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交渉の前夜、私はなかなか眠れなかった。


夢の庭園に入ると、ヴィルはすでに来ていた。


「眠れなかったか?」と彼はすぐに言った。

「わかるの?」

「顔を見ればわかる」

「あなたも?」

「……私も」

珍しい告白に、私は思わず笑ってしまった。


「怖い?」

「怖くはない。ただ——明日、君と現実で会う、ということが実感として迫ってきて」

「実感が迫ってきて?」

「うれしすぎて、落ち着かない」


私は声を上げて笑った。

「魔王様がそんなこと言うの、なんだか面白い」

「笑うな」

「だって、あなたがそんなこと言うなんて思わなかった」

「……私だって、こういう気持ちになる時もある」

彼は少し拗ねたような顔をした。


「ねえ、ヴィル」

「何だ」

「もし——私があの頃、もっと元気だったら。ちゃんとこの世界に根を張れていたら、あの庭園には来られなかったの?」

ヴィルはしばらく黙った。

「……おそらく」

「じゃあ」と私は言った。

「あの頃の私がぼろぼろだったことも、無駄じゃなかったね」

「……君は、そういうことを言う」

「だって、本当のことだもの。あの頃の私があの状態じゃなかったら、あなたに会えなかった。そう思ったら——あの日々も、悪くなかったって思える」

ヴィルは答えなかった。

でも、テーブルの上に置かれた私の手に、そっと自分の手を重ねた。

夢の中の温度は、やっぱりわからない。

でも、これからは現実で、確かめられるはず。


ヴィルは静かに重ねた私の手を取り、その指先に——あの夜と同じように、誓いの口づけを落とした。

「世界を敵に回してでも、君を迎えに行くと——以前、そう言ったな」

「うん、覚えてるよ」

「その言葉は、今も変わらない。ただ——世界を敵に回す必要がなくなるよう、明日、全力を尽くす」

「私も」と私は言った。

「一緒に、頑張ろう」

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