347話 祈りの場所は
『それで、レアさん。レアさんはどこの教会を目指しているのですか?あ、思考するだけで私にはわかるので、口にしなくても大丈夫ですよ』
「(あ、それならよかったです。えっと、私が目指しているのは初期の街にある教会ですね。あそこなら私が信頼出来る人もいるので、この場合に適任かと思いまして)」
あの後はすぐさま鞄を返して神殿内部を歩き続け、途中からある水中からも泳ぎながらズンズンと進んでいると、そのタイミングでレピオスさんからそのように声をかけられました。
そのため私はそう返したのですが、多分あそこならばレピオスさんのことも受け入れてはくれますよね?
あそこのシスターであるリンネさんとは顔見知りではありますし、神様を教会に招くということなので拒否されることはないとは思いますが……ちょっとだけ、不安になりますね。
まあレピオスさんがしたいのは生命の神への祈りを捧げるというものなので、リンネさんたちから断られることはないはずです。リンネさんも神様のことを大切にしているとはわかっているので。
『なるほど、信頼出来る人がいる教会ですか。それなら、期待は出来そうですね』
「(まあ絶対に受け入れてくれるかはわかりませんけどね)」
『レアさんの知り合いなのですよね?なら、きっと大丈夫ですよ』
私の返事にそう述べてきたレピオスさんでしたが、そうだといいですねぇ……ま、リンネさんとの関係が悪いわけでもないので、レピオスさんの言う通りおそらくは大丈夫……ですよね?
…もし断られた場合は他の教会などに行く必要が生まれるため、出来ることなら受け入れてくれると良いのですが…!レピオスさんは少しだけズボラとはいえ神様なのです。なので、リンネさんからしても断る理由はないですよね…!
「ぷはっ……よし、では次は街を目指すので、少しだけ待っていてくださいね」
『わかりました。とはいえ、このまま観察は続けさせてもらいますけどね』
「…やっぱり、神様相手だとプライバシーの欠片もないですね。きっと、今この瞬間もクロノスさんやテミスさんから見られているのでしょうし、文句を言いたくなりますよっ!」
何やら、そんな怒らないでくださいよー、と言った声が聞こえてきた気がしましたが、それはスルーです!今の私の目的はレピオスさんを教会に連れていくことであるため、それは気にしないで向かいますよ…!
「着きましたよ、ここです」
『おおー、ここがレアさんの目指していた教会なんですね!うんうん、実に綺麗な信仰場所です!』
そうして目指していた初期の街の教会までやってきた私でしたが、そこに着くなりレピオスさんにそう声をかけると、レピオスさんは少々興奮した様子でそのように口にしています。
…綺麗な信仰場所、とレピオスさんは言ってますが、やはり神様だからこそそういったものがわかるのかもしれませんね?
私には流石にわかりませんが、レピオスさんはここをいい場所と思っているみたいですし、この場所を生命の神へ祈りを捧げる場所にするのは良さそうです!
…まあ一番の問題は、リンネさんたちが受け入れてくれるか、ですけどね。さて、まずはリンネさんを見つけて相談をしたいのですが……どこにいるでしょうか。
「あ!レアちゃん!」
そんなこんなで教会の敷地へと足を踏み入れて周囲を見渡していると、そこに一人の女の子の声がかけられました。
その女の子とは、前にも何回か会って会話をしているアンちゃんであり、この教会ではリンネさんの次に顔見知りである人物です。
アンちゃんは私のことを覚えているらしく、そう声をかけてきながら近づいてきますが、その顔には嬉しさが溢れているのがわかります。私、やっぱりアンちゃんに気に入られているみたいですね?
まあ嫌われるよりかは遥かにいいので、悪い気分ではないですが。とりあえず、今は遊びに来たわけではなくリンネさんへの用事があってきたわけですし、ちょうどいいのでアンちゃんにリンネさんがどこにいるかを聞いてみますか。
「アンちゃん、リンネさんがどこにいるか、わかりますか?」
「シスターね!シスターなら、あそこにいるはずだよ!」
そう言ってアンちゃんは司祭館の方へと指を指して示してくれたので、私はアンちゃんに感謝を伝えてからそちらに向けて歩き出します。
アンちゃんはもう少しだけ私と話していたい様子なのがわかるとはいえ、今は先にやらなくてはいけないことがあるので今回は我慢してもらいました。少しだけ申し訳ないですけど、また次に、です!
「リンネさーん、いますかー?」
「おや、レアさんではないですか。何かご用で?」
そういったわけでアンちゃんと別れた私は、そのまま示してくれた司祭館の中へと扉を開けて入ってそう声に出します。
すると、すぐさまリンネさんからの言葉が返ってきて、その姿を現しました。リンネさんとはしばらく会っていませんでしたけど、この様子を見るに元気そうなようですね?
すでに日が暮れてきて暗くなってきてはいますが、外にいる子供たちと同様に元気そうなのには安心です!やはり元気そうなのを見ると、こちらも嬉しくなりますからね!
っと、それはいいとして、今はここにきた目的を行わないとです。この教会までやってきた目的はレピオスさんの支えている生命の神への祈りを捧げる場所を作るというものなので、受け入れてくれると良いのですけど…
「…実は私、つい先程に医術の神であるレピオスさんと会ったのです。けど、そのレピオスさんがもともといた神殿では支えている生命の神への祈りを捧げられるところではなくなったようで、出来ることならここにそれを作ってもらえないかと思ってきたのです」
「ふむ、神への祈りを捧げる場所、ですか…」
私の説明を聞き、リンネさんは少しだけ思考した様子で顎に手を当てて考えています。
や、やはり新しく神様の祈りの場所を生み出してもらうというのは無理なのでしょうか…?リンネさんがどの神様を信仰しているかは私にはわかりません。なので、その神様と一緒に祈りを捧げるというのは忌避するべきもの、とか?
『…やっぱり、私のような神ではダメなのかもしれませんね。この人にはこの人で信仰している神がいるとわかりますし、それのせいで許されない、のかも?』
レピオスさんもその様子を見て不安に思ってしまっているみたいですけど、それも仕方ないですよね。レピオスさんは神としての自信もないみたいなので、なおさらそう思ってしまうのかもしれません。
しかし、ここを断られた場合は他に目指せる教会もないため、出来ることなら受け入れてくれるとこちらとしてはありがたいですけど……まあ無理強いは出来ませんよね。断られるのなら、その時は諦めるとしますか。
「…私は構いませんが、そこまでずっと祈ることは出来ませんよ?それでもいいのなら、作らせて欲しいです」
「…いいのですか?リンネさんも信仰している神様がいるのですよね?」
「確かにそうですが、これでもシスターなんですよ?であれば、神様への祈りを捧げるのにダメなことはありませんよ」
『おおー!受け入れてくれるのですね!やはり、レアさんの紹介なだけはありますよ!流石です、レアさん!』
リンネさんからの許可をもらったことによって興奮した様子で嬉しくなっているレピオスさんでしたけど、少しだけ落ち着いてもらえませんか?流石に耳にイヤホンを入れた状態で騒がれるとうるさくて敵わないのですが?
まあ何はともあれ、これで神殿から教会へと祈りの場所を変えることが出来たみたいですし、これにて私の役割は終わりと言えそうです。
『ありがとうございます、リンネさん!これで、生命な神の力を回復させることが出来そうです!』
「こ、この声は、もしかしてレアさんの言っていたレピオス様……ですか?」
「そうです。というか、リンネさんにも聞こえるのですね?」
リンネさんからの許可をもらって私はホッとしていたのですが、そこで私だけではなくリンネさんにも聞こえるようにレピオスさんがそのように声をかけています。
やはり、レピオスさんも無事に作ってくれることに嬉しくなっているのかもしれませんね?
あそこで人を待ち続けるだけでは間違いなく生命の神の力を回復させることは出来なかったであろうと確信が持てるので、それだけありがたいのでしょう。
「で、では、私は早速祈りの場所を作ってきます!」
『はい、お願いしますね!…そしてレアさん、レアさんには感謝として私の加護をあげておきますね!…まあレアさんがすでに授けられている他の加護には劣りますが、私に出来る感謝はこのくらいなので…!』
「いえいえ、それだけでも十分ですよ!ありがたく、頂戴します…!」
『ユニーククエスト【教会お引越し大作戦?】をクリアしました』
『称号〈医術神の加護〉を獲得しました』
そんなシステムアナウンスと共に報酬であるレピオスさんからの加護を授けられ、これによってこのクエストがクリアしたのも確認出来ました。
ふぅ、最初は不安に思っていましたが、特に問題となることもなくこちらの教会に祈りの場所を移せたのは助かりましたね…!リンネさんからは特に嫌そうな様子もなかったので、これで生命の神の力を回復させるのはいずれ完了するに違いありません!
リンネさんもずっと祈るわけではないですけど、それでも力にはなりますからね。それに、ここにはたくさんの子供たちもいるのです。であれば、あそこの神殿にいるよりかは遥かにマシと言えることです!




