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サバイバル・ロボットマーチ  作者: ギンユウシジン
第一部 守れ、100日! 学園前哨基地小隊!!
8/19

60日目:龍を討った少年とエルフの女性

格納庫、ショップのコンソールの前に、芥はいた。


「なあ、零式。俺ってそんなに絶望的な見た目をしてないよな?」

「ええ、もちろん。ご友人は清潔感があり、好感の持てる見た目をしていますよ。」

「ならさ、そろそろ来てもいいはずじゃん?」

「何がです?」


芥は大きく息を吸い込み、こう言い放った。


「モテ期!」


零式は一瞬呆気にとられる。そのまま芥は続ける。


「男一人に、女5人の基地だぜ!?そろそろ何かあってもいいんじゃないか!?」

「何かとは?」

「ハーレム展開とラブコメチックなハプニングだよ!この基地に来てから2か月たったのになんもねえのおかしくね!?」


芥は天を仰ぎ、力説した。


「デレた委員長との秘密の補習授業とか、弓波と互いに異性を意識しちまって距離感が微妙になったりとか、元宮と狭いコクピットに閉じ込められたりとか、向坂にご飯を「あーん」してもらったりとか、転んだ西園寺を助けようとしてこっちも巻き込まれてラッキースケベだとか、とにかくお色気要素が全くない!」


零式はややあきれながらも、賛同するかのようなセリフを言った。


「確かに由々しき事態ですね。とくにハーレム展開や魅力的なヒロインというのは、なろう読者の望んでいるものですからね。・・・そうえばヒロインの描写もろくにしていませんでしたね、ギンユウシジンは。もっとがんばりなさい。」


ですが、と零式は続ける。


「それよりも、真に互いを思いやる愛のほうがよっぽどすてきですよ。」

「愛よりも、即物的なものをください・・・。」


うなだれる芥。そんな彼を見て、零式はとある決心をした。


「ならこんなお話はいかがです?」


零式は一拍開ける。


「これよりお話ししますは、龍を討った少年とエルフの女性のお話。ある一人の少年は、口減らしのために捨てられ、一人森をさまよっていた・・・。」


・・・


昔々のお話。まだこの世に魔力があふれ、剣と魔法で人々が戦争をしていた時代。


まだ大人になれていないやせぎすの少年は、森の中をさまよっていた。


少年は村から追放されたのだ。


やせた土地では作物はほとんど育たず、かろうじて実ったものも税として無慈悲にとられる。


口減らしのために家族から捨てられた少年は、飢えをしのぐために森の中に入り、そして当てもなくさまよっていた。


動物はおろか木の実さえもろくに採れなかった少年は、空腹に耐えかね意識を手放した。


次に気が付くと、少年は小さな家の暖かなベッドで横になっていた。そこで家の主のエルフの女性に出会った。エルフの女性に看病されたことを知った少年は、何かお礼がしたいといった。


エルフの女性は少し考えたのち、こういった。


「それじゃあ、しばらくの間一緒に暮らさないかしら?一人でいた時間が長くて。」


少年は喜んでその提案を受け入れ、こうして少年とエルフの女性との共同生活が始まった。


そこでの日々は、少年にとって充実したものだった。


朝起きたら、畑仕事をし、その後朝食をとる。

朝食後は、エルフの女性に弓を教わる。


昼食を食べ終えたら、森の中に入り、教わった木の実の群生地に入ったり、弓で獲物をしとめたりした。


夕食は一緒に作り、星が見えてくるころにエルフの歴史や伝承を教えてもらった。


やがて眠りにつき、また新しい一日が始まる。


変わらない日々。ありふれた幸福。


だがそれも、長くは続かなかった。


ある日、エルフの女性は少年に別れを切り出した。


この森を支配している龍がおり、その龍に自分を宝物として捧げなければならない時が来てしまったのだ。


少年は拒んだ。そんな不条理に屈してたまるかと。

何より、愛した女性を他の誰にもとられたくないと思った。


この森から出ようと提案した。しかし、エルフの女性は龍にかけられた呪いのため、森から出ることができなかったのだ。


少年は決心した。恐怖で震えながらも、言い放った。


「ならばボクが、龍を討つ!」


それからの少年は、森全体に罠を仕込み、偏屈な魔法使いと交渉して、龍にも効く毒を手に入れた。


そして、森を支配する龍がエルフの女性を連れ去ろうとする時が来た。


今まさに龍に挑む少年の前に、どこからともなく黄金の巨人が現れた。


「あなたがあの龍を倒そうというのですか?おやめなさい、人間には過ぎた相手です。・・・そうですね、私が手を貸しましょうか?」

「いや、いい。」


少年ははっきりと言った。


「ボクの手で成し遂げないと、お姉ちゃんに気持ちを伝えられない。」

「ですが、あなたと龍の戦力差は歴然ですよ?」


少年は、その圧倒的な存在である黄金の巨人を前にして、言い放った。


「ボクが弱いのはわかっている。」


少年はこぶしを握り締める。


「けど、おねえちゃんを救うために、」


叫ぶ、心の底から。


「ボクは、龍を討つ!」


・・・


「その後、彼は知恵を使い、罠を張り、武器を使い、そしてついに龍を討ち取ったのです。それから少年と女性は、森を出て、広い世界へ旅立って行ったのでした・・・。」

「へ~、愛する人のために、男を見せたんだな。」


長く零式の話を聞いていた芥は、背伸びをする。


「うん、なんかハーレムやハプニングっていうのは、もういいや。やっぱ時代は純愛ものだな。」

「お分かりいただけましたか、ご友人。」

「いつの日か運命の相手に振られないように、今は自分磨きをすることにするよ。」


じゃ~な~、零式。そう言って芥は立ち去って行った。


「運命の相手ですか・・・。それなら、もうすでにあなたは運命の伴侶と出会っていますよ。」

「何を話しているのかしら、零式?」


美月が芥と入れ替わるようにしてやってくる。


「いえ、恋愛相談をご友人とちょっとね。年の功で教え諭していたのですよ。」

「あなたの高性能さに、今更驚かない私がいるわ・・・。」

「長く生きていますからね!それよりご用件は?」

「お楽しみセットを1ついただけるかしら。私のダンスが見たいと西園寺さんがうるさくて。」

「キレッキレのダンスですからね!存分に披露なさってください。」

「・・・?あなたにダンスを見せたかしら?」


ああ、かつての面影が残る。それは私に郷愁を抱かせる。


「・・・ええ、何度も!」


・・・


「次のお話は修羅場というものかもしれませんね、ご友人。」


・・・


クーラーのきいた司令室、机の上にある手紙の束を基地の全員が見ていた。


「後方からの有志による激励の手紙よ。50日無事に後方を守り切ったということで企画されたようね。」

「はえ~、今どき手紙か~。」

「メールより手紙のほうが、温かみがありますよね。」

「これぐらいの文字なら、頭は痛くなんねえな!」

「た、たくさんありますわ・・・。」

「人気者じゃ~ん、あーしたち。」


山のように段ボールに積まれた手紙を前にして、皆は驚く。


「なあなあ?もう読んでみてもいいんだよな?」

「ええ、検閲されているから変な手紙はないわ。自由に開封して読んでいってちょうだい。」


やった!弓波がさっそく読み始める。


「・・・」

「読むの遅くねえか、弓波?」

「うるさい。」

「はいはい。」


俺も読むか、と芥は適当な手紙を開封する。


手紙は以下の内容だった。


読んでいただき感謝する。私は考古学の世界では名の通ったものだ。


単刀直入に言おう。その基地周辺をどうか保全してほしい。

というのもその地には湖の乙女伝説に深くかかわりがあると考えられており、考古学的に非常に価値のある場所だからだ。


私の研究している湖の乙女伝説は、なんでも清き心の持ち主に聖剣を授けるといったものといわれている。


・・・


その後も湖の乙女伝説について書かれた手紙を一通り読んだ芥は、そのまま丸めて捨てそうになる衝動をこらえて、元の封筒に戻した。


「いや、激励じゃないんかい!」

「うぉ!どうした芥!?」


弓波が驚いて芥に尋ねる。芥はまくしたてるように答えた。


「どうしたもこうしたもねえよ!なんだよ湖の乙女伝説って!斧でも落とせばいいのか!?俺らに対する激励はねえのかよ!?」

「あー、変な手紙に当たっちまったのか。ドンマイ。」

「ちゃんと検閲されていたはずよ・・・?」


美月も驚く。芥は気を取り直して、二通目の手紙に手を伸ばした。


・・・


その後芥は、機体について熱く書かれている元下町のエンジニアからの手紙や、訓練学校時代の鬼教官からのありがたいお言葉といった手紙を引き当てた。


「頼む。もう変な手紙は嫌だ・・・。」


4通目に手を出す。それは一目見て高級な封筒と便箋だと分かるものだった。


「おっ。これならまともそうかな?」


芥は読み始める。向坂は一瞬目を見開いたが、すぐに目をそらした。


・・・


おっす!じいじだよ!(キラッ!)

送った支援物資は無事とどいたかな!?(ドキドキ)

愛情を込めたから、大切に使ってね!ナんちゃって!(キャ!)


そうそう、今じいじはどこにいるでしょうか?(デデ~ン!)

正解はルナ0、いつもの場所でお仕事頑張っているよ!(褒めて褒めて!)

なかなか会えなくてさびしいよ~!(泣き)


「ふぎゃ~~~!!!」


びりびり!ついに芥は我慢の限界に達した。


「芥君!?何をしているの!?」

「おいおい芥。そりゃねえぜ。」

「これについては、俺悪くねえし!人をイラつかせる文章を書くほうが悪いし!」


元宮はいつもと様子の違う芥に少しおびえていた。向坂は遠い目をしており、西園寺はきょとんとしている。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・。悪いみんな、もう落ち着いた。驚かせてごめん。」

「もう読むのやめたら?」

「い~や、このままじゃ終われない。最後の一通に花京院の命をかけるぜ!」


芥はつかんだ白い封筒から手紙を取り出し、それを読み始めた。


・・・


はじめまして。いつも大変な出撃、本当にお疲れ様です。モンスターが出現してから生活は苦しくなり、私もパイロットの夫を失いました。


でも、皆様のような新しいパイロットが日々戦っている。頼もしさ半分、戦地に送ってしまう申し訳なさ半分の気持ちです。


そんな戦えない私たちが常に願っていることはただ一つ。


無事に帰ってきてください。

それだけが私たちの願いです。


芥は胸を打たれた。こんなにも自分たちを案じている人がいるのだと感動したのだ。毎回の命を懸けた出撃は、このような人たちを守るためにあったのだ。


そして、手紙の最後にはこう書かれていた。

朝比奈小金の母、朝比奈陽子あさひな ようこ


追伸

特別サービス券を使って娘を呼び出すのはほどほどにしてください。もしもの時は責任を取っていただきます。


芥はそっとポケットにこの手紙をしまい、誰にも読めないようにした。


「どうだったかしら、芥君?」

「うん?いや、最後にまともな手紙に当たったな~と。」

「あらそう。私にも見せてもらえるかしら?」


その後、芥と美月による手紙争奪戦が始まったが、軍配は美月に上がり、特別サービス券のことで全員の前でつるし上げを食らった。


・・・


「次のお話はちょっと短め。学園の施設についてです。」


・・・


「ねんがんの ぷーるが かんせいしたぞ!」

「イェーイ!ドンドンパフパフ!」

「プールだけじゃないわよ。ビニールハウスも完成したわ。」


弓波が宣言し、芥があとに続く。司令室には基地の6人全員がそろっていた。


「長かったな。基地の復興もついにここまで来たって感じだぜ!」

「あとは、ドローン格納庫とロケット発射装置だけですね。・・・まあ、これらは非常に多くの物資を必要とするんですが。」

「まあまあ、今は完成を喜ぶっしょ!」

「そうですわね!莉音、新しい水着の準備は?」

「完璧!いつでも行けるし!」

「まだプールは使えないわよ。」

「「「「「え?」」」」」


美月の言葉に全員が固まった。


「プールには大量の水を使うわ。今は余分な水がないの。泳ぐのはまた今度ね。」


楽しみにしていた一同は、机に突っ伏す。もはや完全にやる気がそがれていた。


「まだ議題はあるわよ。みんな起きなさい。」


ゾンビのように起き上がる一同。美月は言葉を続ける。


「ビニールハウスで何を育てるか、皆の意見を聞かせてちょうだい。」


復興したビニールハウスで何を育てるか。それは今後の食料事情にかかわる。

一同は気持ちを切り替え、案を考えた。


「はい、は~い。ジャガイモにしようぜ!ポテチ作れる!」


真っ先に手を挙げたのは弓波だった。彼女の好物のコーラと相性抜群なのは、ただの偶然ではないだろう。


「サトイモはどうでしょう?煮っころがしにするとおいしいですよ。」


家庭的な料理にできるサトイモをあげたのは、元宮だ。堅実な彼女らしい。


「サツマイモはどう?スイートポテトとか作れるし。」


甘味を提案したのは向坂だ。彼女の腕なら作るのは造作もない。


「山芋はいかが?すりおろして、しょうゆ、ご飯、食べる!勝確ですわ!」


お米大好きなお嬢様の西園寺は、山芋を提案。確かに食欲をそそられるものだ。


「見事にイモ類で統一されているわね・・・。打ち合わせでもしていたのかしら・・・。」


「委員長は?」


弓波が訪ねる。


一時の静寂。美月は意を決して答えた。


「・・・トマト。」


「「「「「そろわなかった(ですわ)~!」」」」」


・・・


次回予告!


昔の話をしましょう。私の好きな英雄たちの一人のお話です。私は大切なことを学んだはずでした・・・。もう一本! 学園前哨基地に小さな侵入者!?その子に基地を案内することに。だけど子供の相手は大変で!?


次回、サバイバル・ロボットマーチ 70日目 仲間とともにあった王

これは私の好きな話のひとつなのです、ご友人。

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