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サバイバル・ロボットマーチ  作者: ギンユウシジン
第二部 抗え! 絶望への挑戦!!
13/19

1日目:着任!最前線!

曇天の空模様の中、芥と美月を運んでいる輸送車の中は、ひどく蒸し暑かった。

クーラーが起動しているとはいえ、これでは焼け石に水だ。


二人は、モンスターが活発に活動している危険地帯、通称最前線に移動していた。


芥が口を開く。


「なあ委員長、最前線の基地まであとどれくらいだっけ?」


チラリと腕時計を確認する美月。


「あと30分ほどで着くはずよ。」


芥は暇に耐えかねて、美月に話題を振る。


「最前線では、第四世代機体の試作先行機が運用されてるってマジなのかな?」

「本当よ。せっかくだから、おさらいでもしておきましょうか。」


美月は、こほんと咳をし、説明を始めた。


「第四世代機体は2種類、『大地だいち』と『紫電しでん』があるわ。大地は、格闘万能型の機体ね。射撃もできる格闘性能の高い機体といえるかしら。また反撃能力も備えているわよ。」


続けて美月は言う。


「また、紫電は射撃万能型の機体ね。格闘もできる射撃性能の高い機体といえるわ。装弾数が多いので、殲滅能力が高い機体よ。」


それぞれ、闘人を格闘特化、射撃特化したものだと考えてちょうだい。美月はこう締めくくった。


「そうそう、それと武装にも注目すべきね。」


思い出したように美月は言った。


「第四世代機体には、近接六式と射撃六式が標準装備されているわ。これらはスタン付与効果がある優れモノよ。うまく使えば、大型との戦闘ですら完封できてしまうわ。」

「ふ~ん、なんだかすごそうだな~。」

「あなたの陣風も、数値上は第四世代機体に後れを取らないって、元宮さんに言われていたじゃない。」

「ふふ~ん!俺も頑張りました!」


コツコツと物資を追加改修パッケージに変えて、陣風を改修してきた芥である。今回一緒に最前線に連れてきた相棒には、思い入れがあった。


輸送車のスピードが緩まる。どうやら基地についたようだ。


・・・


基地の前には、二人の美少女がいた。


一人はモデルと紹介されても信じてしまうスラリとした銀髪の美少女だった。年のころは芥たちと同じくらいだろう。しかし、その豊かな胸はモデルには持ちえないものだった。制服を着た鋭い目つきの彼女は、芥たちを見てこうこぼす。


「・・・ふん!我々の足手まといにならなければいいが。」


もう一人の少女、年のころは10を過ぎたあたりの少女は無反応だ。戦場を知る冷ややかな目、小柄ながら出るところは出ている体つき、黒と灰のゆったりとしたワンピースを着た彼女は、あまり新人たちに興味が無いようだった。


「・・・デコイぐらいにはなる、と思いたい。」


芥たちが近づく、互いに敬礼をする。


「簡単な自己紹介から始めましょうか。私はこの前線基地の責任者を務めることになった、久遠美月よ。それでは・・・シルヴィアさん、自己紹介をお願いできるかしら。」

「その前に一つ確認しておきたいことがある。」


シルヴィアと呼ばれた、銀髪の少女は異を唱える。


「私の階級は中尉だ。なぜ同じ中尉である貴君の命令を聞かねばならぬのだ?」


シルヴィアは畳みかける。


「戦場で指揮系統が混乱するのは、死に直結する。納得のいく説明をしていただこうか。」


美月は満面の笑みでこう答えた。


「あら、先日の邪神討伐によって、私は大尉になったのだけれど。」

「なにっ!」

「まだ確認してなかったのかしら?」

「ぐぬぬ・・・。」


シルヴィアは悔しそうに引き下がる。軍人家系の彼女にとって階級は絶対だ。


「では、あらためて自己紹介をお願いできるかしら。」

「・・・了解した。」


シルヴィアが姿勢を正して自己紹介をする。


「私はシルヴィア・ローランド。前線指揮官を務めていたが、今はパイロットだ。射撃技術には自信がある。搭乗機体は、第四世代試作先行機「紫電」だ。」


「紹介ありがとう。では次にグレイさん、自己紹介をお願いしてもいいかしら。」


グレイと呼ばれた小柄な少女の番になる。


「・・・。」


グレイは悩んだ末、こう自己紹介した。


「・・・グレイ。」


シルヴィアが優しい口調で、グレイに語り掛ける。


「グレイ、あと2行くらい、自己紹介をがんばってみような。」


再びグレイは、考え込む。


「・・・搭乗機体は、第四世代試作先行機「大地」。・・・機体操縦ならだれにも負けない。・・・あと、料理がんばってる、けど、そんなにおいしくない。」


「がんばったな、グレイ。えらいぞ。」


シルヴィアが優しく微笑む。彼女に対しては、心を許しているのかもしれない。


「自己紹介ありがとう、グレイさん。では最後に芥君、お願いね。」


ついに芥の番になった。


「芥一だ。近接も射撃も無難にこなせる。搭乗機体は、第二.五世代機体「陣風」。スペック上、第四世代機体にも劣っていないから、安心してくれ。」


芥の自己紹介に、シルヴィアは苦笑いをする。グレイは興味なさそうだ。


「こんなところね。さて、悪いのだけれど私たちの部屋と、司令室に案内してもらえるかしら?」


「はい、こちらです。久遠大尉」


シルヴィアがかしこまる。


「久遠でいいわ。あと敬語も不要よ。」


「・・・それでいいのなら、そうさせてもらうが。」


・・・


最前線の基地は、いたるところが痛んでいた。モンスターの襲撃があったのだろう。


自分たちの部屋と紹介されたのは、この基地で一番まともな司令室だった。


「カーテンなどで簡易的な仕切りをつけている。悪いがここで私たちと一緒に集団生活をしてもらうぞ。」


美月は、司令室の居住スペース内に3つあるうちの一つのベッドに案内された。残り二つはシルヴィアとグレイが使っているベッドなのだろう。シルヴィアのほうはきれいに整えられており、グレイの方はややしわができていた。


芥には女子たちの隣の、狭いビジネスホテル程度のスペースに案内された。

そこには硬いベッドだけがあった。


「わかっていると思うが芥、もし不埒な真似をしてみろ。最前線で人がいなくなることはそう珍しいことではないからな。」


シルヴィアがすごんで言ってくる。

芥はぶんぶんと首を縦に振った。


・・・


「さて私たちの目的は、この最前線基地の北にいる邪神の討伐よ。」


荷物や機体の整理を終えた美月たちは、司令室でミーティングを行っていた。


「討伐のためには、まず奴の元へたどり着く必要があるわ。」


美月がモニターに地図を表示する。


「工作班からの情報によると、邪神前の大岩は、15日後に完全に撤去できるそうよ。」


邪神は盆地でなぜか動かない。そのため、進出・撤退用のトンネルを掘り進め、開通したタイミングで邪神に挑もうというのだ。


「邪神を倒せるようになるのは、15日後というわけね。」

「奴を討たんがために、多くの仲間が勇敢に戦っていった・・・。」

「・・・。」


シルヴィアが悔しがり、グレイが押し黙る。


「異常なまでのモンスターの凶暴化と数の多さ、これが状況を困難にしている原因ね。これからはこの四人で、目標を達成していきましょう。では今日はこの辺で、解散。」


その時、警報が鳴る。

モンスターの襲撃を知らせる戦の音だ。


「総員出撃!」

「「「了解!」」」


最前線での戦いが、始まる。


・・・


地上に出た芥たち3機。そこには目を見張る光景があった。


「小型・中型多数、大型も確認、それに・・・。」

「ドラゴンとデーモン・・・。」

「いつも通りだな。」

「うん・・・。」

「おいおい、これがいつも通りなのかよ。」


芥はレーダーを見る。画面いっぱいに広がる赤い点。芥たちのいた学園基地とは比べ物にならない敵の密度。人類の敵が荒野を埋め尽くしていた。


「久遠、献策したい。」


紫電に乗った黒と紫をベースにしたパイロットスーツを着たシルヴィアから通信が入る。


「あら、どんな策かしら?」

「グレイを突っ込ませ、私が援護。芥は陽動・かく乱をしてもらう。」

「・・・グレイさんに負担が大きすぎないかしら?」

「グレイならこれぐらいやれる。むしろ下手に我々が足を引っ張るほうが問題だ。貴様たちがいない間、これより状況が悪い中で、同じ作戦で無事帰還したこともある。」


美月は考え込む。連携訓練をしていない今の状況、シルヴィアの作戦は確かに理にかなっている。


「・・・いいわ、その案を採用します。芥君、シルヴィアさんが囲まれないように、モンスターをおびき寄せて。」

「了解!」

「シルヴィアさん、グレイさんは行動を開始して。」

「了解!」

「了解・・・。」


すると、グレイの乗る大地が砂埃を上げた。全速力で走りだしたのだ。


「おいおい、あれじゃモンスターにぶつかるぞ!」

「いや、本人曰く、あれでも遅いくらいだそうだ。」


芥が驚愕し、シルヴィアが冷静に説明する。


グレイの乗る大地は、小型・中型の群れの中に突っ込んでいった。


大地のコクピット内のグレイ。彼女は黒を基調としたパイロットスーツを着ており、静かに深呼吸した。


「せかいが、ゆっくり、おそくなる・・・。」


次の瞬間、世界の時がゆっくりと進んだ。否、そうグレイには見えた。


大地が近接六式の長刀を二刀流にして持つ。小型モンスターは踏みつぶし、中型は同士討ちさせ、大型は長刀の餌食になる。時折攻撃してくる超大型の攻撃を避け、その攻撃を他のモンスターに当てて、射撃六式で反撃することも忘れない。


シルヴィアの援護射撃もあり、グレイは危なげなく死の舞踏を踊っていた。グレイの周りだけが空白地帯となり、モンスターの体液の海が出来上がっていた。


「・・・なあ、どっちがモンスターだっけ?」

「彼女はモンスターではない、ただの人間だ。二度と言うなよ、芥。」


隔絶した操縦技量を見せつけられた芥は、あまりにも現実離れした光景につい不躾な軽口を言ってしまった。


・・・


「だいぶ減ってきたな・・・。」


芥は一人こぼす。しかしそこにはまだ、2体の超大型や小型・中型の残党、数える程度の大型がいた。


「シルヴィアの射撃は頼りになるし、グレイの格闘戦は身震いするほどだ。」


けれど、正直あと一手ほしい。そう思う芥だった。


「芥君、支援は必要かしら?」


突如美月から開かれた通信に、芥は一瞬驚く。


けれども芥はすぐに、こう返した。


「ほしい!」

「・・・わかったわ。」


・・・


格納庫にいた美月は黒と黄色のパイロットスーツに身を包み、彼女の機体に乗り込んで言った。


「私も出る!」


機体に光がともる。


「試作専用機「月光げっこう」、出撃する!」


・・・


通信機越しに会話する芥たち。


「委員長!?機体に乗れたのか!?」

「乗れないなんて一言も言ってはないわよ。それに、月光を運んでいた牽引車を見たでしょう?」

「いや、てっきりあれは陣風の予備パーツかとばかり・・・。」

「はあ、まあいいわ。「月光」は他の機体を支援することができるわ。うまく使えば、相手に効率よくダメージを与えられるわよ。」


電子支援開始!そう美月が言うと、陣風のレーダーがより精密なものになった。


「こ、これは!?」

「月光の電子支援よ。レーダーの性能が上がるほか、射撃時に補正がかかるわ。さらに、モンスターが嫌がる電波を発しているから、相手の動きが鈍る効果もあるのよ。」

「す、すげえ!」

「ただし、月光自体の戦闘力はあまり高くないわ。第三.五世代機体の闘人とほぼ同等といったところね。それと、電子支援は月光から一定範囲内でないと効果がないわ。」


使いどころがやや難しい機体なのよ。そう美月は結論付けた。


「敵の動きが鈍った。援護感謝するぞ、久遠!」

「これで置物になった。楽できる・・・。」


シルヴィアとグレイの二人も感謝しているようだ。


「さあ、あと少しよ!このまま殲滅しましょう!」

「「「了解!」」」


こうして電子支援の効果もあり、最後に超大型二体を危なげなく倒すことができた。


・・・


「きちゃった!」


戦闘終了後、格納庫のショップのコンソール、そこには零式がいた。


「零式、お前何でここに・・・?」


「水臭いではないですか、ご友人!ご友人あるとこ、私ありですよ。」

「・・・お前、まさか俺のストーカーとかじゃないよな?」

「そんなわけありませんよ、ご友人。ただ我々は、真の友情によって巡り合う運命というだけです。」


もう、やだーこのストーカー。芥はその場を離れた。


「あらら、行ってしまいましたか。」


さてと。誰もいない格納庫で一人話し続ける。


「月の勇者は相変わらずですね~。ご友人には頑張ってもらわねば。このままでは死んでしまいますよ?それに・・・。」


声のトーンを落として言う。


「魔王の復活も近い。これは、死ぬ気で頑張ってもらわないとですね。」


期待してますよ、ご友人。


格納庫の照明が落とされた。


・・・


次回予告!


ついに最前線へとやってきた芥たち。だがそこでは学園基地以上にインフラが深刻で!?最前線でも物資探索をすることに!はたして涼しいクーラーやあったかいシャワーを浴びることはできるのか!?おや、グレイが料理をするようです。


次回、サバイバル・ロボットマーチ 5日目 グレイクッキング!

強く生きてくださいね、ご友人。

人物能力表


シルヴィア・ローランド


指揮:A 体力:A 整備:B 操縦:A 知性:A 

カリスマ:A


高い能力を持つ前線指揮官。

美月たちが来るまでは、最前線の責任者だった。


数多くの仲間を失っており、ややあたりが強いところがある。

だが、唯一生き残ったグレイには、優しくしようと決めている。


好きなものは、クラシック音楽


グレイ


指揮:E 体力:B 整備:C 操縦:SSS 知性:C

料理:F


操縦技能が異例のSSSランク。人外に片足を突っ込んでいる。


地球生まれではない。


美月たちが来る前、最前線でよくしてくれた仲間に

料理をふるまう約束をした。

しかし果たされることは、もはや決してない。


好きだったものは、料理



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執筆の励みとタンゴを踊る気分になりますので、お待ちしております。

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