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サバイバル・ロボットマーチ  作者: ギンユウシジン
第二部 抗え! 絶望への挑戦!!
15/21

10日目:プールの時間

雨の音がうるさい夜、芥たちは司令室でトランプをしていた。

4人は数枚の手札を交換し合う。もっとも簡単なゲーム、ババ抜きだ。


最後に残った芥とシルヴィアが、難しい顔をして互いの手札の読み合いをしている。


「(右・・・、いや左か!)」


芥がシルヴィアの手札からカードを引く。


そこには死神が描かれていた。


「ふぎゃーーー!!!」

「ふはは!芥、貴様の負けだな!」


ジョーカーではないほうのカードをシルヴィアが引く。これにて決着はついた。


「・・・芥の負け~。」

「ううう。今度こそ~。」

「何度でも受けて立ってやろう!」


その様子を見ていた美月が、ぽつりとつぶやく。


「雨、いつになったら止むのかしら・・・。」


美月の言う通り、ここ数日雨が降り続いている。


視界の悪い中の戦闘は、パイロットたちにとって危険だ。できれば天候は優れていたほうがいい。だが、時にはこうなってくれていたほうが、都合のいい時もある。


「でも委員長、この雨のおかげでプールが使えるようになるんだろ?」

「ええ、そうね、芥君。気分転換ができるのはいいことだけど、それは晴れてからじゃないとね。」


連日の大雨で、屋外の貯水槽にはプールの使用に耐えられるだけの水が蓄えられている。だがプールに入れるのは晴れてから。さすがに雨の中泳ぐわけにもいかない。


「そろそろ皆寝ましょう。明日も早いわ。」


明日こそ晴れてくれますように。美月はひそかに願って眠りについた。


・・・


美月は起床後、とあることを決めていた。それは、今日はプールの日にするということだった。今日の天気が昨日までの大雨がウソのような快晴だったのだ。


朝食をとりながら、美月は皆に話す。


「今日は午前中の物資探索を終えたら、午後からはプールにしましょう。」

「おっ、いいね、委員長。」

「プールか、たまには水泳で鍛えるのも悪くない。」


一人グレイだけが、いじけているように見えた。


「どうかした、グレイさん?」

「・・・私、泳げない。」


人並み以上の運動神経を持つグレイ。だが、意外なことに彼女はカナヅチだったのだ。


「泳ぐ機会なかったから・・・。」

「そういえばそうだったな。グレイ、なら私と一緒に泳ぐ訓練をしようか。」


シルヴィアの提案にコクリとグレイがうなずく。今日のグレイの予定は決まった。


「それでは朝食後1時間の休憩、その後格納庫にパイロットスーツ着用で集合。そのまま物資探索に出撃するわ。」


美月の言葉に皆が了解と返す。


その日の探索は、どこか皆浮足立っていた。


・・・


午後、太陽が昇り切ったころ、プールでは4人がおのおの思うが儘に過ごしていた。


「ふう。さすがに日が出ると少し熱いわね。」


パラソルを立て、デッキチェアで読書をしていた美月。彼女はいつぞやの時と同じく訓練学校指定のスク水を着ていた。均整の取れたその体は、芥曰くバランスがいいといわしめるに十分だった。


私も少し泳ごうかしら、と熱くなった体を冷やそうとプールへ向かう。


そのころプールでは、二人の美少女たちが泳ぎの特訓をしていた。


「そうだ、その調子だぞ、グレイ。」


長い銀髪をまとめているシルヴィアは競泳水着を着ていた。スラリとした体によく似合っているのだが、いかんせん主張の激しい胸部に自然と目が行ってしまう。


もしここが人の多いビーチならナンパされることは確定だろう。もっともその代償は高くつくことになるのだろうが。


もう一人の美少女グレイは、灰色の髪をお団子ヘアーにしていた。シルヴィアにやってもらったものだ。同年代の少女たちより明らかに発達している胸は、泳ぐ際に邪魔になりそうだ。


「・・・ぷは。・・・ぷは。」


グレイはシルヴィアに手を引かれながら泳ぎの練習をしている。まずはクロール、それから平泳ぎとシルヴィアの中ではカリキュラムが決まっていた。


「よし、だいぶ水に慣れてきたな。次は一人で浮く練習をしてみようか。」


シルヴィアの新たな指示に、グレイは躊躇することなく実行に移す。数十分もすれば、次の段階に移行するグレイがそこにはいた。


そこに芥がやってきた。百合の間に挟まろうとする男ではないのでセーフ判定。


「お疲れ、二人とも。何か手伝えることはないか?」

「ほう、貴様にしては気が利くな。」

「頑張る子を応援する気持ちぐらいあるって。塩飴もってこいとか、スポドリもってこいとかでもいいぜ。」


どうかな、芥は尋ねた。


「それなら、水中からグレイのフォームを確認してくれ。そうしたほうが効率よく練習できるからな。」

「了~解。」


グレイが泳ぎ始める。芥は水中にもぐり、グレイのフォームを確認すべく泳ぎだした。


すべて計画通りだと悪い顔をしながら。


「(ククク、ここまでは計画通り。前回の失敗で俺は学んだ。女子は男子の目線察知能力が高いと!ならば好青年の振りをして間近で女体を観察すればいい!)」


クズである。このクズはグレイの体をねっとりと観察した。


「(トランジスタグラマーっていうんだよな。小柄なのに出るとこ出やがって。小糸ちゃんといい、最近の子は、発育が進んでいますな~!)」


水中でグレイが前に進むたびに、グレイの豊な胸が揺れる。まさに眼福だった。


息継ぎのために地上へ顔を出す芥。そこには端まで泳ぎ切ったグレイと監督役のシルヴィアがいた。


「どうだった、グレイのフォームは?」

「あ~、そうだな。全体的にいいと思うんだ。ただ全身に力が入っているかもしれない。もっと力を抜いて泳いでみるのはどうだ?そのほうが疲れないし、速く泳げるぞ。」


この時のためにシミュレーションしていたセリフを自然に紡ぎだす。芥は夜に寝る間も惜しんでいくつかのセリフを考えていたのだ。


芥のセリフを聞いたシルヴィアは関心する。


「ほう、そこには気づかなかった。ちゃんと見てくれたようで何よりだ。」


グレイも的確なアドバイスをくれた芥に感謝する。


「・・・わかった、気を付けてみるよ。ありがとう芥。」

「いいってことよ。困ったときはお互い様だろ?」


とてもいい笑顔で言う芥。クズである。


「そうだシルヴィア、あとで俺のフォームも見てくれないか?せっかくだし俺にもアドバイスをくれよ。」

「ほう、殊勝な心掛けだ。いいだろう、確認してやろう。」


ここまでは芥のシナリオ通りに進んでいる。次のシナリオに進めるために芥は布石を打った。


・・・


グレイの練習をいったん休憩し、その間に芥はシルヴィアにフォームを見てもらうことになった。


「んじゃ、いきま~す。」


自然体で芥は泳ぐ。泳ぎ切った後、シルヴィアにアドバイスを求めた。


「ふむ、これといって何か言うことはないな。」

「そうか?久しぶりに泳いだんだけど、いまいちしっくりこなくてさ。」

「ふ~む。」

「提案なんだけどさ、参考にするためシルヴィアのフォームを見せてくれないか?」

「私のか?・・・まあいいだろう。その目に焼き付けるといい。」

「サンキュー!んじゃ一つ頼むよ。」


わかった。シルヴィアは泳ぎだした。


芥も水中にもぐる。そこには二つの果実が揺れる素晴らしい光景が広がっていた。


「(シルヴィアは、委員長以上元宮以下ってところか。とんでもないダイナマイトボディだぜ!)」


シルヴィアが泳ぎ切る。芥も地上へ顔を出す。


「どうだった?芥?」

「う~ん、ごめん。やっぱいきなりすぐには、何も思いつかないや。」

「ふむ、まあ気にするな。ゆっくり違和感の正体をつかめばいい。」


サンキューな、シルヴィア。そう言いながら芥は2件の完全犯罪を成し遂げた。


・・・


グレイの訓練もひと段落し、皆がプールサイドで休憩していた時。芥はシナリオを完成させるべく一つの言葉をつぶやいた。


「そういや、この基地の中で誰が一番運動神経がいいんだろ?」


美月とシルヴィアがピクリと反応する。


「前いた基地の中じゃ、弓波っていうフィジカルお化けがいたんだけどさ、この基地ならだれが一番なのかなって。」

「愚問ね、芥君。一番は私よ。」


美月が勝ち誇るように言う。事実美月は万能の秀才。弓波という外れ値を除けば、なんでもできる逸材だった。そして実は結構な負けず嫌いだったりする。


「それは聞き捨てならんな。体力なら私も自信があるぞ。」


反論するようにシルヴィアが言う。事実、彼女はまんべんなく高い能力を有している。訓練学校の成績では、美月よりも高いA判定を受けているのだ。


二人の間に火花が散る。


「「勝負よ(だ)!」」


二人が同時に宣戦する。そこに芥が仲裁に入る。


「まあまあ、やるならルールを決めようぜ。3本勝負で先に2勝したほうが勝ち。負けても恨みっこなし。審判は公平に俺とグレイでやるっていうことで。」

「それでいいわよ。」

「かまわん。」

「それじゃ、一本目は上半身を鍛えているかを見る腕立て伏せ勝負。先に50回やったほうの勝ちだ。」


美月とシルヴィアは、腕立て伏せの体勢に入る。


「おっと、フォームが崩れているものは無効にするぜ。審判の俺とグレイがフォームと回数を確認する。グレイは委員長を、俺はシルヴィアを見るからな。」


用意・・・、スタート!美月たちは腕立て伏せを開始した。


「1・2・3・・・。」


二人はほぼ同じスピードで腕立てをする。


「二人とも、もう少し深く腕を曲げてくれ。さすがに浅い。」


芥が言うと同時に、二人は腕を深く曲げた。


「(うひょ~!メロンがメロンゼリーになってる!)」


下品なことを考えているクズは、その間も回数を数えることを忘れていなかった。数え忘れは、死に直結するからだ。


だがこの至福の時間ももうすぐ終わる。


「芥!あと何回だ!?」

「48・49・50!」


1回差で美月は敗北した。

腕立て勝負はシルヴィアに軍配が上がった。


「お疲れさん。どちらもいい勝負だったよ。少し休憩したら、次の勝負に移るぜ。」


息を整える二人。二人は腕をよくマッサージしていた。


数分後。芥は次の勝負の開始を宣言する。


「それじゃそろそろいいよな?次の勝負は下半身を鍛えているかを見るスクワット勝負。先に50回やったほうの勝ちだ。」


美月は気合が入る。これに負けたらそれで敗北が確定するからだ。


二人はスクワットの体勢に移行する。


用意・・・、スタート!美月たちはスクワットを開始した。


「4・5・6・・・。」


シルヴィアは、深く腰を下ろしたきれいなフォームでスクワットをしている。ただし芥が注目しているのは、水着の食い込みにあった。


「(素晴らしい!競泳水着の食い込みが俺の目を離さない!見るべき場所は揺れるデカメロンだけではなかった!)」


芥は後ろに回り込んでフォームをチェックする。そのついでにシルヴィアの桃を堪能していた。


「(太ももからお尻にかけてのこのライン、これがグランドラインか)」


不自然にならないように細心の注意を払い、シルヴィアを観察する。


「おい芥、あと何回だ!?」

「45・46・・・。」

「50!」


隣の美月がスクワットを終えた。この勝負は美月の勝ちだ。シルヴィアは、すごく悔しそうな顔をする。


「二人ともお疲れ。残るはあと一戦。5分休憩したらやろうぜ。」

「・・・芥君、何か楽しそうね。」

「そりゃ楽しいさ。俺こういったイベント好きだし。」

「・・・そう、ならいいわ。」


委員長に怪しまれている。だが大丈夫、今回委員長はターゲットにしないのだから。俺の計画に狂いはない!そう考える芥だった。


・・・


「さあ、最後の競技を発表しよう!お題は水泳だ!先に端についたほうが勝ち!」


ノリノリの芥に、闘志を燃やしている美月たち。選手の二人はプールの端へと向かった。


「位置について・・・、よ~いドン!」


バシャン!水しぶきが舞う。


ここで芥はどのようにしてシルヴィアを見るのだろうか?

否、もう見ないことにしている。芥はごく自然に二人の勝負を見届けることにした。


もうすでに十分目標は達成した。これ以上欲張ることは、自身の破滅につながる。

芥は完全犯罪を成し遂げたのだ。


プールの二人が泳ぎ切る。ほぼ同時に二人はプールから上がった。


「これは・・・、同着!よってこの勝負引き分け!」


美月とシルヴィアは呆然とする。しばらくして二人は笑みを浮かべ互いに握手を申し出た。


「いい勝負だったわ、シルヴィアさん。」

「こちらこそ。こんなにいい勝負ができてうれしく思う。」


美しい友情がそこには芽生えていた。


「いや~、ほんといい勝負だったよ、お疲れさん。さ、もうそろそろプールから上がろうぜ。」


それもそうね。美月たちがプールから出る。


一人になったプールで芥は一人ほくそえんでいた。


「計画通り!」


その声はシャワーの音にかき消され、誰にも聞こえることはなかった。


・・・


プールから上がった一同は、司令室でまったりしていた。


そこで美月が、ふと疑問に思ったことを口にする。


「このあたりのモンスターは、なぜ中型までもが群れるのかしら?基本群れるのは、小型モンスターだけのはずなのに。」

「この地域特有の異常行動だからではないのか?超大型同士が群れていることもあるからな。」


シルヴィアが美月の疑問に対し公式の見解を述べる。最前線と呼ばれる場所では、モンスターの異常行動が見られることが多い。


グレイがポツリとこぼす。


「・・・弱いものほどよく群れる。」


美月は少し考えこんだ後、新たな疑問が浮かんだ。


「(・・・もしもその通りなのだとしたら、一体「何」に対して群れているのかしら)」


邪神?それとも・・・。美月はこのことを頭の隅にとどめた。


・・・


次回予告!


前線基地に来てから15日目。いよいよ邪神との戦いに挑む!だが、それだけでは終わらないようで・・・?絶体絶命のピンチの時、希望の権化が降臨する!


次回、サバイバル・ロボットマーチ 15日目 運命の出会い

やっと会えますね、ご友人。

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執筆の励みとひょっとこ踊りを踊る気分になりますので、お待ちしております。

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