5日目:テロリスト鎮圧作戦
朝の司令室、そこは緊張に包まれていた。美月が皆に向かって言う。
「新たな作戦が発令されたわ。テロリスト鎮圧作戦よ。」
美月は立体映像を出現させる。
「敵は武装したテロリスト。要求に応えさせるために民間人の人質をとっているわ。」
「下種が・・・!」
「ひどいですわ・・・!」
弓波と西園寺が言葉を漏らす。
「司令部は救出のため複数のチームを結成。我々はテロリストの鎮圧部隊に配属されたわ。」
立体映像が、山岳地帯を表示する。
「人質救出班が先行。我々は合図とともに正面から一気にテロリストをたたくわ。」
時間との勝負よ。美月は映像を消した。
「よし、相棒の陣風の出番だな!」
「それは違うわ。芥君。」
美月が待ったをかけた。
「あなたの相棒は、他にもいるでしょう?」
「?何のことだ、委員長?」
「私のことです!ご友人!」
天旗が司令室の窓からのぞき込んでいた。ああ、窓に!窓に!
「・・・まさか、委員長?」
「そのまさかよ。あなたには天旗に乗ってもらうわ。」
芥の体がこわばる。
「スペック的にも圧倒的に天旗のほうが上よ。乗らない理由がないわ。」
「待ってくれ委員長!確かにそうかもしれないが、あいつに乗ると頭がおかしくなりそうなんだよ!」
ご友人!ご友人!ご友人~~~!!!窓の外で天旗が様々なポーズでスタンバイしている。確かにこれには乗りたくない。
「決定事項よ。」
「いやだ~~~!」
「嫌よ嫌よも好きのうち、ですね、ご友人。」
こうして芥は天旗に乗ることになった。ちなみにこの間誰一人として芥のことをかばおうとはしなかった。
・・・
テロリストたちが潜伏しているアジト、それは人里離れた山岳地帯にあった。
地形を利用し、待ち伏せで正規軍をしとめる彼らは、第二世代機体しか乗っていないからといって、十分脅威となりえるものだった。
月光に乗った美月が、電子支援を開始しながら各員に通達した。
「皆、聞こえているかしら?」
「こちら弓波、聞こえてるぜ。」
「こちら西園寺、聞こえていますわ。」
「向坂、問題なしっしょ。」
「こちらシルヴィア、感度良好。」
「こちら芥。問題ないぜ。」
全員が反応する。美月は作戦の再確認をする。
「もう一度確認するわ。先行している人質救出班からの合図があったら、作戦開始よ。合図には、青の照明弾が打ち上げられるわ。」
シルヴィアを除く美月たちは緊張していた。彼女たちにとって、これが初めての対人戦だったからだ。
いざという時には・・・。
そう芥が思い悩んでいると、天旗が話しかけてきた。
「ご友人、こんな話をご存じですか?」
あるところにドワーフとエルフがいました。ドワーフはいつも酒を飲んでおり、エルフはあきれて言いました。ドワーフに禁酒ができるものだろうかと。それを聞いたドワーフはこういい返しました。禁酒?簡単だ。毎日始めているからな!
ドワーフジョーク!天旗はテッテレーという効果音とともに、おどけたポーズをとった。
「・・・で、オチは?」
「え、いや、あの、その、この話は毎日ドワーフが禁酒に失敗してるからこそ、毎日禁酒を始めているというところがですね」
「わかっているよ、天旗。緊張をほぐそうとしてくれたんだろ。」
ありがとな。そう芥は言った。
「ご友人・・・、あまり気に病まないことです。いつの世も同じ種族同士が争うのは必然なのですから。いざという時は私がサポートします。」
「いや、いい。俺がやる。相手はテロリストだ。」
芥は操縦かんを強く握りしめる。その危うさに天旗は迷ったが、様子を見ることにした。
その時照明弾が放たれた。青ではない。赤だ。
「委員長、これは!?」
「・・・やることに変わりはないわ。攻撃開始よ。総員出撃!」
「「「「「了解!」」」」」
機体たちが走り出す。天旗だけは、低空飛行で先行した。
先行する天旗にテロリストたちが集中砲火を浴びせる。
天旗は難なくそれらを躱す。仮にかすったとしても、自己修復機能ですぐに回復する。
「なんだ、あの化け物は!?」
「当たらねえ!?チクショウ!どうなってんだ!?」
「当たっても回復してやがる!どうしろってんだよ!?」
テロリストたちの叫び声が聞こえる。芥は開闢剣と終焉銃で彼らの命を刈り取る。
「うぷっ!」
人の命を奪ったことに対する罪悪感が今になって押し寄せてくる。芥は思わず手を口に当てた。
「ご友人、つらい時は遠慮しないでください。」
「天旗・・・。」
「ご友人に中を汚されるのは、私にとって本望です。」
「今ので吐き気がより強くなったわ!」
芥は思わず大声で叫ぶ。テロリストたちはその数を減らしていった。
・・・
テロリストたちが立てこもる山岳地帯の旧軍事基地。破棄されたはずのそこは、彼らの手によって人が使えるものになっていたのだ。
「このまま1時間待機よ。」
美月からの通信があった。
「降伏勧告をするそうね。建前上だと思うけど、人道的な処置をとったということにしたいのでしょう。あとは本当に降伏してくれれば御の字といったところかしら。・・・ここまで大規模に蜂起されては、テロリストたちは皆、極刑は免れないでしょうけどね。」
美月が疲れたように言う。彼女もこの戦闘でだいぶ精神をやられたのだろう。
「皆、待機地点で待機よ。補給は今のうちにしておいて。」
通信が切れる。皆は休息をとることにした。
・・・
降伏勧告が出されて30分後、突如正規軍の前線司令部にめがけて、銃撃があった。
「長距離狙撃よ!皆、気を付けて!」
美月の通信からの声が響きわたる。司令部を狙われたことで、士気系統に混乱が起きる。
「ちっ、厄介なものを!」
紫電に乗ったシルヴィアが吐き捨てるように言う。機体用の長距離狙撃銃は威力が高い代わりに、連射速度はそこまで速くない。今のうちに狙撃地点を特定し、強襲を仕掛けるべきか、そう考えていると天旗が動き出した。
「さあ、ご友人!ともに踊りましょう!」
天旗が空高く飛び上がると、光の翼を生やして飛んだ。
「おい待て!格好の的になっちまうだろうが!」
芥が叫ぶも、天旗はハイテンションで飛行を続ける。
「ああ、これがご友人と二人のランデブー!すてきだ・・・!」
「もうやだー!この機体!」
長距離狙撃の弾が飛んでくる。それを天旗は、ある時は避け、ある時は開闢剣で切り落とし、またある時は終焉銃で撃ち、消滅させた。
そして距離を詰め、狙撃していた機体を剣で切り伏せた。
「さて、これで後方の方々も楽になるとよいのですが。」
「・・・なあ、天旗。勝手に動く武器ってどう思う?」
「おや、それはそれは。安定性にかけますね。私でしたら使いたくありません。」
「お前のことだよ!」
そんな、ご友人!驚愕する天旗と口論していると、美月から通信が入った。
「・・・芥君、勝手な行動はしないでちょうだい。」
「天旗が勝手に動きました~。」
「・・・はぁ、もういいわ。芥君は、皆の援護に回ってちょうだい。残りの敵を鎮圧するわ。」
あともう少しよ。そう美月は言って、通信が切られた。
「・・・もうひと頑張りしますか。」
「ですね、ご友人!」
その後の戦局は、天旗が上空から敵を狙撃することで、終始有利に運び、数時間もしないうちに鎮圧することができた。
・・・
「みんなお疲れ様。状況終了よ。」
月光からの通信が入る。一同は緊張の糸が切れた。
「・・・こんなのが、これからも起きるっていうのか。」
「・・・やるせませんわ。」
「・・・精神衛生上、良くないっしょ。」
「いつかは通らなければならない道だ。それが今日だったということだ。」
弓波たちは、人を殺めた経験に自己嫌悪を抱いていた。軍人たるものいずれそうなる日は来るだろうと予測していたが、それがこんなにも心を削るものだとは思っていなかったのだ。
すでに経験し、ある程度精神が安定しているシルヴィアは、美月に信号弾のことについて尋ねた。
「久遠、信号弾の色が違ったのは・・・。」
「想像の通りよ。・・・人質の生存者は0人。救出作戦としては失敗よ・・・。」
帰投するわよ。美月はそう言って通信を切ろうとした。
「花を、手向けませんか?」
「天旗?」
天旗が急に提案した。
「死者がどうか安らげるように。生けるものは、ただ悼みましょう。」
そう言って天旗は、花を探し出す。
「天旗・・・。」
「天旗、貴様・・・。」
「・・・人間らしいわね、あなた。」
「昔、はるか昔の話です。」
そう言って、天旗は語りだす。
「とあるご友人が、こういう時は、花を手向けるものだと教えてくれたのですよ。」
手ごろな花を探す。
「死者のためだけでなく、生者のためにもなるそうです。・・・ご友人、花を探すのを手伝ってはくれませんか?」
「・・・ああ、わかった!」
「時間的余裕はあるわ。ゆっくり探してちょうだい。」
話を聞いていた弓波たちも参加する。
「俺も手伝うぜ!」
「あーしも!」
「がんばりますわ!」
こうして芥たちは、花を探し、死者を悼んだ。
どうか、安らかに眠れますように。
・・・
天旗は暗闇の中、一人思う。
「力で弱者を食い物にするとは・・・、度し難い。」
思い出すは暴力による負の連鎖。
「いつの時代も変わらないのでしょうか・・・。」
・・・
それは、眠りから覚めた。
負の感情から生まれたそれは、とても狡猾だった。
このままでは希望に刈り取られてしまう。ならばどうすればいいか?
闇はいまだに胎動する・・・。
・・・
次回予告!
機体同士で人々が争う時代がやってきた・・・。芥たちは狂信的カルト集団の殲滅に向かう。はたして、芥は、天旗は何を見るのか・・・。
次回、サバイバル・ロボットマーチ 10日目 カルト教団殲滅作戦と慰安旅行
私は・・・人を信じたい、です、ご友人・・・!
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