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サバイバル・ロボットマーチ  作者: ギンユウシジン
第三部 混沌とする世界
18/20

5日目:テロリスト鎮圧作戦

朝の司令室、そこは緊張に包まれていた。美月が皆に向かって言う。


「新たな作戦が発令されたわ。テロリスト鎮圧作戦よ。」


美月は立体映像を出現させる。


「敵は武装したテロリスト。要求に応えさせるために民間人の人質をとっているわ。」

「下種が・・・!」

「ひどいですわ・・・!」


弓波と西園寺が言葉を漏らす。


「司令部は救出のため複数のチームを結成。我々はテロリストの鎮圧部隊に配属されたわ。」


立体映像が、山岳地帯を表示する。


「人質救出班が先行。我々は合図とともに正面から一気にテロリストをたたくわ。」


時間との勝負よ。美月は映像を消した。


「よし、相棒の陣風の出番だな!」

「それは違うわ。芥君。」


美月が待ったをかけた。


「あなたの相棒は、他にもいるでしょう?」

「?何のことだ、委員長?」

「私のことです!ご友人!」


天旗が司令室の窓からのぞき込んでいた。ああ、窓に!窓に!


「・・・まさか、委員長?」

「そのまさかよ。あなたには天旗に乗ってもらうわ。」


芥の体がこわばる。


「スペック的にも圧倒的に天旗のほうが上よ。乗らない理由がないわ。」

「待ってくれ委員長!確かにそうかもしれないが、あいつに乗ると頭がおかしくなりそうなんだよ!」


ご友人!ご友人!ご友人~~~!!!窓の外で天旗が様々なポーズでスタンバイしている。確かにこれには乗りたくない。


「決定事項よ。」

「いやだ~~~!」

「嫌よ嫌よも好きのうち、ですね、ご友人。」


こうして芥は天旗に乗ることになった。ちなみにこの間誰一人として芥のことをかばおうとはしなかった。


・・・


テロリストたちが潜伏しているアジト、それは人里離れた山岳地帯にあった。


地形を利用し、待ち伏せで正規軍をしとめる彼らは、第二世代機体しか乗っていないからといって、十分脅威となりえるものだった。


月光に乗った美月が、電子支援を開始しながら各員に通達した。


「皆、聞こえているかしら?」

「こちら弓波、聞こえてるぜ。」

「こちら西園寺、聞こえていますわ。」

「向坂、問題なしっしょ。」

「こちらシルヴィア、感度良好。」

「こちら芥。問題ないぜ。」


全員が反応する。美月は作戦の再確認をする。


「もう一度確認するわ。先行している人質救出班からの合図があったら、作戦開始よ。合図には、青の照明弾が打ち上げられるわ。」


シルヴィアを除く美月たちは緊張していた。彼女たちにとって、これが初めての対人戦だったからだ。


いざという時には・・・。


そう芥が思い悩んでいると、天旗が話しかけてきた。


「ご友人、こんな話をご存じですか?」


あるところにドワーフとエルフがいました。ドワーフはいつも酒を飲んでおり、エルフはあきれて言いました。ドワーフに禁酒ができるものだろうかと。それを聞いたドワーフはこういい返しました。禁酒?簡単だ。毎日始めているからな!


ドワーフジョーク!天旗はテッテレーという効果音とともに、おどけたポーズをとった。


「・・・で、オチは?」

「え、いや、あの、その、この話は毎日ドワーフが禁酒に失敗してるからこそ、毎日禁酒を始めているというところがですね」

「わかっているよ、天旗。緊張をほぐそうとしてくれたんだろ。」


ありがとな。そう芥は言った。


「ご友人・・・、あまり気に病まないことです。いつの世も同じ種族同士が争うのは必然なのですから。いざという時は私がサポートします。」

「いや、いい。俺がやる。相手はテロリストだ。」


芥は操縦かんを強く握りしめる。その危うさに天旗は迷ったが、様子を見ることにした。


その時照明弾が放たれた。青ではない。赤だ。


「委員長、これは!?」

「・・・やることに変わりはないわ。攻撃開始よ。総員出撃!」

「「「「「了解!」」」」」


機体たちが走り出す。天旗だけは、低空飛行で先行した。


先行する天旗にテロリストたちが集中砲火を浴びせる。


天旗は難なくそれらを躱す。仮にかすったとしても、自己修復機能ですぐに回復する。


「なんだ、あの化け物は!?」

「当たらねえ!?チクショウ!どうなってんだ!?」

「当たっても回復してやがる!どうしろってんだよ!?」


テロリストたちの叫び声が聞こえる。芥は開闢剣と終焉銃で彼らの命を刈り取る。


「うぷっ!」


人の命を奪ったことに対する罪悪感が今になって押し寄せてくる。芥は思わず手を口に当てた。


「ご友人、つらい時は遠慮しないでください。」

「天旗・・・。」

「ご友人に中を汚されるのは、私にとって本望です。」

「今ので吐き気がより強くなったわ!」


芥は思わず大声で叫ぶ。テロリストたちはその数を減らしていった。


・・・


テロリストたちが立てこもる山岳地帯の旧軍事基地。破棄されたはずのそこは、彼らの手によって人が使えるものになっていたのだ。


「このまま1時間待機よ。」


美月からの通信があった。


「降伏勧告をするそうね。建前上だと思うけど、人道的な処置をとったということにしたいのでしょう。あとは本当に降伏してくれれば御の字といったところかしら。・・・ここまで大規模に蜂起されては、テロリストたちは皆、極刑は免れないでしょうけどね。」


美月が疲れたように言う。彼女もこの戦闘でだいぶ精神をやられたのだろう。


「皆、待機地点で待機よ。補給は今のうちにしておいて。」


通信が切れる。皆は休息をとることにした。


・・・

降伏勧告が出されて30分後、突如正規軍の前線司令部にめがけて、銃撃があった。


「長距離狙撃よ!皆、気を付けて!」


美月の通信からの声が響きわたる。司令部を狙われたことで、士気系統に混乱が起きる。


「ちっ、厄介なものを!」


紫電に乗ったシルヴィアが吐き捨てるように言う。機体用の長距離狙撃銃は威力が高い代わりに、連射速度はそこまで速くない。今のうちに狙撃地点を特定し、強襲を仕掛けるべきか、そう考えていると天旗が動き出した。


「さあ、ご友人!ともに踊りましょう!」


天旗が空高く飛び上がると、光の翼を生やして飛んだ。


「おい待て!格好の的になっちまうだろうが!」


芥が叫ぶも、天旗はハイテンションで飛行を続ける。


「ああ、これがご友人と二人のランデブー!すてきだ・・・!」

「もうやだー!この機体!」


長距離狙撃の弾が飛んでくる。それを天旗は、ある時は避け、ある時は開闢剣で切り落とし、またある時は終焉銃で撃ち、消滅させた。


そして距離を詰め、狙撃していた機体を剣で切り伏せた。


「さて、これで後方の方々も楽になるとよいのですが。」

「・・・なあ、天旗。勝手に動く武器ってどう思う?」

「おや、それはそれは。安定性にかけますね。私でしたら使いたくありません。」

「お前のことだよ!」


そんな、ご友人!驚愕する天旗と口論していると、美月から通信が入った。


「・・・芥君、勝手な行動はしないでちょうだい。」

「天旗が勝手に動きました~。」

「・・・はぁ、もういいわ。芥君は、皆の援護に回ってちょうだい。残りの敵を鎮圧するわ。」


あともう少しよ。そう美月は言って、通信が切られた。


「・・・もうひと頑張りしますか。」

「ですね、ご友人!」


その後の戦局は、天旗が上空から敵を狙撃することで、終始有利に運び、数時間もしないうちに鎮圧することができた。


・・・


「みんなお疲れ様。状況終了よ。」


月光からの通信が入る。一同は緊張の糸が切れた。


「・・・こんなのが、これからも起きるっていうのか。」

「・・・やるせませんわ。」

「・・・精神衛生上、良くないっしょ。」

「いつかは通らなければならない道だ。それが今日だったということだ。」


弓波たちは、人を殺めた経験に自己嫌悪を抱いていた。軍人たるものいずれそうなる日は来るだろうと予測していたが、それがこんなにも心を削るものだとは思っていなかったのだ。


すでに経験し、ある程度精神が安定しているシルヴィアは、美月に信号弾のことについて尋ねた。


「久遠、信号弾の色が違ったのは・・・。」

「想像の通りよ。・・・人質の生存者は0人。救出作戦としては失敗よ・・・。」


帰投するわよ。美月はそう言って通信を切ろうとした。


「花を、手向けませんか?」

「天旗?」


天旗が急に提案した。


「死者がどうか安らげるように。生けるものは、ただ悼みましょう。」


そう言って天旗は、花を探し出す。


「天旗・・・。」

「天旗、貴様・・・。」

「・・・人間らしいわね、あなた。」

「昔、はるか昔の話です。」


そう言って、天旗は語りだす。


「とあるご友人が、こういう時は、花を手向けるものだと教えてくれたのですよ。」


手ごろな花を探す。


「死者のためだけでなく、生者のためにもなるそうです。・・・ご友人、花を探すのを手伝ってはくれませんか?」

「・・・ああ、わかった!」

「時間的余裕はあるわ。ゆっくり探してちょうだい。」


話を聞いていた弓波たちも参加する。


「俺も手伝うぜ!」

「あーしも!」

「がんばりますわ!」


こうして芥たちは、花を探し、死者を悼んだ。

どうか、安らかに眠れますように。


・・・


天旗は暗闇の中、一人思う。


「力で弱者を食い物にするとは・・・、度し難い。」


思い出すは暴力による負の連鎖。


「いつの時代も変わらないのでしょうか・・・。」


・・・


それは、眠りから覚めた。


負の感情から生まれたそれは、とても狡猾だった。


このままでは希望に刈り取られてしまう。ならばどうすればいいか?


闇はいまだに胎動する・・・。


・・・


次回予告!


機体同士で人々が争う時代がやってきた・・・。芥たちは狂信的カルト集団の殲滅に向かう。はたして、芥は、天旗は何を見るのか・・・。


次回、サバイバル・ロボットマーチ 10日目 カルト教団殲滅作戦と慰安旅行

私は・・・人を信じたい、です、ご友人・・・!

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