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281話 侵すは黒き征服者

「これは…」

「かなりの悲惨さなのです…!」

「ふム、どうやら今回の相手はなかなかの強さみたいだナ」


 そうして私とアリスさん、そしてホフマンさんの三人で固まって音の発信源に向けて歩いていたのですが、その目的地に着いてそうそうに広がっていた景色に私たちは思わずそう声に出してしまいます。


 ですが、それも仕方ないのですよ!なにせ、何故か開けているこの森の空間には多数のモンスターの死骸が転がっており、今も尚ポリゴンに変わっているという凄まじい状態だったからです。


 アリスさんもこの状況を見てかなり引いているみたいですが、私も同じですよ…!モンスターたちの死骸は未だに消えていないせいで辺りには赤いポリゴンが撒き散らされていますからね!っと、いまはそれよりも重要なことがありましたね。それは、未だにこちらに気づかずに魔物の死骸を喰らっている一体のモンスターについて、です。


 そのモンスターの姿は全身の肌が呪いの如き漆黒色をしており、その身にはこれまた漆黒の皮鎧を纏い、その手には黒いオーラを立ち上らせている真っ黒な大斧を持つ、まさに呪いの根源とも呼べそうなほどの邪悪さを滲ませている豚の頭をした人型の鬼……いわゆる、オークと呼ばれるモンスターでした。


 …どう考えても、アレがホフマンさんの目的である邪悪なる欠片で間違いなさそうですよね?まだ戦っているところは見ていないとはいえ、明らかにそこら辺のモンスターとは比べ物にならなそうなほどの力強さを感じますし。それに、周りにモンスターの死骸が転がっているのも確実にこのオークの仕業だとは思えるので、これはここで倒さなくては危険そうです…!


 対してそんな狙いである黒オークはモンスターの死骸を食べるのに夢中になっているようですが、それもいつまで続くのかもわからないですし、ここは気づかれる前に攻撃を加えるのが正解……ですかね?…あの黒オークを見逃すのは当然ありえませんが、一応二人にも聞いてから行動に移るのがベストですか。


 勝手な行動をするわけにはいかないのですし、ここは一旦作戦を決めた方が良さそうです…!このまま何も考えずに戦闘を始めてもやられる可能性の方が極めて高いので、なんらかの作戦は決めておかなくてはいけませんね…!


「…二人とも、ここはどうしましょうか?」

「うーん、やっぱり気づかれていないうちに攻撃、ですかね…?」


 私のあげた言葉にそう返してきたアリスさんでしたが、やはりそれが一番この状況に合っている作戦ですかね?戦うところを見ていないのでホフマンさんはわかりませんが、私とアリスさんはお互いに近接戦闘が得意なタイプではないですし、距離を取りながら戦うのが一番なので。


 しかしそうだとすると、問題はタンクがこの場にはいないことです。一応私が回避盾として動くことが出来ますが、それでも確実ではないので出来ることならタンクの代わりが欲しいですけど……流石にこの場でそれを願うのは意味がないですね。なら、やはり私がタンクの代わりをするしかありませんか。


「…そういヤ、お前らの戦い方はどんな感じなんダ?」

「あ、伝えてませんでしたね。私はこの銃を使った中距離戦タイプです」

「私は無数の人形さんたちを操って戦う感じです!」


 そう作戦を決めかねていると、そこに兎のぬいぐるみの姿をしたホフマンさんからそう問われましたが、そういえば伝えてませんでした…!今回は私とアリスさんの二人だけではなく【傀儡の魔女】と呼ばれているホフマンさんもいるのですから、ここはきちんと相談して戦わなくては…!お互いの戦闘方法を教え合っていれば、それは協力するのにとても役立ちますからね!


 とりあえず私たちの戦闘スタイルは伝えましたけど、本当にどのような作戦が良いでしょうか?ホフマンさんも魔女というので近接戦闘が得意には見えませんし、この状況では私がタンクをするのが最適のように思えますが…


「なるほド、ならここはオレ様とアリスの二人で前線を維持しつつ戦うのが良さそうだナ。オレ様はこれでも様々な邪悪なる欠片を倒してきたのだかラ、任せろヨ?」

「むむ、ホフマンさんはこれまでにも戦ってきたことがあるのですか?」

「まあナ。オレ様は邪神調査を主にしておリ、世界中の至るところにアトリエを構えて調査をしているからナ」


 ふむ、その言葉を信じるとするなら、ホフマンさんはこれまでにも数々の邪悪なる欠片を倒してきたのですね?それに、世界中で邪神の調査もしていた、と。


 この森に拠点を構えていたのも、ちょうど目の前にいる邪悪なる欠片であるあの黒オークを調べるためだったのですから、もしかしなくてもホフマンさんは邪神については詳しいのかもしれませんね?一応私もそれなりには知っているとはいえ、まさか同じように邪神のことを調べている人がいるとは思いませんでした…!


 まあこの世界で生きている実力者なら、今もこの世界に迫っているという邪神の脅威を知るために動いていても当然といえますか。なにせ、自分たちの世界のピンチなんですからね。普通は調べることもせずにただ傍観するはずがないので。


 っと、気になることはまだまだありますが、今はそれよりもあの黒オークについてです。あの黒オークとの戦い方は、私を除いた二人でタンクを担うのがよいとホフマンさんは言ってますが、それは信じても良いのでしょうか?ホフマンさんがどれだけ邪悪なる欠片との戦闘経験をしているのだとしても、完全に任せることはどうしても出来ないですからね。


「心配なのもわかるガ、ここは素直に年上を頼りにすると良いゾ、レア」


 しかし、そう言われてしまえば任せるしかありませんね。確かに心配なるのも当然ですけど、ホフマンさんだって私たちのことを心配しているので、お互い様ということですか。


 それなら、ここは頼りにさせてもらうとしましょう!私がタンクをするよりかはそちらの方が良さそうですからね!ホフマンさんはアリスさんと一緒にタンクをするみたいなので、その役割は二人に任せることにします…!こういった場面では適材適所が大事なので!


「…わかりました。では、タンクの代わりは頼りにさせてもらいますよ?」

「あア、その点は任せロ。アリスもいいナ?」

「任せてください!絶対に活躍してみせるのです!」


 私の言葉にそう口にするホフマンさんとアリスさんでしたが、どうやら二人も気合十分みたいです。よし、では作戦も決めたのですから、早速行動に移るとしますか!


 タンクの役割はホフマンさんとアリスさんの二人が担当するのですし、私はいつも通り遊撃のポジションとして動きましょう!アリスさんはともかく、ホフマンさんの戦闘スタイルは聞いてないですけど、先程の言葉やこれまでの行動から察するに、おそらくはアリスさんと似たような戦い方ですよね?


 だとすると、やはりアリスさんと合わせて大量の人形系統を操る感じでしょうか。なら、私はその人形たちに紛れる形で攻めるのがいいですね。それならこちらへと攻撃を放たれることも少なそうなので、そうしましょう!


「よシ、それじゃあ早速行動開始ダ!」

「わかりました!いきますよ!〈人形の呼び声(コール・ドール)〉!」

「私も続きます!〈第一の時(アイン)〉!」


 そうしてホフマンさんの言葉を合図に、私たちは手早く行動を開始します。私は自身へと加速効果を付与する武技を撃ち込み、対してアリスさんは作戦通りに大量の人形たちをこの場へと呼び出し、目の前でモンスターの死骸を喰らっていた黒オークに向けて突撃させています。


 そしてそんなアリスさんに続くように、ホフマンさんもどこからともなく狼や蛇に熊、ゴブリンやゴーレム、さらにはカブトムシに鷲といった多種多様で大量のモンスターを生み出したと思ったら、そのままアリスさんの人形たちと同様に黒オークに向けて攻撃を開始しています。やはり私の予想通り、ホフマンさんもアリスさんと似たような戦い方みたいですね?これなら確かに、タンクの役割は任せられそうです…!


 さて、それはいいとして、アリスさんとホフマンさんも攻撃を開始したのですから私も行動に移るとしますか!今回の私の役割はタンクではなく遊撃なので、攻撃を加えつつ皆のサポートを、ですね!なので、ひとまずは人形たちに紛れる形で攻めますよ…!


「とりあえずはこれを使うべきですよね!〈第二の時(ツヴァイ)〉!」


 私は〈第一の時(アイン)〉による加速を活かし、二人による多数の人形やモンスターたちに紛れる形で黒オークに向けて動きを遅くさせる武技を放つと、それは特に躱されることもなくその身体に命中し、見事に効果を発揮します。


 よし、相手が邪悪なる欠片だとしてもこの武技は効果を発揮するみたいですね!これによって一時的にとはいえ動きが鈍くなったのですから、この隙に一気に攻めますよ…!まあ私は遊撃なのでそこまで危険はないですけど、タンクの代わりである人形たちとモンスターにとってはかなり有効なはずですよね?なので、この効果は出来る限りは常に与えておくようにしましょう…!


「フゴォ!」

「ちっ、こいつは今までの中でもかなり上位にくる強さだナ!」

「一振りで数体がやられてしまったのです…!」


 しかし、遅延効果が与えられたはずの黒オークはそれでもその手に持つ大斧の振るう速度はかなりのものらしく、アリスさんも思わず口にしている通り鋭い斧による攻撃で容易く人形たちが蹴散らされてしまっています。


 一応遅延効果があるおかげで被害は少なめではありますが、それでもこの黒オークはかなりの実力を持っているのが私にもヒシヒシと伝わってきます。流石、邪神が関係しているモンスターなだけはありますね…!遅延効果を与えているのにも関わらずここまで強いとは、これは最後まで油断は出来なさそうです…!


 数は圧倒的にこちらが上とはいえ、個の強さに差があればここまで苦戦するのですか。今まででは数が多い方が有利になった場面は何度かありましたが、今回はそうもいかないみたいです。まあそれも普通ですがね。例えば、一体のドラゴンと百のスライムが相手をした場合、どう考えてもドラゴンが勝つに決まっていますし、それと似たようなものでしょう。


 まあ私たちはスライムほど弱くはないですけどね。むしろ、それぞれがドラゴンに負けず劣らずの強さがあるとは思うので、ここは油断をしなければ勝てる可能性はあるはずです…!

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