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サバイバル・ロボットマーチ  作者: ギンユウシジン
第二部 抗え! 絶望への挑戦!!
14/19

5日目:グレイクッキング!

「由々しき事態よ!」


美月の声が、司令室に響き渡った。


「お湯のシャワーが出ないわ!それにクーラーもつかない!まるで原始的生活よ!」


「前線基地などそんなものだぞ。復興してもすぐにモンスターの襲撃で壊れる。」

「・・・水のシャワーでも、お湯のシャワーでも大して変わらない。」


あきらめの境地に達しているシルヴィアとグレイ。それに対し、美月が声を大にして言う。


「この事態を打開するため、物資回収強化指令を発令するわ!」


司令室の机に立体映像が浮かび上がる。


「このあたりで物資の回収が見込めるのは、近場の研究施設と、邪神のいる盆地に近い研究施設の2か所よ。この2か所を集中して探索するわ。」

「前の時といっしょか、委員長。」


以前の学園前哨基地でも行われたことをここでもやろうとしている。


「回収するのはいいのだが、基地の防衛はどうする?グレイを残していくか?」


シルヴィアが疑問に思う。前線基地の二人が物資の回収に向かわなかったのは、人手が足りないという側面もあったのだ。誰か一人は最低でも基地に残さなければならない。


「いいえ、全員で向かうわ。」

「何?」

「前の基地から防衛ドローンの設計図を持ってきていたのよ。つい先ほど防衛ドローンが完成したわ。時間稼ぎぐらいにはなるでしょうね。」


なるほど、それなら・・・。シルヴィアは納得した。


「ここでの物資回収は時間との勝負よ。素早く回収して、素早く戻ってくる、いいわね?」

「「「了解!」」」


こうして美月たちは、物資の回収に向かった。


・・・


最前線の荒野を4機の機体が走る。今のところモンスターとの接敵はない。


「この間、だいぶ間引いたおかげかモンスターを見ないな。」

「油断するな芥。警戒を厳にしろ。」

「・・・油断大敵。」


シルヴィアとグレイに注意される。


「へいへい、すみませんね~。」


芥は不貞腐れたように返事をする。


「そういえば委員長、まずは遠くの回収地点に向かうんだよな?」

「ええ、そうね。近場のところから回収しても、荷物にしかならないから。」

「だな。」


芥は陣風のコクピットから、周囲を見渡す。一面のがれきと荒野が広がっていた。


「・・・これが、最前線か。」


かつての街の面影は無く、風化した建物はほとんど原形をとどめていない。

植物は枯れ、荒野となっていた。


「まだ俺たちのいた基地のほうが、生気があったな。」


あいつら元気にしているだろうか。芥は、学園基地の仲間たちを思う。


「そろそろ着くわよ。作業の準備をして。」


美月の声に芥は現実に戻る。機体の採掘用セットを準備し、一行は、研究所の探索を開始する。


・・・


「意外と見つかったわね。」

「ここまで探索することは、あまりなかったからな。物資が残っていたのだろう。」


薄暗く、視界が満足に確保できなかった研究施設内を、美月たちは機体の照明で明るく照らしながら探索した。


その結果、予想以上の物資を確保することに成功したのだ。

研究所の外に積んだコンテナを見て、グレイは感想を漏らす。


「熱いシャワー、これならいける?」

「ああ、湯舟にもつかれるぞ。」


シルヴィアもウキウキである。


「モンスターに見つかる前に早く帰投しましょう。」


せっかくのお宝をむざむざ壊されてはたまらない。美月はシャワーとクーラーのために、邪魔するモンスターは撃滅しようと考えていた。


美月の異様な雰囲気に圧倒される芥。


そこでふと、芥は邪神のいる方向を見た。禿げた山に囲まれた盆地には邪神がいる。触手の一部がゆらゆらと揺らめいているのがここからでも見える。


「(邪神か・・・。また戦うんだよな。)」


学園基地での戦いを思い出す。邪神との戦いは、まさに激戦だった。


「(今の俺には第四世代機体に、グレイ、シルヴィア、委員長がいる。これなら負けない!はず。)」


己を奮い立たせる芥。


「そろそろ出発するわよ。」


美月の声に、芥は反応する。コンテナを機体に積載し、研究所をあとにする。


邪神は静かにたたずんでいた。


・・・


「たいりょ~。」

「ああ、大漁だな。」


帰りの研究所でも、多くの物資を回収できた芥たち。


基地の格納庫に戻ってきた一同は、宝の山を前にやや興奮していた。


「さて、材料はそろったわ。修理ドローンを起動して基地を復興するわよ!」


この基地に元宮はいない。彼女がいてくれれば、ドローンより早く修理してくれたことだろう。いないことにより、彼女の偉大さが身に染みる。


美月が修理ドローンを起動した。ドローンたちは素早く持ち場に移動する。


これであとは熱々のシャワーと、涼やかに冷えた風を送る冷房を待つだけだ。


・・・


数時間後、シャワーを浴び終えた美月たち。居住区画でもある司令室にてクーラーから出る冷風を浴びていた。


「これよ、これが文明的な生活よ。」


ラフな格好に着替えた美月が、しみじみと言う。


「最前線だからこそ、兵士の士気向上は重要な課題だったのだな。」

「熱々のシャワーさいこ~、クーラーさいこ~。」


シルヴィアも同意し、グレイはくてっとしていた。ゆるキャラにいそうである。

二人もラフな格好に着替えていた。


「上がったぞ~。」


シャワーを浴び終えた芥は、いつもの席に着いた。


「ここにアイスがあればな・・・。」

「さすがにそれは贅沢よ。炭酸水で我慢しなさい。」

「砂糖を入れれば、甘い飲み物に・・・。」

「グレイ、砂糖をたくさん使うのはダメだぞ。」


のんびり、まったりした時間を過ごす一同。


そこで芥は気づいてしまった。油断している女性陣のきわどいアングルに。


「(・・・やめておこう。ここでヘタな真似をすれば、確実に無事では済まない)」


ちらりと見えたベストショットを脳裏に焼き付け、芥は戦略的撤退を選んだ。


・・・


格納庫、ショップのコンソール。


「ご友人、賢明でしたね。あの三人を怒らせるのは得策ではありませんでした。」


特に月の勇者は格闘戦が得意ですからね。そう漏らす零式。


「次のお話は、月の勇者がお料理に挑戦する話。ご友人、生きて!」


・・・


トントントン。台所に軽快な音が響き渡る。


ぐつぐつぐつ。鍋の水は沸騰したようだ。


グレイは材料を鍋に入れる。


ゆでること数分。タイマーが鳴り、火を止める。


材料を取り出す。それを別の容器に入れ、ひたすらつぶす。


執拗につぶす。


念入りにつぶす。


完成。


山盛りのマッシュポテト、山盛りのマッシュポテト、山盛りのマッシュポテト。

ご機嫌な夕食だ。


上手くできたと感じたグレイは、笑顔で待っている皆のもとへ料理を持っていく。


今日はおいしいと言ってくれるだろうか、グレイは期待に胸を弾ませた。


・・・


少し前、調理中のグレイを横目に見ながら、テーブルに座っている3人は、今日の料理当番の彼女について話す。


「そんなに手際が悪いというわけでもなさそうだけど・・・?」

「だな、俺も近くで見たけど、普通に料理できてるじゃん。」


美月と芥が不思議に思う。なぜならシルヴィアが重い顔をしているからだ。


「ふふふ、貴様らは何も知らんのだ。グレイの料理の恐ろしさというのを。」

「え、もしかしてあれでメシマズっていうのか?」

「調理の補助を申し出たほうがよかったかしら?」


シルヴィアが乾いた笑いを浮かべる。


「まあ一度食べてみるがいい。それでどう対処すべきか一緒に考えてはくれないか?」


頼む。あのシルヴィアが頭を下げた。プライドの高い彼女がだ。


「これは、覚悟したほうがよさそうね。」

「だな・・・。」


調理を終えたグレイが、いつもよりほんの少しだけ楽しそうな顔で料理を持ってきた。


・・・


テーブルに並べられた山盛りのマッシュポテトたち。そのほかにもニンジンのペーストや、ほうれん草のペーストも並んでいた。


「あら、食べやすいようにペースト状にしてくれたのね。」

「へ~、気が利くじゃん、グレイ。」

「・・・。」


それぞれ異なる反応を見せる三人。シルヴィアだけは、決戦に行く覚悟を決めた顔をしていた。


「それじゃいただきま~す。」

「いただきます。」

「・・・いただき、ます。」

「・・・召し上がれ。」


食事が始まる。まず芥は、山盛りのマッシュポテトから口に運んだ。


もぐもぐ。


何ともないと思ったのもつかの間、芥は宇宙にいた。


「(・・・月?月が見える)」


芥に見えたのは巨大な月だった。月はどんどん大きくなる。目の前に迫ってくる。芥は月に吸い込まれそうになる。


宇宙の前では、自身はちっぽけな存在でしかない。宇宙的恐怖が芥に襲い掛かる。


「うわぁーーー!!!」


気が付けば芥は悲鳴を上げていた。

肩で息をしていると、美月が視界に入った。


美月は猫になっていた。

違う、猫は猫でも宇宙猫だ。あの何とも言えない猫の表情をしていた。


普段の理知的な彼女からは想像ができないほど、感情を捨てたその表情は衝撃的だった。


一方のシルヴィアは、無言で食していた。ひたすら無言だった。恐ろしいほどに静かだった。


マッシュポテトを呑み込んだシルヴィアが口を開く。


「ふ、ようこそ、こちら側の世界へ。」

「いや、招待されたくねえし。」

「・・・何なの?一体何なのかしら、これは・・・?」


正気を取り戻した芥と美月。テーブルには未だ山盛りのマッシュポテトがそびえ立っている。


二人は、グレイの料理に身の危険を感じた。


・・・


グレイが食事当番の別の日、その日のメニューはぺちょぺちょのチャーハンだった。


芥がこの日のために、グレイに料理を教えていたのだ。


「固形物になっているだと・・・!」


険しい顔をしたシルヴィアは、恐る恐る口にぺちょぺちょのチャーハンを運ぶ。


それを噛み、飲み込んだシルヴィアは、一筋の涙を流した。


「・・・どう?」

「・・・ああ、おいしい、おいしいよ、グレイ。」


グレイは小さくガッツポーズをした。


「変な幻覚を見なくて済むのは、大きな進歩ね。」


美月も食べ始める。


「長かった。ここまで来るのに長かった・・・!」


芥は今までの苦労を思い起こし、男泣きをしていた。

味見のたびに幻覚を見ていた。その中には未来の宇宙船に乗る幻覚というのもあった。


「芥、貴様のことを正直見くびっていた。だが今改めて評価する。貴様はひとかどの男だと。」


シルヴィアと芥は熱い握手を交わした。確かな絆が、ここには生まれたのだ。


その日以来、グレイの食事当番には芥の補助が入ることになった。

その結果、食事による士気の低下はほぼ見られなくなった。


ここは最前線。時には食事すら牙をむく、修羅の遊び場だ。


・・・


次回予告!


記録的な大雨の後、水に余裕ができたので一同はプールに入ることに。グレイは泳ぎを教わり、美月とシルヴィアは競争する!?そして暗躍する芥。はたして、芥の狙い通りになるのか!?


次回、サバイバル・ロボットマーチ 10日目 プールの時間

2度目のサービス回ですね、ご友人。

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執筆の励みと阿波踊りを踊る気分になりますので、お待ちしております。

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