21
交渉の前夜、私はなかなか眠れなかった。
夢の庭園に入ると、ヴィルはすでに来ていた。
「眠れなかったか?」と彼はすぐに言った。
「わかるの?」
「顔を見ればわかる」
「あなたも?」
「……私も」
珍しい告白に、私は思わず笑ってしまった。
「怖い?」
「怖くはない。ただ——明日、君と現実で会う、ということが実感として迫ってきて」
「実感が迫ってきて?」
「うれしすぎて、落ち着かない」
私は声を上げて笑った。
「魔王様がそんなこと言うの、なんだか面白い」
「笑うな」
「だって、あなたがそんなこと言うなんて思わなかった」
「……私だって、こういう気持ちになる時もある」
彼は少し拗ねたような顔をした。
「ねえ、ヴィル」
「何だ」
「もし——私があの頃、もっと元気だったら。ちゃんとこの世界に根を張れていたら、あの庭園には来られなかったの?」
ヴィルはしばらく黙った。
「……おそらく」
「じゃあ」と私は言った。
「あの頃の私がぼろぼろだったことも、無駄じゃなかったね」
「……君は、そういうことを言う」
「だって、本当のことだもの。あの頃の私があの状態じゃなかったら、あなたに会えなかった。そう思ったら——あの日々も、悪くなかったって思える」
ヴィルは答えなかった。
でも、テーブルの上に置かれた私の手に、そっと自分の手を重ねた。
夢の中の温度は、やっぱりわからない。
でも、これからは現実で、確かめられるはず。
ヴィルは静かに重ねた私の手を取り、その指先に——あの夜と同じように、誓いの口づけを落とした。
「世界を敵に回してでも、君を迎えに行くと——以前、そう言ったな」
「うん、覚えてるよ」
「その言葉は、今も変わらない。ただ——世界を敵に回す必要がなくなるよう、明日、全力を尽くす」
「私も」と私は言った。
「一緒に、頑張ろう」




