265話 噂の調査
「…それで、何時にするんだ?」
あの後はルイさんを連れてムニルさんのお店へと向かい、そこで食事を済ませてからまた後でとフレンド交換も済ませ、一度別れた後にログアウトをして現実世界に戻った私でしたが、今は現実世界にて兄様と一緒にお昼ご飯を食べているところです。
そして兄様からは簡潔にそう聞かれましたが、まあ間違いなく夜に行こうと誘った砂漠の噂についてですね。それは夜にしか出てこない特殊なエリアらしいので、行くとしたら夜の時間帯になりますが、何時にするのが良いでしょうか?いつもの夜ご飯の時間は七時あたりなので、行くとしたらそれもズラした方が良さそうですが……兄様は何時くらいがいいですかね?
「…兄様は何時がいいですか?」
「そうだな……なら、夜ご飯を早めて、食べ終わってから向かうのはどうだ?」
「ふむ…」
確かに、それが一番良さそうですね?いつも通りの時間だと明らかに遅くなってしまいますし、明日からはついに学校が始まるのです。であれば、早めにその噂を探って攻略も済ませるのがベストですか。
では、今日の予定はそうすることにして、夜ご飯の時間もいつもよりも早めの六時にでもするとしましょう!これなら時間にも余裕がありますし、これが最適ですよね!ということで、兄様にもそれを伝えてこれがどうか聞いてみますか。
「兄様、それなら夜ご飯は六時でどうですか?」
「なら、そうするか。その時間ならすでに夜にもなっているはずだしな」
兄様も私の提案を聞いて頷いていますし、今日の予定はそれで決まりにしてそう動くことにしますか!兄様も言っている通り、その時間ならすでに夜になっていると思うので砂漠の噂の正体も確かめられるはずですよね…!
噂の正体である特殊エリアは夜にしか現れないとはいえ正確な時間はわからないですが、六時を過ぎていれば流石に見つけられますよね…?もし見つけることが出来なければ無駄足になりますが、おそらくは大丈夫……なはずです!もしそうなってしまったらと心配は尽きませんが、不安になっても仕方ないのでこれは気にしないでおきましょう!
「よし、ご馳走様でした。じゃあ美幸、また夜にな」
「はい、兄様も遅れないように気をつけてくださいね!」
そんな会話をしている間にも兄様はご飯を食べ終わり、後片付けをして部屋に戻って行ってしまったので、私も早く食べちゃいますか!この後はルイさんの案内を再度するのですから、パパッと行動しなくては…!
「…さて、兄様はどこにいますかね…?」
それからは夜ご飯までの時間でルイさんを案内していた私でしたが、そこから時間は一気に進み、今は夜の七時です。
夜ご飯についてもすでに兄様と一緒に終わらせているため、今は噂の調査に行くために砂漠都市サラメダで兄様を探しているのですが、どうやら兄様はまだいないみたいです。まあ私が早くに来てしまったのでそれも仕方ないですが、出来れば早く来て欲しいです!今も周りにいる数名のプレイヤーから視線が向かられているため、少しだけ居心地が悪いのですよね…
もしかして、この人たちも砂漠の噂を確かめに行こうとしているのでしょうか?それならここで人を待っているのも納得ですし、この予想は的外れではなさそうですね…?
「悪い、待たせたか?」
「あ、兄様!」
寒いので黒ローブを纏いつつ、そんなことを考えながら街の広場にて兄様を待っていた私でしたが、そこからそこまでよ間をおかずに兄様が私の元までやってきました。
兄様は夜ご飯の時に使った食器などの後片付けをしてくれていたのですが、思いの外早く来てくれましたね?まあ兄様も楽しみにしていたのかもしれませんし、それで手早く済ませてきた、ということでしょうか。兄様との冒険は久しぶりなんですし、私的にも早めに来てくれるのに越したことはないですがね。
まあ何はともあれ、兄様もやってきたのですし、さっそく砂漠の噂の調査といきますか!夜にしか現れない特殊エリアとのことでしたし、しっかりと調査を済ませてみせますよ!
「では、早速行きましょうか!」
「だな。んじゃ、行くか」
私なあげた声にそう返してくれた兄様をチラリと見てから、私たちはそうそうに砂漠を目指して広場から歩き出します。
…ちなみに、今回の攻略には私と兄様の二人しかいませんよ。兄様のパーティメンバーであるセントさんたちがログインしていないのもありますが、今回は兄様と二人きりで行きたいと思ったからです。クオンならまだしも、兄様と二人きりというのはとても珍しいですし、たまにはこういうのも悪くはないですよね!
「…そういえば、その特殊エリアがあると思われる場所は知っているのか?」
「いえ、私は知りませんね。そういう兄様は?」
「一応は先に調べておいたから知っているが……まさか知らずに歩いていたのか?」
そう言ってジトーっとした視線を送ってくる兄様からは目を逸らし、私は下手くそな口笛を吹きます。
し、仕方ないじゃないですか!私、そういう情報を調べることはほとんどないですし、噂に関してもアオイさんから聞いただけなので詳しくもないのですよ…!というか、すでに調べている兄様に私的には驚いたのですが?
兄様も私より先にその噂について知っていたからなのかもしれませんけど、それにしては情報を集めるのが早いですからね。…私も、もう少し情報を集めるために動いた方が良いのかもしれませんね。人から聞くだけではなく、自分でも動かなくては…!
「…とりあえず、場所が知らないのなら俺が案内するな」
「あ、お願いします!」
兄様もそう言ってくれてますし、場所を知っているのなら案内については任せることにしましょうか!…私から誘ったのにも関わらず、こうして人に任せてしまうのは少々申し訳なく感じてしまいますがね。
やはり情報を集めるのはとても大事ですし、これからは私も先に調べたりするようにしますか。このままでは毎度毎度人に頼り切りになってしまうのですから、少しは私も活躍出来るようなしなくては…!
なんにせよ、今回はすでに場所を知っているらしい兄様に任せるとして、次からは気をつけることにしますか!人に頼り続けていては失礼でもあり、尚且つ嫌われる原因にもなるのですから、これは反省して次に活かすことにしないとですね!
「…そういえば、レア。レアは砂漠の噂についてはどのくらい知っているんだ?」
そうして兄様の案内のままに、時折襲ってくるモンスターを倒しながら砂漠を歩いていた私たちでしたが、そのタイミングでふと兄様からそのように問いかけられました。
どのくらい知っているかと聞かれましたが、私は特に調べたりしたわけではないのでほとんど知らないのですよね。強いていえば、夜にしか出てこないエリア、くらいでしょうか?それくらいならほとんどの人が知っているでしょうし、知っている範囲には入らないとは思いますが。
加えてそれを聞いてくるということは、兄様はすでにある程度の情報は掴んでいる、ということですかね?その特殊エリアがある場所も知っているみたいですし、これはあながち外れてはいなさそうですけど…
「私はほとんど知りませんね。そういう兄様は?」
「俺も詳しくはないが、ある程度掴んだ情報によると、どうやらそのエリアは蜃気楼で隠されているらしく、近づくまでは見つけることが出来ないらしいってことくらいだな」
ふむ、蜃気楼で隠されているエリア、ですか。蜃気楼とは、確か現実世界の砂漠でも起きる現象でしたっけ。空気の温度差によって光が屈折することで、遠くの景色が実際とは違って見える現象、だったはずです。
そのうえ夜にしか現れないとのことですし、それを始めて見つけた人は凄いとしか言いようがありません…!普通に砂漠を歩いているだけでは見つけることがまずないはずなので、一体どうやって見つけたのでしょうか?まあそれはひとまず置いておくとして、今はそのエリアについてね。
兄様もそのくらいしか知らないみたいですけど、そのエリアがある場所は把握しているみたいなので目指すのに問題はないみたいですが。
「っと、そろそろだな」
「そろそろ…?…って、何やら変なのが見えてきました…!」
兄様とそう言葉を交わしながらも砂漠を歩いていたのですが、いきなり兄様がそのように声をあげたと思ったら、急に視界の奥に何かの建物が現れました。その建物とは、全体的に謎の石材らしきもので造り上げられているまさにファンタジー世界の監獄と呼べる見た目をしており、外側が高い壁で囲まれている結構大きめな建物となっていました。加えて、それのせいでなんとなく暗めの雰囲気も感じられます。
…というか、先程までは中もなかったにも関わらず突如建物が出てきてので少しだけ驚きましたが……そういえば兄様は蜃気楼で隠されていると言ってましたね。なるほど、これは確かに隠されているエリアなわけです。近づけば簡単に見つけることが出来ましたし、そこまでしっかりと隠されているわけではないのかもしれませんが。
それにその建物の周りには複数のプレイヤーらしき人影も見かけるので、やはり私たち以外にもこの噂を確かめに来ている人は思いの外いるみたいです。なら、私たちもそこに混ざらせてもらいますか!
「…ん?な、【時空姫】!?」
「なに!?って、【剣聖】もいるじゃないか!?」
「…やっぱり、私たちは有名人なのですね」
「まあ仕方ないさ。こうなるのはいつも通りだしな」
近づいてくる私たちを感知したのか、こちらに視線を向けてきたここに集まっているプレイヤーの皆さんが私たちのことを口々に言っているのに対して、思わずため息をついてしまいます。
兄様も言っている通りこれは仕方ないのかもしれませんが、この大袈裟な反応にはどうしても慣れませんね。別に私が特別な人ではないのですから普通に接してくれればよいのですけど、周りからすればその反応も当然なのかもしれません。
この人たちの実力も私たちよりは劣るようには見えるので、それもあってこのような反応の可能性もありますか?まあ何はともあれ、私たちもここを調べるのに協力させてもらいますよ!




