20日目:プレゼントボックスの謎
「何これ?」
格納庫の机の上にあるのはプレゼントボックス。立方体の箱に、リボンでくくられている典型的なプレゼントのイメージがそのまま具現化したかのようなものだ。
帰投し、パイロットスーツのままの芥は答える。
「探索中に見つけたんだが、いくつかあるようだ。開けてみるか?」
「開ける!」
弓波は目をらんらんと輝かせて、プレゼントボックスを開封した。
このご時世、プレゼントを開けるという行為自体行われなくなって久しい。
「何が出るかな?何が出るかな~?」
ふんふんふーん。ご機嫌なプレゼントだ。
「ま、包装されてだいぶ時間が経ってるだろうから、中身はあんまり期待すんなよ?」
「いよっしゃー!!!」
弓波の大声に驚き、何事かと手元を見る。するとそこにはよく冷えているであろう缶のコーラが弓波の手に握られていた。
「芥!見てみろよ!コーラだぜ、コーラ!うっわー、すげえ久しぶりだ!」
「おいおい落ち着け!安全かどうかわからないんだ、飲むのはやめとけ!」
「いいや、我慢できないね!飲むぜ!」
カシュッ!ゴク、ゴク、ゴク・・・。
「おいおい大丈夫かよ・・・。」
「うっ!」
「て、言わんこっちゃない。おい、大丈夫か?」
「う~ま~い~!」
弓波は全身で感動を表現していた。
「キンキンに冷えてやがる!悪魔的うまさだ!出撃帰りにこの一杯が体に染み渡る~!」
「そ、そこまでうまいのか・・・?」
プレゼントボックスはまだある。
・・・一つぐらいいいよな?
芥もいくつかあるうちのプレゼントボックスを開ける。
すると・・・。
「缶コーヒー?」
そこには冷たい無糖の缶コーヒーが入っていた。
「コーヒーですか!?」
「うわっ!」
背後からメカニックの元宮が現れた。
元宮は、物欲しそうにコーヒーを見つめている。
「えっと、良かったらいるか、元宮?」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
カシュッ!ゴク、ゴク、ゴク・・・。
「キンキンに冷えてます!悪魔的うまさです!仕事終わりにこの一杯が体に染み渡る~!」
「なんか似たようなこと言ってんな。」
それにしてもプレゼントボックスか・・・。
面白い、見つけたら積極的に開けてみよう。
いらなかったら、仲間にあげてもいいしな。
「いったい何をやっているの?」
格納庫に美月がやってきた。
司令室へ報告に来なかったから、美月のほうからやってきたようだ。
「ああ、委員長これ見てくれよ。」
「これは、プレゼント?」
「そそ、開けてみな?」
「ふむ・・・。」
シュルシュル。
人形が入っていた。
しかも何とも言えないデフォルメされたクマの人形だ。
「あ、委員長、いらなかったら全然捨ててくれて構わねえから・・・。」
「芥君。」
美月はクマの人形を抱きしめながら続けた。
「その、せっかくのもらい物だし、捨てるのはもったいないし・・・、大切にするわね。」
どうやら気に入ってくれたようだ。
にしてもこれで三連続ちょうどほしいものが手に入ったわけか・・・。
ただの偶然、か?
・・・
「なるほど、プレゼントボックスね・・・、大体わかってきたわ。」
あの後、委員長がプレゼントボックスでちょっとした実験をいくつか行った。
委員長が開けた時はぬいぐるみ、弓波が開けた時はコーラ、元宮が開けた時はコーヒーが出てくる。それぞれ好きなものが出てくるらしい。
しかし俺が開けた時は、ランダムで物が出てくる。調理器具や、ゲーム機なんかも出てきたぞ。
そして、二人いっぺんに開けようとするとこれも出てくるものがランダムになるらしい。弓波と元宮が開けた時は、大体半々でコーラとコーヒーが出てきたもんな。
「さて、プレゼントボックスの取り扱いだけど・・・。」
うんうん。全員が委員長の声にうなずいている。
「基本出撃し、持ち帰った人のものにしていいわ。」
「よっしゃー!」
イェーイ!イェーイ!俺と弓波はハイタッチを交わした。
「あ~、まあそうですよね~。」
一方、元宮は少し残念そうだ。
「ところで芥君、元宮さんに差し入れをしたいとは思わない?」
「あ。」
「機体の整備、基地の復興を一手に引き受けてくれる彼女に、ほんのささやかな差し入れぐらいしてもいいんじゃないかしら?」
「はい。おっしゃる通りです。」
「そんな、悪いですよ。」
「これはあくまで善意の差し入れよ。持ちつ持たれつでいかない?」
「まあ、そうだよな。いつも元宮一人でやってくれるわけだし、コーヒーぐらい。」
「芥さん・・・。」
「同じく、私にも善意の差し入れ、よろしくね?」
「フハハ!イエス・マム!」
半ばやけくそになった芥だった。
「あ~、それじゃあ、俺はどうしたらいい?なんもなしというのも居心地がわりいし。」
「プレゼントボックスを善意で芥君に譲るというのはどうかしら?」
「う~ん。まあ、それが妥当か。よっし、芥。プレゼントボックスはいくつか譲るぜ。」
「弓波、お前・・・。」
「ただし、コーラが出た時は、ぜってー俺に回せよな!」
「たっく、しょうがねえな。わかった!男同士の約束だ!」
「俺は女だ!」
腹に一発入れられ、悶絶する芥。
彼らの一日は、今日もこうして無事に幕を閉じる・・・。
・・・
格納庫、ショップのコンソール。
「さて、次のお話は、ご友人が士気向上のために奮闘するお話です。私の出番ですか?まったく、ちょっと奮発しちゃいましょうか。」
・・・
「ごきげんよう!ご友人!さて、今日は何にしますか?」
「おはよう零式。それとちょっと静かにしてもらえるかしら?」
格納庫のショップのコンソール。美月はあるものを探しにショップを訪れていた。
「いろんなものがそろっていますよ!ゆりかごから老人ホームまで、さまざまなものを取り扱っています!」
「在庫管理は大丈夫なの・・・?まあいいわ、今回探しているものは・・・。」
「・・・なるほど、ありますとも!」
「ありがとう。それと『お楽しみセット』も一つもらえないかしら。」
「・・・こちらをご購入されるということは、今の基地の士気は?」
「念のため上げておきたいというだけよ。以前ほどひどくはないわ。」
「それを聞いて安心しました、ご友人。では2点お買い上げとなります。」
「はい、これで。」
「ちょうどですね。承りました。」
「・・・あなた、まるで本当に生きているみたいね。」
「ええ、これでも長くこの地を守ってきたのですよ。」
「あなた、設置されてまだ一年もたってないじゃない・・・。」
・・・
美月が去った後の格納庫。一人、零式は過去を思い出す・・・。
・・・
星空と月、そして大きなかがり火が夜を照らしている。
今日は収穫祭だ。たくさん採れた大地の恵みに感謝し、広場で歌い踊り、酒を飲む。
エルフたちは精霊の歌を歌い、ドワーフたちは樽ごと酒を飲んでいる。小人や人は、かがり火の周りでパートナーと踊っていた。
「ここにいたのですね、○○。」
追放された王女、わが主の伴侶が私に声をかける。
「これはアイリス様、楽しんでおられますか?」
「ええ!とっても!見てたでしょう、私の王家直伝のダンスを!」
「ああ、あのキレッキレの。あの踊りは武術につながるものがありますね。」
「ぐぬぬ!さすがは私の絢爛舞闘を見ただけで完コピできた逸材・・・!」
酔ったドワーフがエルフに絡んでいる。それを小人が仲裁している。
皆は笑ってそのいきさつを楽しんでいる。
「そうだ、○○。あなたも踊ってみませんか?」
「私が、ダンスを?」
「そうです、何事も挑戦です!」
私の手をとり、広場へと導いた。
「さあ、私が先生です!○○君、まずは簡単なステップから。」
音楽が流れる。アイリス様はゆっくりと私をリードする。
「足を踏まないように気を付けて。ほら、スロー、スロー、クイック、クイック、スロー。」
普段の天真爛漫な姿からは想像できないほど、丁寧に教えてくれている。
私もそれにこたえなければ。
「スロー、スロー、クイック、クイック、スロー。」
「上手上手!やはり筋がいいですね!」
アイリス様は楽しそうに笑う。
「それじゃあ、私のペースについてきてください!王家直伝のダンス!レッツ・パーリィ!」
その後は終始アイリス様のペースで一緒に踊った。
鳴り響く音楽、あたたかな火のぬくもり、私たちを見守る月と星の光、並んで笑う4種族の人々。
私は何年たってもこの光景を忘れることはないだろう。
主様と私たちとで守り、勝ち取ったこの光景。
とても、すてきだ・・・。
・・・
司令室。美月の召集を受け、一同は集合していた。
「いったい何の用件だろうな?」
「新しい作戦かもしれないぜ。」
「あれ、おかしいですね。その場合、整備へ真っ先に連絡が来るはずですが・・・。」
次の瞬間扉が開かれる、入ってきたのは美月だったのだが・・・。
「い、委員長?」
「ブハハ!なんだそりゃ!」
「えっと、久遠さん?」
「皆、集まってくれてありがとう。今日は日ごろの疲れをいやしてもらうため、ささやかながらお楽しみセットでパーティーをすることにしたわ。」
弓波は腹を抱えて笑っている。それもそのはず、こうしてまじめなことを言いながら、『鼻眼鏡』をかけたままなのだ。
「ちょっとした余興も用意してきたの。楽しんでもらえるといいのだけれど。」
こうも言いつつ、鼻眼鏡である。
「一番、久遠美月、創作ダンス、行きます。」
軽快な音楽が流れる。美月のキレッキレのダンスに驚愕と笑いの感情がごちゃ混ぜになる。
いよいよクライマックスになるその時、美月は叫んだ。
「レッツ・パーリィ!」
この日、3人の腹筋は崩壊した。
美月は、零式から買ったダンスの教科書に満足した。
・・・
格納庫、ショップのコンソール。
「さて、次のお話は、ご友人が戦う覚悟を新たにするお話です。私の出番ですか?さすがにもうないですね。」
・・・
特別サービス券。それは男のロマン。
訓練学校時代からまことしやかにささやかれていたそれは、思春期の男子には刺激の強いものだった。
いわく、それを使った者の部屋に美人がやってきて、美人が出た後、使用者は戦意が向上しているという。
それが今まさに、芥一の手元にあったというのだ。
・・・きっかけは部屋の掃除をしようと机の引き出しを開けた時だった。ひらひらと一枚の紙が落ちてきた。拾ってみると、それが噂の特別サービス券だったのだ。
どうしてこれがこんなところに、そんなことはどうでもいい。使うのか、使わないのか。男になるのか、ならないのか。問題はそこだった。
熟考の末、芥一は男になる決心をした。書かれている番号に電話し、家事代行サービスということで来てもらうのだった。
待つこと数十分。自室の扉をノックされた芥は、すさまじい速さで扉を開けた。
そこにいたのは金髪ロングの美少女だった。基地の皆のレベルも低くない。むしろ高いぐらいだ。だがこの少女は、そんな子たちと比べても遜色ないほどの美人だったのだ。
「はじめまして。家事代行サービスの朝比奈小金っていいます!今日はよろしくね、お兄さん!」
「あ、はい、はじめまして。」
「さっそく中入っていいかな?」
「あ、えと、どうぞ。」
「ふふっ、お邪魔しま~す。」
部屋の中に入った小金はさっそく芥に言ってきた。
「じゃ、本番60分コース、いっちゃう?」
「お、お、お、お願いします!」
「は~い、じゃあお兄さんは・・・」
芥は、ごくりと生唾を飲む。
「いるもの、いらないものの整理をしようか!」
「はい?」
「だ~か~ら~、いるもの、いらないものの整理!掃除の基本だよ~。」
この後めちゃくちゃ部屋の掃除をした。
・・・
掃除が終わった後、小金はベッドに座った。
「ふ~う、おわったおわった~!いや~きれいになるとすっきりするね~。」
「・・・」
「ちょっと時間残ってるし、何かお話でもする?」
「え~と、それじゃあ、このサービスって・・・。」
「家事代行サービスのこと?あっ、もしかして変なこと考えてた~?」
芥は天を仰ぐ、つまりそういうことだったのだ。噂はあくまで噂でしかなかったのだ。
「あはは~!確かにそういう風に勘違いされることもあるんだよね~。勘違いした変なお客さんもいるし。」
「・・・それじゃあどうしてこの仕事をしているんだ?」
「んっとね、稼ぐのがあたしの戦いだから。」
小金は話すトーンを少し落とす。
「あたしのお父さんね、第一特機連隊の隊員だったんだ。」
「第一特機連隊って、あの英雄部隊の!?」
「うん。英雄、朝倉宗一率いるかつての人類の希望、その一員だった。けど、任務で死んじゃった。」
小金は悲しそうに笑う。
「たくさん泣いた。でもお父さんは戻ってこなかった。残されたお母さんと妹は途方に暮れた。この世界で生き延びるために、あたしは稼いで二人を楽させたい。これがあたしの稼ぐ理由。」
「・・・そうだったのか。」
「だからね。戦う人には、本当に感謝してるんだ。いつも守ってくれてありがとう。」
「・・・。」
「たっはー!なんか暗くなっちゃったね!そろそろ時間だし、あたし帰るね!」
小金は、帰ろうとしてドアに近づく。そして振り返った。
「ご利用ありがとうございました~!またのご利用を心からお待ちしております!」
お金の必要な彼女にとってそれは切実な思いだったのだろう。
特別サービス券は決して安くない。だが、また買ってもいいかと思う芥だった。
・・・
小金が帰った後、一人芥は考える。
彼女のように家族を失った人は大勢いる。
「戦う人には、本当に感謝してるんだ。いつも守ってくれてありがとう。」
だが、そう言葉にしてくれるのは、果たしてどれほどいるだろうか。
芥は、戦う決意を新たにした。
・・・
特別サービス券。それは男のロマン。
男に戦う意義を思い出させる、魔法のチケットだ。
・・・
次回予告!
ついに学園前哨基地に増援がやってくる!一人はお嬢様、もう一人はギャル!?凸凹コンビたちと芥たちは連携が取れるのか!?
次回、サバイバル・ロボットマーチ 30日目 増援!新たなるパイロット!
次回はやっとロボットものらしくなりそうですね、ご友人。
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