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343話 欲するは貪欲なる静寂7

「グラアァ!」

「さあ、いくよ!レア」

「任せてください!」


 そうしてお互いにEXスキルの【心力解放】スキルを発動させた私とマリアナさんは、そう声に出しながら同時に静海へと地面を蹴ることで接近していきます。


 まあ立ち位置は離れているので、同じ箇所を目指して、というわけではないですけどね。マリアナさんのいる場所は私から見て静海の斜め後ろであり、私は静海の正面なので!


 そして私の【心力解放】スキルの効果なんですが、それは自身の使う時属性と空間属性のスキルのMP消費とスキルのリキャストタイムをなくすのと、自身の使う全ての【時空の姫(クロノス・プリンセス)】の効果を2倍にするものです。


 そのため、ここからは【領域解放】スキルも併用して一気に決めに動きますよ!あと少しで【領域解放】スキルは効果時間が切れてしまうので、その前に、です!


「〈第一の時(アイン)〉、〈第零(ヌル)第一の時(アイン)〉、〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉、〈第七の時(ズィーベン)〉、〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉、〈第六の時(ゼクス)〉ッ!おまけに〈大罪を背負う者(ザ・シン)〉!」


 私はリキャストタイムがなくなっていることをいいことに、次から次へと自身に向けて強化系の武技とスキルを付与していきます。


 領域の効果も相まって、今の私の速度は今までとは比べものにならないものとなっており、さらには無数の幻影と二体の分身もそこに混じるのです。であれば、いくら相手が最強に近い強さを持っていたとしてもそう簡単には対応出来ないですよね…!


「グルアアアッ!」

「ふふん、隙だらけですよ!〈第三の時(ドライ)〉!」

「あたしもいるぜ!〈さざめく海原(トーン・メーア)〉!」

「私たちも攻めるよ!〈ソードピアサー〉!」


 生み出したばかりの幻影を盾にするかのように前方へと突撃させた私でしたが、それに対して静海は身体中から生えている触手やモンスターのパーツ、さらには銃口や三叉の槍が生えた触手に棘と杖、砲台らしきものによる遠距離攻撃まで繰り出して幻影たちをすぐさま消し去りました。


 やはり、あちら側もこれがラストスパートだとわかっているのでしょう。出し惜しみは一切せずに私たちを今この場にて倒そうという意気込みがひしひしと感じられるのですよね。


 しかーし!それらの攻撃はすでに何度も見ているのです!音を消した不意打ち気味の攻撃も混ぜられているとはいえ、そんな攻撃を捌けない私ではありません!


 なので、私はそれら無数の攻撃によって消し去られてしまった幻影を尻目に、その間に分身と共に三方向に分かれつつ近づいたタイミングで、静海のすぐそばからユニークスキルの武技を混ぜた武技を繰り出します。もちろん、マリアナさんやカスピアンさんによる攻撃も、です!


「グラアァ!」

「っと、そう簡単にはいきませんか!」

「全く、油断も隙もありゃしないよ!」


 が、静海もそれをみすみす見逃すわけがなく、即座に私と分身へと意識を向けてきたと思ったその直後。間合いに入ってきた私目掛けて連続した噛みつきを繰り出しながら、四方八方から触手などによる攻撃も雨霰と放たれます。

 しかも、私と同様に近づいているマリアナさんとカスピアンさんたちの方にもそこそこの数の攻撃が放たれているため、そちらは大丈夫ですかね?


 まあマリアナさんたちを心配するのもいいですが、皆さんも相応の実力者なので問題ないはずです。それよりも今は、自分のことに集中しなくては…!


 私は四方八方から飛んでくる様々な攻撃に対して、【心力解放】と【領域解放】の二つのスキルによって生まれた凄まじいスピードを存分に活かし……〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉も組み合わせた三次元的動きによって紙一重で避けながら、時折当たりそうなものには〈舞い散る華(フロース)〉を合わせることでその攻撃全てを避け続けます。

 そして、それによって私の身体ギリギリを掠めていく静海の肉体を手に持つ細剣と短剣を使って力一杯切り裂き、追撃の弾丸を撃ち込むことでダメージを与えることにも成功しているのが確認出来ました。


 加えて、そこに放たれる噛みつきなどによる攻撃に関しても空中すら足場にした不規則な動きで躱しつつ、攻撃をした瞬間のわずかな隙に両手の武器でさらなるダメージを与えることで静海のHPをさらに削ることが出来ていますし、いいペースではないでしょうか…!


 …流石にEXスキルを二つも併用したスピードだからなのか、静海もこの速度に追いつけていないみたいですね!なら、このままあなたの意識をこちらに向けさせつつ、攻撃といきますよ!


「グルアアアッ!」

「ふふん、そのくらいは余裕です!」

「あたしも、EXスキルの効果もあって比較的楽だねっ!」

「私たちも狙われることが少ないから今のところは問題ないよ!」


 そして次々と放たれる攻撃を躱しつつ攻撃をお返ししていた私とマリアナさん、カスピアンさんたちでしたが、静海は全ての攻撃を躱されたことによって焦ったかのように声をあげます。

 すると、静海は私たちへと意識を向けながら一度距離を取り、その全身から生えた触手をこちらへと向けて何やら攻撃姿勢らしきものに移ったのが確認出来ました。おそらくは、一旦状況を変えるべく攻撃方法を変えようとしているのかもしれません。あるいは、次で決めに動く、とか?


 …ですが、それをわざわざ待つわけがありません!今の私には二つのEXスキルによって凄まじいスピードが付与されているのです!なら、あちら側の状態が整う前に攻撃をするに決まってます!


 それに、静海のHPもすでに残り少ないのです。だとすれば、このタイミングが【心力解放】スキルを使用中に使える切り札を切るべきタイミングなはずです…!静海もここまでの戦闘によって疲労している状態のように見えるのですし、次で決めさせてもらいますか!


「マリアナさん、一気に攻めますよ!」

「任せな!ここで決めさせてもらおうか!」

「グルアアアッ!!」


 どうやらマリアナさんも私と同じくここで決めるべきだと判断したらしく、そう言葉を返してきながら手に持っている槍を構え、私と同様に静海に向けて駆け出します。

 なので、私も意識を静海へと集中させながら、その切り札を切るためにマリアナさんと同時に行動を開始します。


「グルゥ、グルアアアアッ!!」

「時の調べは今、極点へと至る!〈心解・時空を穿つ者(クロノス・エンド)〉ッ!」

「大海の覇者は、激流を持って存在を示す!〈心解・ 絶海の螺旋撃スパイラル・ディープブルー!〉ッ!」


 そして全く同じタイミングにて私とマリアナさんは自身の切り札である心解を発動させたのですが、それに対して静海も全身から生えている触手を一つに束ねたと思ったら、一気にそれをこちら目掛けて放ってきたのです。


 思った通り、静海もここで決めに動くみたいですね!ですが、私たちも自身に出来る最大の攻撃を使ったのです!その攻撃も全て貫き、そのまま倒しますよー!


「はあああっ!」

「うおおおっ!」

「グラアアッ!」


 そうして互いに一歩も譲らず目の前の敵を倒さんばかりに攻撃を続けていましたが、そんな膠着も一瞬でした。


 私とマリアナさんによる攻撃が徐々に静海の束ねられている触手を押していったと思ったら、次の瞬間にはその触手を一気に貫くことで静海の元まで攻撃が飛んでいき、そのまま静海の身体へと直撃します。


「グラアァッ!?」

「よし、攻撃を当てれました!」

「けど、油断はするんじゃないよ!まだ終わってないんだからね!」


 私や光線とマリアナさんの水を纏った刺突を食らった静海を見て思わずそう声に出してしまいましたが、確かにマリアナさんの言う通り油断はダメですね…!いくら倒せたと思っても、それを確認するまでは気を引き締めておかなくては…!


 とはいえ、流石に私たちの攻撃をモロに食らったのですから、倒せてはいますよね…?もしこれで倒せていなければ、ちょっとだけ面倒なことになるのですが。

 だって、すでに私の【領域解放】スキルの効果時間は切れてしまっているのですよ?なら、戦闘がまだ続いてしまえば大変なのは明らかです…!


「グルゥ…」

「むむっ、まだ倒せていなかったのですか…!?」

「…いや、あれはもう死にたいだね。おそらく、倒れることは許さない、といったところか?」


 私は咄嗟に武器を構えて警戒を強めてしまいましたが、マリアナさんの言葉を聞いてその警戒を弱めます。…そういえば、前に戦った天災も同じように倒れずに最後まで話をしてきてましたね?


 なるほど、要するにそれと同じというわけですか。ということは、ワールドモンスターは皆が皆そういった感じなのかもしれませんね?ワールドモンスターというだけはあって、最後まで気高いのでしょう。


「グルルルゥ、ガアッ」

「…別れの挨拶でもしているのですかね?」

「多分そうじゃないか?敵意もないし、あたしたちを認めた、といった感じかね?」


 静海が発したそんな言葉を聞いて不思議に思っていた私たちでしたが、まあ天災も最後には同じようなことを声に出していたので、これが普通……とか?


 なんにせよ、それを合図に静海の全身はポリゴンとなることで消えていき、これによってワールドモンスターである静海のリーブトスの討伐が完了したのだとわかります。

 そして、それと同時に今私たちがいるフィールドも元の地形に戻っていくため、しっかりと終わることが出来たみたいです。


『ワールドクエスト【欲するは貪欲なる静寂】をクリアしました。報酬として、参加したプレイヤー全員へと報酬が送られます』

『称号〈静海を抑えし者〉を獲得しました』


 ポリゴンとなって消えていく静海を見つめていた私たちでしたが、そのタイミングでシステムアナウンスも流れたので、ついに倒すのが済んだみたいで一安心です…!


 これによって倒すことが出来たワールドモンスターの数は二体になったので、残りは五体ですね…!しかし、その全てがどこに潜んでいるかなどを把握はしていないため、ワールドモンスターの全てを倒すことが出来るのは結構先になりそうです。


「…よし、ではこの辺りで…」


 私はこれによってこの場ですべきことが終わったのを確認し、そう言ってそろそろここから出ないかと発言しようとした次の瞬間。


『プレイヤーの皆さんにお知らせします。ただいまワールドモンスターである静海のリーブトスが討伐されました。よってクロニクルストーリーである『過去を見るは正義(グッド・アン)未来を進むは邪悪(ド・イヴィル)』が進行します』

「な、なんだっ!?」

「敵か!?」


 そのようなシステムアナウンスが突如今いる空間内に響き、そんなシステムの言葉が聞こえてきました。


 突然のことだったからかマリアナさんたちは思わず身構えてしまっていますが、私はすでに経験済みなので多少の驚きはあっても身構えはしません。なにせ天災との戦闘が済んだ後にそれを聞きましたからね。


 なので、そんな経験のない皆さんが警戒を強めるのも当然と言えるでしょう。…しかし、これによってクロニクルストーリーとやらが進行したのですか。つまり、これはワールドモンスターを倒していけば良いので間違いないみたいです。

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