13.再会
社交シーズンで王都に来たわけでして。
王都の様々な貴族の方のパーティーに連日連夜参加しております。
「お疲れではないですか?」
旦那様は色々と気遣ってくださいます。
「はい! 公爵夫人としての務めですし、何よりわたくしには人並み外れた体力がございますので」
「それは頼もしい」
ふっと笑う旦那様の美しさの威力と言ったら! もはや暴力の域です。
目が潰れそうです。
「本日は王城でのパーティーになります」
「王城……流石に緊張いたしますね」
「と言っても身内ですからそんなに構えずに楽しんでください」
それは旦那様にとっては国王陛下は伯父にあたるお方でしょうけれど。落ちこぼれ元伯爵令嬢からすると雲の上の存在です。
ですがアイリス様に会えると思えば、多少安心感がございます。
流石は王城。
煌びやかなんてものではありません。
お庭からして規模が違います。
「オールブライト公爵ならびに公爵夫人。どうぞこちらへ」
パーティーホールへと案内されます。
会場は貴族の方々で溢れかえっています。
まずはご挨拶と、旦那様とともに挨拶回りをしていきます。
「あら、出来損ないのお姉さまじゃない」
懐かしい声が後方より聞こえます。
「フェリシテ。お久しぶりですね」
「お姉さまの分際で国王陛下主催のパーティーに参加するだなんて。身の程知らずにもほどがあるのではなくて?」
「それは—―」
「身の程知らずはあなたの方ではないですか? 彼女は公爵夫人。伯爵令嬢のあなたが先に声をかけてよい相手ではないのですよ」
旦那様の静かに怒りを溜めた声が頭上から降ってきます。
「あ、あなた様がオールブライト公爵様? ご存知の通り姉のヴィオラには魔力がないのです。その点私には魔法管理局お墨付きの魔力量がございます。姉とは離縁して私と結婚を――」
「笑止。私があなたと結婚を? 虫唾が走りますね」
旦那様、相当お怒りです。こんなに冷たい旦那様は初めて見たかもしれません。
「あなた方家門がヴィオラにしてきた仕打ちを私が知らないとでも? 到底人間のすることとは思えませんね。陰湿でない分魔物の方がましだ」
「な、なにを」
「これから先、ヴィオラに近づかないでいただきたい」
「何の騒ぎかしら」
アイリス様がいらっしゃいました。
「ブレアム夫人。こちらのレディが無作法を」
「あなたはエバンス家の次女ね」
「ブレアム侯爵夫人……! 私はエバンス家次女のフェリシテと申します」
「そう、あなたが」
「私のことをご存じで……!」
フェリシテの顔がぱぁっと明るくなります。
先ほど旦那様に詰められたばかりなのに。なかなかにメンタルがお強いです。
「えぇ、よく知っているわよ。私の可愛い甥の嫁を虐げていた外道だということはね」
先ほどとは打って変わってさぁっと顔が青ざめます。
「そ、それはお姉さまに魔力がないからで……」
「到底、貴族令嬢のする行動ではないわね。あなたは美しくないわ。ヴィオラを見習うとよろしくてよ」
「~~! 私はこれで失礼いたします」
あら。目上の方より先にその場を離れるだなんて。確かにお作法がなっていませんね。
「大丈夫ですか、ヴィオラ」
旦那様の暖かな声が心に浸透します。
「わたくしは大丈夫ですよ。旦那様もアイリス様もわたくしのために怒ってくださってありがとうございます」
「当り前じゃない。あなたは家族なんだから」
「家族……」
温かい響きです。
そうですか……わたくしにも家族ができたのですね。
「わたくしと旦那さんとアイリス様は家族?」
「えぇ、そうです。家族です。そして夫婦です。あなたに何かあったら私は正気ではいられません」
「あら、少し見ないうちに随分と仲良くなっているじゃない」
アイリス様が嬉しそうに微笑みます。
やはりそうですよね! あの夜会の日から旦那様の態度が明らかに違いますもの。
「改めて言わないでください。恥ずかしい」
「あなたのそんな顔が見られるなんて、嬉しいわ。ありがとう、ヴィオラ」
わたくしは何もしていないのですけれど、アイリス様が嬉しそうなのでこのお礼は受け取っておきましょう。
「さぁ、あなた方もパーティーを楽しんでいらっしゃい」
「そうですね。ヴィオラ、踊ってみませんか?」
旦那様が手を差し出します。
「でもわたくし、舞踏の経験がありません。旦那様のご迷惑になるかと」
「私に身を任せて音楽に乗れば大丈夫ですよ」
旦那様はどこか楽しそうです。
旦那様が楽しそうなら、多少の恥はなんてことないですね。
旦那様の言う通り、身を任せて音楽に乗ってみます。
が、やはり剣術で体を動かすのとは勝手が違います。
何度旦那様の足を踏んだことか。
「申し訳ありません、旦那様。うまく踊れないばかりか何度も足を踏んずけてしまいました……」
「いいのです。私がヴィオラと踊りたかっただけですので。それに、練習すれば今にうまくなりますよ。あなたの運動神経は並ではありませんから」
そういって旦那様は笑います。
やはり美形の破壊力は凄まじいです。
周囲のご令嬢方の黄色い歓声が聞こえてきます。
「あの……公爵様。私の娘とも踊っていただけますか?」




