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サバイバル・ロボットマーチ  作者: ギンユウシジン
第三部 混沌とする世界
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20/22

15日目:魔王と勇者

朝の司令室、そこには全員がそろっていた。


「そうそう、天旗から皆へ、伝えたいことがあるのよね。」


指令室の窓から天旗がにゅっと顔を出す。


「はい。この度、私用で月まで行くことになりました。なので一時のお別れとなります。短い時間でしたが、皆様と過ごせた時間は、充実したものでしたよ。」


天旗が皆の顔を見渡す。


「そう遠くないうちに、またお会いしましょう。それでは、とうっ!」


そう叫び、天旗は空を飛んだ。


「単独で大気圏突破ですか!?」

「真面目に考えてはいけない類の存在ね・・・。」


元宮は驚愕し、美月は考えるのをあきらめた。


「・・・さて、司令部より命令が下ったわ。」


立体映像が表示される。


「次に私たちが参加する作戦は、ロケット発射場の哨戒任務よ。謎の勢力が、各地でこれを破壊しまわっているわ。遭遇した場合は、これを撃破しなさい。」


映像に機体が表示される。


「敵は無人機で、精鋭部隊が束になってやっと倒せる相手よ。油断せずに行きましょう。」


総員出撃!美月の掛け声に一同は席を立った。


・・・


哨戒地域、そこはあたり一面の荒野だった。少し遠目にロケット発射場が見える。美月からの通信が入った。


「みんな聞こえてる?今回は6時間の哨戒任務よ。謎の勢力は、多くのロケット発射場を破壊してきたわ。ここは数少ない、被害を免れた場所よ。」


砂煙が舞う。生命の息吹を感じさせない死の大地だ。


「謎の勢力が発射場を破壊する理由は、彼らの本拠地の月へ誰も来れないようにするためといわれているわ。今後のためにも、ここをしっかりと守りましょう。」


了解。久しぶりに陣風に乗った芥とバディのシルヴィアは、返事をした。弓波、向坂、西園寺の3名はBチームとして、後方で待機している。


Aチームの芥たちは、これより哨戒任務に入った。


「(それにしても、最近対人戦ばっかだな・・・。人類同士で争っている場合じゃないだろ。)」


芥たちが哨戒任務をして、数時間が経過したころ、それは突然やってきた。


「識別不明機が3体!二人とも、警戒して!」


芥とシルヴィアは、勘によりすぐその場を離れる。すると先ほどまで二人がいた場所に銃弾が撃たれた。


「あれが、第五世代機体「天龍」よ。無人機だから遠慮なく撃墜しなさい。」


それは、黒い龍をほうふつとさせるデザインの機体だった。乱れのない連携で芥たちに襲い掛かる!


天龍たちは、芥に2体、シルヴィアに1体と別れた。


「ちっ!」

「芥!こっちは早めにしとめる!それまで持ちこたえろ!」

「わかった!」


芥は数的不利ながらも、天龍たちの攻撃をかわし、時には反撃も加えた。


数分経った頃、天龍を一機撃墜したシルヴィアがこちらに合流してくる。


「待たせたな!」

「シルヴィアさん、かっけーっす!」

「1対1に持ち込むぞ。右のはもらう!」


これで条件は対等になった。芥たちは天龍を次第に追い詰める。


「もらった!」


陣風の疾風剣が天龍を切り裂く。真っ二つになった天龍は、そのまま爆発した。


「終わったか、芥。」


同じく戦闘を終えたシルヴィアが声をかけてくる。


「ああ、かなり厄介な敵だったぜ。」


コクピットで一息つく芥。この戦闘で、何度も冷や汗をかいた。


「・・・!識別不明機一機がすごい勢いでそちらに向かってきているわ!警戒して!」


美月が通信越しに叫ぶ。


それは、芥たちのもとにやってきたかと思うと、突如停止した。


まがまがしい黒、どことなく龍を想起させるフォルム。大型の銃と大剣は赤く脈打っているかのように見えた。


突如、識別不明機からの通信が開かれた。


「・・・「魔王」、グレイ・ムーニィ、敵を排除する。」


その声は聞いたことのある声だった。


料理を何度も練習する彼女。

泳げるようになろうと努力した彼女。

そして、圧倒的操縦技量を持つ彼女。


最前線で寝食を共にした戦友が、敵として立ちふさがっているのだ。


「なっ、グレイ俺だ。芥だ!」

「何をしているグレイ!戦闘態勢を解け!」


返答は、冷酷なものだった。


「・・・敵を排除する。」

「っ・・・グレイ!」


芥は悲しそうに、悔しそうに言う。


グレイがわずかに動いたとき、芥とシルヴィアは回避行動に移った。彼女を前にして、ロックオンされてからでは遅いというのは、いやというほどわかっていたのだ。


殺したくはない。だがあのグレイを殺さずに戦闘不能にする?難易度の高い選択に二人は奥歯をかみしめた。


芥が前衛、シルヴィアが後衛。言葉で言わずとも、自然とそういうフォーメーションになっていた。


死神が何度も迫る。銃撃が、大剣が、回避に専念しているというのに装甲を削り取る。かろうじてできる反撃も、やすやすと躱されてしまう。


打つ手がなかった。打開策がなかった。勝ち筋が見えなかった。


これが異質な少女、グレイの実力だった。


・・・


陣風と紫電が悲鳴を上げていた。

グレイの乗る魔王の攻撃を避けるために、無茶な軌道を繰り返したからだ。


グレイは疑問に思う。何度も必殺の一撃を加えたはずだ。なのになぜ目の前の敵は生きている?


殺すべきだ(殺したくない)。

排除すべきだ(一緒にいたい)。

壊すべきだ(大切な・・・)。


「ああ・・・。」


最前線での出来事を思い出す。たくさんいた仲間、料理を教えてくれた、一般常識を教えてくれた。つられて笑うこともあった。


邪神がやってきた。たくさん仲間が死んだ。シルヴィアだけが生き残った。


それから芥と美月がやってきた。料理を見てくれた。おいしいと食べてくれた。


仲間を奪った邪神と、自身が重なる。


グレイの操縦かんを握る手が震えていた。


様子がおかしいグレイの隙を見逃さない芥たちではなかった。


「シルヴィア!」

「おう!」


紫電が狙撃し、陣風は射撃しながら近づく。そして陣風の疾風剣がきらめいた。


緑色の暴風は、魔王を横一文字に斬った。


「・・・あぁ、やっと自由に。」


その衝撃でグレイは気を失った。


・・・


「彼女に事情を聴く必要があるわ。」


通信越しの美月は、険しい声音で言った。


「芥君は、彼女を機体ごと回収してちょうだい。シルヴィアさんも付き添って、こんな状態では作戦続行は無理ね。」

「グレイ・・・。」

「行こう、シルヴィア。目を覚ましたら話を聞こう。」


陣風と紫電が、グレイの乗った魔王を運ぶ。

荒野には天龍の残骸が残された。


・・・


ルナ0、そこは月に作られた一部特権階級たちの極秘施設。モンスターに襲われる恐れのないそこは、人類が生存する中でどこよりも安全だった。


ルナ0にある広いホールで、天旗と長老と呼ばれる壮年の男が会談をしていた。


「ごきげんよう、天旗。あの件は考えてくれたかね?」

「・・・あなたがたは、本当に行う覚悟があるのですね?」

「もちろんだとも、そのための「ヒト化計画」だ。」


長老は続ける。


「我ら「小人」が「人」になることで、モンスターを駆逐し、「人」の楽園を作る。うそ偽りは一切ないとも。」


彼は笑顔で天旗に手を差し伸べる。


「そのために、人類の守護者である君の力を借りたい。共にモンスターを倒そうじゃないか。」


天旗はうつむき、そして口を開いた。


「一体何度目か・・・。」

「何がかね?」

「・・・人には何度、絶望させられるというのだ!!」


天旗は声を荒げる。


「小さき者どもよ!本当にすべての小人を救うつもりはあるのか!?」


テロリストたちのことを思い出した。カルト教団のことを思い出した。


「支配者は弱者を虐げ、利用し、怨嗟の声が響き渡る!そのたびに私は希望を示すも、あなたたちはすぐに忘れる!」


長老は目を閉じた。微笑んではいるが顔がこわばっている。


「いいだろう、小さきものよ!手を貸そう!」


空間を手刀で切り裂く。そこから終焉銃を取り出した。


「ただし、人類の守護者としてではなく、人類の敵としてだ!」


次の瞬間、あたり一面が光に包まれた。

・・・


第三部

混沌とする世界


・・・


次回予告!


天旗は絶望した。かつての善良な小人はもういなくなったのだ。それならばいっそのこと、この手で・・・。はたして、芥たちはいったい何を思うのか!?


次回、サバイバル・ロボットマーチ 終わりの日 人類の敵、天旗

私は、人を諦めました。ご友人。

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