90日目:不屈の精神で魔王に抗った魔人
格納庫、ショップのコンソールの前、芥は零式と議論を交わしていた。
「だから思うんだ、零式。姉キャラと妹キャラは実は似ていないようで似ているんじゃないかって。」
「ほう、その心は、ご友人?」
「どちらも家族!」
「・・・、あーはい、そうですねー。」
「あ、めんどくさくなってきてスルーしようとしただろ?」
「ソンナコトナイデスヨ、ご友人、ウソツカナイ。」
「あきらめないぜ、この思い伝わるまで!」
「そこはあきらめてくださいよ・・・。」
でも、そうですね、零式は言葉を紡ぐ。
「昔のご友人に、あきらめの悪い方がいらっしゃいましてね。その人は不可能を可能にしてしまいました。」
「へえ、また零式の昔話?聞かせておくれよ。」
零式は一呼吸おいて話し始めた。
「これよりお話ししますは、不屈の精神で魔王に抗った魔人のお話。ある一人の青年は、偶然魔人になってしまった・・・。」
・・・
昔々のお話。魔力は失われ、銃で人々が戦争をしていた時代。
あるところに一人の青年がいました。
その青年には姉がいましたが、仲は良くありませんでした。
すれ違う毎日だったのです。
ある日夜遅くにコンビニへ買い物に出かけた青年は、突然声をかけられました。
電柱に背を預けて声をかけたのは、瀕死の魔王でした。
魔王は青年に契約を持ち掛けました。もし我と契約したならば、願いを一つ叶えてやろうと。
青年は、唯一の家族である姉と仲良くなりたいと願いました。
契約を結んだ魔王は、青年の中に入っていき、青年は魔人に変身しました。
魔王は高笑いをしました。
「フハハ、これで契約は結ばれた!まずは魔法少女を亡き者にしてやろう!」
するとそこに魔法少女がやってきました。フリフリのピンクのドレス、ピカピカと光る魔法のステッキ、いかにもな魔法少女の姿をしているのは、なんと姉だったのです。
うわ、きっつ!それが青年が最初に魔法少女姿の姉を見た感想でした。
その年で魔法少女はないわ。と、ついこぼしてしまいました。
怒った姉は、魔人が弟だと気が付かないままに攻撃し、その日弟は何とか姉から逃げ切ることができました。
それから魔人は魔王に案内され、悪の組織の秘密のアジトに招待されました。
そこには四天王がおり、魔王は世界征服を企んでいたのでした。
厄介なことに巻き込まれた青年は、昼は学業、夜は世界征服の手伝いという二重生活を送ることになりました。
順調に組織内での力をつけた青年は、ある日魔王から魔法少女抹殺作戦に参加するように言われました。
実の家族に手をかける。これは決してうなずける話ではありませんでした。
弟は組織を裏切ることを決意。四天王を一人、また一人と倒していったのです。
ついに魔王との戦いになり、姉である魔法少女もやってきて、三つ巴の戦いになりました。
魔人は戦いのさなか、変身が解けてしまい、人間の姿を、弟としての姿をさらしてしまいました。
戦っていた魔人の正体が弟だと知り、姉はひどく動揺してしまいました。
姉が戦っていたのは、大好きな弟が傷つかないためだったのです。
その隙を突いた魔王は、魔法少女を倒すことに成功しました。
魔王が姉にとどめを刺そうとしたその時、どこからともなく黄金の巨人がやってきました。
「おや、魔王と聞いたから楽しみにしていたのですが、パチモンでしたか。」
魔王は、動くことができませんでした。圧倒的な存在を前にどうすることもできなかったのです。
「魔人よ、あなたはよく頑張りました。人の身では勝てる相手ではなかったのです。あきらめなさい。再び目覚めるころにはすべてが終わっているでしょう。」
巨人の言葉を聞いた弟は、体を震わせました。
「何が魔王だ!何が絶望だ!」
弟は満身創痍の体で立ち上がりました。
「どんだけ力の差があろうがよ!」
弟は吠えました。
「俺は絶対に、絶対にあきらめないぜ!!」
「姉ちゃんを泣かせた魔王を倒すのは、この俺だ!」
・・・
「その後、目を覚ました姉と協力して、二人は魔王を倒したのでした。」
「あれ、あっさり?」
「いいえ、とても泥くさい戦いでしたよ。魔人も何度倒れ、何度起き上がったことか。」
「うひゃ~、あきらめが悪い。」
「そのあきらめの悪さが、魔王を倒す糸口になったのですがね・・・。魔王の再生能力は、ほんのちょっと面倒でしたよ。」
へ~、芥はうなずく。
「あれ、そう言えば何の話をしていたんだっけ?」
「姉キャラと妹キャラは、実は似ていないようで似ているということでしたね。」
「そうそう、それそれ。で、どうよ。俺がもっと力説すれば、零式も同意してくれるのか?」
「ははは、しつこいですよ、ご友人。私はご友人一筋です。」
どんだけ俺のことが好きなんだよ。じゃな~、零式!芥は去っていった。
「・・・さて、何とか陣風専用最強装備は開発されましたか。」
結構危なかったですね・・・。零式の声は、格納庫の喧騒に消えた。
・・・
「死神が現れたわ。」
司令室、美月は重々しい雰囲気で口を開いた。
「超大型モンスター、死神。その名の通りの姿形をしたモンスターよ。特徴は浮遊しながらの移動、その機動力。今までのモンスターとは違って、先手を取れるとは限らないわ。十分に注意してちょうだい。」
「「「「了解!」」」」
「では総員出撃!」
パイロットたちは格納庫に向かう。
「100日目まであと数日。もうちょっとよ・・・。」
誰もいない司令室に、美月の声がイヤに響いた。
・・・
格納庫にて。
「あれ、意外とあっけなかったな?」
「だな・・・。」
「だねー。」
「ですわ。」
死神を撃破後、芥たちはこうして集まっていた。
「ドラゴンにデーモンといった他の超大型モンスターを倒したからかな?」
「やっぱロケットでダメージを与えて、俺たちでボコるっていう黄金パターンが決まったからだろ。」
「どちらもじゃん?」
「私たちの技量が上がっているのもではなくて?」
あ~。一同はそれにも同意した。
「みんな聞こえる?」
美月からの通信だ。
「出撃お疲れ様。今日はこの後、明朝まで自由時間とするわ。ゆっくり休んでちょうだい。」
やったー。パイロット組は喜んでスーツを着替えに行った。
・・・
「なんやかんや集まっちまったな・・・。」
「だな。」
場所は司令室。いつもの時間なら勉強会をしているせいか、皆集まっていたのだ。
「まー、まー、たまには駄弁るのもありっしょ。」
「まるで放課後ですわ!」
「皆・・・、体力錬成とか自習とか、できることがあるでしょう・・・?」
すると元宮が入室してくる。
「皆さんの機体の整備終わりました~。」
「あら、元宮さんも。・・・これはもう仕方がないかしら。」
たまにはこんな日があってもいいだろう。そう考えた美月は、自分もおしゃべりの輪に入ることにした。
他愛のない会話をしながら、ふと芥は思う。
「そういえばさ、シミュレーションの邪神を倒せた奴いる?」
「あ~、あれか。」
「いや、あれ無理ゲーっしょ。」
「むずかしすぎましたわ!」
4人が美月のほうを見る。美月ならもしかしたらと思ったのだ。
「いや、さすがの私も単騎で邪神の討伐は無理だったわ。」
美月の言う通り、邪神討伐のシミュレーションは、単騎での討伐という設定だったのだ。
「あれ、皆さん裏コード使ってないんですか?」
裏コード?元宮の言葉に一同が首をかしげる。
「見てもらったほうが早いですね。久遠さん、シミュレーターを起動してもらってもいいですか?」
「ええ、かまわないけど・・・。」
シミュレーターを起動させる美月。元宮が乗り込みなにやらコマンドを入力する。
「えっと、110105(いい男)と。」
すると機体選択画面で、黒いシルエットの機体が登場した。
元宮は迷わずそれを選択する。
「えっ、何あれ?」
「おいおい、こんなの聞いてねえぞ。」
「このままだと見ずらいわね。スクリーンに画面を映すわ。」
美月がシミュレーターの画面を司令室前方の大型スクリーンに映す。
「映画みたいですわ~!」
「落ち着こう、お嬢。」
西園寺がはしゃぐ。向坂がなだめる。
しばらくすると対邪神戦のシミュレーションが始まった。
黒い機体はもやがかかっており、その姿を見ることはできない。
黒い機体は、飛び上がったかと思いきや、そのまま宙を飛んだ。
「飛んだ!?」
「機体がかよ!?」
飛行能力を備えている機体は第四世代機体でも存在しない。
黒い機体は明らかに異質だった。
元宮の操る黒い機体は、そのまま銃を取り出し、邪神を撃った。
「何だあの武装の射撃速度と精度の高さは・・・。」
「デタラメだろ・・・。」
「・・・。」
「あの機体、欲しいですわ!」
芥と弓波は呆気にとられ、向坂は押し黙る。西園寺は興奮しているようだ。
黒い機体が邪神に接近する。今度は武装を剣に切り替え、邪神に攻撃した。
数分後、そこには黒い機体に一撃も与えることのできなかった邪神が倒れていた。
元宮の完勝だった。
シミュレーターから元宮が出る。
「ふう、これが裏モード、最終決戦兵器型機体です。」
パイロット一同は沈黙した。操縦技量が人並みの元宮があれだけやれたのだ。パイロットたちが使えばもっとうまくやれるだろう。
だがしかし・・・。
「「「「参考にならないな(ですわ)。」」」」
「あは~、ですよね~。」
それも当然だった。あまりにも現行機とは性能がかけ離れていたのだった。
「・・・おそらく開発者たちのお遊びだったのでしょう。気にする必要はないわ。それにしてもよくこのモードを見つけられたわね?」
「はい。零式が解析してくれたんです。バグチェックとかで助けてもらってます。」
「本当何なのかしら、あのAIは・・・。」
自分のことをご友人といって何かと気に掛けるAIを思い出す。
よそう。この件は深く考えても仕方がない。美月は気持ちを切り替えた。
「こんな機体があればなあ・・・。」
「あるかもしれませんよ。」
「え、マジで!?」
「はい、これは噂なんですが、皆さん、月に存在するといわれているルナ0という秘密基地を知っていますか?」
「懐かしいですわ。夏休みによく行ってましたわ。」
「あ~、あれか、バカでかくてバカ広いやつ。お嬢が迷子になって、ガチで焦ったな~。」
「えっ!なんかいろいろと軽いですよ!」
どうやら向坂と西園寺の二人は知っているようだ。
「じゃあ、あの噂はほんとなんですか?月で最終決戦兵器の機体が作られているって。」
「え、そうなんですの?」
「アトラクションの宣伝文句に、尾ひれがついたんじゃん?」
「あ~ん、ロマン機体が~。」
どうやら噂は噂に過ぎなかったようだ。
・・・
その日、芥は夢を見た。
司令室、今は勉強会の時間だ。
委員長が講義を始める・・・。
「今回は、機体について話すわ。」
おかしい、委員長は白いスーツを着ていただろうか・・・?
「最終決戦兵器型機体「○○」。機体の最終到達点。神にも悪魔にもなれる力の権化。自己回復能力、全方位反撃など、様々な能力を持っているわ。」
美月は続ける。
「さらに近接・遠距離共に専用武装を所持しているのが特徴ね。」
スクリーンに武装が映し出される。しかし、それは黒い靄に覆われ見ることができない。
「極めつけは、スキル「希望執行!!黄金形態!!」。これは・・・。」
美月は言いよどむ。
「いえ、これはまだ早いわね。○○は、世界を破壊しかねない力だということを覚えていてちょうだい。」
・・・
深夜、芥は目を覚ました。何か大切な夢を見た気がする。そう思ったが思い出せなかった芥は、明日も早いと寝ることにした。
夜の闇が、昏く昏く深まっていった。
・・・
次回予告!
ついに100日守り切った学園前哨基地部隊。しかしそこに絶望が現れる。まだ残っている民間人。間に合わない増援。絶望的状況、しかし芥たちは勇気と誇りを胸に立ち向かうことを決意する!
次回、サバイバル・ロボットマーチ 100日目 邪神降臨!さらば学園前哨基地!
あなたなら勝てます。信じていますよ、ご友人。
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