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340話 欲するは貪欲なる静寂4

「…なんにせよ、これがあればもっと力を引き出せるみたいですし、一気に攻めますよ!〈第一の時(アイン)〉!」

「ガアアアァ!」


 そんな私の発動した領域を見て、警戒を強めてこちらへと視線を向けてきていた静海を視界に捉え、私は再び地面を強く蹴ることで一気に肉薄していきます。


 というか、"与えるバフ・デバフ効果が二重に発動する"という効果のおかげで明らかに先程よりもスピードが出せていますね?しかもこれ、前にも感じたものと同じようですし、前々からこのスキルの片鱗は顔を見せていたみたいです。


 まあそんな過去については今は置いておくとして、今まさに集中すべきは正面でこちらに向けて触手の攻撃を放ってきている静海に、ですね!


 現に、先程よりも加速した動きで近づいて来ている私を警戒して無数の触手攻撃を放ってきているのですから、意識を逸らしてはいけません!


「ガァアッ!」

「ふふん、今の私は先程とは違いますよ!」


 片手剣や大剣、短剣に細剣、珍しいところになると刀や曲剣などによる四方から飛んでくる触手の斬撃を、私は二重に発動しているおかげで生まれた超スピードを存分に活かし、細かい足捌きとゆらゆらとした掴みづらい不規則な動きで踏み込みつつ、その全てを身体スレスレで回避していきます。


 が、もちろん静海による攻撃はそれだけではなく、さらに槍や斧、戦鎚に爪状の武器が顔を出している触手に加え、水や風による魔法攻撃まで雨霰と降り注いできます。


 …ふむ、やはり敵である静海も遊びは終わりで本気、ということなのだとわかります。とはいえ、そんな嵐の如き攻撃の殆どは私に向けて放たれているのが、唯一の救いでしょうか。

 もしマリアナさんやカスピアンさんが狙われていたとすると、少し……というか大分面倒なことになっていたに違いありませんしね。


「…しかし、狙われているのは私だけ。であれば、まだやりやすいというものです!〈第七の時(ズィーベン)〉!」

「ガアアアァ!」


 私は次々と振るわれる武器が生えた触手による攻撃を避け、逸らし、いなし、ズレることによってその全てに対処していきます。

 が、それだけではなくこちら目掛けて飛んでくる多数の魔法に関しても、両手の双銃にて魔法を撃ち落としたり、剣の姿に変えた武器を振るうことで中心から魔法を切り捨て、問題なく捌いていきます。


 そして、そのタイミングで私は分身を生み出す武技を自身に撃ち込み、それによって生まれた二体(・・)の分身と共に距離を詰めることに成功した静海のすぐそばから攻撃を開始します。


 …何故、私の分身が二体もいるのか、ですか?ふふん、それは私の発動させている領域のおかげなのですよ!


 お忘れかもしれませんが、私の領域の効果は"バフを強化する"といったものではなく、"与えるバフ・デバフ効果が二重に発動する"というものなのです。なので、分身を生み出すという効果が二つに増えたため、分身の数も二体になっている、ということです!


「「「ここで一気に攻めさせてもらいます!〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉!」」」


 私は二体の分身と共に、〈第一の時(アイン)〉に続いて〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉も使うことで先程とは比べ物にならないくらいのスピードを生み出し、まるで吹き荒ぶ風の如き超スピードをもって静海の周囲を飛び交いつつ、両手の双銃から弾丸を乱射します。


 いくらあちら側の触手が多いとしても、この動きにはついてこれませんよね…!すでに静海の動きは把握しているのですから、このまま一気にダメージを与えさせていただきます!


「お前ら、レアに続くぞ!〈流れる急流(トレンティス)〉!」

「流石に女の子一人に任せては騎士の名折れだよ!〈フィフススラッシュ〉!」


 そうして静海の周囲を〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉も組み合わせた三次元的な動きで飛び交いつつ、気を引きながら攻撃を行った私と分身でしたが、そこにマリアナさんとカスピアンさんを筆頭にした皆さんの攻撃も静海へと放たれます。


 が、静海はそれに対して反撃とばかりに皆さんへと触手を振るおうとしたため、私は静海に向けてすぐさま〈第零(ヌル)第十八の時(アハツェーン)〉を撃ち込み、その動きを一瞬ですが止めることによって攻撃を防ぎます。


「今相手をしているのは私です!〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

「よそ見はさせませんよ!〈第六の時(ゼクス)〉!」

「これでも喰らってください!〈第三の時(ドライ)〉!」

「グルゥ、ゴガアアッ!」


 動きを止められた静海は私へと視線を戻しつつ、その瞳に明らかな殺意を込めながらこちらを睨みつけ、そのまま身体中に生えている触手と魔法を差し向けてきます。


 よし、とりあえずは注意を惹きつけることは出来ましたね…!しかし、もう少しで分身も消えてしまう頃合いなので、消えた直後に再び使うことで分身を維持するように努めましょう…!


 相手はワールドモンスターである静海のリーブトスなんですし、今もこちらへと放たれる無数の攻撃を一人で捌くのは大変なことに違いないので、油断は出来ません…!


「グルルゥ…!」

「むっ、何やらするみたいですね…!させませんよ…!」


 それからも、分身が消えるまでは共に私目掛けて放たれる無数の攻撃を対処しつつ攻撃を繰り返し、後少しで静海の三本目のHPゲージが半分を過ぎようとしたその直後。

 突如静海の動きが消極的になり、ついさっきよりも攻撃の数が目に見えて減ったのがわかります。


 …どう考えても、ここから何かをする気満々のようなので、これは出来る限り阻止すべきでしょう…!ここまでには特殊な行動をしていなかったので、半分になるのが条件……ですかね?


 まあ何はともあれ、何かをされてこちらが不利になる前に妨害に移りますか!マリアナさんたちもすぐに阻止をするために動いているのですから、協力して、です!


「グルアアッ!!」

「ちっ、流石に無理だったか…!」

「…ふむ、これまでに奪ってきたモンスターのスキルと特性、といったところかな?」


 妨害をするために即座に動いた私たちでしたが、今も思わずと言った様子で声に出しているマリアナさんを見てわかるように、いきなり生み出された突風のせいで距離を取られて発動を阻止するには至れませんでした。


 しかもカスピアンさんの言う通り、今の静海の姿は先程までの触手が無数に生えた鮫、というあまり変わった見た目ではなかったのですが…

 なんらかのスキルを発動させた今の静海は、触手だけではなく数多のモンスターのパーツまでもが身体中から生えた、まさに化け物の鮫もどき、といった見た目をしていたのです。


 …いや、これは流石に予想外なのですが…!?一応、ここに来る前にこの特殊エリアにて見つけた本に載っていた"奪ったもののスキルと特性を得る能力を持っている"というのを知っていて、かつこの目で直に見ていたとはいえ、この姿には恐怖を感じますよ…!


 これを見るに、おそらくはこの姿こそが静海の本来の戦う時の姿なのかもしれません。つまり、ここからは先程までのような触手や魔法だけではなく、その身体中から生えているモンスターのパーツが持つスキルや特性、さらには攻撃に気をつける必要がありそうです。


「…だとしても、怖気付いて逃げるわけがありません!〈第七の時(ズィーベン)〉、〈第一の時(アイン)〉!」

「グルアアッ!」


 私はそのように声を発しながら、この間で消えてしまっていた二体の分身を生み出した後、そのまま動きを加速させる武技も同時に使って静海に向けて駆け出します。


 が、静海もこの場において私を一番の脅威とみなしているらしく、近づいてくる私とその分身に向けて自身の武器である触手や魔法、モンスターのパーツによる攻撃を繰り出してきました。


「ふふん、まだまだですよ!」

「ガアアッ!」


 そんなことを私は口にしながらどんどんお互いの距離を詰めていたところ、手始めに静海は身体中から生えている棘や杖、砲台らしきものによる遠距離攻撃を放って来ました。


 なので私は、それらを加速した動きを活かして分身と共に不規則なゆらゆらとした足捌きとジグザグとした動きでその全てを避けつつ静海へと踏み込みます。


 そのうえ静海はそういった遠距離攻撃を繰り出しながら私に向けて迫って来ているため、お互いの距離はほんの数秒によって縮まります。


 …どうやら、ここからは静海も再び近接戦闘をしてくるみたいですね。ということは、一番始めにもしてきていた噛みつきや体当たり、といったところでしょうか。


 であれば、私も銃だけではなく剣も使って攻撃をしていきますか!私の考えた戦闘スタイル的にも、遠距離戦よりも近距離、または中距離が得意としてますからね!


「ゴガアァ!」

「なんの!それはもう見切ってます!〈第二の時(ツヴァイ)〉!」


 そうしてお互いの距離が縮まるや否や、私の予想通りに静海が分身諸共喰らおうと口を開けてそのまま迫ってきたために、私はそれをギリギリまで惹きつけてから身体を回転させつつ踏み込むことで、その攻撃は私のすぐそばを通り過ぎてダメージを受けるには至りません。


 加えて攻撃を避けたタイミングで両手の銃を剣に変え、すれ違いざまに遅延効果を与える武技を使いながらその身体を切り裂いたため、ダメージを与えつつ武技の効果を与えることにも成功します。


 そして、二体の分身もそれと同じタイミングで剣を使って静海の身体を切り裂いてダメージを与えているので、さらにHPを削ることが出来ているのが確認出来ました。


 よし、敵である静海の姿が変わっていたとしても攻撃はキチンと通るみたいです!それに、遅延効果を与える武技も領域にて強化されている状況で与えられていますし、これによってさらに攻撃はしやすくなることでしょう…!


「ガアアッ!」

「っと、動きが鈍くなっていても攻撃の激しさは変わらず、ですね!」


 すれ違いざまに攻撃を繰り出した私と分身でしたが、その次の瞬間に静海は即座に動きを変えて再度こちらに肉薄しつつ、その身体から生えてから無数の触手やモンスターのパーツによる攻撃を放ってきました。


 しかもそれだけではなく、私やこちらへと近寄ってきているマリアナさんたちにも、先程私にしたように棘や砲台、武器の生えた触手による攻撃をしているため、静海のHPゲージも三本目の半ばを超えていたとしても最後まで油断は出来ません…!

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