277話 迷いの森
『…とりあえず、この辺りでいい時間ですね。では今日の生放送はここまでにしますか。それでは、長い間見ていただきありがとうございました』
私がそんなことを考えている間にも流れていた質問をあらかた答え終わった天馬さんは一息ついたそのタイミングでそう発して放送が終了しました。
…今回の生放送はやはり次のイベントについてでしたし、見ておいて正解でしたね。イベントが開始される日付も来週の土曜日のお昼とのことだったので、それなら私たちもキチンと参加が出来ます!
次に行われるイベントは運営が分けた陣営で行動をしなくてはいけないようなので、どんなメンバーになるかは少しだけ不安ですけど……まあなんとかなりますよね!流石にお互いの陣営の実力差をつけられることはないはずですし、心配していても不安になるだけなのでこの思考は止めますか!
「さて、これで生放送は終わったが、この後はどうする?」
「あ、ならよければ皆さんも私の家でご飯を食べていきませんか?」
生放送が終わった頃合いにそう声に出した悠斗の言葉を聞き、私は集まっている悠斗と宮里さん、有栖さんに向けてそう提案をしてみます。
今の時刻はすでに十時半を過ぎていますが、お昼まではまだとはいえこの後に結局料理を作ることに変わりはないので、どうせなら一緒にご飯も食べていきたいですけど、どうでしょうか?
別に予定があったり嫌だというのなら構わないですが、もしそうしたことがなければもう少し一緒にいたいですからね!料理を作るのも特に苦ではないのですし、いい機会なので二人にも食べていってほしいですが…
「え、私たちも一緒で大丈夫なの、月白さん?」
「そこまでされなくても私たちは大丈夫ですが…」
「いえいえ、このくらいは全然気にしなくていいですよ!単に私が好きでしていることなので!」
私のあげたこの言葉に、嘘偽りはありません。別にいつも作っている量にプラスするだけであり、料理自体も好きでしているだけですからね!それに人が多い方が楽しく食べれますし、わざわざここから何もせずに帰らすのもアレなので!
付け加えるなら、宮里さんと有栖さんにも私の料理を食べてもらいたい、という気持ちもありますが!だって、こうした機会でなくては一緒にご飯を食べるなんて少ないのですから、このチャンスを逃したくはないのもありますからね!
「…うーん、なら、ご馳走になってもいいかな?有栖もいいでしょ?」
「…まあ美幸さんがいいのなら、私たちも断る理由もないのですし、ここは食べさせてもらうのです!」
「よし、決まりですね!では早速調理に取り掛かってくるので、皆さんはゆっくりしていてください!」
私はそう言ってキッチンへと向かい、早速調理に取り掛かります。とりあえず、待たせるのもアレなので早めに作れるものがよいですよね?なら、ここは天津飯にしますか!これなら作ろうと思っていたので材料もありますし、そうしましょう!
「…よし、では集合場所に向かいますか」
あの後は手早くお昼ご飯である天津飯を作り上げた私でしたが、そこからリビングへと降りてきた兄様も混ぜた五人で他愛ない会話をしながら食べ進め、食べ終わって少し休んでから三人は自分の家へと帰ってしまいました。
まあその間で有栖さんから久しぶりに一緒に攻略でもしないかと誘われたため、午後一時となっている今はゲーム世界へとログインしてきて集合場所である迷宮都市の平場にやってきたわけです。
それに静海のリーブトスの調査についてもしばらくは後になることになっているため、予定も空いているのでこちらとしてもちょうどいいですからね!加えて、最近は海ばかりしか見てなかったので違う景色もみたいという気持ちもありますが。
まあそれはいいとして、今はアリスさんとの攻略に意識を向けないとです…!今日の目標はノルワルド黒森の北の先にあるミスジリア迷森の攻略であり、私はそこのエリアは詳しくないので注意していかなくてはいけませんね…!
「レアさん!お待たせしました!」
「あ、アリスさん!さっきぶりですね!」
そんな思考をしつつも迷宮都市の広場にてアリスさんが来るのを待っていましたが、そこまでの時間もかからずアリスさんが広場までやってきました。
アリスさんは自分の家に帰る必要があったのでもう少し遅くなるかと思っていましたが、どうやらそんなことはなかったようです。というか、どう考えても急いで帰らせてしまった可能性がありますね?もしそうだとしたら、ちょっぴり申し訳なくなってしまいます…!
別に急がせるつもりはなかったのですが、それでもアリスさんは優しい人なので私を待たせないようにと急いだのかもしれません。全く、私も少しは相手のことを考えて動かないとですね…!っと、それはともかくとして、アリスさんも来たのですから早速向かうとしますか!いつまでもここにいても意味がないのですからね!
「よし、では行きましょうか、レアさん!」
「わかりました!まずは転移で、ですよね?」
「なのです!向かい先は、ミスジリア迷森の入り口ですよ!」
そう声に出して行き先を伝えてきたアリスさんに頷きを返した私は、そのまま広場の転移ポイントから前にルミナリアと共に解放を済ませておいたミスジリア迷森へと転移で移動します。
さて、ここからはモンスターが出てくるエリアなのですから、気合を入れて攻略といきましょうか!今回はアリスさんと二人っきりでの攻略でもあるのですし、危険がないように注意しておきましょう…!
「〈マナバインド〉!レアさん、今なのです!」
「任せてください!〈第三の時〉!」
アリスさんの人形たちから放たれた拘束魔法を食らって身動きが取れなくなっている狼に向けて、私は両手の双銃から攻撃系の武技を放ちます。
そんな私の攻撃は、拘束されているせいで躱すことの出来ない狼の頭部へと見事に命中し、そのままHPを消し飛ばしてポリゴンに変わりました。
「…よし、これで全てですね」
「なのです!…それにしても、この森はなかなか面倒に感じますね?」
「確かにそうですね。明らかに迷わせそうとしてくるエリアみたいですし、意外と厄介です」
森までやってきた私たちは、早速二人で揃って森の攻略を目指し始めたのですが、そこで襲ってくる様々なモンスターたちを片付けながら思わずそう声に出します。
何故なら、この森はエリアの名前通りに迷いの森のようであり、私たちのマップですら上手く働かないからです。一応マップは記されているのですが、なんとこの森にいる間は自身のいる場所がわからなくなっており、これがまた厄介と言えるのですよ。なので、普通に歩いて攻略をしている私たちでは少々どころかかなりの時間がかかりそうですね…?
この森にいるモンスターは比較的弱めで苦戦をしないとはいえ、この森の特徴のせいで攻略が上手くいっていないのが事実でもあります。
うーむ、これはどうしたものか。一応奥へ奥へと進んでいるので攻略が進んでいないわけではないと思いますが、それでも不安には思ってしまいます。自身の位置が見れないせいで進めているかもわからないですしね。そのため、こんな思考をしてしまうのは仕方ないのですが……はてさて、どうするのが正解でしょうか?
「…む?アリスさん、何やら謎の反応を感じとりました!」
「ん?謎の反応、ですか?」
「はい。多分、なんらかのアイテムなはずです」
そのような思考を巡らせつつ、時折襲ってくるモンスターたちを対処しながら森の中を進んでいた私たちでしたが、ふとそのタイミングで私の【魔力感知】スキルになんだか不思議な反応を感じとりました。
この反応からしてモンスターとは違うように感じますが、おそらくは魔力……ですよね?感知範囲ギリギリなために反応が示す場所はここから結構離れた位置にあるみたいですが、とりあえず確認にいってみないかアリスさんに提案してみますか。何か特殊なものの可能性がありますし、これを逃すのは勿体無い気もしますしね。
それに、このまま森を進むだけだとつまらないうえに謎の反応とは何かが気になりもするのですから、少しくらい寄り道をしてもいいはずです!別に攻略を急いでいるわけでもないのに加えて、時間もまだまだまで余裕があるので!
「…アリスさん、ちょっと確認に行ってみませんか?」
「そうですね……このまま歩き続けていてもアレですし、行ってみますか!」
よし、どうやらアリスさんもそこを目指すのに賛成のようですし、早速反応があった場所まで向かうことにしますか!もちろん、案内をするのは私ですよ!私が見つけた反応であるのもそうですが、アリスさんではどこにあるかもわかっていないですからね!
…しかし、私の【魔力感知】スキルにあるこの反応の正体は一体なんなのでしょうか?モンスターではないとすでにわかっていますが、それでもどんな物なのかは感知しただけではわからないですし、やはり気になってしまいます…!まあ反応のするところまで行けばわかるのですから、それを楽しみにしておきながら向かうとしましょう!
「こっち……いえ、あっちですね!」
「……あの、レアさん。一つ聞きたいのですが、もしかしなくても迷子になってないです?」
「うぐっ」
そうして魔力の反応があった場所を目指して私を先頭に森の中を二人で歩いていたのですが、その道中にてアリスさんからふとそのように問いかけられてしまいました。まあ明らかに目的の場所がわかっていないように歩いているので仕方ないですが、これには理由があるのですよ!
何せ、先程感じ取った反応以外にも周囲にはたくさんの魔力反応があるため、どうしても迷ってしまうのです!そのため、今もあっちへフラフラこっちへフラフラと歩き続けていますし、アリスさんの疑問も当然といえるでしょう。私だってアリスさんと同じ立場ならそんな反応になっていたのに間違いないのですからね。
「し、仕方ないじゃないですか!周りにはたくさんの反応がありすぎてわからないのですよ!?」
ジト目で見つめてくるアリスさんから視線を逸らしながらそう返した私でしたが、流石にこの状況なら仕方ないのですよ…!
あちこちから魔力の反応を感じるため、探しに動くだけでも精一杯なんですからね…!そのうえそれらは魔力を発しているだけの置物らしく、なんらかのダミーのような物であるともわかるので私たちを惑わそうとしているのは明らかです。
「で、ですが、目的の場所と思われるところには着きましたよ!」
「…まあレアさんがいなければ見つけられなかったでしょうし、その点は気にしないでおきますか」
アリスさんも言ってますが、今回は私のおかげでこれを見つけられたようです!先程からも多数の魔力反応を次々と確認していたのですが、ついに目的のものと思われる物を見つけたのですし、もっと褒めて欲しいくらいですよ…!
なんせ、私が見つけたのはこの森にあるのが当然とばかりに主張しているログハウスのような建物だったのですからね!どう考えても、先程までのダミーはこの建物を見つけられなくするためのものだとわかるので、よくもまあ見つけることが出来ましたね?




