの出来る〈第四の時(フィーア)〉を目の前にある壁画目掛けて撃ち込みます。


 すると、普段から本の記憶を読み取っていた時と同様に私だけではなく、周りにいたルミナリアとマキさん、ルーンさんにラーニョさんの合計五名は記憶世界へと意識が移っていきました。




『ユニーククエスト【魔を祓うは召喚されし勇者たち】が発生しました』


「…おお、成功だ!」


 そして〈第四の時(フィーア)〉によって意識が記憶世界へと移ったと思ったら、そのタイミングで聞こえてきた声と同じくして私たちの視界が開けます。


 視界が戻ったのですぐさま周りに視線を走らせてみると、どうやらそこは大きめな玉座の間らしく、私たちから少し離れた場所には複数の人間らしき人たちとその背後にある玉座に座っている一人のお爺様が見受けられました。


 …玉座があることもそうですが、周囲を確認した限りここはどこかの国のお城の中……なのかもしれません。

 そのうえユニーククエストの発生を促すシステムメッセージも流れたため、この記憶世界は前にも行ったことのある特殊な世界なのだともわかりますね?


 …しかし、まさか壁画の記憶を読み取るのではなく特殊な世界に招かれるとは……ということは、今まさに発生したクエストをこの世界にてクリアすればよい、ということですかね…?


「どうやら、上手く召喚が出来たようだな?」

「ええ!これで、なんとかなりそうですな!」

「えっと、あなた達は何者なんだい?」


 そんなことを考えつつも私はこの玉座の間を見渡していると、そこでルーンさんがそのように声に出しながら私たちのことを見つめてきている団体さんに向けてそう問いかけます。


 確かに、まずはそれを聞くのが先決でした…!一応ここがお城の中だとは今も視界に映る景色からわかりましたが、それでも私たちを召喚?したらしいこの人たちが何者かはまだわかっていませんしね。


 なので、ルーンさんの疑問も当然ですし、私も同じ考えです。はてさて、この人たちはどういった人たちなのでしょうか?

 発生したユニーククエストのタイトルと私の持つユニークスキルでこの世界にやってきたことを考えるに、この人たちはまず間違いなく勇者召喚についての関係者だとは容易に想像がつきますが…


「おっと、失礼しました。私はロラン、この国の宮廷魔導士の立場についている者です。そしてこちらの方が、我らの主人でありこの国の王、ウルフガルド・リアム・ノーベラル様でございます」

「余がこの国、ノーベラル王国の三代目国王、ウルフガルド・リアム・ノーベラルである。今まさにお主たちを召喚した者でもあるな」


 ルーンさんの投げかけた問いかけに対してそのように返してきたロランさんと王様でしたが……ふむ、やはりこの人たちは勇者召喚に関わる者であり、ここは私たちが勇者として召喚された世界でもあるようです。


 私たちは、私のユニークスキルによってこの世界へとやってきましたが、まさか私たちがその立場になるとは……予想では過去に勇者召喚として呼ばれた人たちの冒険などを記憶として読み取れるのかと思ってましたが、それはてんで合ってなかったらしく、私たちが勇者として行動する結果のようですね。


 …つまり、私たちがこれからこの人たちに頼まれるのは魔王の討伐、なのかもしれないと私は予想します。

 勇者召喚があったのは私たちの元いた世界では過去の出来事とはいえ、私たちが体験しているこの特殊な世界は今まさに世界として動いているのです。


 であれば、過去だからといってそれがなくなるわけでもないのもしれませんしね。

 加えて、それから考えるに私たちがやってきたこの世界は過去の記憶の再現の可能性も大いにあります。それに、私たちが話しているこの人たちはきちんとこの世界で生きているのだともわかるため、私たちでそれをこなすしかないのでしょう。


 あの壁画では勇者と魔王の戦闘が描かれていたため、この予想は確実だとは思いますが……ま、目の前に私たちを召喚した人がいるんですし、直接聞けばいいですね。


「それで、私たちに何か頼みでも?」

「そうだ。お主たちには、この大陸を滅ぼそうとする魔王を倒してほしいのだ」


 ルミナリアがルーンさんに続くようにして王様たちへと問いかけをしますが、それに答えた王様の言葉は私の想像通り魔王の討伐のために力を貸してほしいといった具合のようでした。


 なるほど、やはりこの世界は過去の出来事が再現された世界で間違いなさそうですね。

 そうは言っても、本来の過去で呼び出された勇者たちとは違って私たちが勇者の変わりなので、多少の変化があるのには違いありませんが。

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