352話 鼠
「よし、メンバーも揃ったし、早速出発しよっか!」
「わかりました!」
「オッケー、頑張るよ!」
「私も賛成だ。足は引っ張らないように気をつけるね」
「ん、戦闘は任せて」
そうしてルミナリアがあげた声を合図として、私たちは早速とばかりに攻略を目指して動き出します。…あ、その前にどこの攻略に行くのかを聞いておかないとですね。
流石にそれを聞かなくてはどこに行くかもわからないので、逸れてしまいますからね。ルミナリアからはまだ聞いてませんでしたし、一体どこを目指すのでしょうか?
「ルミナリア、今日の攻略はどこを目指すのですか?」
「あ、言い忘れてた!えっとね、今日は"魔歴の遺跡群サーラ"の攻略をしようと思ってたんだ!」
ふむ、今日の目的地はあの遺跡が立ち並ぶエリアなのですか。私もあそこの攻略は未だにしていなかったので、これはいい機会かもしれません。
あのエリアに最後に行ったのは結構前ですし、探索もそこまでしてなかったので皆と攻略にいけるこの時間で行くのはベストだとわかります!今回は私一人でもないので、攻略を目指すにはピッタリですよね!
「あそこのエリアの攻略ですね。わかりました、では早速そこまで向かいましょうか」
「うん!じゃ、転移ポイントでひとっ飛びだよ!」
そう言ってルミナリアは転移を行ってこの場から消えてしまったので、私たちもそれに続くようにして転移を行うことで魔歴の遺跡群サーラの転移ポイントまで向かいます。
今の時間はまだ九時を少し超えてくらいであり、攻略に使える時間は大いにあります。それに、ここには相応の実力者であるメンバーが揃っているのですから、このエリアの攻略も問題なく出来ますよね?
「よし、とうちゃーく!」
「何度見ても、この光景には驚くよねぇ」
「ん、同感」
「私も同じ!こんな景色、リアルでもそうそうないよね!」
そうして五人揃って『魔歴の遺跡群サーラ』までやってきた私たちでしたが、転移が済むなりこの場にいる皆さんは口々にそう感想を述べています。
まあそんな皆さんの反応も当然かと思いますけどね。マキさんも言っている通り、様々な遺跡が立ち並ぶ光景なんてそうそうお目にかかるものでもないはずですし、この光景を見てそう呟くのも仕方ないと言えます。
私だって、初めて見た時は少々驚きましたもん。こんな遺跡がこの世界にはあるのか、っといった具合にですね!まあこの世界も私たちの過ごしている現実と同じように生きてきているようなので、それだけ歴史があるのかもしれません。
「それじゃあ、早速このエリアの攻略と行こっか!」
「ですね!」
そのようなことを考えていた私でしたが、そのタイミングであげられたルミナリアの声を聞き、それに賛同を返してから私たちはこのエリアを歩き始めます。
…ここのエリアは遺跡が立ち並ぶエリアとなっているので、攻略をするのならそれらを調べつつ進むのが良さそうですよね。この遺跡にはどういったものがあるのかなども未だに知ってないため、一体どんな歴史があるのでしょうか?
まあ今は攻略をメインとするので、調査は後にするかもしれませんけど。とは言っても、調べられる範囲では調べますが!
「…むっ?ルミナリア、何か魔力の反応を感知しました!」
「ん、魔力ー?」
そうして時折遭遇する様々なモンスターを倒しつつこの遺跡エリア、魔歴の遺跡群サーラを進んでいた私たちでしたが、そこでふと私の持つ【魔力感知】スキルに反応が現れます。
反応の大きさからして、おそらくは何らかのモンスターのようには感じますが……このエリアにいるモンスターの反応とは少し違うように思えるのですよね。なので、もしかするとレアモンスターの可能性もある気がしなくもないので、ここはちょっとだけ寄り道してみますかね?
「そうだね、そのくらいなら別にいいんじゃない?」
「ん、私も反対意見はない」
「私もいいと思う!もし本当にレアモンスターなら、それは倒すのに越したこともないしね!」
そう伝えた私の言葉にルーンさん、ラーニョさん、マキさんの三人は揃って私の意見に賛成してくれました。まあ皆さんもレアモンスターをわざわざ見逃すわけがないですし、その言葉は当然かもしれませんね。
だって、レアモンスターはそれだけ貴重なのですよ?だとすると、偶然見つけたこのタイミングで放置して前に進むわけがありません!
「皆もそう言ってるし、ここはそれを倒すために動くとしようか!」
「わかりました!では、案内しますね!」
私は皆を代表するかのようにして言葉を発したルミナリアの返事を聞き、早速とばかりに皆を連れて魔力の反応があった方角へと進んでいきます。
…さて、私が感じた魔力の反応の主は一体何者ですかね?無数の遺跡が建ち並ぶ場所にて見つけた反応なので、間違いなくこの遺跡エリアでのレアモンスターだとは予想がつきますが……流石に反応を感じただけではわかりませんか。
まあ見つければわかるので、まずは反応があった方角へと行ってこの目で確かめれば良いでしょう。レアモンスターなら、この手で倒して素材にさせてもらいますよ…!
「…見つけました、アレです」
「ふむ、鼠……といったところかな?」
「ん、小さい」
「あれがレアモンスターなのかな…?」
「んー…珍しいモンスターには見えないね?」
それからも私を先頭にして魔力の反応が確認出来たところまでやってきたのですが、そんな私たちの視線の先には一体のモンスターらしき姿が映りました。
が、そのモンスターは皆さんも口にしているように、単なる鼠型のモンスターにしか見えません。…間違いなくこの鼠から魔力の反応が発せられているはずですし、今もそれが私の感覚に伝わってきます。
しかし、どこからどう見てもそこら辺にもいるような普通の鼠にしか見えませんね…?
あ、鑑定をしてみればわかりますか。私には【鑑定士】スキルがあるので、ここで使わなくてはどこで使うというのですか!
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サイン・ラット ランク C
街中の暗いところや洞窟などで、主に生息している鼠の希少種。
普通の鼠とは違って群れず、かつ戦いを好まない性格をしており、その過敏な動きで外敵から逃げる。敵意にも敏感であるためそう簡単に倒すことは出来ないが、もし倒すことが出来たとすれば隠していた財宝を手に入れることが出来るであろう。
状態:正常
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ふむふむ、この鼠はサイン・ラットといって、戦いを好まない性格をしているのですか。しかも、倒せれば財宝を手に入れられる可能性があるとするなら、これは是非ともこの場で倒して獲得したいですね…!
けど、過敏な動きと敵意に敏感とも載っているので、そう簡単に倒すことは出来ないとも容易に想像がつきます。…だとすると、倒すのならば気配を殺して一撃で、ですかね?
「…とりあえず、倒してみる?」
「…そうですね、それが一番……でしょうか?」
私はルミナリアの提案にそう返しましたが、別にモンスターを倒すのに悪いことはないのでそれでいいはずです。
いくら見た目が普通の鼠だとしても、私の感じた反応や鑑定の説明を見るに、私たちの視線の先にいる鼠は間違いなくレアモンスターに違いはありません。
そのため、ルミナリアの言う通りここで倒してしまってもよいですよね…!モンスターならいくら倒したところで責められるわけでもないため、レアモンスターと判定出来るあの鼠はここで倒すとしましょう!
「それじゃ…」
「きゅっ!」
そうコソコソと言葉を交わしてから早速とばかりなその鼠に向けて攻撃を開始しようとすると、次の瞬間には鼠がこちらに気づいたらしく、鑑定の説明通り思ったよりも素早い動きで逃げてしまいました。
…いや、速くないですか…!?いくら鑑定での説明を見て素早いとはわかっていましたが、それでもそのスピードには少々驚いてしまいます。
しかも攻撃をしようと意識したからかこちらにも気づかれたので、やはりこれまた敵意に敏感というのもその通りみたいです。
というか、逃げられてしまったとはいえ、このままみすみす見逃しはしませんよ!私のスピードはプレイヤーの中でもトップなはずなので、見失う前に追いかけます!
「追いかけます!〈第一の時〉!」
「ちょ、レア!?」
「レアちゃん…!?って、速…!?」
私は皆さんへと一度でも声をかけた後に動きを加速させる武技を自身へと撃ち込み、それによって生まれたスピードを活かして私たちから逃げていく鼠の後を追いかけていきます。
「待つのですよー!」
「きゅぅ!」
私は加速した動きのままに逃げていく鼠、サイン・ラットを追いかけているのですが、その鼠はなんと私が普段からしているようにして遺跡が立ち並ぶこのエリアの壁をも足場にするようにしてどんどん逃げていきます。
…この鼠、レアモンスターだからなのか、かなりスピードが速いですね?私も動きを加速させているのにも関わらず同じくらいのスピードなので、そう簡単には追いつくことが難しいのがわかります。
うーむ、これはどうしましょうか?このままでは追いつくことも、ましてや捕まえて倒すことも出来ませんが…
「…ちっ、見失ってしまいましたか」
そんなことを考えつつも鼠を追いかけ続けていた私でしたが、鼠が遺跡に飛び込んだのを確認した後に続いてそこに入ると、そのタイミングで鼠の姿を見失ってしまい、まんまと逃げられてしまいました。
…せっかくユニークスキルも使ってまで追いかけたのに、逃げられてしまうとは何とも情けないですね。しかもユニークスキルで加速した私と同格と言えるスピードとは、初めて見たかもしれません。
今まで戦ってきたモンスターたちはそのどれもが私よりも遅い敵が多かったため、これは少しだけ慢心していたみたいです。
これから先でも今の鼠と同じように私よりもスピードで勝る敵が現れる可能性があるので、油断はしないで励まなくては…!
「とりあえず、皆さんの元に戻ります……ん?」
そうして手に持っていた武器をインベントリに仕舞って早々にこの場を去ろうとしたのですが、その時に私の視界にふと気になるものが映りました。




