1日目:機体大戦サバイバル・ロボットマーチ
芥たちが最前線から戻り数日、基地のメンバーは、司令室に集まっていた。
学園基地に新た仲間が加わろうとしていたのだ。一人は銀髪のモデルのような美少女だった。
「シルヴィア・ローランドだ。先日まで最前線にいた。戦闘に関しては期待してくれていい。よろしく頼む。」
「ひさしぶりね、という割にはあまり時間が経っていないかしら。」
美月が微笑みながら、シルヴィアの着任を歓迎する。美月にとってシルヴィアは戦闘経験が豊富で、指揮経験もある頼れる仲間だった。また一緒になれたことを心から喜んでいるようだ。
芥と美月を除いた一同が自己紹介する。これにて紹介は終わったかに見えた。
「さて、もう一人紹介するわ・・・。自己紹介をお願いできるかしら。」
弓波たちは疑問に思う。この司令室にいるのはシルヴィアを含め7人だけだ。廊下で待機しているのだろうかと弓波が思っていると、一同は校庭から巨大な振動を感じた。
美月とシルヴィアは遠い目をする。芥は、自分は関係ないとでもいうかのように明後日の方向を向く。
弓波たちは校庭を窓からのぞき込む。するとそこにいたのは、
「ごきげんよう、ご友人たち!天に掲げるは、希望の御旗!!天旗、降臨!!!」
黄金の巨人、否、黄金の機体が決めポーズとともに言葉を発していた。
「金ぴかだー!」
「金ぴかですわ!」
「あれ、もしかしてショップの・・・?」
「新型の機体キター!」
各々が個性的な反応をする。弓波と西園寺、元宮は興奮しきっており、向坂は何かを察したようだ。
美月が半ばあきらめの境地に至ったかのようにして、彼?を紹介する。
「最終決戦兵器型機体の天旗よ。彼?には自我があるそうだわ。皆、仲良くしてあげてちょうだい。」
弓波が驚く。
「え、中にパイロットがいるんじゃねえの?」
「無人よ。天旗は、それ個人が自由意志を持つ存在らしいわ。」
もう、デタラメね。美月は考えることを放棄したかのように投げやりに言った。
「おや、ご友人、元気がないようですがどうかしましたか?」
芥は、関りがないかのように天旗の発言をスルーした。
「ご友人、反応が冷たい!我々はともに熱く激しく(操縦かんを)動かしあった仲ではないですか!?」
一部の女性陣が色めきだつ。
「あ、芥さん!?機体と、その、したんですか!?」
「どちらが攻めで、どちらが受けですの!?もちろん芥さんは受けですわよね!?」
「やかましー!お前ら!なにもねえよ!?」
ムキになるところが余計に怪しい!元宮と西園寺はキャーと叫び声をあげた。
「・・・そろそろいいかしら?話を進めたいのだけれど。」
美月の一言に、司令室が一気に静まりかえる。誰も本気の彼女を怒らせたくはないようだ。
「静かになったようね。ありがとう。今日はこのままシルヴィアさんの歓迎会に移るわ。」
やたー!弓波と西園寺が喜ぶ。歓迎会の日は、ごちそうが食べられるからだ。
「歓迎してくれるのはうれしいのだが、全員でいいのか?誰か待機要員を設定しないのか?」
「ここは最前線ではないわ。警報が鳴ってからの対処で十分よ。」
「あ、ああ、そうか。久しぶりの最前線以外だったからな。感覚がマヒしていたようだ。」
最前線に長くいたシルヴィアは、通常の戦線との違いに困惑する。
「まずは、施設を簡単に案内するわ。その後、食堂で歓迎パーティーね。」
「パーティー・・・、ということはアレが見れますのね?」
「ああ、パーティーにアレは鉄板だな。」
「アレの出番っしょ。」
「何なのだ?アレとは?」
「気にしなくていいわ。」
弓波、西園寺、向坂は、パーティーと聞いて、美月のキレッキレのダンスを期待した。当の本人は期待され、やや照れくさそうだ。
・・・
一同は、図書室に到着した。
「ここは図書室よ。ある程度の蔵書はそろっているわ。ここで自習することも可能よ。」
「ほう、この基地には図書室があるのか。」
「機体関連の書籍もそろっていますよ!」
元宮が興奮するように言う。次いで、西園寺がその大きな胸をそらして自慢するかのように言った。
「ちなみに私は、常連ですわ!」
「お嬢・・・、たまにさぼってゲームしてるよね・・・。」
「な、なぜ、バレていますの!?」
「「何やってるんだよ・・・。」」
芥と弓波の言葉がハモった。
・・・
次にやってきたのは、プールだった。
「ここがうちのプールよ。設備は最前線のとあまり変わらないわね。」
「ふむ、ここにもプールがあったのか。また今度体力勝負をしたいものだ。」
最前線のプールでの勝負を思い出す。そこに弓波が声をかけた。
「お、勝負すんのか?俺も混ぜてくれよ。」
「いいだろう。軽くもんでやろう。」
「シルヴィア・・・、やめとけ。相手が悪すぎる。」
芥はシルヴィアを止めたが、本人はやる気のようだ。一度世界を知るというのもまた勉強か・・・。そう芥は考えた。
「普通に泳いで遊びたいですわ!」
「そうね。水に余裕があれば、またプールを開放してもいいかもしれないわね。」
「今度は芥っち、追い出されないといいけどね~。」
「あはは~。」
「追い出される?」
「ああ、何でもないさ。さて、そろそろ次に行こうぜ。」
芥は露骨に話題をそらし、次のところへ向かうことにした。
・・・
一同はビニールハウスにやってきた。
「ここでは、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、山芋、トマト、大豆を育てているわ。」
「イモ類が多くないか・・・?」
「たまたまよ。」
「あともう少しで収穫できますよ。」
「ポ・テ・チ!ポ・テ・チ!」
「莉音!白米の用意はできていまして!?山芋で優勝ですわ!」
「お嬢、気が早いって。ごはん冷めちゃうよ。」
その様子を見ていた芥が、やれやれと肩をすくめる。
「みんなわかってないな。大豆のすばらしさを。」
急に語りだす芥。芥の後ろにそっと現れる天旗。
「大豆は、枝豆にもなるんだ。しかも大豆と枝豆とでは栄養価も違ってくる。鉄、葉酸は茹でた大豆よりも枝豆にたくさん含まれているんだぜ。」
芥がドヤ顔で説明する。その後ろで天旗がわかりやすく説明をまとめたプレートを出していた。
芥~、後ろ後ろ~。弓波の言葉を意に介さずに芥は続けた。
「つまり、大豆こそが、サバイバル生活の中で最も適した作物ということなのさ!」
芥をヨイショするように踊り舞う天旗。なぜあれほどの巨体が動いて風が起きないのだろうと美月は少し考えたが、すぐに考えるのをやめた。
「・・・なあ芥、悪いこと言わねえから、後ろ見てみ?」
「さっきから何だよ弓波、そんなに言うなら・・・。」
振り向く芥。しかしそこには何もなかった。
「なんもねえじゃん。」
「・・・ええそうね。何も見なかったわね。」
不思議なこともあるものねと、美月はこのことを頭から追いやった。
・・・
ビニールハウスの次は、格納庫に向かった。
「きちんと整備されている格納庫だな。」
「ええ、元宮さんの管理のたまものよ。」
機体が立ち並ぶ格納庫。そこにしれっと天旗もいたが、全員スルーした。
「ご友人!スルーとはひどいですよ!」
「うわっ!」
ショップのコンソールがいきなり話し始めた。
「零式、いや、天旗。」
「私も皆さんと基地を回りたいのを我慢して、おとなしくしているんですから。ちょっとぐらいかまってくれてもいいでしょう!?」
「まあ、そうだな・・・。」
芥以外は大人しくしていたか?と疑問に思ったが、芥は天旗の言い分も一理あると思い、折れることにした。
「まあいいぜ、天旗。何か話したいことでもあるか?」
「ええ、ありますとも!世界最新の英雄譚、その序章を!」
チャプター・ワン。出会い。いい声でそう話し始めた天旗は、芥との出会いからこれまでを話す。
「それでは皆、そろそろ食堂へ行くわよ。」
はーい、と人数分の声が聞こえる。天旗の声が芥の携帯端末から聞こえた。
「これでいつでもご友人と一緒ですね!」
「元宮~、端末がウイルスに感染したから、削除頼む~。」
そんな!ご友人!天旗の声が格納庫に響いた。
・・・
食堂のテーブルにはパーティー用の料理が並べられていた。どれも莉音があらかじめ準備していたものだ。
「こんなに豪勢に歓迎されるとはな・・・。」
「遠慮せず食べてちょうだい。皆が騒ぎたいだけというのもあるから。」
弓波と西園寺は待ちきれない様子だ。
「なあなあ!もう喰っちまっていいよな!?」
「ですわ!」
「お嬢も奈保っちも、もう少し待ちなし。」
「炭酸ジュースも開けちゃいますね。」
元宮がグラスに飲み物を注ぐ。めったに飲めない甘い炭酸飲料に、一同は期待を高鳴らせた。
「それでは、乾杯の音頭をシルヴィアさんに。」
「任された。・・・こんなにも歓迎してくれてありがとう。皆の期待に応えられるように努力する。乾杯!」
乾杯~!歓迎の宴が始まった。
さっそく料理を口にするシルヴィア。すると彼女は目を見開いた。その後一心不乱に料理を食べ始める。少しして落ち着くと、飲み物を飲んで一息ついた。
「・・・うまい、うまいな。ここではこんなにも料理の腕がいいコックがいるのか?」
「えへへ~、褒めてくれてサンキュー!」
向坂が照れくさそうに言った。
「莉音の料理の腕は、一流シェフ並みですわ!」
彼女の代わりにドヤる西園寺。
「お夜食とかも、お願いすれば作ってくれますからね。」
いつも夜食のお世話になっている元宮が言う。
「三食、デザート付きよ、この基地は。」
美月がいい笑顔で言う。
「私たち、これからも仲良くしましょうね?」
コクリコクリ。シルヴィアは、料理を口にしながらうなずいた。
「・・・これってさー、一種の人質じゃね?」
「言うな弓波、勘のいいガキは・・・、ってされるぞ。」
芥と弓波はおとなしく料理を口にして黙った。
・・・
シルヴィアの歓迎会の翌日、シルヴィアは朝食のスクランブルエッグのふわとろさに驚き、改めてこの基地の料理のレベルの高さを思い知った。
そして、それから少し経った後の指令室。そこには7人全員がそろっていた。
「さて、これからの方針なのだけど、基本はモンスターの駆除、物資の回収、自己鍛錬に当たってもらうわ。」
ホワイトボードに説明を書いていく美月。
「モンスターの駆除は積極的に行ってちょうだい。将来的にはこのあたりを安全地帯にする予定よ。そうすれば民間人の生存範囲が広がり、経済が活性化するわ。」
嗜好品の類なんかも手に入りやすくなるでしょうね。そういう美月の発言に色めき立つ弓波たち。その目はキラキラと輝いていた。
「次は物資の回収ね。物資はいくらあってもいいものよ。基地の拡張から、ミサイルの弾頭まで、いろいろ使い道があるわ。」
物資が余れば、サウナや娯楽室なんかも作れるかもね。サウナという言葉に元宮が反応する。連日の機体の整備や基地の保全に大忙しの彼女には、疲れをいやす施設は喉から手が出るほど欲しいものだった。
「最後は自己鍛錬ね。体力錬成から自習、必要なら勉強会も再開するわ。」
弓波と西園寺がうへーという顔をする。体力には自信のある弓波だが、勉強だけはどうしても肌に合わない。体力錬成に逃げようかと一瞬考えたが、弱点を補うのも成長につながると考え、取り組むことを決意した。一方西園寺は涙目だった。
「ううー。またお勉強ですわ。」
「どうどう、お嬢はやればできるから。」
莉音―!向坂に泣きつく西園寺。これもいつもの光景だった。
「自由すぎないか、この基地・・・。」
シルヴィアはややあきれながら言った。
「ある程度の安全が保障された基地はこんなものよ。じきに慣れるわ。」
最後に、と美月が締めようとする。
「司令部から嫌な情報が入っているわ。世界中で同時多発的にテロやカルト教団の暴走が起きているそうよ。結果、機体同士の戦闘が発生しているわ。」
司令室の空気が一気に引き締まる。
「司令部はこの事態を機体大戦、別名サバイバル・ロボットマーチと名付けたわ。私たちもこの事態を鎮圧するために駆り出されることが出るかもしれない。対人戦となるわ。」
「それって・・・。」
「そう、私たちはモンスターだけではなく、人間同士で争うことになる。」
覚悟を決めてちょうだい。美月はそう締めくくった。
司令室は、重い空気に包まれた。
・・・
格納庫、天旗は一人でリズムをとっていた。
「スロー・スロー・クイック・クイック・スロー、ついにこの時が来ましたか。」
天旗は続ける。
「スロー・スロー・クイック・クイック・スロー、私も覚悟を決めませんと。」
リズムをとるのをやめる。
「いずれ来る訣別の時。その時までどうか、ご友人と・・・。」
天旗の言葉は、誰もいない格納庫に静かに溶けていった。
・・・
次回予告!
機体同士で人々が争う時代がやってきた・・・。芥たちは武力で人質を虐げるテロリストたちの鎮圧に向かう。はたして、芥は、天旗は何を見るのか・・・。
次回、サバイバル・ロボットマーチ 5日目 テロリスト鎮圧作戦
私は・・・人を信じたいです、ご友人。
面白かった、応援してもいいよという方はブックマークをお願いいたします。
執筆の励みとええじゃないかを踊る気分になりますので、お待ちしております。




