275話 生放送の準備
「…むう、やはりそう簡単には見つけられないみたいですね」
「だね。まあワールドモンスターの手掛かりらしきものは少しとはいえ見つけられているし、それで我慢するしかないさ」
そうしてカスピアンさんから誘われて海の調査に向かった日からすでに時は大いに流れ、今は平日の学校が終わって家に帰ってきた後である金曜日の午後五時となっています。
あれからも学校に通いつつ船に乗って調査を続けていたのですが、私のすぐ隣にいるマリアナさんと一緒に思わずそう呟いてしまいます。何故なら、静海のリーブトスに関する情報が少ししか集められていないからです。
一応は手掛かりらしきものを僅かに集めることは出来ているのですけど、月曜日から調査を続けているにしてはなかなか集められていないのが事実です。それに手掛かりといっても、静海のリーブトスから自然と剥がれ落ちた鱗や食べられた後に残ったと思われる素材、あるいは静海のリーブトスにやられたと思しき船の残骸など、あまり情報になるものもないためにどうしても焦ってしまうのですよ。
あ、ちなみに今も私と話しているマリアナさんですけど、この人は私が船に乗って調査に向かうタイミングで声をかけてきた人であり、この人もこの調査隊に混じって行動しているのですよ。私は初対面ではないですけど、それはシスター服の時であったため、あちらかしてみれば初めて会う人なのですけど、意外にも友好的だったのです。ので、そのまま一緒の船に乗っているわけでもあります。
…それにしても、本当に静海のリーブトスにまつわる情報を集めるのは難しいですね。私、南大陸に来た時に一度だけ遭遇をしていたのですが、あれは運が良かっただけみたいでした。あの時のようにすぐに見つけることが出来たのならばもっと楽が出来たと思うので、襲われるのは嫌だとしても早々に見つけたかったです…!
「…二人とも、今日のところはこれで引き上げるとするから、また明日で大丈夫かい?」
「あ、わかりました!私は大丈夫です!」
「あたしも問題はないさ」
「よし、なら戻るとするよ」
そう私とマリアナさんの二人に対して声をかけてきたカスピアンさんにそう返した私たちでしたが、今日はこの辺で終わりにするみたいです。
まあここまで何も見つけられないと気力も湧かないですし、そろそろ何かを見つけられればよいのですけど、そう簡単には見つけられませんからね。別に急いで見つけないといけない理由はありますが、それでも早い事に越したことはないので明日にでも見つけたいです…!
それにこの一週間はずっと海の調査に向かっていたため、流石にこの景色にも飽きてきたのでそろそろ別の景色を眺めたいですよ…!想像よりもはるかに手掛かりを見つけるのが出来てませんし、ここまで手こずるとは思いませんでした…!全く、生息地くらいはすぐに見つけられたのなら楽だったのに!
「レア、それとマリアナ。さっき明日にも行くと言ったけど、やっぱりこの一週間は休みにしないかい?」
「私は別に構いませんが……何故ですか?」
「あたしもそれでいいけど、何か理由があるのかい?」
カスピアンさんは先程の予定を変えたいようですけど、何かあったのでしょうか?まあ私たちも特に支障はないのでいいですが、前言撤回する理由については気になります。
だって、カスピアンさんたちも静海のリーブトスの討伐を目指していたので、それを後回しにするのは少しだけ不思議ですからね。何か事情があるのだとは容易に想像はつきますが、それでも気になるのは仕方ありません。
「実は、ここ一週間ずっと船に乗っていたから仕事が溜まっているみたいでね。それの片付けもしないといけないし、働き詰めだった部下たちにも休暇を与える必要があるからそう提案したんだ」
「なるほど、仕事ですか」
「確かに、それなら仕方ないね」
先程の予定を変える理由を説明してくれたカスピアンさんでしたが、そんな理由だったのですね。
確かにここ一週間近くはずっと海に向かって調査をしていたのですから、仕事が溜まっているのも当然……ですかね?それに部下たちに休暇を与える必要もあるみたいなので、それなら静海のリーブトスの討伐を後回しにするのにも納得です。
別に急いで討伐しないといけないわけではないですし、いまだに生息地なども見つけられていないので、船で調査に行くのはしばらくは休みにしますか。加えてそろそろ海以外の景色も見たかったのでちょうどいいタイミングですね!
まあなんにせよ、再び調査に行くのは一週間後とのことなので、それまでは他のエリアや街にでも行って冒険でもしているとしましょう!
「…よし、今日はアレの日ですね」
あの後は特に何かが起きることもなく街まで戻った後、ログアウトをして現実世界にで勉強などをして過ごし、そこから時は流れてすでに日付は次の日である土曜日となっています。
そして今日はなんと、昨日悠斗から聞いたところによるとお昼から公式サイトの生放送があるみたいなのです。悠斗や有栖さんはおそらくは第三回目のイベントについてではないかと言ってましたが、私も同じ予想です。
前にイベントがあった時からかなりの日数が経っているのですから、間違いなく次のイベント関連ですよね…!まあ違う可能性もなくはないですが、それはないとは思います。なんたって、公式からの生放送なのですしね!
…ちなみに、それがあるので昨日のうちにカスピアンさんには静海のリーブトスの討伐を一週間よりももう少し後にするように頼んでいます。生放送的にイベントがもう少しで起こると確信が持てているため、それに集中をしておきたいので。
まあそれはいいとして、その生放送は皆で私の家に集まって見ないかとも誘っているので、ゲームはやめておいて待機しておかなくてはいけませんね。誘っているメンバーはいつもの悠斗と、今回が初めての宮里さんと有栖さんの三名です。その二人は家がわからないかもしれないので早々に場所を伝えていますが、大丈夫でしょうか?
…心配は尽きませんが、まあ大丈夫ですよね。何かあれば悠斗が対応してくれることでしょう。っと、今日の予定はこれでよしとして、今の時間はとりあえず買い物を済ませてから、勉強でもして時間を潰してますか。昨日の夜もしましたが、勉強はいくらやってもよいですからね!
「…むっ、呼び鈴がなりましたね?」
あれから買い物を手早く終わらせた後に自分の部屋で勉強に励んでいると、ふと聞こえてきて呼び鈴の音に私の意識は戻りました。
…どうやら気がついた時にはすでに時刻は十時になるところだったみたいです。勉強に集中していたせいで、思ったよも時間は経っていたようですね?それと来るのが早いように感じるかもしれませんが、生放送があるのは十時ちょうどなのでこれでも遅い方ではあります。
まあ何はともあれ、さっさと玄関に向かって家に招かないとですね。いつまでも外で待たせていては失礼ですし、すぐに行動としましょうか!
「よっ、美幸。来たぞ」
「こんにちは、月白さん!」
「こんにちはです、月白さん!」
「三人ともこんにちはです!どうぞ、入ってください!」
私は家の扉を開けるとすぐ目の前にいた三人へと声をかけつつ、家の中まで招きます。三人はそんな私の言葉に返事をしてくれた後に揃って入ってきますが、やはり初めて私の家に入るからか、少しだけ緊張しているみたいです。
別に緊張することなんてないとは思うのですが、まあ私も同じ立場なら同様の反応になる気はしますし、置いておきますか。特に悪いことでもないのですからね。
「…それにしても、三人は揃ってきたのですね?」
「まあな。俺が案内するってことで、一度集合してからここに来たんだ」
家のリビングに向かった後にふと気になったことを聞いて見ると、それについては悠斗が代表として答えてくれました。
なるほど、それで三人は揃ってやってきたというわけですか。まあ家の住所は教えているとはいえ初めての場所なんですから、案内は必要ですよね。今回は悠斗が対応してくれたのでよかったですが、これからは私も先に案内したりするのも良さそうです。
「さて、とりあえずそろそろ始まるだろ?」
「あ、それもそうでした!今準備しますね!」
悠斗の言葉を聞き、私は急いでリビングへとパソコンを持ってきた後、そのままパソコンを操作して公式サイトを開いて動画を再生する準備をします。今の時刻はもうすぐで十時になるところなので、なんとか間に合いましたね…!
今回の生放送は私たちの予想では第三回目のイベントですが、それは合っているでしょうか?それともまた別な内容であり、イベントに関係はしていなかったり?…まあ見ないことにはわからないのですから、皆で動画を再生して見ればいいですね!
もしイベントではなかったとしても、貴重な情報源ではあるので聞き落としはないようにしなくては…!




