10日目:探索強化指令発令!
久遠美月は、頭を抱えていた。頭脳・身体ともに自信のある彼女が、どうしてもかなわないことがこの世には存在するのだ。
「もう限界よ・・・、士気を数値化するなら3ぐらいかしら。」
0になるまであと一息ね、ふふふ・・・。怪しい笑みを浮かべながら幽鬼のような足取りで、基地の廊下を進む。
仕方のないことだろう。訓練学校にはきちんとしたインフラがあり、栄養バランスの考えられた食事から、大浴場まであった。
一方、学園前哨基地には最低限のインフラしか通っておらず、電源のつかないクーラー、かろうじて水が出るシャワー、ひどく質素な食事、暗くなったら就寝というありさまだった。
繰り上げ任官となり、芥より先に着任した美月、弓波、元宮にとっては、学園前哨基地での生活は、さすがにそろそろ根を上げたいものとなっていた。
「このままではモンスターより、士気の崩壊で基地がダメになるわ・・・。」
何とかしなくては・・・。そうつぶやき美月は夜の闇に消えていった。
・・・
翌日。午前中の勉強会の代わりに話があるといい司令室に集合した一同。
「ふわ~。なんか最近暑くなってきてねえか?」
「弓波もそう思うか?冷房がないのはきついよな。」
「物資さえあれば、冷暖房ぐらい用意できるのですが・・・。」
「うっ、すまん・・・。探索がうまくいってなくて・・・。」
「あ、いえ、そんなつもりで言ったわけじゃないですから!」
「みんな、そろったようね。」
美月が入室してくる。その瞬間全員の空気が変わった。
「気持ちの切り替えがすぐにできてよろしい。これより探索強化作戦について説明するわ。」
「探索強化作戦?」
美月は、このあたり一帯の立体映像を表示する。超大型モンスター討伐作戦時にも使うものだ。それだけ今回の作戦に真剣なのだろう。
「探索強化作戦は、探索を効率的に行い、物資を確保、その物資で基地の設備を強化するというものよ。」
「質問~!今までの探索と何が違うんですか~?」
「いい質問ね、弓波さん。」
立体映像に白い矢印が追加される。それは基地を中心に円を描くように広がっていた。
「今までの探索の仕方は、こう。基地周辺からまんべんなく探索して物資を回収するというものだったわ。」
続いて美月は立体映像に×印を表示させる。
「このやり方は、取りこぼしがほとんどない代わりに、物資が乏しいと考えられるところ、例えば一般民家まで探していたわ。するとどうなるか。時間がかかる割に得られる物資は少ないという状況が起きるのよ。」
立体映像の×印が点滅する。
「私たちが今から行う探索の仕方は、探索場所を絞ることよ。」
立体映像に新たに黄色い矢印と丸印が現れた。
「探索場所を、研究所、工場、ショッピングモール、商店街の4か所に絞るわ。それ以外の場所は一切無視よ。」
「え、そんなことしていいのかよ!?」
「問題ないわ。また、定期的にその周辺のモンスターを駆逐することで、探索がしやすくなるというメリットもあるのよ。」
立体映像を消す。
「さて、集めた物資で何をするかということなのだけど・・・。」
今度は机の上に学園前哨基地の地図を広げた。
「物資を使って復興したいのは、図書室、食堂、給水施設、発電機、冷暖房施設、プール、ビニールハウス、機銃ドローン格納庫、ロケット発射装置、以上9施設よ。」
「マジで!?プールも使えるようになるの!?」
「あくまで貯水用として使うわ。・・・まあでも、水に余裕ができたら泳ぐのに使ってもいいかもしれないわね。」
「よっし!勝負しようぜ、芥!」
「悪いな弓波、勝てない勝負をするほど、俺は馬鹿じゃないんでね。」
「えー、いいじゃんかよー。やろうぜー。勝ったら何でも言うこと聞いてやるからよ。」
「な、何でも・・・。」
「そこ、変な賭け事をしない。」
こほん。場の空気を変え、再度説明を始めた。
「優先順位は次のとおりね。」
美月はホワイトボードに施設とその順位を書いていく。
1.給水施設、発電機、冷暖房施設、
2.図書室、食堂、
3.プール、ビニールハウス、
4.機銃ドローン格納庫、ロケット発射装置
「ライフライン系が最優先・・・、まあ妥当だな。」
「あれ、食堂って使えてなかったけ?」
「調理設備関係が壊れているのよ。ガスも使えないでしょ?」
「あー、そういやそっか。」
「この基地に、図書室なんてあったんだ・・・。」
「本が散乱している状態ね。本棚が折れているからそのために物資が必要よ。」
「了解。」
「あの、機銃ドローン格納庫、ロケット発射装置というのは・・・?」
「その名の通り、この基地の武装ね。機銃ドローンは小型モンスタ―に有効で、ロケットは大型以上のモンスターに効果があるわ。」
「そんなのも作れるんですね!私、気になります!」
「いろいろまずいだろ、そのセリフ・・・。」
さらに、施設が復興したらどうするかと話に花を咲かせる一同。
美月は手をたたいて、意識をこちらに集めた。
「作戦と優先順位は理解したわね?それではただいまより、探索強化指令を発令するわ!総員持ち場について!」
「「「了解!」」」
3人は格納庫に向かって走りだした。その足取りは基地がよくなるものだと分かっており軽やかなものだった。
タイトなパイロットスーツに着替えた芥と弓波。二人はそれぞれ陣風と業火に乗って出撃した。
「まずはどこから行く?」
「ライフライン系がありそうなところだから、ショッピングモールに行かないか?電気屋もあるだろうし。」
「いいね。よっし、行くぜ!」
俺たちの探索は、まだまだこれからだ!
・・・
物資探索を終え、二人は格納庫に帰投した。
二人の報告を聞くために、美月も格納庫に来ていた。
「さて、成果を聞こうかしらね。」
「はっ、報告します!」
物資が入ったコンテナを元宮が誘導している。
芥と弓波の両名は、直立不動の体勢で美月の前に立っていた。
「探索場所A~D地点を探索した結果・・・。」
「・・・。」
「何の成果も、得られませんでしたー!!!」
「・・・ふ~う、さて、芥君。ふざけた代償は後で払ってもらうとして、本・当・は?」
「あ、はい、大漁でした。元宮いわく、熱々のシャワーと冷房は、今夜からでも使えるそうです。ハイ。」
「なぜ無意味に虚偽の報告をするの・・・?」
美月は頭が痛くなった。
「だって、報告する場面でこれは鉄板だろ・・・!」
ぎゃはは!と弓波は腹を抱えて笑っていた。やりやがった!あいつ、やりやがった!といいながら。
「・・・ああ、もういいわ。」
この2バカにこれ以上時間を割きたくない。なぜなら美月には基地責任者として、正しくシャワーと冷房が機能するか確認する義務があるのだから。
「パイロット2名、体力錬成30分。」
「はっ!ご温情、ありがとうございます。」
「あっ!なんで俺まで!?」
あの体力自慢たちには大した罰ではないけれども、今はそんなことより、シャワーと冷房!
連日の士気の低下で、さすがの才女である美月も正常な判断ができていなかった。
「久遠さん~!設備の復興が終わりました~!確認をお願いします~!」
元宮の声を聴くや否や、すぐに指揮官室に向かって走り出した。
さすがの弓波にはかなわないものの、十分に速いその足は、あっという間に彼女の個室にたどり着いた。
クーラーのリモコン、スイッチオン、エアコンが起動する。
着替えをもって浴室に向かう。いつもの場所に置き、そして・・・。
・・・
格納庫。
ショップのコンソールがピコピコと光を発していた。
「いや~、危ない危ない。あともうちょっとでお色気シーンが発生するところでしたね。どうもこんばんは、あなたのご友人、零式です。」
ひょうひょうとした口調で零式は続ける。
「いやね、なろう投稿サイトにこの作品は全年齢ですって登録してましたからね。ちょっとでも危ないものは、こうやってご友人ガードを発動していくという方針です。ご友人の貞操は、私が守った(キリッ!)。」
虚空に向かって話しかける・・・。
「え、今からでもR15に戻せ?お色気シーンがないとアニメ化の際にぼろくそ言われる?えー、いいじゃないですか、どうせ謎の光さんや、やけに多い湯気さんが活躍して肝心なところは見えないんですから。ん?それはそれでみたいものだ?あらやだ、好きな人ですね。まあいいでしょう。そんなに言うなら今の浴室にシーンを戻しましょうか。」
・・・
美月が入っていった個室の浴室。
湯気が少しずつ晴れていく・・・。
するとそこには・・・。
そこには、誰もいなかった。
どうやらすでに上がってしまったようだ。
・・・
「いかがでしたか?満足しましたか、ご友人?え、もう誰もいなかった?あらやだ、カラスの行水でしたね。おや、ちょっと待ってください、なんですかそのハンマーは?待ちましょう、今の私は戦闘能力0なんですから。あ、やだ、やめ」
・・・
次回予告!
探索で発見するプレゼントボックス。これは謎に包まれている。ランダムでほしいものが手に入る謎技術。なぜ、人の欲しいものが手に入るのか?その謎を解明しようとチーム学園前哨基地が挑む!はたしてプレゼントボックスの謎は解明できるのか!?その他、お楽しみセットでパーリーナイト!?特別サービス券で戦意向上も!?
次回、サバイバル・ロボットマーチ 20日目 プレゼントボックスの謎
あれ、ロボットものなのに戦闘シーン少なくありませんか、ご友人?
面白かった、応援してもいいよという方はブックマークをお願いいたします。
執筆の励みといずれガンにも効くようになるかもしれません。お待ちしております。




