80日目:義理の娘たちを勇者に育てた聖騎士
格納庫、ショップのコンソールの前、芥は零式と話していた。
「少し前の小糸が来たときのこと、覚えているか?」
「ええ、覚えていますとも。元気いっぱいのお嬢さんでしたね。」
「あの時ドラゴン戦があったじゃん。小糸が応援してくれてなかったら、俺たち最悪の事態になっていたかもしれなかったぜ。」
「ふむ、守るものを背にしたとき、人は実力以上の力を発揮できますからね・・・。」
「お、なんかそういった話ある感じ?」
「ええ、ありますとも。」
零式は一呼吸おいて話し始めた。
「これよりお話ししますは、義理の娘たちを勇者に育てた聖騎士のお話。ある一人の聖騎士は、新たな任務に挑もうとしていた・・・。」
・・・
昔々のお話。まだこの世に魔力があふれ、剣と魔法で人々は戦争をしていた時代。
あるところに一人の聖騎士がおりました。
神に仕えた彼は、鋼の肉体と精神、そして深い信仰心でもって数々の教会からの任務を遂行してきました。
ある時は、人に害をなす吸血鬼と戦い。またある時は異端者狩りにも参加していたのです。
そんな彼は、教会の執行者と呼ばれ、恐れられていました。
ある日、教会から新しい任務が下されました。
それは二人の少女を娘として養育し、勇者に育て上げろというものでした。
聖騎士は困惑しました。自分よりもっと適任がいるだろうと。
それでも教会からの指令でしたので、聖騎士は熱心に二人を育てようとしました。
けれどそれは今までとは大いに勝手が違いました。
まずは、娘二人の魔法学園の入学金を準備するところからでした。
この任務について、協会は一切援助しなかったのです。
聖騎士は何とか冒険者ギルドへ行ってクエストをこなし、お金を準備しました。
さらには学園指定のバッグに制服、教科書、筆記用具、その他もろもろと、何かと入用でした。
聖騎士は持ち前の屈強さでクエストを頑張り、お金を稼いだのでした。
金銭面の問題が解決すると、今度はコミュニケーションの問題が発生しました。屈強な聖騎士と年頃の娘二人では、なかなか話題すら見つからなかったのです。
最初はぎこちなかった三人でしたが、次第に会話が増え、数年も経つと、まるで初めから本当の家族だったような家庭がそこにはありました。
やがて少女たちは、魔法学園を卒業し、勇者として旅立つ日が来ました。
しかし、旅立ちの日に、聖騎士たちが暮らしていた街に魔物の群れがやってきたのです。
娘たち、剣の勇者と魔導の勇者はこれと戦いました。
身に着けた技、鍛え上げた体は、確かに魔物たちをやっつけました。
しかし多勢に無勢。勇者たちは、次第に追い詰められていきました。
そのころ、騒ぎを聞きつけた聖騎士は、数年ぶりに鎧兜を身にまといました。
自分の愛する娘たちを助けようとしていたのです。
ですが、魔物たちのほうが一枚上手でした。
聖騎士に、強いモンスターを向かわせていたのです。
その強大なモンスターと聖騎士が戦う前に、どこからともなく黄金の巨人が現れました。
「この怪物はあなた一人では手に余る。ここは共闘いたしませんか?」
黄金の巨人はそう提案しました。
それに対し、聖騎士はこう答えました。
「助力の申し出、感謝する。」
だが、と聖騎士は続けた。
「愛する娘たちが戦っているのだ。こんなところで負けていられない!」
聖騎士は、力の限り叫びました。
「どけっ!私はお義父さんだぞ!!」
・・・
「彼は死力を尽くし、想いを力に変え、そしてついに怪物を討ち取ったのです。」
零式は語る。
「それから聖騎士と娘たちは、勇者として希望を与える存在となったのでした。」
「家族のために戦う、か。」
「そういえばご友人、ご家族は?」
「ああ、みんないなくなっちゃったよ。第二次モンスター侵攻でな。」
「・・・失礼しました。」
「謝る必要はないさ。もう心の整理はできている。それに、今じゃ部隊のみんなが家族のようなもんだしな!」
芥は笑う。
「・・・そうそうご友人、話は変わりますが、私からささやかなプレゼントがあります。」
「おっ、なになに?」
「陣風専用最強装備3点セット、特別割引クーポンです。これがあれば必要な物資が少なくて済みますよ。」
「へ~、いいじゃん!サンキューな、零式!」
いやっほ~う、と芥はスキップしながらその場を去っていった。
「・・・守る力の強さ、ですか。私も久しく忘れていました。」
今は未熟なご友人。しかし、確実に成長していっている。
「このままエンディングを迎えたいものです・・・。」
零式の声は、誰にも届かなかった。
・・・
「次は超大型を倒すお話。秘密兵器が活躍しますよ。」
・・・
「全員揃ったわね。」
司令室で美月が声を上げる。
「これまでの探索の成果のおかげで、ついにドローン格納庫とロケット発射装置が完成したわ。」
「これでやっと基地も復興完了か。」
「長かったな・・・。」
「皆さん、お疲れさまでした。」
「あはは~、お疲れっしょ!」
「お疲れ様ですわ。」
美月はホワイトボードにドローン格納庫とロケット発射装置と書いた。
「以前話した通り、ドローンは小型に、ロケットは超大型に有効よ。最近超大型が出現したばかりから、しばらく出ないと思うのだけれど・・・。」
美月はため息をつく。嫌な予感はよく当たるものだ。
「用意するに越したことはないわね。それでは詳しい運用法について話していくわ。」
全員が姿勢を正す。
「ドローン、ロケット共に先行して敵と接触、攻撃を仕掛けるわ。弾を打ち尽くしたら撤退、機体に乗ったあなたたちと交代するという運用法よ。」
「露払いをしてくれるっていう感じか。」
「その通りよ、弓波さん。さらに人的資源を気にしなくていいから、ある程度無茶ができるということも挙げられるわね。」
「機体もドローンみてえに自立行動してくんねえかな~。そしたら俺たちが前線で戦わなくてもいいだろうに。」
「小型モンスター、リザードの超音波が課題ね。あれは電子機器を狂わせるから。」
「まあ、そううまくはいかねえか。」
弓波はそういうと座り直す。
「基本、皆が現地に到着しているころには、ドローンたちの攻撃は終わり撤退しているわ。そのままいつも通り戦ってちょうだい。設備については以上よ。」
まだ何かあるのだろうかと元宮以外の皆は疑問に思う。
「最後にシミュレーターについて話しておくわ。昨日司令部から全部隊へデータ送信があったの。これにより超大型を超えるモンスター、通称邪神の模擬戦がシミュレーターで可能になったわ。元宮さんが設定してくれたおかげね。」
邪神。その言葉を聞いた途端、皆の体がこわばる。7年前にモンスターが出現してから、邪神は数体しか確認されていない。
しかし、邪神との戦闘では、いずれも壊滅的な打撃を人類に与えている。はじめて人類が邪神と接敵した時は、当時の人類の希望、精神的支柱であった英雄:朝倉宗一率いる第一特機連隊を壊滅まで追い込んだのだ。
訓練学校の教本にも、万が一邪神と接敵した時は遅滞戦闘に徹し、精鋭部隊の到着を待つべしと書かれている。
「・・・なあ、そのシミュレーションってクリア可能なのか?」
「現時点でクリア報告は数件程度よ。クリアは不可能ではないわ。」
「クリアしたのって、ぜってえ教導隊とかの精鋭部隊じゃん!」
「いずれ人類がこの地上に復権するには、避けては通れない相手よ。最低でも一人3回はシミュレーションを実施してちょうだい。」
「うへ~い。」
弓波が返事をしたその時、敵襲を知らせる警報が響き渡った。
「パイロット及びメカニックは直ちに格納庫へ!私はここで指揮を執るわ!」
「「「「「了解!」」」」」
人類の敵が、迫る。
・・・
「これがドローンやロケットの威力か・・・。」
道路には数多くの小型モンスターの死骸が散乱していた。ドローンが帰投していく。
「わぉ!ドローンもやるじゃん!」
「小型を倒さなくていいのは楽ですわ!」
「気をつけろよ、まだ残党が残っているかもしれない。」
そう言って陣風は秋水の近くに潜んでいたゴブリンを射撃した。
ゴブリンが息絶える。
「あ、ありがとうございますわ。」
「おう!一体だけだとレーダーに反応しないことがまれにある。気をつけな。」
「さて、芥。これからなんだけどよ。」
弓波が問う。芥たちの前方には超大型モンスターがいた。
紫色の肌に、蛇の下半身、人間のような上半身とおぞましい顔。通称デーモンは、今まさにロケットの洗礼を浴びていた。
「あれ大分弱ってね?」
「だな。」
「ロケットを操ってるの、久遠のやつだよな?」
「だな・・・。」
「・・・もうさ、あいつだけでいいんじゃないか?あの完璧超人に任しておけば。」
「・・・それを言ったらおしまいだろ。」
その後、ロケットの雨が止んだと同時に陣風たちは突撃していった。
あらかじめ弱らせていたこともあり、全員無事に帰投することができた。
・・・
「「「「・・・」」」」
「お疲れ様です、皆さん。」
パイロットスーツを着たまま座り込んでいる4人に元宮は話しかける。
彼らの顔は、何とも言えない微妙な顔をしていた。
「・・・言っていい?」
「うん。」
「最初からロケット発射装置開発してればよかったんじゃね?」
「ほんとそれな!」
「ですわ!」
「俺たちパイロットの存在意義は・・・?」
「意義はあるわよ。」
委員長!格納庫にやってきた彼女は、皆に声をかける。
「ロケットはコスパが悪いのよ。さっきの1回の戦闘で弾を使い果たしたわ。」
物資が補充されるまで、しばらく使えないわね。やれやれと美月は首を振る。
「つーか疑問に思ったんだけどさ、久遠って機体に乗らねえの?」
「私は指揮官よ。基本後方で指示を出すのに徹するのが役割よ。」
まあでも、と美月は続ける。
「あまりに皆がふがいないと、私も出撃するかもね。」
「もうさ、久遠に最強の機体を使わせてモンスター殲滅させようぜ。」
「そんな!私はご友人と一つになりたいですよ!?」
零式も話に加わり、話はさらにややこしくなった。
後日、ドローンやロケットの弾を補充するために、機体パイロットは物資探索に精を出すこととなった。
・・・
「お待たせしました!水着回、水着回ですよ!これは健全なのでセーフ!」
・・・
気温の高い快晴の青空の下、屋上のプールでは、歓声が上がっていた。
「ひゃっほ~う!」
「冷たいですわ!」
「お嬢、いっくよ~!」
芥は久しぶりに幸福というものを感じていた。見目麗しい美少女たちが解放的になり、水着姿で遊んでいるからだ。
プールサイドに目を向ける。そこには水着姿の美女二人がいた。
一人は我らがリーダー、久遠美月。彼女は訓練学校指定のスク水を着用していた。デッキチェアで寝ころび日光浴をしている彼女は、まるで一つの絵画のように絵になる美しさだった。
「(こうな、バランスがいい。バランスがいいんだよ、委員長は)」
まさに豊穣の女神だ。芥は一人うなずく。
そして隣に目を向けると、日焼け止めを塗っている元宮がいた。
同じく訓練学校指定のスク水を着用している彼女は、美月と違い、一部がパツパツだった。
「(何たるわがままボディ!整備服の下には、お宝が隠されていた!)」
まさにボリュームは超大型級。これには思わずロケットが発射体勢。
少し落ち着こう。あまりじろじろ見ていると追い出される。そう思い芥はプールへ視線を移した。
そこには水辺の妖精たちが戯れていた。
弓波の引き締まった体にスク水がよく映えていた。彼女はその身体能力を余すところなく発揮し、向坂、西園寺の二人とボールで遊んでいた。
「(こうしてみると弓波のやつも大きいよな。さすが胸のついてる王子様だな)」
訓練学校時代、本人の知られていないところでつけられていたあだ名を思い出す。
本人の前では絶対言えない。
「(そして残る二人。こいつは、たまらないぜ!)」
向坂、西園寺は、実家から取り寄せたのか、スク水ではなく、なんとビキニを着ていた。
向坂は黄色の、西園寺は大胆にも白のビキニを着ていたのだ。
「(向坂も十分でかい。委員長と同じくらいか?)」
そして、と芥は視線を西園寺に移す。
「(でか~い!説明不要!さすがお嬢様、いいもの食べて育ちましたなあ!)」
元宮を超大型と評するのならば、西園寺のは邪神級だった。ただし与えるのは絶望ではなく、さみしい男子に希望と邪な気持ちを与えるものだった。
芥は状況分析を行う。胸部装甲の豊かさは西園寺、元宮、委員長、向坂、弓波の順に大きい。だが諸君、忘れてないだろうか!?デカけりゃいいってもんじゃない!腰のくびれ、尻の豊かさもまた女性を評価するための要素であると!
「(俺は機体パイロット。人類の防人。守る家族をよく知るのは当然のことだ!)」
こうして再び目線を皆に向けようとしたとき、美月と目が合った。
「・・・。」
「・・・。」
「さて、自発的にプールから上がるか、「お話」をするか、好きなほうを選んでちょうだい。」
「ちょっと俺体調悪いなー、先上がるよー。」
こうして涙ながらに芥はプールをあとにした。
・・・
「まったく、少しぐらいなら許したけれど、さすがに見すぎよ。」
「あはは~、バレバレでしたよね。」
「?好きなだけ見りゃいいじゃん?」
「けっこーむっつりだよね~、一っち。」
「はっ!私、見られていましたの!?」
女性陣はこの後もプールを楽しんだ。
「きゃっ!水着が!」
「お嬢、隠して隠して!」
「芥のやつ、いなくて残念だったな~。」
「ふう、少しきついかしら・・・?」
「あ、わかります、このスク水結構食い込みますよね。」
芥がいなくなったことで、隙を見せ始めた女性陣。
そのころ芥は、格納庫の零式にお悩み相談をしてもらっていた。
・・・
次回予告!
昔の話をしましょう。私の好きな英雄たちの一人のお話です。私は大切なことを学んだはずでした・・・。もう一本! いよいよ90日目、勉強会も大詰めに!だべります?日常系をしちゃいましょうか!
次回、サバイバル・ロボットマーチ 90日目 不屈の精神で魔王に抗った魔人
これは私の好きな話のひとつなのです、ご友人。
面白かった、応援してもいいよという方はブックマークをお願いいたします。
執筆の励みとサルサを踊る気分になりますので、お待ちしております。




