12.検査
「ヴィオラ、あなたを魔法管理局に連れていきたいのですが、構わないでしょうか」
旦那様から思いもよらない提案をされました。
「それは、構いませんが……わたくしには魔力がないのにどうしてです?」
「私が魔力を吸収する腕輪をつけていることは前に話しましたね」
「はい」
「その腕輪の調子が最近おかしくて。最近の変わった出来事といえばあなたと結婚したことぐらいですから」
「なるほど! それで関連性を調べるということですね!」
「嫌なら断っていただいてもよろしいのですよ」
「? 旦那様のお役に立てるのなら喜んでお供しますよ」
旦那様がお困りの原因がわたくしだったらどうしましょう。
きっとそういった不安事項も調べに行くのですよね。
「ここが」
着いた魔法管理局は思ったより高い建造物でした。
昨日あの塔は何だろうと思っていましたが、まさか魔法管理局だったとは。
「入りましょうか」
旦那様に続いて中に入ります。
カウンターの中では当然のごとく書類が宙を舞って移動しています。
水や火の魔法があちらこちらで展開されています。
「凄い……」
魔力がないのだからと、魔法とは隔離されて生きてきたので実は魔法を見るのは初めてなのです。
「ヴィンセントはいるか」
「はいはい」
旦那様のお知り合いでしょうか。
真っ赤な髪に金色の瞳が特徴的な綺麗な方です。
「あ、奥さん連れてきたんだ。どうもよろしく~」
「ヴィオラ・オールブライトと申します。よろしくお願いいたします」
「じゃあ早速、検査していこうか」
ヴィンセント様はそういうと旦那様とわたくしを別室へ案内してくださいました。
「奥さん、ここに手を置いてみてね」
指し示されたのは水晶玉。
そっと手を置いてみます。
「やっぱり魔力は空だね。でも……」
「でも、なんだ」
旦那様が食い気味に問います。
「これは凄いな。器が大きすぎるね。イライアスの倍以上だ」
お医者様が仰られていた器のことでしょうか。
「それに亀裂が入っている」
「それは何か体調に影響はないのか」
「まぁ落ち着きなって、イライアス。体調に影響はないよ。何しろ入っているはずの魔力がないからね」
ヴィンセント様は何事か思案してパチンと指を弾きました。
「わかった。腕輪の魔力吸収が遅い理由」
「何だ」
「奥さんのおかげだね」
わたくしが……?
「詳しく」
「腕輪の代わりに奥さんがイライアスの魔力を吸収しているんだよ」
「ヴィオラの方に問題は起きないのか」
「元々の器が規格外なうえに亀裂が入っているから、そばにいても一生魔力酔いを起こすことはないね」
それならよかったです! これからも旦那様のお傍にいられます。
「実は、ヴィオラが魔術書の文字が読めるらしいのだが」
「それはイライアスの膨大な魔力に触れ続けているからだね。魔力は溜まらないけど水滴程度のわずかなイライアスの魔力が影響している。それで魔術書の文字が読めるようになったってこと」
「なるほど。今一度聞くが、ヴィオラの体に問題はないんだな?」
「ないって。過保護だなぁ」
旦那様が何度も私を気遣ってくださって、なんだか恥ずかしいような、叫びだしたいほど嬉しいような気がいたします。
「それなら良い」
「でもこれは朗報だよ、イライアス。君の行動できる範囲と時間が格段に増える。もちろん、奥さんと一緒の時だけど」
「わたくし、旦那様のお役に立てますか?」
「立てる立てる。奥さんがいればイライアスは自由だよ」
「待て。ヴィオラに負担を強いるわけには――」
旦那様のお役に立ちたいのに……。
「いや、色々と助けてもらいましょうか。夫婦になったわけですし」
「はい! お任せください!」
わたくしが誰かの、旦那様のお役に立てる。中央にいたころは何もできないと思っていたのに。
「今日はお付き合いいただきありがとうございました」
「いえ、わたくしの方こそ、自分の体質を知ることができてよかったです」
魔法を見ることもできましたし、旦那様のお役に立てることも知れましたし、非常に有意義でした!
「旦那様、わたくしのわがままを聞いていただいても?」
「何でしょう」
「旦那様の魔法が見てみたいです。今日、初めて魔法を見ました。旦那様の魔法はきっと、とても綺麗なんでしょうね」
「魔法に抵抗はないのですか……?」
「? どうしてですか?」
「魔法が使えないことで苦労も多かったのではと……」
魔法の話をすると旦那様が苦しそうになさるのはそれが原因でしたか。
旦那様の優しさが身に沁みます。
「実はそこまで苦労はしていないのです。わたくしは剣一本で生きてこられましたし。ただ、魔法は必要ないからと見る機会がなくて、憧れはあったのです」
「そうでしたか……私の魔法で良ければいつでもいくらでも見せましょう」
「本当ですか? ありがとうございます!」
「屋敷に戻ったらすぐにでも」
旦那様の魔法が楽しみです。
できることなら、初めて見る魔法は旦那様が良かったのですけれど。
わがままを言ってはいけませんね。
わたくしはきっと、旦那様の魔法に夢中になってしまうのでしょう。




