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サバイバル・ロボットマーチ  作者: ギンユウシジン
第一部 守れ、100日! 学園前哨基地小隊!!
7/22

50日目:第三世代機体配備

快晴の青空の下、機体を運ぶ大型の牽引車が基地に入っていく。

その光景を司令室の窓から見ている弓波は、大はしゃぎで喜んでいた。


「なあなあ!あれが第三世代機体なんだろ!?申請が通っているかな!?」

「何度も言ったでしょう。申請はすべて受理されたって。少しは落ち着きなさい。」

「これが落ち着いていられるかよ!新型だぜ!新型!なあ!?」

「あー、まあ気持ちはわかる的な?」

「ワクワクしすぎて、昨日はよく眠れませんでしたわ!」

「ここにもいたよ、お子様が・・・。」


三者三様の反応、しかし共通しているのは新たな武器に対する期待。


「搬入にはもう少し時間がかかるから、ここで一度新型機、第三世代機体についておさらいしておきましょうか。」

「おう!聞きたい聞きたい!」


勉強が苦手な弓波が珍しく前向きだ。いつもこれぐらいならいいのにと美月は思いながら、搬入作業で格納庫にいる元宮に代わり説明を始めた。


「第三世代機体は、3種類あるわ。」


ホワイトボードにデフォルメされた機体が描かれる。


「一機目は『秋水しゅうすい』。射撃・機動特化型の機体ね。烈風と零林のいいとこどりをした機体よ。ソフトウェアの進化により、より精密な射撃ができるようになったわ。さらに機動力は零林より20%向上しているの。振り回されないかがちょっと心配ね。」


秋水に乗る西園寺が目をキラキラさせている。これから自分が乗る機体に思いをはせているのだろう。


「二機目は『迅雷じんらい』よ。格闘・反撃特化型の機体ね。業火と深山の特性を受け継いだ機体よ。関節部分に新素材を採用したことで、より激しい格闘戦にも耐えられるようになったわ。まさに攻撃に特化した機体ね。搭乗するのは向坂さんよね?」

「そ、あーし、ガンガン攻めちゃうよ~!」


それを聞いた美月はホワイトボードに秋水・迅雷を第三世代機体、水雷シリーズとして丸で囲んだ。そして隣には、三.五と書いた。


「最後は第三.五世代機体、『闘人とうじん』。万能型の機体ね。第二世代機体で得た戦闘情報を基に、性能をまんべんなく強化した機体よ。万能型ゆえに水雷シリーズに比べれば、どこかで劣ってしまうのは否めないわね。それでも、将来的にはこの機体をベースに次の世代の機体が作られるという情報があるわ。」

「俺が乗る機体だな。」

「少し意外だったわね。あなたはてっきり迅雷を希望するものだと思っていたわ。」

「いやな、格闘ばっか出来てても、真のエースにはなれねえんじゃねえかって思ったんだ。格闘の鬼の近衛武士団だって射撃ができるんだし。」

「弓波さん・・・、成長したわね。本当にうれしいわ。」

「いや、オカンかよ。」


話の輪に入れない芥だけが、一人いじけていた。


「いーよなー、みんなは新型を受領してさ。第三世代機体の新しいコクピットは新鮮なんだろうなー。」

「・・・世界で一つだけの専用機を扱っているあなたが何を言っているの。」


いじける芥に対し、しごくまっとうな美月の突っ込みだった。


・・・


その後、搬入が終わり、シミュレーターの更新を終えた司令室で。


「ありがとう、元宮さん。任せきりにしてしまってごめんなさい。」

「いえ、大丈夫です!好きでやっていることですから!」


心なしか肌がつやつやしている元宮。機体オタクの彼女にとって、新型機に真っ先に触れられることは、何よりの報酬だったのだろう。


「さて、パイロットたちはスーツに着替えたわね。」


パイロット組が全員うなずく。これからすることはわかり切っていた。


「これより新型機の完熟訓練を行う。アグレッサーは芥。搭乗機体は陣風。1対1での戦闘を行うものとする。バトルフィールドは市街地。先に敵機を撃墜したものが勝者よ。」


三連戦か~、とこれからの労力に対し、芥は少し黄昏ていた。


「なお、余興として追加ルールを定める。芥にはこれより桃缶を3つ授与する。全完熟訓練終了後に摂食してよいこととする。」


久遠様、あなたは女神だったか!芥は祈りをささげるポーズをして美月をあがめた。桃缶は、今の時代最大の甘味だった。風邪を引いたぐらいじゃ食べさせてもらえない。当然のように他のパイロットたちからはブーイングが起きた。せんせー、えこひいきしてまーす。


「ただし、模擬戦で敗北すれば、桃缶を勝者に譲渡しなければならない。」


だと思ったよ、チクショウ!鬼、悪魔、委員長!

負けられない戦いが、ここにはある!


残りのパイロット三人は、悪い顔を浮かべながら、芥に言い放った。


「芥さん、桃缶ゴチで~す。」

「芥っち、サンキューね!」

「ごちそうになりますわ。」


戦う前からの勝利宣言。これはもうさ、もうさぁ、やるしかなくなっちゃったよ!


「あれ、そう言えば今の俺の陣風の改修具合って、どんなもんだっけ?第三世代機体とやりあえる?」

「それなら大丈夫です。芥さんがコツコツと陣風を改修したおかげで、今の陣風は第三世代機体と戦っても引けを取りません!」

「いいことを聞いたぜ!」


桃缶が残ったら、元宮に一つ譲ろうと決めた芥だった。


・・・

一番手、芥と戦うのは西園寺だった。


「いつぞやの時のようには、いきませんわよ!」

「はっ、場外に飛ばしてやるぜ!」


模擬戦、開始!


「先手必勝ですわ!」


秋水がシミュレーションの市街地を駆け迫りくる。明らかに零林の時とは違い速い!


「なんか見たような展開だな!」


芥は近接三式の長刀を構える。


「このままホームランだぜ!」

「同じ轍は二度もふみませんわ!」


秋水は陣風を飛び越えた。するとそのまま空中で射撃三式を構えた。以前の西園寺では、零林ではできなかった挙動だ。


「もらいましたわ!」

「何の!」


陣風も負けじと横ステップでその場から離れる。そのまま後ろ向きで長刀を投げ放つ。


「危ないですわ!」

「ちっ!さすがに当たんないか!」


陣風は武装を射撃三式に切り替えた。すかさず秋水に弾幕をはる。


「当たりませんわ!」

「これもよけるのかよ!」


近接戦に持ち込みたいが、機動力は向こうが上。このまま射撃戦になるか。

そう考えていたのもつかの間。再び秋水が接近してくる。

しまった、長刀は投げてしまい手元にない。接近戦に持ち込むつもりか!


「換装する暇はないな・・・。ならこのまま!」


陣風は銃を構える、秋水はすごい勢いで接近し。


そのままドロップキックをした。


「おりゃ~~~、ですわ!」

「はぁ~!?」


衝撃に揺れる陣風のコクピット、倒れる陣風。そのまま秋水は陣風のコクピットを足でつぶした。


・・・


「えっと、あれってありなのかしら?」

「実戦じゃ何があってもおかしくないぜ。ドロップキックをする新種のモンスターが出るかもしれねえ。」

「うわ、最後、お嬢えぐ。」

「あれは・・・、想定外でしたね。」


それぞれが今回の感想を語る。シミュレーターから西園寺が出てくる。


「やりましたわ~!桃缶、桃缶!」


一方の芥は、あんまりな結果に半ば放心していた。


「ドロップキック、ドロップキックってありなのかよ・・・。」


誰も答えてくれなかった。


・・・


その後の向坂戦、前の戦いに引っ張られた芥は消極的な動きしかできなかったため、迅雷の攻撃に圧倒され敗北した。


弓波戦では気持ちを立て直し、何とか普段の動きを取り戻した芥だった。しかし、善戦をするもあと一歩のところで敗北。これにて芥は全敗を喫することになった。


・・・


「まさか全敗とはね・・・。」


お楽しみ用にとっておいた桃缶を開けて食べている美月は、この予想外の結果に驚いていた。


「向坂さんに敗北、弓波さんと西園寺さんには勝利ぐらいだと思っていたのだけどね・・・。」

「勝負の世界はどう転ぶかわかりませんね~。」


同じく自分へのご褒美用にとっておいた桃缶を開けて食べている元宮が返事を返した。


司令室では、芥以外の面々がおいしそうに桃缶を食べていた。


「ん~、あまっ!」

「めったに食べられない甘味だし、ありがたくいただくっしょ!」

「甘々ですわ!」


司令室の隅では、今回の反省のため戦闘ログを読み返している芥がいた。

だが実際は落ち込んでいて、頭に内容が入っていなかった。


さすがに哀れだと思った西園寺は、ノブリス・オブリージュの精神で彼を励まそうと考えた。桃缶を彼からもらったという後ろめたさもある。


桃缶をテーブルに置いて芥に近づく。最近読んだマンガで、男の子を喜ばせる魔法の言葉を西園寺は学んだばかりだったので、それを使いたいというのもあった。


「芥さん、芥さん。」

「ん?なんだよ・・・。」


芥の耳元にまで近づく。そして魔法の言葉を放った。


「ざぁ~こ♡」


一瞬司令室が静まりかえった。最初に口を開いたのは芥だった。


「ふぎゃ~~~!!!」

「西園寺さん!?」

「大丈夫ですよ、芥さん!芥さんは雑魚じゃないですから!」

「ぎゃはは!やるじゃん、西園寺!」

「お嬢、それ違う!使い方あってるけど、シチュエーションが違う!」

「あれ、何か間違えてしまいましたの?」


その後、芥を励ますために美月は、とっておきのあんみつの缶詰を解放した。


・・・


格納庫、ショップのコンソール。


「お久しぶりですね、ご友人。人気投票で1位をとる予定の零式です。」


誰もいない格納庫で、零式は話し始める。


「思っていたよりもご友人の操縦技量が高くない。残念だ・・・。これでは私とご友人は、ご友人ではいられなくなる・・・。」


しばしの沈黙、再び零式は口を開く。


「このままでは初登場は邪神討伐時になるでしょうか・・・?いや、それだと本来のシナリオから大きく外れてしまう。他勢力への影響も大きい。金庫に特殊アイテムを仕込むこともできなかったこの世界では、私が登場するフラグが立っていない。」


零式は思考を深めていく。


「今の私にできることといったら、ご友人に陣風専用最強装備、疾風剣と疾風銃の購入を勧めることぐらいでしょうか。ああ、あと追加装甲の疾風怒濤もありましたね。忘れるところでした、いけない、いけない。」


それからも、零式は一人で考えていた。あるべき姿に物語を進めるために。


今度こそ、ハッピーエンドを迎えるために。


・・・


次回予告!


昔の話をしましょう。私の好きな英雄たちの一人のお話です。私は大切なことを学んだはずでした・・・。もう一本!後方の民間人団体から慰安のための手紙が届きました。ご友人たちは、これを読んで何を思うのか。ああそうそう、プールとビニールハウスが完成しましたよ。


次回、サバイバル・ロボットマーチ 60日目 龍を討った少年とエルフの女性

これは私の好きな話のひとつなのです、ご友人。

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執筆の励みと明日はいい日だという気分になりますので、お待ちしております。


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― 新着の感想 ―
効率良くやってると、この時点でも乗り換えにならなくて良かったって思えるくらい強いんだけどね、陣風(原作プレイヤー感)
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