263話 PK再び
「そういえばレアちゃん。レアちゃんはユニークスキルを持っているんだよね?」
私はルイさんを連れながら森の中を歩いて初期の街まで向かっていたのですが、そのタイミングでふとルイさんからそう聞かれました。
このゲームの公式PVやゲーム経験者からの情報を見ればすぐにわかりますし、流石に知られているみたいですね。まあ特に隠すことでもないのでいいですが、そう改めて聞かれるとやはり有名になってしまったのだとわかってしまいます。
私は"目立たないようにしていた"というわけでもないので有名になって知られるのに不都合はありませが、こうしてそれについて聞かれると少しだけ苦笑をこぼしてしまいます。
…これ、この先にあると思われる第一回のイベントの時みたいなPVPのイベントが開催されたとしたら、結構不利な立場になりそうですね?私のユニークスキルは基本的に初見殺しと様々な手札で攻めるタイプのものであるため、知られていては対策が容易に練られそうです。っと、今はそれについては置いておくとして、まずはルイさんの問いかけに答えなくては…!
「そうですね。私は二つ名通りの【時空の姫】というユニークスキルを持っています」
「やっぱりそうだよね!いいなー、私も欲しくなるよ!リスナーのみんなはどう?やっぱり欲しいよね?」
ルイさんは私の言葉を聞いて視聴者の人たちにもそのように聞いているみたいですが、やっぱりユニークスキルは欲しくなりますよね。
私は偶然獲得出来ましたが、普通にプレイしていてはそう簡単に手に入れることは出来ないため、憧れてしまうのには十分納得出来ます。私だって持っていなければ同じ気持ちになったでしょうし、ルイさんも欲しがってしまうのは当然と言えるでしょう!
というか、ルイさんは動画を見ている視聴者さんたちにもそう聞いていますけど、見ている人たちもおそらくは同じ気持ちですよね?ユニークスキルは似たようなものがある可能性はありますが、基本的には自分だけのオリジナルスキルなんですし、誰もが喉から手が出るほどに欲しいのだとは容易に想像がつくので!
「うんうん、やっぱりみんなも欲しいよね!ん?あ、なるほど、確かにそれは聞いてみるのがいいかな?」
「ん、どうしましたか?」
そうしたことを考えつつもルイさん共に歩いていた私でしたが、なにやらルイさんが納得したように一人で声に出しています。
….視聴者の人と会話をしているとはわかっているのですが、周りから見てみるとどうしてもやばい人に見えてしまいますね…?まあ何はともあれ、私に聞きたいことがある様子ですし、一体何を聞かれるのでしょうか?話している話題からしてユニークスキルに関係したことでしょうけど……流石に質問の内容は予想出来ませんね。
「えっとね、ユニークスキルって基本的にどうやって手に入れられるのかって聞いてもいいかな?」
「ふむ、それですか。別に隠すことでもないのでいいですよ」
私はそう前置きをした後、ルイさんから問いかけられたそれについて説明を始めますす。まあそうは言っても、私だってハッキリと知っているわけではないのでこれまでの経験によるある程度の予想ではありますが、それでも知るないよりはマシ……ですよね?とりあえず、私に出来る説明はさせてもらいますよ…!
「…よし、森を抜けれましたね」
「だね!いやぁ、この世界のエリアはなかなか広いんだねぇ」
「これでもまだ狭いほうなのですよ?この先のエリアからはもっと大きくなるので」
「へー、そうなんだ!それなら冒険しがいがあるってもんだね!」
あれからユニークスキルについてのことを教えた後も歩き続けること数十分、やっと森を抜けることが出来て初期の街が見えてきました。
加えてルイさんはこれくらいでも広いと感じているようですけど、これで驚いていては先が大変ですよ!なにせ一つのエリアを攻略するだけで半日近くはかかるのですから、これ以上にエリアは広くなっていますからね!
「…む、何か用ですか?」
「ん、誰?」
そうして森から抜けた後も私たちは初期の街を目指して歩いていたのですが、その途中でいきなり私たちの進路に数名のプレイヤーらしき人物が現れて立ちはだかってきました。
…私たちの進路を阻むように現れましたし、その人たちからは悪意などをヒシヒシと感じるので、間違いなく私たちに何かをするつもりだとわかります。それにこちらをニヤニヤと見つめるかのような表情を浮かべてもいるため、少しだけ不快に感じてしまいますが……一体なんのようでしょうか?出来ることならすぐに退いてもらいたいのですけど、そう簡単に退いてくれるわけがありませんよね。
「お前さん、【時空姫】だな?」
「…そうですが、貴方たちは何者ですか?」
「俺たちはクラン凶手の死徒だ。その首、頂かせてもらうぜぇ?」
そう言ってジリジリと私とルイさんに近づいてくるPK集団ですが、これはどうしましょうか…?
流石に私一人ではルイさんを守りながら戦うのは辛いですし、人数差もあるため容易には突破が難しそうですよね。それに敵であるPKプレイヤーは全員で五人もいるため、普通に考えてやられてしまう可能性が一番高くも感じます。トッププレイヤーである私といえど、人数差は如何ともし難いのでこのままではマズイですね…!
とりあえず、間に合うかはわかりませんがログインしているフレンドに救難信号であるメッセージを送っておきますか。何もしないよりはマシなはずなので…!そして今の状況に戻りますが、ひとまずはこの人たちを蹴散らすのを目指して抵抗するとしましょう!そう易々とやられはしませんよ…!
「…ルイさん、私一人では守り切れるかわからないので、生き残ることだけを考えていてください」
「わ、わかった!頑張って、レアちゃん!」
私はルイさんに対して一旦そう声をかけた後、即座にインベントリから双銃を取り出してPKプレイヤーの集団へと狙いを定め、そのまま銃弾を乱射します。
敵であるPKプレイヤーたちはモンスターとは違うのでヘイトを取るといったたことは出来ませんが、出来る限りは意識をこちらに向けさせますよ…!そうでもしないと初心者であるルイさんなんてすぐにやられてしまいますし、そのままやられるのを見過ごすことは出来ないので!
「お前ら、まずはあの【時空姫】からやるぞ!」
『おう!』
リーダーらしき男性の声に残りの四名もそう返しているので、とりあえずの狙いは私みたいです。…そういえば、私の首を狙っているようなことを言ってましたし、それで私に狙いを絞ったのでしょうか?
まあなんにせよ、ルイさんが狙われないのなら好都合ですね!私一人狙いのようですし、その間にきちんと倒させてもらいますよ!これでも私はプレイヤーの中においてトップに立っているのですから、こんなところでやられるわけにはいきませんっ!
「最初から全力です!〈第七の時〉!そして〈第一の時〉!」
私は即座に、動きを加速させる武技と分身を生み出す武技の二つを自身へと撃ち込んだ後、私の放った無数の弾丸を避けながら襲いかかってくるPKプレイヤーたちの攻撃をこちらもゆらゆらとした不規則な動きで避け、反撃の弾丸を分身と共にPKプレイヤーへと再び放ちます。
しかし、それには狙っていたPKプレイヤーとは違う仲間のPKプレイヤーの手に持つ短剣で切り捨てられることによって防がれてしまい、ダメージにはなりません。しかも、それ以外のPKプレイヤーにも分身が立て続けに放った弾丸すらもやはり仲間同士で助け合うことで有効打にはなりません。
「むう、そう簡単にやらせてはくれませんか…!」
うーむ、やはり人数差があってどうしても攻めにくいですね…!加えて、PKプレイヤーとはいえ仲間同士で協力もしているせいで攻め手に欠けてしまっていますし、私一人ではなかなか倒すまではいけなさそうです…!分身がいても人数差は埋められないため、これはどうしましょうか…?
このままでは一人で相手をしている私の方が先に体力が尽きてやられる可能性が高いですし、逃げようと思っても逃してくれないですよね。今も私の一挙一動を見逃さないと言わんばかりに意識を向けられていますし、これではたとえ何か策を練って動いたとしても即座に対応されてしまいそうです。
「くくっ、これならあの【時空姫】もやれそうだなぁ?」
「その顔が苦痛に歪むのが楽しみだぜ!」
「ひひっ、見事に仕留めてやるぜぇ?」
「サクッと殺しちまおうかぁ!」
「お前ら、例え殺せそうだとしても最後まで油断はするなよ?」
PKプレイヤーたちが私の周囲に立ちながら各々好き勝手に声に出していますが、やはりこのようなことをしているだけはあって性格破綻者といっても違いはないみたいです。人が苦しむところを見て喜んでいますし、本当に終わっている人たちですね…!
しかもそれによって油断してくれるかもと思いましたが、リーダーらしき男性の言葉を聞いてキチンとこちらへと警戒は強めているため、なかなかうまい具合にはいかなさそうです。
しかし、どうしましょうか?このままでは逃げることも倒し切ることも難しいように思えますし、ハッキリ言って私にとって最大のピンチと言っても過言ではないかもしれません。今のところはまだやられる心配もないとはいえ、長期的に見ればこちらが不利だともわかりますしね。
…ですが、私の背後にはルイさんが心配そうにしながら立っているのです。やられる可能性は大いにありますが、せめてルイさんだけは生き残らせてみせます…!
だから、レア!勇気を振り絞るんです!このままみすみすとやられていいのですか!私はもう、誰も失うわけにはいかないのです!
「絶対に、倒してみせますっ!」
「なら、手を貸してやろう」
そう声に出しながらPK集団に向けて強く意識を向けたその瞬間。そんな私に対して何者かの声が聞こえたと思ったら、私の周囲にいたリーダーを除くPKプレイヤーの四人が突如地面へと倒れ込みました。




