351話 攻略のお誘い
「…グルゥ」
「むっ、まだ倒せてなかったのですか…!?」
「……!」
「キュゥ…!」
私が肩と首元に移動してきた二人を優しく撫でていると、そのタイミングで突如白狼の声が私の耳に届きます。
なのですぐさまそちらへと視線を向けたのですが、そこには何とHPが全て無くなったのにも関わらず私の正面にて立ち上がっている白狼の姿がありました。….まさか、これでも倒せていなかったということなのでしょうか…?
いえ、この目には確実にHPが無くなっているのが見えていますし……おそらくは、最後の足掻き、とか…?とすると、この白狼は最後の力で私たちを倒そうとしているのかもしれませんね?
…しかし、目の前にいる白狼からは先程までぶつけられていた殺意や敵意などを感じないため、それは違う可能性もありますが…
「グゥ、アオオオオンッ!」
『ファーナ雪森のエリアボス〈プライド・ウルフ〉を討伐しました』
『ファーナ雪森のボスを討伐した事により、次のエリアが開放されました』
両手の武器を構えつつそのようにして警戒を最大まで強めていた私たちでしたが、白狼は傷だらけの身体のまま頭部を天へと向けて遠吠えを上げました。
すると、それと同時に白狼の全身がポリゴンとなっていき、さらには討伐完了のシステムメッセージも流れました。
…ふむ、どうやら最後の足掻きではなく、最期まで誇り高く生きる、といったものだったみたいです。【鑑定】にも載っていましたが、一匹狼とはいえまさに狼の王、ということなのだとわかります。
最期までかっこいい終わり方ですねぇ…?鑑定の説明通り王と呼ばれるだけはあるのか、倒したこちら側もその誇り高さには敬意を示してしまいます…!
ゲーム世界とはいえど、この世界は文字通り生きているのです。なので、この白狼もこれまでに様々な経験があったのかもしれません。
…まあエリアボスだったのでそうした過去もなく生み出された可能性もなくはないですが、そう思ってしまう程には気高い最期だったのですよね。
「…何にせよ、これで次のエリアに進めるみたいですし、ここにいつまでもいないで先を目指すとしますか!」
「……!」
「キュゥ!」
私は流れてきたシステムメッセージをチラリと確認した後、そう声に出して肩と首元にいる二人を連れながらボスエリアの先へと歩いていきます。
さて、雪原都市ノースの北にあったこの森のエリアは攻略出来ましたが、この先のエリアはどうなっているのか…!今まさに向かっているところではありますが、新しいエリアに向かうのはやはりワクワクしますよね!
まだ見ぬ景色やモンスター、あるいは様々な素材にフィールドなどなど、次のエリアには何があるのか実に楽しみに感じちゃいます!出来ることなら、私がまだ見たことのない何かがあると良いですが、はてさて…!
「…よし、今日は何をしましょうか」
そうしてあの後はファーナ雪森の北に広がるエリア、『フェルナード氷山』という名前の山エリアの前まで到着しました。
が、その日は時間も微妙だったのですぐそばにあった転移ポイントを通って街まで戻り、その日はログアウトをしてゲームをやめたのです。
そして今は、その日から時間が大いに経過しており、学校のあった日から一日飛んで土曜日となっており、今の時間は買い物を済ませてきたおかげで午前の九時です。そのため、ゲームをしていられる時間はたくさんありますが……ふむ、今日は何をして過ごしましょうか。
一応昨日のうちに軽くフェルナード氷山の散策はしておいたとはいえ、流石に攻略までいけるはずがありません。日中には学校がありますからね。ので、再びそこに向かって攻略を目指すのも悪くはありませんが…
「…別に急がないといけない理由もありませんし、今日は違うことにしますか。んー…なら、他のエリアの攻略を……っと、メッセージが届きましたね?」
そうやることを決めかねていた私だったのですが、そのタイミングで私に向けて一通のメッセージが届きました。確認してみると、送ってきた人はルミナリアらしく、メッセージには久しぶりに一緒にエリア攻略に行かないか、といった内容が書かれてたのです。
確かに、ルミナリアと最後に会ったのはかなり前ですし、イベントでも出会うことがなかったのでここしばらくは顔も合わせていませんでしたね。
…それなら、そのお誘いは受けさせてもらうとしますか!私も友人であるルミナリアとは一緒に動きたいので、誘ってくれるのはこちらとしても嬉しいため、今日はルミナリアと共に行動をするとしましょう!
「では、メッセージを返して……っと、もう反応が返ってきましたね?ふむ、集合場所は初期の街の広場、ですか」
私は返信をするや否や帰ってきたメッセージを見て苦笑しつつも、そのメッセージに書かれていたように集合場所らしき初期の街の広場へと転移によって向かいます。
「えっと、ルミナリアは……あ、いましたね」
そうして初期の街の広場前までやってきた私はそのまま周囲を見渡してルミナリアの姿を探していると、すぐにルミナリアの姿を発見することが出来ました。
ルミナリアは私と同じように最後に会った時からも様々な冒険をしていたのか、その身に纏っている装備からは一級品の風格が出ており、さらに強くなっているのがひしひしと伝わってきます。
まあここしばらくは会ってなかったのですから、その間にルミナリアも成長しているということでしょう。とりあえず、今ここで見ているだけではなく声をかけるとしますか。いつまでもここにいても意味がありませんからね。
「ルミナリアー!」
「お、レア!待ってたよー!」
そんなことを考えつつも私はルミナリアに近づきながらそう声を上げると、流石のルミナリアも気づいたのか、そのような反応と共に私に向けて言葉を返してきました。
「ルミナリア、今日はどこのエリアを目指すのですか?」
「あ、ちょっと待ってね!今回はレアの他にももう三人呼んでいるんだ!」
ふむ、今から行くエリア攻略には私の他にも呼んでいる人がいたのですか。ルミナリアの交友関係は知りませんが、私以外にも仲のいい人がいたのですね?
まあルミナリアと一緒に行動することは少なかったので、その間に寛解を深めたのだとはわかりますが。
しかし、ルミナリアが呼んだ三人とは誰なのでしょうか?ルミナリアと関わりがあるマキさんなら、呼ばれているかもという予想は付きます。が、今回呼んでいるのは三人とのことなので、他にもフレンドがいるみたいではありますが…
「お待たせ、ルミナリア!待たせたかな?」
「あ、マキ!ううん、そこまで待ってないから大丈夫!」
そう私が考えていると、そこで私たちへと投げかけられた声と共に一人の女性が近寄ってきました。…まあルミナリアの言葉からもわかるように、その女性とはルミナリアのフレンドであるマキさんですが。
ふむ、やはりメンバーの一人はマキさんで当たっていたみたいですね。ということは、残りの二人は私の知らない人の可能性が高そうです。
…しかし、ルミナリアはあれからもマキさんとは関係を維持していたのですか。私はマキさんとはしばらく会う機会がなかったですし、もう少しフレンドになった人とは交友を深めた方がよいかもしれません。
「マキさん、お久しぶりです。元気でしたか?」
「あ、レアちゃんも来てたんだ!うん、元気だったよ!イベントでは大活躍だったんだってね?」
「ふふ、まあそれなりには、です」
近寄ってきたマキさんにそう返した私でしたが、マキさんもそんな私を見てニコニコとしながらそのように返事をしてくれました。
というか、イベントでの私の活躍はその口ぶりからして知っているみたいです。まああれだけの活躍をしたのですから、お互いの陣営のプレイヤーにはバレているのには違いありませんか。
「おっと、待たせたかな?」
「ん、来た」
「おっ、二人もきたね!」
そこからもマキさんを含めた三人で他愛ない会話をしていたところ、その合間で私たちに向けて二人の女性からの声が再度かけられました。
が、ルミナリアがその声にはいち早く反応を返し、その二人へと視線を向けます。
もちろん私とマキさんもすぐさもそちらへと振り向いたのですが、なんとそこには私がイベントでも戦ったことのある二人、ラーニョさんとルーンさんがこちらへと歩いてきたところだったのです。
…まさか、ルミナリアがこの二人とも交友を持っているとは思いませんでした…!この二人は間違いなくユニークスキルを持っているのは確実なため、かなりの実力者ではありますが……一体どこで知り合ったのでしょうか?
「おや、レアさんも来てたのか。ルミナリアのフレンドかな?」
「その通りではありますが……二人もルミナリアのフレンド、でしょうか?」
「ん、そう。イベントでの交友でフレンドになった」
私の問いかけに対してそう答えてくれたラーニョさんでしたが……なるほど、あのイベントの時にフレンドになったと。それなら、一体どこで知り合ったのかには納得です。
ルミナリアは誰とでも仲良くなれる性格なので、そうなるのも分かりますね。私だって、ルミナリアのそういうところに惹かれたと言っても過言ではないので!
何にせよ、これにて今回のエリア攻略に向かうメンバーは揃ったと見て良いでしょう。集まっているのは私とルミナリア、マキさん、そしてルーンさんとラーニョさんの五人なので、パーティ的にも問題はなさそうです。
とはいえ、ポジションに関して少々配分が悪そうですけど。なにせ、近接スタイルはマキさんだけであり、中距離は私とルミナリア、ラーニョさんの三人です。そしてルーンさんは後衛と言えるため、中距離が偏っている結果となっています。
…ま、それでもエリア攻略くらいは大丈夫ですか。流石にワールドモンスター級の相手を、とすれば危ういですが、そこまでの強敵とは戦うつもりはないですからね。




