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346話 医術の神

「ここは……祭壇、でしょうか?」


 そうして扉を開けて中へと足を踏み入れた私でしたが、その先に広がっていた光景を見て思わずそう感想を漏らします。


 何故なら、扉を通って中に入った私の視線の先には私が立っている地点よりも高くなっている、まさに祭壇と言えそうな形をした場所が存在していたのです。


 そして、そんな祭壇の中心であるさらに高い位置には、なんと一つの聖杯のようなものが置かれており、そこからは無色透明の水らしきものも溢れています。


 そのようにして謎の液体を溢れさせている聖杯でしたが、聖杯から漏れている謎の液体は祭壇を巡るようにして存在する水路からこの空間内を通っているため、明らかにこれはただの水が溢れているだけの装飾品には到底見えません。


 …これこそが、この神殿で一番大切な物……なのかもしれません。神殿の最奥にあるのもそうですし、あの謎の液体からはあり得ないほどの魔力を私の感覚に感じるのです。そのため、これがこの水中神殿での守るべきもの、とか?


『…おや?こんなところに人が訪れるなんて、かなり久しぶりですね?』

「むっ、何者ですか!」


 そうしてこの空間を歩いて聖杯をもっとよく見ようと目指していた私だったのですが、そのタイミングで突如この空間内に一人の女性らしき人の声が響きました。


 そのため、私は咄嗟に後方に跳んでからインベントリから取り出した双銃を構え、その声の主を探すようにして周囲へと視線を走らせます。…しかし、それでもその声の主は見当たりません。


 …この声の主は、一体何者ですかね?姿形もないうえに気配も魔力も一切感じることが出来ませんが……もしかして、この神殿であの聖杯らしきものを守っている人物、とかの可能性が高いですね。


 そうでなくては、こんな辺鄙なところに人がいるはずがないのですから、その予想は当たっているはずです。…というか、その言葉は私にも返ってきますね?私も、情報として聞いたからかはここに来たとはいえ、普通の人なら来ないですからね。


『ふふっ、そこまで警戒しなくても大丈夫ですよ?』

「…貴方は何者ですか…?」


 そのような思考をしつつも警戒は弱めずにそう言葉を返した私でしたが、その言葉を聞いたその女性は特に気にした様子もなく、それに返事をしてくれました。


『私は、レピオス。医術の神です』

「か、神様、ですか…!?」


 私の問いかけにそう返してくれた女性でしたが、私はそれに対してそのように反応をしてしまいました。しかし、それも仕方ないと言えるでしょう。


 だって、神様なんですよ!?私はこれまでにも複数の神様とは出会って話もしてきた経験があるとしても、それでも神様とこうして会話をするのにはやはり驚きが隠せません。


 まあ他のプレイヤーとかと比べればまだ慣れている方だと言えますし、緊張で会話が出来ないということもありませんが。私、これでも三人の神様からの加護をいただいているのですからね!

 であれば、神様と会話をするのにも支障はありません!…だとしても、いきなり声をかけられてしまえば多少の驚きはありますけどね。


 というか、ここの神殿には医術の神らしきレピオスさんがいるのですか。…ん?ということはつまり、この湖の水全てが"命脈の雫"という特殊な水になっているのも、この神様のせい、なのかも…?私の視線の先にある聖杯からは水らしきものが溢れているので、それがその特殊な水……とか?


 まあそれについてはこの後にレピオスさんに聞けばいいですし、今はこの人……神様?との会話をしないとですね。


「…そんな神様であるレピオスさんは、何故私に声をかけてきたのですか?」

『何故、と言われても……単にここに人が来るのが久しぶりだから、ですかね?』


 ふむふむ、初めにも声にしていた通り、ここにきた人が久しぶりだから声をかけてきた、という理由みたいでした。

 まあ、そりゃこんなところに人は来ませんよね。だって、入り口が湖の中なのですよ?そうなれば、人が来なくなって久しいのも無理はありませんか。


「まあこの神殿の入り口は湖の中にありますからね。人が来ないのも仕方ないですよ」

『え?この神殿の周りって、今はそんなことになっているのですか!?』


 私の言葉を聞いてレピオスさんは大層驚いた様子でそう口にしていますが……まさか、外の様子とかを知らなかったのですか、この神様?

 普通、それだけの変化があれば気づきそうですけど…?神様と言うだけはあって、そうしたことには無頓着な可能性も……いや、それはないですね。


 私が今までに出会ってきた神様たちは、皆が皆世界を見ていたようなのですから、この神様が単にそうした性格ということですね。


『私、百年くらい寝ていただけですよ!?それなのに、そんな変化があるなんて…!いや、だからこそ人が来なくなっていたのですか…?そういえば、人が来たと言う知らせも今回がすごく久しぶりですもんね』


 何やら一人で慌てたり落ち着いたり、あるいは納得したりしてますが……言ってはなんですが、この神様。他の神様よりもかなりズボラと言わざるを得ませんね…?


 クロノスさんやアレスさん、テミスさんなどの神様は全員が神様としての威厳があったため、どうしてもこの様子を見てしまうとそんな感想を持ってしまいます。いえ、レピオスさんの威厳がないとは言いませんが、それでもそれらのメンバーと比べると明らかに劣ってしまうのですよ。


 まあそれらの神様がそれだけ上の立場にいるからかもしれませんし、比べてしまうのは酷というものですか。レピオスさんは、もしかすると神様としてはなりたてなのかもしれませんしね。


『うぅ、やっぱり私には神様なんて無理なんですよぉ…!私、本当は単なるエルフだったのですよ?そんな神の座に招かれただけの一般人には、到底管理なんて難しいというものです…!』


 レピオスさんはビクビクしたようにそう口にしますが、やはりこの人は神様の中でも下の方だったみたいです。

 医術の神、と言っていたので古神とまではいかなくても大神、あるいは神クラスかと思っていましたが、神の座に招かれた人ということは、実際は亜神、または従属神の立ち位置だったようでした。


 なるほど、道理で神様としては少しだけズボラのように感じたわけですか。なってからある程度の年月は経っているとは思いますが、私が出会ってきた神様たちとは経験の差が大きいのだとわかります。


「…まあ何はともあれ、ここはどういったところなのですか?」

『…はっ!す、すみません!えっと、私でよければ説明させてもらいますね!』


 私の問答にそんな反応を返してくれたレピオスさんは、そのまま少しだけ落ち着いた様子でこの神殿についての説明を開始してくれます。


『ここは、私の主人である生命の神に祈りを捧げる場所でもあります。…とはいえ、すでにその役割は担えなさそうですけど』

「ふむふむ、要するに神の力を回復させるための場所、と?」

『まあそんなところですね』


 なるほど、ここはまさに神殿という名に相応しい場所だった、というわけですか。…けど、レピオスさん自身も言っている通り、今の状況的にもう祈りを捧げられることは難しいとは思いますけど。


 なんたって、湖の中に神殿が沈んでしまっているので。近くの街である白湖都市ユーリでは噂としてこの神殿のことは知られていましたが、ここまで来ることが出来る人はほとんどいないのもありますよね。


 なので、レピオスさんが落ち込んだ様子で気落ちしているのも無理はありません。レピオスさんのせいではなくても、責任を感じているのは明白です。


「うーん、そうだとすると、ここではもう生命の神の力を回復させるのは無理そうですね?」

『そうなんですよぉ……本当に、どうしたものか…』


 私の言葉を聞いたレピオスさんはそう口にしながら悩んでいますが、確かにこの状況ではどうするかを悩みますよね。


 この神殿は湖の底に沈んでしまったせいで人が来ることがもうないと言えるため、祈りを得ることが出来ませんが……あ、それなら別の神殿か、あるいは教会に祈りを捧げる場所を変えたりするのはどうでしょうか?


 そうすれば、生命の神への祈りを集めることが出来るようになるのですから、それをレピオスさんなら提案してみますか。


「レピオスさん、よければ他の教会に祈りを捧げる場所を変えるとかって、どうですか?」

『むっ、他なところに、ですか……確かに、それがいいかもしれませんね』


 私の提案を受けて頷くようにそう声に出しているレピオスさんは、続けて私に対して言葉を投げかけてきます。


『なら、もしよければお願いしてもいいですか?』

「もちろん構いませんよ。それで、このまま教会に向かえばいいですか?」

『あ、その前にこれを持って行ってほしいです!これさえあれば、離れていても私との会話が出来るので!』


 そんな言葉が聞こえたと思ったら、私のすぐ目の前に淡い光が集まり、そのまま一つのアイテムが姿を現しました。

 …そのアイテムとは、現実世界にもあるようなイヤホンの姿をしており、レピオスさんの口にしているように会話が出来るものだとわかります。


 ふむ、これを使ってレピオスさんと話をしながら教会に向かう、ということですか。これがあるのなら、何をすればいいかもその都度聞けますし、これなら心配することもなさそうです…!


「よし、では早速教会を目指していきますね!」

『お願いします。教会に着き次第何をすればいいかは指示をするので、頼みます…!』

「ふふっ、任せてください!」


『ユニーククエスト【教会お引越し大作戦?】が発生しました』


 私が早速とばかりに今いる空間から踵を返して出ていこうとしたタイミングで、突如そのようなクエスト発生のシステムメッセージが流れました。


 …どうやら、今からするのはクエスト扱いみたいですね?まあ別に悪いことでもないのでいいですけど、またもやユニーククエストですか。

 やはり私はそういったものと関わることが多いみたいです。まあなんにせよ、今から目指すのは教会なので、これについては気にせずに向かうとしますか!

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