348話 ファーナ雪森
「…さて、今日は何をして過ごしましょうか」
そうしてレピオスさんを連れて教会まで向かい、そこで祈りの場所をリンネさんによって作ってもらったところから時間は経過しており、今はその次の日である水曜日です。
そして、すでに学校からも帰ってきてゲーム世界へとやってきたわけでもあります。
そんなゲーム世界にやってきたところではあるのですが、そこで私は何をするかを悩んでいるのですよ。何故なら、今すぐにやるべきこともすでになく、特にこれといってやりたいこともないからです!
なので、この時間は何をして過ごすかを悩んでしまいますが……そうですね、今日は初期の街から北にある雪原都市ノースから先のエリアの攻略を目指してみますか。
ワールドモンスターの一人である人業のメラスクーナさんは、前に聞いた限りだと"凍てつく山の深層で待っている"と述べていたので、おそらくはこの大陸の北にいる可能性が高いですからね。
そのため、それを倒すのを目指すためにも時間がある時に北の攻略を進めておくべきでしょう。…まあ北だけではなく他のエリアの攻略も進めておくべきとはいえ、今の気分はもうそれに決まったのです!
なので、今日からしばらくは北のエリアの攻略を、というわけです!他にもやらなくてはいけないことがあるのならそちらを優先しますが、今のところはそういったものもないので!
「よし、では早速北を目指して出発です!」
「…ふむ、北は森となっているのですか」
「……!」
「キュゥ!」
あの後の私は街にある転移ポイントを使って雪原都市ノースまでやってきた後、寒いので赤色をしたフード付きケープ、"血染めの獣"を羽織り、クリアとセレネの二人も久しぶりに呼んでから北を目指して歩き出したのですが、その街の先は今も口にしているように、森が広がっていたみたいでした。
…この森の名前は『ファーナ雪森』と言って、雪や氷が至る所にあるからなのか、出てくるモンスターもそういった個体が多いらしいです。
例えば、口から冷気を吐き出して凍らせた獲物を喰らうスノーイーターという名前の蛇や、無数の氷の針や刃を放って獲物を狩るアイシクル・ウィッチという名前の人形。
あるいは雪が積もっている地面を滑るように移動してその氷のような角で攻撃をしてくる鹿、フリージングディアーに白い毛並みを活かして姿を隠し、隙を見せた獲物にその強靭な牙によって噛み付いてくるスノーウルフなど、実に色々なモンスターがこの森には存在していました。
が、私はこんな姿でも今までに二体のワールドモンスターを倒しており、尚且つ様々な強敵とも戦ってきているのです。であれば、今更このような敵に遅れをとるはずがありません!
いくらこの森が敵に有利な場所だとしても、それはこちらも同じというものです。
こちらへと近づいて攻撃をしてくる者には、周りに生えている樹木や〈飛翔する翼〉スキルによる三次元的動きで翻弄し、そのままその隙だらけの首を切り落としたり、または銃弾で撃ち抜くことでポリゴンに変えていきます。
そして遠距離から攻撃をしてくる敵に関しては、フェイントを混ぜたゆらゆらとした動きでその全てを躱し、すぐさま敵の懐に踏み込んで剣で切り裂いたり銃によって弱点を撃ち抜くことで、これまた他と同様にしてポリゴンにしていきます。
もちろん、その戦闘においてはクリアとセレネにも協力をしてもらいながら、ですが!二人は遠距離にも対応出来るため、蛇や狼などと戦っている最中に襲ってきた遠距離攻撃持ちに牽制を、といった具合です。
「…しかし、これくらいの敵ではあまり歯応えがありませんね?」
「……?」
「キュゥ?」
それからも遭遇する敵モンスターを片っ端から倒しながら森の中を進んでいた私たちでしたが、その合間に私は思わずそう言葉を漏らしてしまいます。
だって、時折出会うモンスターはそのどれもが私にとっては力不足が否めないのですよ?そうなってしまえば、私がそのように不満を漏らしてしまうのも仕方ないのですよ!
「うーむ、ここまで歯応えがないともう少し強い敵と戦いたくなってしまいますね?…って、何を口にしているんですか、私?…私って、いつのまに戦闘狂になったのでしょうか…?」
「……?」
「キュッ?」
「…なんでもありませんよ、二人とも。…まあなんにせよ、何か面白いものでもあると良いのですけど…」
そんなことを呟きつつも私は森の中を歩くのを止めませんが、流石にそうホイホイと何かが起きることもないらしく、およそ数時間が経過する頃には森の中にあるセーフティーゾーンへと辿り着きました。
このエリアのセーフティーゾーンは他の森と同様に開けて場所になっているらしく、ここでなら疲れた身体を休めることが出来るだろうとわかります。
まあ私は特に疲れていないので休める必要はありませんが、ちょうどよくセーフティーゾーンに来ることが出来たわけですし、時間もいいところなので一度でもログアウトをすることにしますか。
すでに時刻は六時半を過ぎているので、夜ご飯の時間が近いですからね。このまま再度攻略を始めた場合、間違いなく夜ご飯に遅れること間違いなしなので。
「…さて、では攻略の続きといきますか!」
「……!」
「キュゥ!」
そうして一度ログアウトをして現実世界に戻った私は、夜ご飯やお風呂などの諸々を済ませてから再びゲーム世界へとやってきました。
今の時刻は大体八時を過ぎた辺りなので、このエリアの攻略をするとしてもボスまで目指すのは控えるべきですね。なので、今日のうちはこのエリアを巡ってボスエリアの位置を特定するので済ませ、明日にでもボスを倒しに行くのが良いでしょう。
ということで、早速ボスエリアの捜索と行きますよ!討伐を目指すのは明日に、です!
「…よし、準備はバッチリですね。では、いきますよ!」
「……!……!」
「キュッ、キュゥ!」
あれからはボスエリアの捜索を続け、しばらく探すことでついにボスエリアの居場所を見つけました。が、その後は最初にも決めていた通り明日に回すことにして一度セーフティーゾーンへと戻り、ログアウトをして就寝としました。
そして、今はそこから時間が経過して次の日である木曜日となっており、今は学校も終わって家へと帰ってきたところです。
とはいえ、私が口にしていることからもわかるように、私は昨日に続いて再びゲーム世界へとやってきて、このエリアのボスを倒すために準備を済ませたところです。
ここのエリアボスはどういったモンスターなのかは分かりませんが、それに備えて色々と準備をしているので問題はない……ですよね?
おそらくはエリアの特徴からして雪や氷に関したモンスターだと予想は出来るので、それのために用意したこれがきっと役に立つはずです…!まあなんにせよ、いつまでもボスエリアの前で待っていても意味がないのですし、さっさと中に入って倒させてもらうとしますか!
「…ふむ、この森のボスエリアも他とは違わずに広場になっているのですか」
「……!」
「キュッ!」
そう決めた私はすぐさまクリアとセレネを連れてボスエリアへと足を踏み入れたのですが、この森も他の森と同じようにボスがいるエリアは広めの空間となっているみたいでした。
「グガァアアッ!」
私がそのように今から戦うフィールドを見渡して確認していると、そのような雄叫びと共に一匹のモンスターが姿を現します。
そのモンスターとは、この雪が積もっている森の中には相応しい真っ白な毛並みをしたなんの変哲もない一匹の狼でした。…しかし、変哲もないのはその見た目だけであり、その大きさは今までに見てきたことのある狼とは違うのが明白です。
その真っ白な狼の体格は成人男性くらいなら一口で飲み込めそうなほど大きく、その全身には力が満ち溢れているのも確認出来ます。
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プライド・ウルフ ランク B
雪の積もった森や草原などで主に生息している狼の希少種。
普通の狼とは違って群れることをせず、一匹狼で生きていく道を決めた狼の王。その強靭な肉体はこれまでの狩りによって鍛え上げられ、狙った獲物は逃さない。
状態:正常
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すぐさま目の前に現れた白狼に向けて【鑑定】をしてみた私だったのですが、鑑定によって現れた説明文を見る限り、この狼はまさかのレアモンスターだったみたいです。
…いや、エリアボスがこんなレアモンスターになることがあるのですか…!?これは流石に予想していませんでしたよ…!?
私が歯応えのある敵を望んでいたからの可能性もあるとはいえ、いくらなんでもレアモンスターと化したエリアボスを一人で、いやまあクリアとセレネがいるので実質的には一人ではありませんが……なんにせよ、少ない人数では厳しいと思えるのですけど…!?
「…けど、今更変えてもらうのは無理ですよね」
「……?」
「キュッ?」
「いえ、なんでもありませんよ、二人とも。…では、勝てるように頑張りますか!」
「アオオオン!」
私は早速とばかりに私へと駆け出してきた白狼を視界に捉えつつ、まず初めにと普段から愛用している〈第一の時〉を自身に撃ち込みます。
そしてそれによって加速した動きのまま、肩と首元にいるクリアとセレネの二人を引き連れつつこちらからも白狼に向けて踏み込みます。
「ガァアッ!」
「ふふん、このくらいなら余裕です!〈第二の時〉!」
一瞬にしてお互いの距離が縮まるや否や放たれた白狼による右手を振り下ろした爪の切り裂きを、私は踏み込んだ右足を軸にした回転軌道によって振るわれたその右腕ギリギリを通り過ぎることによって回避します。
そんな私の身体スレスレを通っていった白狼の右腕でしたが、そのタイミングで私はすぐさま剣の姿に変えた武器をすれ違いざまに武技を発動させつつ振るうことによって、白狼の右腕を切り裂くことでダメージを与えます。
が、白狼はそれを見ても怯むことなく、即座に地面を蹴ることでつけた勢いのままに私へと飛びかかってきました。




