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サバイバル・ロボットマーチ  作者: ギンユウシジン
第一部 守れ、100日! 学園前哨基地小隊!!
12/20

100日目:邪神降臨!さらば学園前哨基地!

ついにこの日が来た。芥がこの前哨基地に着任してちょうど100日目だ。


芥はいつも通りに朝のルーティーンを済まし、皆のいる司令室に向かった。


「おはよーす。」

「おはよう芥君。さて、これで全員揃ったわね。」


美月が司令室にいる一同を見渡す。


「今日で後方撤退支援任務は一区切りがつくわ。今日が最後の一日よ。皆、気を抜かないで過ごしましょう。」

「しつも~ん。任務完了後、この前哨基地ってどうなるんだ?」


弓波が尋ねる。それに美月が答えた。


「この基地は正式な基地として認められる予定よ。そうしたら今までより物資が優先して配給されるようになるわ。」

「へ~、やったじゃん!」

「調味料とかも届くかな?そしたら料理のレパートリーが増えるじゃん!」

「莉音の料理、楽しみですわ!」

「機体用のパーツも、もっと届くといいですね。」


各々が感想を述べる。そこには確かに希望があった。


そして希望あるところに絶望はやってくる。


「緊急警報!?」

「何だモンスターか?いっちょやってやろうぜ!」


・・・


スーツに着替えたパイロットたちが機体に乗り込む。

すると美月からの通信が入った。


「・・・皆、落ち着いて聞いてちょうだい。」


陣風に乗り込んだ芥は、何事かと思う。


「今回確認されたモンスターは、・・・。」


一拍の間ののち、美月は言う。


「邪神よ・・・。」


・・・


「まさか俺たちが邪神と戦うなんてな。」


闘人に乗り、地上の道路を走っている弓波がつぶやいた。


「これは訓練ではない。実戦である。がマジになっちまったよ。」


並走する芥がそれに返す。


「こう考えようぜ。シミュレーションより状況はいいってな。」

「確かに。あれは単独での討伐だからな。」


ハハハ。二人の乾いた笑い声がコクピットに響き渡る。


「・・・莉音。私たち、無事に帰れますわよね?」

「もちろんだよ、お嬢!こっちにはみんなもいるし、完璧超人の美月っちがついてるじゃん!きっとすごい逆転の一手を隠し持ってるよ!」


それでも、と向坂は心の中で思う。万が一の時は、たとえ芥たちを犠牲にしてでもお嬢を逃がす。西園寺の生存は、向坂にとって最優先事項だ。


「(覚悟を決めろ、あーし)」


寝食を共にした仲間を見捨てる。向坂はその覚悟を決めた。


「皆、もうすぐ邪神との接敵地点よ。気を付けてちょうだい。」

「ロケットの効果はどうだ?」


芥が尋ねる。


「ロケットは全弾命中したわ。ただ、・・・。」


美月が言いよどむ。


「思ったほどの効果はなかったみたい。邪神の生命力は底知れないわね。」

「そうか・・・。」

「接敵前に、もう一度作戦を確認するわ。」


数分前にした説明を繰り返す。


「今回の戦闘の目的は、邪神の討伐よ。本来なら増援部隊が来るまで遅滞戦闘を行うはずなのだけれど、司令部から増援は却下されたわ。邪神の出現の影響で、周囲のモンスターが凶暴化、これに対応しなければならなくなったの。」


美月は説明を続ける。


「つまり私たちは、私たちの手で邪神を討伐するという絶好の機会を与えられたわ。帰ったら昇進は確定ね。ああ、司令部のお偉いさんを殴ることでチャラになるかしら。」


美月の軽口に皆が笑う。


「武装や弾薬は、地上のセーフティーゾーンに元宮さんが配置するわ。各自適宜補充して。出し惜しみなしで全力をぶつけなさい。」


皆がうなずく。


「総力戦よ。総員、もてるすべての力を出し切って邪神を討伐せよ!」

「「「「「了解!」」」」」


邪神に挑む勇者たち。その先にあるのは栄光か、それとも死か。


絶望が、迫る。


・・・


浮遊する巨大な体。あまたの触手。人の上半身のような本体。

邪神が目視できた。


「接敵!行くぜ!」


邪神の射程範囲に入った弓波は、さっそく射撃五式を邪神へ撃ちまくる。

あれだけの巨体だ、全弾命中はたやすいことだった。


しかし、有効なダメージを与えられたようには見えない。


「まだまだ!」

「行きますわよ!」


陣風の最強装備、疾風銃が火を噴く。

同時に秋水の射撃五式もそれに続いた。


邪神が、攻撃を触手で防ぐ。


芥たちの射撃が止むと同時に、すかさず向坂の迅雷が、近接五式の長刀で斬りかかった。


「うりゃーーー!!!」


邪神の触手が何本か切れた。


だが、ひるむことなく、邪神は触手で反撃をしようとする!


「カバーお願い!」

「おう!」


疾風銃で援護する芥。

迅雷は、無事安全圏まで退避する。


「これは・・・、長丁場になりそうだな。」

「そうですわね・・・。」


長期戦になることを覚悟したパイロットたち。

日はまだ上ったばかりだ。


・・・


果たして何度目のセーフティーゾーンでの補充だろうか。

5回を数えたあたりから数えていない。陣風のいたるところに傷がついている。

芥の顔には疲労が浮かんでいた。


戻らなければならない。仲間たちがまだ戦っている。


だが、芥の心に一抹の不安がよぎる。


俺たちは司令部に見捨てられたんじゃないのか?

何をやっても、あの邪神には勝てないんじゃないのか?

じゃあ、どうして俺たちは戦っているんだ・・・?


考えれば考えるほど、芥の頭は絶望に支配されていく。


その時声が聞こえた。


「どうしました、ご友人?」


どこからともなく聞こえてきた声。それはいつも自分の話し相手になってくれているあのショップのコンソール、零式のものだった。


なんと陣風の通信機から聞こえていたのだ。


「零式!?どうしてお前が!?」

「いや~、私にかかればこれぐらい造作もありませんよ。」


はっ、はっ、はっ。いつものひょうひょうとした調子で笑う零式。


「・・・なあ、零式。人生相談、いいか?」

「いいですとも、若者に悩みはつきものですからね。」


芥はぽつりぽつりと話し出す。


「増援は来ない。敵は強大な邪神。どうして俺、戦ってるんだろうな・・・。」


芥の悲痛な嗚咽が漏れる。

零式は一瞬押し黙る。


「ふむ、ではこんな物語はどうでしょう。私にとってとても大切な、世界最古の英雄の物語です。」


・・・


そのお方は、元はただの騎士でした。武功を上げたことで領主となり、領地を治めていました。


発展した町は多くの人でにぎわっていました。そこには確かに希望があふれていました。


ですがある日、邪神がやってきたのです。信頼のおける仲間に領民の避難を任せ、自身は黄金の鎧を従え、邪神との戦いに赴きました。


邪神は強大でした。軍は壊滅し、黄金の鎧は撤退を進言しました。

逃げる場所などどこにもないというのに。


領主はこう返しました。


「いや、それはできない。俺はこの地の領主だ!領地を守る義務がある!」


そしてこう言いました。


「何より!俺の後ろには守るべき民がいる!だから、ここで引くことはできない!」


領主は語る。


「聞け!皆のもの!!天に掲げるは希望の御旗!」


旗を掲げ、残っている軍団に語りかける。


「我らの勇気、刻み込ませろ!我らの誇り、語り継がせろ!」


そして最後に大きく叫びました。


「我らこそ、希望なり!」


・・・


「こうして覚悟を決めた領主は、同じく覚悟を決めた黄金の鎧とともに力を合わせて邪神を討ったのです。」

「・・・すげえな、かっこいいよ。けど零式、俺にはその領主みたいには、なれそうにないや。」

「そうですか?」

「そうですかって、お前・・・。」

「ご友人、あなたが思い出すべきことはたった二つ。」


零式は言い切った。


「勇気と誇りですよ。」


芥はその言葉を聞いてうつむく。


「けど俺には・・・!」


「あなたは戦いました。勇気ある行動です。あなたは人々を守りました。誇りのある行動です。」


パイロットとなってはじめての実戦を思い出す。あの時は怖かったが、勇気を振り絞り戦った。


朝比奈一家や後方の人たち、それに基地の仲間を守るためにも戦った。


戦うという勇気があった。パイロットであるという誇りがあった。


そうか、俺は・・・。


「・・・ありがとう零式。もう大丈夫だ。」

「そうですか。では、最後に一言だけ。」


優しく言う。旅立つわが子を見送るように。


「なっちゃいなさい。邪神を倒して、世界最新の英雄に。」


意外と簡単かもしれませんよ?と零式は続けた。


・・・


「悪い!遅くなった!」

「おせーよ!芥!」

「残弾が少なくなってきましたわ、補給に行ってまいります!」

「気を付けて、お嬢!」


芥と入れ替わるように西園寺が補給に走った。


「さあ!いっちょやってやろうぜ!」

「気合入ってんな。なんかいいことでもあったかよ?」

「ああ、ちょっと世界最新の英雄になろうと思ってな。」

「いいね~、英雄!俺もなる!」

「こいつ倒してからな!」

「おうよ!」


陣風と闘人が駆けだす。


邪神の体には、確かにダメージが蓄積されていた。


・・・


そしてその時は訪れた。

邪神が咆哮を上げる。絶望を振りまく、聞くに堪えない咆哮だ。


「弱ってるな!畳みかけるぞ!」

「おう!」

「わかったし!」

「わかりましたわ!」


邪神は激しく触手を振り回す。まるで最後のあがきだというかのように。


「うおぉぉぉ!!!」

「いくぜっ!」

「終わりだしっ!」

「いきますわよ!」


各々が全力の攻撃を仕掛ける。


秋水は、邪神の顔面を撃ち、闘人と迅雷は邪神の触手を斬った。

そして陣風は、疾風剣で邪神を横一文字に切り裂いた。


邪神が再び雄たけびを上げる。そしてその巨体は、力なく崩れ落ちていった。


「はぁ、はぁ。」

「どうだっ!」

「マジこれ以上は無理・・・。」

「やったか!?ですわ!」

「「「いやそれ復活するやつ!」」」


西園寺のセリフに対し、総ツッコミをした一同。そこに通信が入る。


「状況終了。邪神の討伐を確認。また、現時刻をもって後方の避難は完了したわ。皆、本当に、本当にお疲れ様。」


私たちの完全勝利よ。美月がねぎらいの言葉をかける。


「はは、マジで英雄になっちまったよ・・・。」

「え、マジで英雄を名乗るのか?」


芥の言葉に弓波が軽口をたたく。


「フラグをへし折ってやりましたわ!これでもう大丈夫ですわ!」

「も~、やめてよ、お嬢。もうクタクタなのに。」


疲れ切った向坂には、今の西園寺の相手は難しそうだ。


その後帰投したパイロットたちは、泥のように眠った。


・・・


翌日。司令室には基地の全員がそろっていた。


「昨日は本当にお疲れ様。まさか全員無事で邪神を討伐して帰ってくるなんて。本当に大戦果よ。このことを受けて、本学園前哨基地は、学園基地と名称を変更。正式な基地となったわ。また、皆の階級が1階級昇進することになったわ、おめでとう。」


パチパチパチと全員が拍手をする。弓波が口を開く。


「んで、俺たちこれからどうなるんだ?」


そのことなんだけど、美月の声が小さくなる。


「芥君、前に出てきてもらえるかしら?」

「?いいけど?」


美月の横に芥が並ぶ。美月は封筒を芥に渡した。


「ラブレターですわ!」

「あら、大胆!」

「ちょ、え、マジかよ!」

「え~と。」


外野の面々は騒いでいる。一方の芥はこの状況に戸惑っていた。


「今ここで開けて読んでもらえるかしら。」


その美月の言葉に従い、芥は封を切る。


辞令

以下のものを最前線への異動とする。

芥一

以上


へ?と間抜けな声を芥は上げる。


「私にも同じ辞令が下ったわ。・・・もう本当に上層部を殴ってやろうかしら。」


わなわなと震えだす美月。そんなのありかよと膝から崩れ落ちる芥。


「うわ~。」

「あの、どうか気を落とさないでください。」

「・・・ほんとドンマイ、一っち。」

「ご愁傷様ですわ・・・。」


皆が慰めてくれる。そのことに芥は感謝しながらも、これからの生活について思いをはせていった。


サバイバル・ロボットマーチは、まだまだ終わらない。


第一部

守れ、100日!

学園前哨基地小隊!!


・・・


誰もいない格納庫、ショップのコンソールがひとりでに起動していた。


「やれやれ、やっと第一部が終わりましたか。長いチュートリアルでしたね。」


零式は安どのため息をつく。


「ここからが本番ですよ、ご友人。あなたには乗り越えてもらわねばならない試練がまだあります。」


しばらく黙る零式。そして再び口を開く。


「どうかお会いできる日を心待ちにしておりますよ。新しいご友人。」


・・・


次回予告!


正式な基地として昇格した学園基地。しかし、美月と芥の二人に辞令が下る。なんと危険な最前線へと送られてしまったのだ!そこで出会うは、銀髪の美少女と灰色の髪の美少女。はたして芥たちは生き延びることができるのか?次回より第二部開幕!


次回、サバイバル・ロボットマーチ 1日目 着任!最前線!

もうすぐ会えますね、ご友人。

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執筆の励みとナートゥを踊る気分になりますので、お待ちしております。

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